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第107話

 オークが予想以上に多かったののでフィーナが競争をしないかと提案してきた。


「あ、あんたら、あんなに多くのオークがいるのに何を言ってるだが?」


 道案内で一緒に来たボンズさんがおかしな者を見るように言う。


「まあ、普通はそんな事をしようとはしませんよね。でも、大丈夫ですよ。オークぐらいなら誰も苦戦することはありませんよ。そんな柔な訓練はしていませんから」


 僕は安心させるようにボンズさんに笑顔で答える。


「あ、マリアとセシリアお姉ちゃんとお兄ちゃんの魔法は単体だけにしてね。そうしないとすぐに差を付けられちゃうから」


 マリアとセシリアが笑顔で頷く。


「まあ、僕は魔法を使わないでやるから、ただ、カルラは参戦せずにボンズさんの守りをお願い」


「ああ、分かった。もしかしたら群れを離れているオークもいるかも知れないからね。あたいがボンズさんを守っているよ」


「よし、なら、せっかくだから競争をやろうか。開始の合図はカルラがお願い」


 カルラは頷き魔法袋から銀貨を取り出す。そして、それを上に投げる。銀貨が地面に落ちたところで皆でオークの集落と思われる広場に向かう。


「「《火魔法ファイヤースピア》」」


 最初にセシリアとマリアがそれぞれ火の槍でオークを仕留める。オーク達は仲間がやられたのを見て騒ぎ出す。そして、食べていたボアの肉を捨ててそれぞれでかい棍棒を持ってこちらへと向かって来る。


 僕とフィーナはその動きを見て二手に分かれる。オークは僕とフィーナの所に向かってくるが僕とフィーナは手にした剣と槍で1体ずつ確実に倒していく。僕とフィーナが相手に仕切れていないオークはセシリアとマリアが魔法で仕留めていく。


 結局、30体以上いたオークは10分もせずに倒しきることが出来た。


「うーん、何か歯ごたえが無いね」


 フィーナが物足りないと言う風に文句を言う。


「まあ、流石にダンジョンの魔物と比べたらいけないよ。最初の頃はって思ったけど、フィーナはオークには苦戦してなかったね。才能があったからかすぐに強くなっていたね」


「そうですね。フィーナお嬢様はすぐに強くなっていましたね。ですが、フィーナお嬢様ご自分が強くなったからといって、他の人も強いとは決まっていません。お嬢様が強いのは生活するすべを旦那様が用意してくれていて、戦う訓練を他の人よりも時間をかけて出来たからです。他の人は生活するためには仕事をしないといけません。普通は戦う訓練等はそこまではしませんからね。お嬢様は恵まれているということを忘れないで下さいね」


「う、うん」


 マリアに言われてフィーナが頷く。普通の人はゴブリンぐらいは倒せるぐらいには鍛えることはするが、流石にオークになると倒せるのは、ちゃんと訓練をした人ぐらいになるだろう。ただ、ゴブリンは人里にまで出てきて農作物などを奪っていく事があるので人はゴブリンを倒せるぐらいには鍛える。しかし、オークは余り人里まで来ることは無く。今回の様に近くまで来ることもましてや集落を作るようなことは珍しいのだ。


 オークの群れと街道で出会うことはあるが森から森に移動する際に街道を横切っているだけなのだ。結局、人が襲われるとオークは人里近くまで来るようになるので、街道で襲われた商人達がいる場合は貴族や領主が冒険者にオーク討伐を依頼することもあった。


「あんたら、見た目に似合わず凄いんだなあ。あんなにいたオークをやっつけちまうなんてな」


 全て倒したのを見ていたのかボンズさんがカルラと一緒にやって来た。


「まあ、オークキングがいないのならこれくらいは出来ないと冒険者とは名乗れませんから。さて、ではオークの解体をやってしまいましょうか。今回は、オークの魔石を村長に渡したら依頼達成でしたよね」


「んだ、肉等は冒険者さんが持っていっていいだでな」


「今回のオークは数が多かったので半分の肉は村の方に差し上げますのよ」


「ええだか?でも、これだけのオークの肉を運ぶのはかなり大変だども、どうするだ?」


「大丈夫ですよ。僕達は魔法袋を持っていますから」


 僕はそう言って、解体が終わったオークの肉を魔法袋に入れていく。


「そんな貴重な物をたくさん持っているなんて冒険者さんは凄いんだなあ。儂も欲しいだども高いんだべな?」


「高いですね。魔法袋1つで金貨500枚ぐらいするらしいですから。僕達はダンジョンで手にいれた物ですからただ何ですけどね。ダンジョンで手にいれようと思ってもかなり深くまで行かないと無理ですけどね」


「儂等にそんなダンジョンなんて無理だべな。まあ、今まで無くても何とかなったでな。そんな物が手に入っても代官に没収されてしまうで無い方が逆にええかもな。今は、冒険者さんがたに運んで貰っていいだか?」


「ええ、大丈夫ですよ」


 そして、皆で手分けをして解体をする。他の魔物が来るかも知れないので急いで魔法袋に入れてその場を後にする。


 村に戻り村長に報告すると目を見開いて驚いていた。


「ほんまか、そげなたくさんのオークが居っただか。にわかには信じられんだが」


 最初のは村長も信じてはいなかったがボンズさんの証言とオークの魔石30個、さらにはオーク15体分の肉を見せた事で納得した。


「冒険者さんにはすまんことをしたのう。依頼は達成したことにしてもらってもええだが?流石にあそこまでいたとなると依頼料を上乗せせにゃあならんだども」


 本来の依頼はオーク10体位の群れの討伐が30体もの数のオークの討伐になってしまった。本来であれば依頼した以上の数がいたために依頼料を多く支払わなければならない。


「それでしたら、魔石を15個貰っても良いですか。その売却価格で持って依頼達成ということにしたいと思うのですが」


「儂等はオーク肉まで貰っているからええだが、冒険者さん達はそれでええだか?」


「はい、大丈夫です」


 僕達は村長からオークの魔石を15個貰って依頼達成の証明の署名を貰い村を後にする。


「ねえ、お兄ちゃん。私、倒したの6体だったけど、結局誰が一番倒したの?」


「ああ、僕も6体だったね。セシリアとマリアは何体倒したの?」


「私は9体だったかと思います」


「私も同じですね」


 セシリアとマリアは同じ数を倒したらしい。


「今回はセシリアお姉ちゃんとマリアの勝ちだね。悔しいなあ」


 フィーナが勝てなくて本当に悔しそうにしている。


「まあ、セシリアとマリアの方が有利なのはどうしようも無いね。魔法を数発放てないと倒せないような魔物ならまだしも魔法一発で倒せるなら遠距離から攻撃できる魔法の方がどうしても有利になるよ」


「むう、今度あったときは負けないもん」


 頬を膨らませながらフィーナが歩いて行く。


「オークやゴブリンならまだしも、リザードマンの群れとかだと競争している場合じゃ無いと思うんだけどね。次に機会が無いことを僕は願うかな。魔物があそこまでの群れになるのは普通じゃ無いからね」


「下手すれば、暴走の時とかに競争しよう何て言いそうですね」


 マリアがため息をつきながら言う。


「流石にそこまでの無謀はしないと信じているんだけど、今は気にしても仕方ないからさっさと街に戻ろうか」


 フィーナの思い付きが最悪の時に出ないように祈りながら、街へと帰るのだった。

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