表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月下の晩餐

作者: スズヤ ケイ

 こんばんは。


 良い夜ですね。


 ああ、怪しい者ではありません。この公園の管理人です。見回り中でして。


 いえいえ、出て行かれずとも結構ですよ。夜間も解放しておりますので。


 真夜中のピクニックとは、なかなか粋なものですね。


 おや、お誘い頂けるのですか?


 そうですね、見回りも一段落するところでしたし、お言葉に甘えましょうか。


 では失礼しまして……



 ──ははぁ。これは良い場所を見繕いましたね。


 周りに木々がなく、空が見渡せる。


 ええ、今は曇りなのが少々残念ですね。


 元は月見のご予定でしたか。それは尚更に惜しい。


 ん、良い香りですね。水筒には温かい紅茶が?


 これはこれは、用意周到なお人だ。今夜は少し冷えますからね。


 おや、わけて下さると? サンドイッチまで?


 なんと、至れり尽くせりですね。ありがたく頂きます。


 ああ、温まる……



 それにしても、今日は満月ではなかったはずですが、承知で来られたのですか?


 ほほう。私も三日月は好みですよ。

 控えめに微笑むような唇を連想しませんか。


 ふふ、気が合いますね。


 こうして出会ったのも何かの縁。

 今のご馳走のお礼も兼ねて、一つこんなお話を贈りましょう。



 月を見上げてはいけない日……そういった噂を聞いた事はありませんか?


 私も人伝(ひとづ)てに聞いただけですが、ごくごく稀に、三日月と二十六夜が同時に現れる日があるのだそうです。


 その有様は、夜空へ大きな穴がぽっかりと広がっているように見えるとの事です。


 ええ。新月よりもくっきりと。


 そして、その月を見てしまったら、急いでその場を離れなければならないとも聞きました。


 離れなければどうなる?


 さあ……具体的には何とも。

 聞くところでは、その人は失踪してしまうのだとか。


 とある研究家は、全国の行方不明者の何割かは、この現象のせいではないか、という論文を出されていますよ。


 ええ、眉唾もの。オカルトの域を出ませんね。所詮は噂ですから。



 余興としては面白かったですか?

 それは良かった。



 ああ、そんな話をしている内に、いつの間にやら雲が晴れていますよ。


 ほら、よい月です。


 どうしました? そんなに血相を変えて。

 せっかく月が出たのに、もう帰られるので?


 そうですか。

 いえ、楽しい一時でした。ありがとうございます。


 ごきげんよう。




 そして、ご馳走様。


 ふふ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ