第106話
早朝に北門からサイト村へと向かっていく。道中の魔物は出てきたとしてもゴブリンぐらいで順調に進み、次の日の朝に予定通りに到着する。
「早速村長のところに行ってこの依頼書を見せて、何処にオークがいるのか聞いてこようか」
農作業をしている村民に村長の家を聞いて、村長の家へと向かう。
「すいません」
「む、其方等はもしや、儂の依頼を受けてくれた冒険者のお方ですかな」
「そうです、ギルドより依頼されてきました。こちらがその依頼書になりますが間違いありませんね?」
そう言って、僕はギルドで受け取った依頼書を見せる。
「うむ、確かに儂が依頼した物じゃな。それでは、早速で悪いのだが話をさせてもらいたいのじゃが良いかな?」
「はい、大丈夫です」
「うむ。あれは3日ほど前の事じゃ。この村の北西には大きな池がありましてな。このサイト村はそこから水を引いているんじゃが、どうやら、その池の近くにオークが10匹程集まっておるそうなのじゃ。しかも、そやつ等はそこに小屋の様な物を作って居るらしいでの。それを討伐してもらいたいのじゃ」
オークやゴブリンは数が集まると何故か集落らしきものを作るというのは知られている。もし、集落を作るまでの集団になったときは冒険者ギルドでは緊急依頼として遠方の街から強い冒険者を呼んで倒すこともあるらしい。その前に、元高ランクのギルドマスターが出向いて処理することもよくあることである。
「分かりました。小屋まで出来ているとなると危ないですね。下手をすると数十体規模の集落になるかも知れませんからね。そういえば、このセレティグト領でオークの群れが出たらしいですから、関連があるかも知れませんね」
「そんな事があったとはのう。まあ、その辺は儂にはよく分からんからどうでもよいがな。それよりも依頼の場所に行くのに若い者を一人道案内にだすでな。ちょっと、待っておいてくれんかの」
そうして、村長が家から出る。しばらくして、戻って来たときに1人の若者が一緒にいた。
「この冒険者さん達があのオークを倒してくれるだか?」
「そうだでな、案内を頼むでな。冒険者の方々はこいつに着いて行って欲しいだ。此奴はこの村のハンターでな。オークの群れを見つけたのもこいつなんだが、流石にゴブリンならまだしもオークは無理やから冒険者ギルドにお願いしただ。ボンズ、冒険者さん達に案内頼んだで」
村長の言葉にボンズと言われた若い人が頷く。
「だども、本当に冒険者さん方はオークを倒せるだか?何か、身体は弱っちそうなのが多そうだが」
ボンズさんは強そうに見えない僕達に対して疑問を持ったらしい。強そうに見えるのはカルラぐらいで他の皆は他の人が見たら強そうには見えないのだろう。
「大丈夫ですよ。皆、オークキングぐらいは簡単に倒せるメンバーですから」
僕が言うとボンズさんは驚いていた。
「オークキングってーと、オークの王様だでな。そっだら物まで倒せるなら期待できるだな。早速案内するだで、歩いて2時間程の所になるだで、着いてきてくれな」
僕達は歩き出したボンズさんに着いて行く。そうして、森の中を2時間程歩くと村が水源にしているという池にたどり着いた。
「そう言えば、ボンズさん」
「どうしただ? オークの群れはもう少し行った所にあるだぞ。怖じ気づいただか?」
「オークの方は大丈夫です。少し、疑問に思いましてね。どうして、村をこの池の近くに作らなかったのですか?森の中とはいえ時間をかけて切り開いたら村は作れたのでは?」
ボンズは僕の質問にうなる。
「詳しいことはわかねえけどもな。昔はこの池に作ろうとはしたらしいだがな。この池は魔物達の水飲み場にもなっているらしくてな。いろんな魔物が来よるらしいいんよ。それで、住むには厳しいゆんであそこに集落を作る事になったらしいんよな。まあ、昔の事だけえようわからんのだけどもな」
「なるほど、分かりました」
昔はこの池の周りに村を作ろうとしたが、魔物が多く断念したと言うことだろう。魔物は何を食べているのかは分からないが水を飲むことは知られている。この水源は人だけでは無く魔物にとっても水源になっているということである。
「あ、隠れるだ」
ボンズさんが隠れるように言うので皆で木陰に隠れる。
「あっこに広場みたいなのが出来ているだが、そこに小屋みたいなのが出来ているのがみえるだか?」
ボンズさんが指さす方をそっと見てみる。その先はどうやら木を倒してかなり大きな広場が出来ているようだった。僕はセシリアと一緒に木の上に登り様子を見に行くことにした。
木を伝いながらその広場に近づいて行く。そして、木の上から見ると、木で柱を作り、その上を枯れ草で屋根を作った簡単な小屋が沢山出来ていた。そして、その広場の中心でオークが火を囲みボアと思われる肉を頬張っている。オークの数は多く30体はいそうだった。
僕とセシリアはオーク達を確認するとカルラ達の所へと戻る。
「ど、どうだっただ」
ボンズさんが怯えたように聞いてくる。オークが近くにいるので怯えているのだろう。しかも、オークは鼻が良いので匂いで見つかってしまうと思っているのだろう。
「オークが30体ほどいますね。集落と言って良いぐらいですね。ただ、オークジェネラルがいないから倒すのは楽かな。今は炎を囲んで食事中だったね」
「食事中って、人が犠牲になっているのですか?」
マリアが聞いてくる。
「いや、あれはボアだろうね。ボアの死体が沢山あったからね。人の死体は僕は見えなかったけど、セシリアは見えた?」
「いえ、私は見ていませんね」
「なら、まだ犠牲者はいないだろうね。人の味を覚えると人里に頻繁に来るようになるらしいからね。さて、じゃあオーク退治をしようか。オークの数はざっと見た所30体ほどだったね」
「なら、皆で競争しない?」
フィーナが笑顔でそんな事を提案してきた。