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1話 ぼっち陰キャと学園のマドンナ

 俺は自慢ではないが陰キャである. 

 

 そもそもの定義が曖昧なこの言葉を使うのは大変不本意ではあるがそろそろ認めねばなるまいと考え始めていた.なぜなら,高校入学からまもなく1ヶ月経つ頃だが,友達と言える存在が全くできる気配がないからである.

 まあ,この友達というのも定義が曖昧であるではあるが,今はその話は置いておいて未だに安定して話せる友人がいないことはかなりまずいと危機感が芽生えていた.

 

 しかし,なぜ友人ができないかということに関しては理由はわかっていた.

  


 ただ単純にこの地域の知り合いが全くいないからである.

  

 

 この春,とある事情により地元の田舎を離れ,都会に一人でやってきたことから,この高校周辺の知り合いが誰一人いないのである.これでは高校デビューをしようと色々頑張った努力が全く無駄になってしまう.中学生の時は,受験のために通っていた塾の友人に必死に同じ中学に来るように頼まれたこともあって,その友人から派生していき,いろんな人と話していたので特に友達作りというものに困ることもなかったが,そのことが原因で自ら友達を作るというやり方がわからなくなってしまっていた.


 自分から話しかけに行けば済むだろうと思われるかもしれないが,中々それが難しいのだ.

 

 入学直後のクラス内であれば,今よりは容易に出来たかもしれないが,今や完全にグループが出来てしまっており,なんかこう雰囲気的に話しかけづらいのだ.


 決して自分自身が爽やかでイケメンであると思ってはいないが,高校デビューをしようとそれなりに整えたはずなので,どこかの陽気な人が話しかけてくるだろうと思って待っていたことで今大変なことになってしまっていた.

  …決して俺がコミュニケーションが苦手であるのではない.


 さらにこのクラスはなぜか全員がどこかのグループにおり,俺を除いてひとりぼっちでいる奴がいない.

 

 以上の理由から俺,辻 龍弥はゴールデンウィークが明けた次の日の昼休み,一人食堂でハンバーグ定食を食べていた.


 まあ,別にぼっち飯とか悲しくねえしといつもながらの心の中で誰にしているのかわからない言い訳を唱えていた.

 

 (また言い訳を自分自身にしてダセェな)


 そんなことを思いながら,もぐもぐハンバーグ定食を早急に食べ,今や日課になりつつある,食堂前の自販機で買った牛乳を,食堂から出てすぐのベンチに座って飲んでいた.


 それからしばらくして,掃除開始の合図がなり憂鬱な気持ちになりながらも,教室に向かっていった.


 


 その後は休み前と同じように,誰とも話すことなく掃除をこなし,5時間目開始を待ち,机にうつ伏せになりながら寝たふりを続けていた.


 今から寝ても微妙な時間帯のため,寝たふりを続け,近くで話している女子グループの会話を聞き話のネタを探そうと耳を傾けていると,

 

「あれ,またこの子寝てる〜」

「いっつも寝てるよね〜」

「多分あれだよ.友達作りに失敗したんだよ.誰かと話しているところ見たことないし」

「あ、確かに〜.なんか髪型とかきちってしているのになんかアレだよね〜」

「あーあれね」

「そうそう、なんか陰キャが無理してる感じ?」

「てか、このこ見たことなかったよね.誰か知ってる?」

「え〜知らな〜い.多分どっかから引越してきたんじょない?」

「あーね  なら友達いなくてもしょうがないか〜  てか誰か名前知ってる?」

「確か つ何とかじゃなかった?」

「そうだ! 辻だよ、辻」

「あー確かに言われてみればわかるかも」



 

 (…こいつら、黙ってたら好き放題言ってくれやがって   てか、なんで同級生に「この子」呼ばわりされんといけんのだ.)

 そんなことを思っていたが、本人たちに言えるはずもなく、そのまま5限目のチャイムが鳴るのを待っていた.

 


 そんなこんなで、チャイムがなり、近くにいた女子グループの人たちもそれぞれ自身の席に戻っていき、龍弥もまるで今起きたかのように、後ろの席の人に当たらないように気をつけながら、体を伸ばしていると、5限目の授業の数学担当かつこのクラスの担任でもある桂井先生が入室してきた.


 そして、しばらくすると学級委員の号令の元、授業が始まった.


 

 …と思ったら急に桂井先生が


 「えー 本日はまず初めに席替えを行う.やり方はくじだ.異論は許さないからな〜 あと目が悪いものは挙手しろよ〜そいつら専用のくじ作んないといけないから」

 と、急に始まった席替えにより仲良し同士の人たちが文句を言っている中、龍弥はこれはチャンスなのではないかと思っていた.


 (席替えならば、隣の席になった人と話す口実になるぞ)

と、一人はりきっていた龍弥は周りにはバレないような様子でくじを引く順番を待っていた.


そして、ついにやってきた龍弥の番.


(願わくば話しやすそうな人が隣でお願いします!!)


そう思いながら引いた数字は29番.この教室の1番後ろかつ1番窓側という絶好の位置であった.


(よっしゃ.ついてる)

そのことに喜びを感じながらも、隣の人と話せるか不安になりながら、自らの席に戻り、全員がくじを引きおわったことを機に、席を指定の場所に移動させ始めた.


 そして、席を移動し終わり、隣の席の人を見る.

するとそこには、モデルかというぐらいの美女でありこの学年のマドンナ的存在でもある、高野 美紀の姿があった.


(マジか! 今日の俺の運はヤバいくらいついてる! この調子で話しかければいけるはず)


そう決意し勇気を振り絞って、自己紹介をしようとし、


「こんにちは!俺は辻 龍弥  ぜひ俺と(友達として)付き合って下さい‼︎」


『え…』


その瞬間、教室が静まり返り、窓から入ってきた風の音が教室中を包んだ.


これは、ボッチで陰キャだった俺が、誤って学年のマドンナに告白した結果、俺にベタ惚れで世話焼きの彼女が誕生してしまった話.



 

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