第102話
聖霊のダンジョンを攻略して家に戻ってから身体を休めるために丸一日を休養に当てる。その日の夜に今後の方針を少しだけ話し合う。
「まあ、話し合うと言っても自由都市マルンに向かう事は決まっているんだけどね。ただ、問題はセレティグト伯爵のいる中心都市セレティグトに行ってから自由都市マルンに向かわない駄目なんだよね」
「ご主人、それがどうして問題なんだい」
カルラは中心都市セレティグトに向かうことの何処に問題があるのか分からなかった。
「いやあ、あそこの伯爵の息子を僕が殺しているからね。まあ、あれからかなり時間が経っているから大丈夫だと思うけど」
「旦那様は貴族の子供を殺したのですか。よくそれで、今まで問題になりませんでしたね。貴族は建前を気にしますから、そんな事があれば何が何でも捕まえるか殺されますよ」
マリアが貴族は面子があるために普通は国の隅々まで探してでも捕まえるか殺そうとすると言う。
「一応、周りには誰もいなかったし、全ての騎士も倒したからね。それと、そいつの狙ってきた理由がセシリアだったからね。逆に貴族の面子的に僕を狙うことをやめたのかもね。他人の奴隷を身分に言わせて奪ったりするのは恥にしかならないでしょ」
「そうですね、他人の奴隷を奪うことはどの国でも禁止されています。それこそ、貴族であればその地位を剥奪されるくらいです。しかし、貴族は何かと理由を付けて奴隷を奪うこともあると聞きます」
「まあ、貴族ってそう言うもんだよね。ただ聞いた話だと、セレティグトは幾つもの街道が集中する中継都市でお金が集まるんだよ。それを、他の貴族も狙っているみたいなんだよね。もし、他人の奴隷を狙って返り討ちにあったというのは逆に貴族としての面子的には最悪だからね。もしかしたら、僕じゃ無い事になっているかもね。僕と言い争いをしていたのを見ていた人もいるから」
「その話でしたら、この街に着いて少し経った頃に聞きましたよ」
セシリアがふとそんな事を言ってくる。それに、僕とマリアは顔を向ける。
「そんな話、僕は聞いてないけど?」
「ご主人様とギルドに行っているときに他の人が話しているのを聞きましたよ。確か、セレティグトの領主の子供と取り巻きの者たちがオークの集団に寄って殺されたらしいです。ご主人様はギルドの方と話していたので聞いていなかったのだと思います」
「へえ、そうなんだ。都合よくオークの群れが街道に出てきていたのかな。それなら、僕の事を探そうとしないかもね。セレティグトの領主は僕の容姿などは知らないだろうから」
「そうでしょうか。エルフの奴隷を連れている冒険者は普通はいませんから探そうと思えば探せると思いますよ。ただ、聞こえた話によると、その領主の息子は評判が悪かったらしく逆に領主は自分の手を汚すこと無く始末できたので喜んでいるんじゃないかって、その人達は言っていましたけどね」
「セシリアさんの話を聞く限り、ご主人様が狙われる事は無さそうですね。その時と違いセシリアさんだけでは無く私やカルラさん、フィーナさんもいます。その時の冒険者と思われないかも知れませんね」
「よし、それなら気にせずにセレティグトの方へ行ってからマルンの方へ行こう。マルンに入ってしまえば貴族も手出しはしにくいからね。明日から向かおうか」
僕の言葉に皆が頷く。
「お兄ちゃん、セレティグトって街に行ったら泊まるの?」
フィーナが明日からの予定が決まってからそんな事を言ってくる。
「フィーナは泊まりたいの?」
「初めて行く街だからゆっくり見たいかも、この街よりも大きいの?」
「セレティグトの街はここよりも大きいよ。街の中央の道路には露天も沢山でている。いろんな街への中継地になる場所だからね。人も物も集まるんだよ。だから、かなり賑やかな街だね」
僕の言う街の様子にフィーナが瞳を輝かせる。
「フィーナ大丈夫だよ。せっかくの街だからね、1泊はする予定だよ。流石にずっと野宿というのも辛いだろう」
「うん! やっぱりベッドで寝る方が良い」
フィーナが街に泊まると聞いてはしゃぐ、それを見てマリアが微笑んでいる。
「旦那様ありがとうございます。セレティグトで泊まるのはリスクがあるのに」
「そのリスクは僕にとってはどうでもいいかな。襲ってくるなら返り討ちにすればいいだけだよ。この国の騎士団が出て来たって返り討ちにするだけだよ」
「流石に騎士団相手は難しいのではないですか?聖武器を持っているんですよ」
「僕は神剣を持っているんだけどね。皆には見せていないけどたった1度だけど切り札はもちろんあるよ。だから、騎士団が来ても大丈夫だよ」
僕の言葉にマリアが驚く。
「その切り札は騎士団相手でも大丈夫何ですか? この国の騎士団は数千人いると聞きます。それ以外に貴族の兵なども会わせると数万になりますけども」
セシリアが不安そうに言う。
「その騎士団全てが聖武器を持っているならともかく、持っているのは1人だけだし、僕の切り札は人数なんて関係無く粉砕しちゃうだろうね。まあ、切り札は本当に1度だけしか使えない。だから、本当にいざという時にだけ使いたいね」
僕の言葉にセシリアはまだ不安そうにしていた。そして、マリアはそんな僕をじっと見つめていた。