第35話 世界で一番悲しい敵の件
「………現実的には"エアコンのかけ始めの匂いがご飯からする呪い"と、"おっさんのヅラがアフロになる呪い"についてはリスクも少なく、実現可能ってことだな」
俺はノートにチェックをしていく。
アフロはヅラを最初からアフロにすり替える案と、体温でヅラの毛が反応してちぢれていく案と2パターンあり、どちらも捨てがたい。
「ご飯からエアコンのかけ初めの匂いがする件にかんしては、実現性はあるがどうも倫理的な部分は引っ掛かる」
───ご飯を粗末にしてはいけないのだ。
何せお米には七人の神様が宿ってるからな。
これに関してはおっさん達の鼻の方への細工で実現性を再検討してもらいたい。
「最後に"毎回入室のと退室のセキュリティチェックにパンツの色の自己申告をしないと扉が開かなくなる呪い"に関しては一分一秒を争う中でパンツの色でタイムロスは如何なものかとの事だが………これは現実的には難しいのは前述の通りだと認めよう。ただ、何か次は対案を考えてきてほしい。否定だけでなく、次のステップに向けた提案────私は諸君に未来を見据えた意見を期待している」
バンバン、と机を叩く。
俺なりのパフォーマンスだ。
やんややんやとアイちゃんゴンちゃんが喝采を俺に向ける。
「まぁまぁ、拍手はそれくらいにしておいてくれたまえ」
「それでは解散!」
────有意義な会議であった。
皆さんはお気付きだろうか?
議題が司令塔での嫌がらせ───ゴホンゴホン、司令塔での何らかの怪異現象の実現性に変わっていた事実を。
────そう、議題が移ったと言うことは、俺の変身について何らかの進展が有ったと言うことだ。
ふふふ。
そうなのだよ。交渉に進展は有ったのだよ。
遠くの愛より近くのAI。
俺たち三人(生命体は一人)心が通じあってるね!
論理的思考のAIと気持ちが通じたって事は、愛とは非論理的なのだ。
そんな非論理的なものを、もてはやす世の中がどうかしてるのだ。
そう、どうかしてるゼ!
───だから、俺は愛などいらぬ!!
強がりじゃないぞ。違うんだぞ。
………でも何故だろう、言っててなにか心が苦しいぞ。
心が涙を流している気がする。
─────仕方ない、俺の心が涙を流した分はおっさん達に血の涙を流してもらおう。
───本題に戻るが、今回変更するに当たっての条件は
1.変身の際の掛け声は日常会話で使わない言葉であること。
2.音声認識だけでは万が一があるため、ベルトへのアクションを追加すること。
3.変身の際の掛け声を簡素化する代わり、変身後の名乗りはアイちゃんの琴線に引っ掛かるものを心掛けること。
4.名乗りは基本的には同じ名乗りを繰り返し使わないこと。只し、アイちゃんのリクエストがあった場合、また、俺の記憶力に配慮し、前回から半年以上経った場合はこの限りではない。
5.万が一、名乗りのおかげで問題が発生した場合は全力でゴンちゃんがフォローを入れる
………とした。
ちなみに、以上を踏まえての今回の俺が提案した変更点は、変身の際、俺が「T.O.F.U.変身!(てぃーおーえふゆー、へんしん!)」と発声して、どちらかの腕をベルト付近に近付けた後離す。
それで、アドリブとかで「とうっ!」てジャンプのんかしたあと、名乗るわけだ。
簡単に前後比較を説明しよう!
~現在~
────名乗り→変身→~重苦しい空気~→心が渇いてしまう
~これから~
変身の掛け声+カッコいいポーズ→変身→名乗り→~微妙な空気~→みんなで盛り上げようという思い
こんな感じだろうか。
なに?聞いても理解できない?
それはしかたない。────俺も説明出来ないのだから。
まぁ、俺としては今回の結果については、次に繋がる一歩として及第点を与えてもいいと思っている。
アイちゃんの琴線に触れる名乗りを毎回考えるのは中々きついかもしれないが、寒いギャグだとわかっていても、それをいい続けなきゃいけない芸人さんをテレビで見ていて辛くなる時がある。
やっている本人だってキツイはずだ。
それと同じと考えたら、毎回考えるのなんてナンクルナイサー。
マンネリは進歩を捨てて、現状に満足してしまっている状態と言うのも俺は気に入らない。
───仲のいいカップルの一番の敵だってマンネリだって言うからな。
────だが、俺は仲のいいカップルがマンネリよりも気に入らないけどな。




