第55話 言わぬが花知らぬが仏の件
「…………」
「……」
────話題がない。
「────テ、テレビでもみるか?」
なんか挙動不審だぜ、俺。
────結局返事がないからテレビはつけないで俺は窓辺に移動した。
「────何も聞かないんですね」
「───聞かないって何を?」
「───外の人達の事とか、私の事」
ラーメンを食べたときとはうって代わって深刻な表情。
「────別にどうでもいいよ。言いたけりゃ言えば良いしって感じだな。匿ってやる位しか出来ないし、聞いたところで俺の行動は変わらないだろうしな」
───これは本心。
なんかあったとしても自然と助けてしまう感じだな。
────なんだろうね、うちの上司には周りが引くくらい厳しく当たるのにな。
窓の外を見ながら眼下の男の髪の毛を毟るジェスチャーを無意識に続ける。
ぶーちぶーち、ぶちぶち。
────あ、なんか落ち着く。
人の不幸は蜜の味って言うけど、実際アイツの髪の毛が抜けるのを想像しただけでオラ、ワクワクすっぞ。
ストレス解消になかなかいい。
あの透明なプチプチ潰してるよりエコだしな。
うちの家系は薄毛らしいから、きっと将来俺も抜けると思うからさ、俺より少し先にあっち側で待っててくれよ。
Hasta la vista, baby.
そんな事を思いながら暗くなった外を見ていた。
「────みんな私の事を見てるんじゃなくて、私の家の財産を見てるんです」
突然のカミングアウト。
「みんな少し前までは姉に求婚してたんです。それが姉が失踪したら今度は私の所に…………」
───俺ぽかーん。
────俺にそれを聞いてどうしろと?
「………………………」
「───男の人ってそんな簡単に求婚の相手を変えるとか出きるんですか?男の人って皆そうなんですか!?」
「──────知らん」
「え?」
「────わからん!」
「そうですよね…………すみません、初対面なのに、何でこんなこと言っちゃったんでしょうかね………おかしいですよね………ごめんなさい」
「────俺はあんたの姉さんの事や下にゾロゾロいるお前さんへの求婚者のことは知らんからな、どういう事情で鞍替えしたのかもわからんのに何も言えんよ」
「─────そうですよね、ごめんなさい………」
「───だけどな、いただきますを笑顔で言えるだけで魅力的に見えることだって有るんだよ」
「────?」
「─────初対面の俺がそう思うくらいなんだからな、他の奴らだってわからんよ」
「────それってどういう………?」
────説明させんなよ、察してくれ!
───は、恥ずかしいぜ。
ヤバイ、走馬灯のトップ入れ替わったかも。
ヤバイヤバイ、なんか勘違い野郎の告白みたいになってんじゃん!!
────俺は真っ赤になった顔を見られないようにガラス窓に顔をつけた。
「────お、また警察が来たみたいだぞ。誰かまた通報したのかな。チェックインのチャンスかも知れないぞ」
程なくして男達は警察に解散させられた。
それを見届けて顔面の主をフロントまで送り届けた。
俺はあれから恥ずかしくてずっと彼女の顔をみれなかったし、向こうも一言も声を発しなかった。
───フロントまで送り届けると俺は逃げる様に自分の部屋に戻ったのだった。
俺はそんなラブコメみたいな状況だったが、実はその時大事件が起こっていたのだった────。




