第9話 そして途方に暮れる件
「必須かぁ………」
変身ヒーロー、しかもブルーって言われてちょっとわくわくし始めてたんだけどな。
名乗り必須となると、ちょっと恥ずかしいなぁ………。
─────天を見つめ、僕は途方にくれる。
そして決めた!
(多分この間、0.1ミリ秒位だったね!)
そして俺の出した結論
「────この話は無かったことで」
深々と頭を下げて席を立つ。
だが、席を立って退室しようとしたその俺の腕を、毛深く太い腕でガッシリとつかみ、俺から目を逸らさずに大きく首を横に振るおっさん。
「────それは出来ない相談だ。君の治療には莫大な金額がかかっている。ただ、君がそれを我々に返してくれるならば、そう言った事も考えても良いと思っている」
───うわっ、汚ねえっ!
頼んでないのに、未知のテクノロジーとやらで生き返らしておいてそう来たか!
────詐欺だ!脅しだ!恐喝だ!
……うん、やっぱ俺、ボキャブラリーが貧困だな。
二つ目と三つ目は意味がほぼ同じだ。
でも、大人の世界の汚なさは十分俺に伝わったぞ。
「ちなみに、そのベルトは君の力では外れない。しかもそのベルトには公に出来ない秘密が隠されている。君は我々に協力せざるを得ないのだ!」
────色んな事を考えてる俺の事は気にせず、おっさんは話続ける。
「あのまま放置していたら、君は冷たい土の中だったはずだ。それを我々が助けたのだ。君は我々に協力する義務があるのだ」
……うーん、俺に選択肢無いじゃないか。
「────どうか頼む。こんな事は言いたくなかったが、我々には君の力が必要なのだ……」
うーん、こんな時に細かいことを指摘するようだけど、『こんな事言いたくなかったが』のタイミングおかしくね?
おかしいよな?
俺の力が必要だ……って頭下げる様な事言いたくなかったみたいに聞こえね?
そう聞こえね?
おっさんの顔がドヤ顔に見えるのも、そう言う印象を与える要因にはなってると思う。
誰だ、こんな奴を交渉の場に連れてきた奴は!?
───責任者呼べ、責任者!
はぁ………でも、俺の敗けだな。
俺は自慢じゃないが、今就活中の立場で金がない。
バイトで生計を立てている身だ。
………ちなみにもう卒業後、二年も就活しているというのは内緒だ。
やっぱり原付免許しか資格がないというのが良くないよな。
………ってことで、観念しておっさんの言うとおりにするしかないなと結論に至った。
「わかったよ、観念した!だが名乗りについては少し考えさせてくれ!すぐには決められない」
おっさんはにっこりと笑い、ハグしようと俺の腕を引き寄せようとしたが、俺は冷たく腕を振り払った。
───心は許しても身体は許してないんだからねっ!
………俺、ツンデレかっ!
おっさんが言うには事故から一週間経っているらしい。一週間でぐちゃぐちゃな死体を生き返らして元に戻すなんて、ある意味すげぇ。
そりゃ世間一般には秘密にしなきゃいかんわな。
誰も死なない世の中はある意味ホラーだぜ。
ちなみに俺が死んだことは、警察が来る前に死体回収して、事故の痕跡消して、死体は生き返らせて治療しちゃったから、俺が一度死んだって事は組織の人間以外は誰も知らない。だから、ちゃんと戸籍とかはそのまま残ってるんだって。
───普通の生活に戻れるね、良かった………って十分犯罪じゃねーか!!
………色々あって疲れたよ。
もう、そんなのどうでもいいや。
ただバイトはきっとクビだろうなー。
一週間無断欠勤だもんな。
そして僕は途方に暮れた。