第2話 気がついたらふざけた病室にいた件
「──────牛丼!!!!」
気がついた時の俺の第一声だった。
───牛丼を探して辺りを見渡す。
なんか病室のベッドに寝かされているみたいだ。
わかったことは、とりあえずここに牛丼は無いみたいだ。
─────俺の牛丼は何処だ!?
牛丼を探すために動こうとしたが、身体がベッドに固定されていて動かせない。
しかもよく見ると身体中になんか線とか管がいっぱい繋がっている。
そこでさっきの事を思い出した。
「───は、恥ずかしくて死にたい……」
先程の走馬灯が脳裏をよぎる。
どうしてこの状況で思い出すのがさっきの走馬灯なんだよ、俺。
今まで記憶の奥底にしまいこんで思い出す事もなかったくせして、なんでこの状況でまた嫌な事思い出すんだよ。
───もうちょい他に思い出すことあるだろ、俺。
気を取り直して自分で自分にツッコミを入れる。
……ふぅ、なんとか現実に戻ってきたぞ。
グッバイ、小学生の頃の俺。
───俺は今から前を向いて生きることにするぜ。
状況をもう一度確認してみると、かろうじて頭を横に動かせるし、左腕の上腕はベッドにベルトで固定されているけど、点滴とかの菅が繋がっていないみたいで少しは左手も動かすことはできそうだ。
「……事故にあったけどどうにか助かったみたいだ。どんな事故だったのかな。結構吹っ飛ばされた気がしてたけど、意外と痛みはないもんなんだな」
そんなことをぶつぶつ言いながら左手の辺りを見ると、左手の所にナースコールらしきボタンがあった。
ボタンは押すためにある!
美人の看護師さんカモン!
────俺はボタンを押してみた。
────カシャ
どこかで何かの音がした。
でもこれでナースステーションでコール音が鳴ってるはずだ。
これで美人の看護師さん(希望)が来てくれるはずだ。
しばらく待ってみる。
「………」
「……………」
「…………………」
「……………………来ないな」
もう一度ナースコールのボタンを押してみる。
「カシャ」
───またあの音だ。
音のした方に顔を向ける。
そこには三脚にセットされたカメラが有った。
────ボタンを押してみる。
「カシャ」
────連写してみる。
「カシャ カシャ カシャ カシャ………」
ナースコールのボタンの辺りをよく見る。
汚ったない手書きで『push only photo』と書いてある。
「誰がこの状況で自撮りしたいと思うんじゃー!?」
その下にまた汚ったない字で
『1shooting 15りら』
「金取るんかーい!!」
俺は可動域の少ない左腕でナースコールのボタンを床に叩きつけた。