第97話
スピードアリゲーターやウイングスネークとの戦いを終えてから慎重に12階層を進んで行く。進んで行く中でカルラに13階層の事を聞く。
「13階層と14階層では11階層で出たリザードマンやハイオーガと一緒にこの12階層で出たスピードアリゲーターやウイングスネーク等が出るよ。まあ、言うなれば11階層や12階層の魔物が一緒になって出てくるって感じだね。ただ、厄介なのはリザードマンが引き連れているのがコボルトじゃなくてスピードアリゲーターとかだったら厄介だね」
「リザードマンやハイオーガが司令塔になってこの12階層の魔物を引き連れるって感じかな。スピードアリゲーターもだけどウイングスネークを引き連れていても厄介だね。地上と空から連携されると危なそうだ。その場合はセシリアとマリアでウイングスネークを何とかしてもらって地上の魔物は僕やカルラとフィーナで戦わないといけないね」
そんな風に13階層からの戦いを考えながら進んで行くとオオカミのうなり声が聞こえてくる。
通路の奥から身体が炎に包まれたオオカミが数匹姿を現した。12階層ではまだ見ていなかったフレイムウルフだろう。
「これがフレイムウルフかな。これを倒すコツとかはあるのかな?」
「こいつらは水に弱いくらいかな。外からの矢だと鏃が刺さらないから意味は無いね。なんせ、炎に包まれているんじゃ無くて身体その物が炎で出来ているからね。だから、魔石を直接狙えるならいいんだけどそうじゃなかったら水魔法で炎を消すしか無いね」
「剣での攻撃も意味が無い?」
「動きを止めるぐらいの意味はあるけどね。魔石を砕かないと意味は無いよ。すぐに復活しちゃうんだ。因みに攻撃は噛み付き攻撃と炎の身体での体当たりしか無いんだけどね。炎の身体なのに炎は吐けないから遠距離攻撃が無いのが弱点と言えば弱点だね」
「となると、僕とセシリア、マリアで魔法で倒すのが一番楽だね。水魔法は実を言えば苦手だけどやるしか無いね」
水魔法は自分やパーティーで飲み水として出すときがほとんどで攻撃として使うことがほとんど無い。あったとしても《水魔法アイスメイク》で攻撃をするのが多いために普通に水を使った攻撃をすることは
無いのだ。
「これはどの水魔法が一番有効だと思う?」
僕はセシリアに聞いてみる。
「炎を消すと言うことですからウォータージェットの勢いで消すのが一番有効では無いですか?」
「それが一番いいかな。なら、それで、行こう。僕は2匹相手にするからセシリアとマリアは1体ずつ
お願い」
「「分かりました」」
セシリアとマリアが返事をする。カルラとフィーナは近寄ってこないように武器を構えて牽制だけをする。その牽制に動きを止めているフレイムウルフに向かって3人で魔法を放つ。
「「「《水魔法ウォータージェット》」」」
ものすごい勢いの水流がフレイムウルフを襲う。フレイムウルフはそれを飛んで躱そうとするが水流は鞭の様に動きをしならせてフレイムウルフを追いかける。フレイムウルフはその水流を躱すことが出来ずに魔石だけの姿になり地面に落ちる。
「うーん、これで倒したことになるんだろうけど、何か達成感が無いよね」
僕はその呆気なさにそんな事を言う。
「あの、ご主人。普通はこんなに簡単じゃ無いよ。普通は3人も魔法を使える人なんていないからね。本当の倒し方は武器で攻撃すると動きを止めるから、その間に1体ずつ倒すのが普通なんだ。ただ、動きを止めるけど炎の熱だけはどうしようも無いから《水魔法ウォーターアーマー》を使って水の鎧を纏いながら戦うんだけどね」
「《水魔法ウォーターアーマー》か、あったねそんな魔法。火事の時に救助する用の魔法だと思っていたから気づかなかったよ。ただ、あれって水を纏う分、身体の動きが重くなるんだよね」
「それでも、火傷するよりはマシだからさ」
カルラは苦笑いをしながら言う。僕と一緒に戦って来てまた1つ自分の常識が崩れてしまったらしい。
「フレイムウルフはフレイムブルと違って肉を落とさないのが残念だね」
「フレイムブルは身体に炎を纏っているからね。フレイムウルフは魔石だけしか無いね。ただ、この魔石は結構言い値で売れるんだよ。帝国の商人が良く買っていくんだよ。この魔石は寒さをしのぐ魔道具によく使われるからね。帝国は北側にあって冬は寒いらしいから」
ガイナラント帝国は死の森の北側の崖を登った所にあり冬はかなり寒く帝国の北側は常に雪で覆われているぐらいである。そのために、冬の寒さを凌ぐためにフレイムウルフ等の火属性の魔物の魔石を商人達が買っているのである。ファールン王国側では戦争しているが反対側では戦争はしておらず商人達は出入りをしているのだった。
「まあ、僕のいたハイエルフの里も冬はかなり寒かったね。まあ、そこは魔道具じゃなくて普通に暖炉で寒さを凌いでいたけどね。森に住んでいたから薪にも困らなかったし」
「ご主人様は帝国側にあったハイエルフの里で生まれたんでしたね。そちら側から死の森に降りて反対のこの王国側に来られたんですね」
「降りたというか、落とされただけなんだけどね」
「あ、すいません」
セシリアが失言だったと謝る。
「別に構わないよ。さて、じゃあ先に進もうか。今回は15階層迄行っちゃうぞ。というか攻略までしちゃおう」
「攻略までしちゃうんですか?」
「最後まで行ったらこのダンジョンはもう来なくていいの?私、新しい街に行きたい」
セシリアが驚く。カルラとマリアは驚きで声も出てないようだったがフィーナは嬉しそうだ。フィーナは違う街に行ってみたいらしい。1ヶ月間立ち入り禁止の時もダンジョンに行ったり訓練ばかりで他の街に行くことも無かった。ずっと、同じ街にいたので飽きてきたらしい。
「このダンジョンを攻略したら次は自由都市マルンに行くし、その途中の街には寄ることになるよ」
「やったあ、じゃあ、速く先に進もうよ」
フィーナが速く先に行こうと急かしてくる。
「今回は13階層で野営をするからね。流石に休み無しだと魔力も体力もきついから」
「あ、うん、そうだよね。休みも大事だよね」
フィーナは少し恥ずかしそうに頬をかきながら言う。
13階層に行き、そこでも、余り魔物に会わなかった為に少し進んでから入った部屋で野営をする事にしたのだった。