閑話4
フレイ達が聖霊フェンリルとの邂逅をしているときそれを見ていた者がいた。創造神ソルテールである。
「ふむ、あの小僧、やはり面白い。自分には意味が無いのにそれでもフェンリルのダンジョンに行くとはな」
「本人には意味は無かったかも知れませんけど、一緒に連れている女性達が強くなるのですから意味はあったのでは無いですか? フレイならフェンリルの武器を手に入れる事も出来るでしょうから」
フォルティナがソルテールの言葉にそんな事を言う。
「しかし、フレイは何を考えているのか分からんな。あの奴隷の女達を鍛えているみたいだが手を出していないのは何か意味があるのか? あの年頃なら手を出していてもおかしくは無いだろう」
「それは子供の頃の影響があるかも知れませんね。あの子の過去を貴方も見たでしょう」
「ああ、あの母親の事か。今のハイエルフ族は排他的になってしまったからな。まあ、その影響があるのならば仕方ないか。しかし、だからといって自分の産んだ子供を殺そうとするとはな。憎いのは孕ませた男の方であってフレイでは無いであろうにな。最後には村全体でフレイを殺そうとしておったのにも驚いたが」
ソルテールがハイエルフの排他的な性格を嘆く。
「千年前はハイエルフ族も今と違って普通に人族と交流していて、あのアルスが生まれたのにね。まあ、人族の方にも問題はありましたけど」
「うむ、まあ、人族は良い者は良いのだが悪い者もやはりいるからな。人数が多い分それは仕方ないことだとは思うのだが」
「まあ、その話はもういいでしょう。それよりもこれからフレイはどうするのかしら。他の聖霊達の所に行くのかしらね?」
「わしとしては全ての聖霊達の所に行ってほしいものだがな。元々は聖霊達のダンジョンを攻略し、神の試練のダンジョンを攻略して強さを極める。そういうことを想定していたのだがな」
「大昔ならそうなっていたけれども国の象徴として神具を使われるようになったときには終わっていたわね。それからは、聖霊達のダンジョンを攻略する人増えたけど、聖武具は国が保有し続けていましたね」
ソルテールとフォルティナが過去を思い出しながら語り合う。
「それは、別に構わないのだがな。しかし、もっと人族なら文化も文明も発展すると思っておったのだがな。まさかここまで発展しないとは思いも寄らなかった。北側は一度南側に全占領されるぐらいまで追い詰められたから仕方ないにしても、南側もまさかその後の内乱で同じぐらい追い込まれるとは思わなかった」
「あれには驚いたわよね。このまま、南側が全制覇するのかと思ったら、アルスと仲間達の出現で一気に形勢が逆転し、南側のほとんどの王族が征服が終わると思ってほとんど北側に来ていたところをアルス達にやられて王族が死んでしまったせいで内乱でしたからね。あれはあれで面白かったですけどね。そのせいかこの千年は余り文明は発展しませんでしたね。一番発展していたのが3千年以上前とは管理する神の一人としては寂しいですね」
「うむ、そうだな。まあ、それは、これからに期待するしかあるまい」
「そう言えば、聖霊達の名前は貴方が付けていましたけど、どこから付けたのですか?」
フォルティナが突然話題を変えてくる。
「ああ、聖霊達の名前か。あれは、ある世界の人族が作り出した神話から貰った名前だな。あそこの世界は面白いな。実際にいる神では無くて、自分たちで神を想像しさらにはそれを元に神話を作り出しているんだからな」
「それをその世界の神は戒めなかったの? 自分たちでは無くて人族が勝手に作った神を信仰することを許したの?」
「その世界の神は一度も人族に干渉をしていないらしい。それ故に、人族はその世界の、本当の神の名前も知らないらしいぞ。それなのに、その世界はかなり発展しているんだ。かなり希有なケースとして創造神界隈では見られているな。まあ、本人が一番驚いていたがな」
「それは、驚くでしょうね。もしかして、聖霊達の聖武具の名前もその世界の神話から名前を付けたのですか?」
「まあ、そうだな。いや、別に考えるのが面倒だったからとかでは無いぞ」
ソルテールが少しばつの悪そうに言う。実際、その神話を見て武器に名前があるのを見て面白いと思ったのが理由ではある。しかし、一から全ての聖霊の聖武具に名前を付けるのは面倒だと思って、その神話から聖霊の名前も武具の名前を貰っちゃえと思ったのだ。
「面倒だったのですね。まあ、その事については構いません。私達の仕事は管理している世界の発展ですからね。他の世界の、しかも人族が作った神話の中の名前なら他の方々からも苦情は無いでしょうからね」
「実際、色々な世界で使われてたりするんだよな。まあ、だから気にしなくていいさ。さて、フレイはどのような未来に進んで行くのかな。これからもわし達を楽しませてもらいたいものだ」
「そうですね。初めて私の加護を授けた者です。楽しませてもらいたいですね」
そうして、2人の神はフレイを見つめるのだった。