第109話
ギルドで不安な事を聞いてから自由都市マルンに向かっているときは途中の街や村では泊まることはせずに街道から離れた余り人目につかない様な場所で野営することにした。本来、夜には活発になる動物型の魔物もいるのだが、僕達は《月魔法夜のとばり》を使い安全に休む事が出来た。それでも、安心とはいえ外でずっと野営することはストレスが溜まる。そのせいか、自然と早く自由都市マルンに行こうと自然と足が速くなり自由都市マルンには5日程で到着した。そして、早速入るための門へと並ぶ。
「ねえ、お兄ちゃん、私ベッドで寝たい」
フィーナがずっと街の宿では無く外で野営をしていた為に街に着いたらベッドで休みたいと言ってくる。他の皆を見るとその顔はフィーナの同意という様な顔をしていた。
「そうだね、マルンなら大丈夫だろうから街に入ったらまずは宿に泊まろうか。そして、1日身体を休めてから冒険者ギルドに行こう。そこで、皆も冒険者ギルドに登録をするからね」
「私達も登録するのですか?ご主人様の奴隷であれば一緒にダンジョンに行けますから余り意味は無いのではないですか?お金に関しても私達は十分頂いていますけど」
セシリアの言うとおり僕が冒険者であればその奴隷の人達はパーティーメンバーと見られる。そのために無理に奴隷を冒険者登録するような人はいない。さらに、僕はセシリア達に自由に使えるお金をある程度渡している。フィーナに関してはマリアに一緒に渡している。
「あ、でもね。フィーナはまだ登録出来ないからね。ギルドに登録出来るのは15歳になってからだからね。後、ギルドに登録しておくのは、僕に何かあったときの保険だよ」
「ご主人様に何かあるとは思えませんけどね」
セシリアは余り納得はしてなかったが僕の方針に了承する。
「私は後一年は無理だね。あ、でもでも、15歳になったら私もギルドに登録してくれんだよね?」
「もちろん、来年になったらギルドに登録するよ。さて、そろそろ僕達の順番になるかな」
しばらくしてから自由都市マルンに入るため門の順番になる。
「ようこそ、自由都市マルンへ。この街へ訪れた理由を教えて貰えますか。まあ、見た所、冒険者みたいですから決まっているでしょうが規則ですので教えてもらえますか?」
「自由都市マルンにあるダンジョンに挑戦するためですね。少し前まで聖霊のダンジョンに行っていまして、そこでここのダンジョンに挑戦するだけの実力が付いたと思ったので来ました」
「ふむ、所で聖霊のダンジョンではどの階層の魔物まで倒せましたか?」
「倒すだけなら15階層のグリフォンですね」
「それは凄い、でしたらここのダンジョンに挑戦する自信が付いたというのも分かります。分かりました、皆さんの訪れを歓迎いたします。ただし、ファールン王国側に抜ける為にはファールン王国側のAランク以上の冒険者の方の推薦状が必要になります。もちろん、バルドラント王国側には何時でも行けますので」
門番の人が色々と説明をしてくれる。そんな門番の人にマルンで家を持つにはどうしたら良いか聞いてみる。
「この街で家をですか?かなり高いですね。すでに建っている中古の家ですら金貨5000枚はしますね。新築で建てようと思ったら金貨1万枚でも難しいと思いますね。まあ、後はギルドで聞いて貰えますか。流石に他の人を待たせるわけにはいきませんので」
「すいません、では、冒険者ギルドで聞いてみますね」
僕達は後ろで待っている人達に謝りながら自由都市マルンへと入って行く。自由都市マルンではファールン王国側とバルドラント王国側に抜ける門以外にダンジョンに向かう門がある。
「さて、じゃあ、宿に行って身体を休めようか。ギルドには明日、向かおうか」
そして、僕達は露天を開いているおじさんにオススメの宿を聞いてそこへ向かう。
「すいません、5人ですけど部屋って空いていますか?」
「ようこそいらっしゃいました。6人部屋で良ければ、ただいま空いていますよ」
受け付けのお姉さんが笑顔で言う。
「6人部屋って珍しいですね。普通は3人部屋とかだと思いますけど」
「冒険者の皆さんの中にはパーティー全員が一緒じゃ無いと嫌だと言う方も多くてですね。この街の宿では6人部屋を作ってる宿は多いですよ」
「それでは、6人部屋だと1泊いくらになりますか?」
「6人部屋は1泊金貨1枚になります。それと、この宿の隣にある建物はこの宿のオーナーが趣味でやっている食事処になりまして、朝食でしたら無料になりまして、夕食も割引がされます。いかがですか?」
「凄くサービスが良いですが、何か理由があるんですか?」
受け付けのお姉さんに理由を聞いてみると、この街ではダンジョンに向かう冒険者が人口の中で一番多い。ダンジョンに向かう冒険者は宿に泊まることが多く。宿側が、それぞれ個性を出して冒険者を獲得しようとしているらしい。
この受け付けのお姉さんがいる宿はこのマルンでは良心的な宿と言うことで通っているらしい。食事についても受け付けのお姉さん的には美味しいらしい。そのオーナーは父親であるらしいのだが、昔から宿で食事を作っているので腕前は信頼らしい。その食事が美味しいので固定宿にしている冒険者も数組いるという話であった。
「所で、この街の冒険者でこの人だけは逆らわない方がよいという方はいますか?パーティーでもいいですけど」
「この街での冒険者間での喧嘩などは禁止されていますので理不尽なことをしなければ大丈夫でしょうね。お客様はどちらの国から入られたんですか?」
「僕達はバルドラント王国側から入ってきましたね」
「では、ファールン王国側の冒険者のラントさんという方がリーダーをしているパーティーがライバルになりますね。バルドラント王国側の冒険者で一番は決められませんけど、ファールン王国側ではこのラントさんのパーティーが実力で一番ですから。私は、今までいろんな冒険者の方を見てきましたけど、お客様なら良い勝負が出来ると思います。頑張って下さいね。あ、それで、宿泊になられますか?」
「もちろんです。とりあえず、3日分お願いします」
僕はお金を払い、部屋の鍵を貰う。
(ファールン王国側の実力のある冒険者パーティーか。どれくらい強いのか楽しみだ。出来れば、仲良くなって推薦状が欲しいかな。そうすれば、ファールン王国側の聖霊のダンジョンにも行けるかも知れないし。うん、楽しみが増えたかも)
部屋に向かいながら僕はこれからの事を考える。そして、万全の状態にするために今は身体を休めるのだった。
年末年始は忙しいので次の更新は1月8日の水曜日になります