第53話 スタンダードすらわからない件
まさかカップラーメンを食べたことない日本人が本当に存在するとは………。
というか、こいつにカップラーメン食べさせる事で後で「うちの娘になんてものを食べさせたんだ!?今までカップラーメンなんてジャンクで体に悪い食べ物を食べさせたことなかったのに!死刑だ!裁判だ!訴えてやる!」
────なんて、親が怒鳴り込んでくるとか無いよな!?
「───ラーメン食べたことないって親に禁止されてたのか?」
ちょっと事前に聞いておくことにしよう。
────死刑(?)は困るからな。
「いえ、禁止とかされたわけではないんですが、いつもお手伝いさんがちゃんと美味しいご飯を作ってくれていたので、カップラーメンとか食べる機会がなかったんです。………せっかく毎日ご飯を作ってくれるのに、別のものを食べたいとか言い出せなかったんです」
出たぞ、また"ニュー俺に馴染みないが無いワード"!!
そう、お手伝いだなんて、テレビでしかみたことない奴な!
お手伝いって都市伝説じゃなかったんだな!
お手伝いがいるってすげえな。
まぁ深く突っ込み入れないでおこう。
───きっと悲しくなるだけだ。
でもまぁカップラーメン食わせても死刑にはならなくて済みそうだ。
「お湯沸かしているうちに蓋とかあけて準備しときな!」
「はい!」
ニコニコしながら蓋を開け始める。
「────ま、待て!!」
………遅かった。
ラーメンの蓋を全部開けちまいやがった………。
「良くみろよ、蓋にここまで開けるって書いてあるだろ───」
「────え!?じゃぁこのカップラーメン食べられなくなっちゃったんですか!?」
目を潤ませ絶望的な表情を浮かべる。
「いや、食えない事はないけどな、正しい作り方しないとホントに美味しい状態で食べられないかも知れないからな。───まぁ俺がちゃんと教えなかったのが悪いからな、こっちを食べな」
新しいカップラーメンを渡したらものすごい嬉しそうにラーメンと俺の顔を交互に見る顔面の主。
「今度はちゃんと蓋に書いてある線まで開けるんだぞ」
「───はい!」
顔面の主は恐る恐るゆっくり蓋を開けはじめた。
「そこまで慎重になる必要はないだろ」
自然と笑いが込み上げる。
────免許取れる年齢のくせして子供みたいだ。
そうこうしているうちにお湯が沸いたので、俺のと顔面の主のラーメンにお湯を注いでやった。
「────三分だ!三分経ったら蓋を開けていただきますだ!」
「はい!」
たかがカップラーメンだがなんか師弟関係のようだな。
すらっとした細い腕に巻かれた腕時計をじっと見る顔面の主。
───さりげなくつけてるけど、あれ多分めちゃくちゃ高い時計だぞ。
ムーンフェイズ付いてる時計ってだけでなんか高そうに見えるけど、俺知ってるぞ、あれ、世界三大高級時計メーカーって言われてるとこの奴だ。
こんなとこでも貧富の差を思い知らされるとは。
まぁ、世の中そんなもんか。
諸君!上をみたらキリがないんだぜ。
────今の自分を楽しむのが一番さ。
「───悪いが俺は一足先にいただくぜ」
そう言って俺はラーメンをズルズルとすする。
「え!まだ三分経ってないですよ!?」
「俺はカップラーメンの麺はちょっと硬めが好きなのさ」
「───そ、そう言うのもアリなんですか??」
「───ラーメンにも好みがあるからな。───おっと、そっちもそろそろ三分経つんじゃないか?」
「────あ、ちょうど三分です!」
嬉しそうに蓋を開けて匂いを嗅ぐ顔面の主。
「───すごいなぁ!美味しそうだなぁ!」
目を輝かせてラーメンを見つめる顔面の主。
「ほら、早く食べないと麺が伸びてしまうぞ」
「はい!」
顔面の主は割りばしを割ってから、いただきますとしっかり手を合わせてラーメンを食べはじめた。
きちんといただきますをするとは、ホントに育ちがいいんだな。
────おれが適当だから感心するよ。
「美味しい!」
その瞬間、笑顔の周りに花が咲いたようだった。




