第17話 第一司令室にて……の件
─────今正座しています。
おっさんをからかいすぎて泣かせてしまった事で、K子さんにお説教されてしまった。
うん、反省してるよ。
───ニコちゃんはもういぢめないよぅ。
そうそう、おっさんの本名はニコラって言うんだって。
おっさんはおばばに『ニコちゃん』の愛称で物凄く可愛いがられていて、おっさんも物凄くおばばを大事にしてるんだと。
この辺は見習うべきだね。
────特に俺のような人種はね。
自分の事が一番可愛いっていうのは、根性が曲がってるというより、貧しいね。
お年寄りは大事にしないとな。
お年玉貰う時だけ大事にしたって駄目だぜ。
とりあえず、俺は今度お豆腐は、おばばの所で買うことにするぜ。
ここなら母さんの実家も近いしな。
買ってから、母さんの実家にお届けなんかもしちゃうつもりだぜ。
───そんでご飯なんか頂いて帰るぜ。
三丁目の豆腐一丁で一石二鳥、いや一石三鳥だぜ。
───あ、俺うまいこと言ったぞ。
───将来ラッパーになったらこの韻を踏むぜ。
───でも、ラッパーになんかならないけどyo!
………でも、おばばがいる時限定で、おっさんが店番の時はスーパーで買うぜ。
────これは豆腐に関する抱負だyo!
………そんな感じで俺は説教の間の苦痛を、韻を踏みながら乗り切ったぜ。
お説教が終わって、正座崩した時のあの解放感!
ああ、俺って小指の先まで生きてたんだ!って感激したね。
────i'm free!!
でも、その直後足がビリビリ痺れてきた。
────うん、自由には痛みが伴うもんだ。
………てわけで、触るなよ!今俺に触るなよ!これは振りじゃないからな!
───俺は周囲360°を警戒した。
俺以外の二人を見ると、二人共ビリビリしていた。
あんたらは正座しなきゃ良かったのに。
………バカなの?それとも天然?
そんなこんなで、おっさんの手を止めちゃったから、品出しをちょっと手伝って、その後俺は奥の部屋に案内された。
ファンヒーターと扇風機が同居する8畳の畳敷き。
───神棚もあるぜ。
「ここが第一司令室だよ」
おっさんはここが第一司令室だという。
………え?ここが?………まじで?
───第二司令室と違い過ぎるじゃん!
「ここは立地条件が凄く良いんだ」
まさが、自宅だからとかの職権乱用じゃないだろうな?
───俺はまだあんたの事を、信用したわけじゃないぜ。
「まず、ここは幹線道路から少し入った所で、しかも鉄道の高架が邪魔して、遠くから諜報活動するポイントがない。しかも、この辺は地元の人しか通りを歩いてない。つまり、スパイなどの不審者がこの近辺をうろつくと、すぐにわかるって事だ」
───確かにそうだな。
道を歩けば全員知り合い、周りの奴らは大体友達って感じだ。
「また、電波状況が非常に悪くて盗聴の危険が少ない………要するにスパイ活動をしにくい立地条件なんだ」
………ふーん、でも電波が入らないって日常困りそうだけど………?
「確かにスマホの電波は入りにくいけど、この辺の家は固定電話有るし、必要ならWi-Fi有るからね」
────まぁ、言われてみたら、そんな不便はないかもな。
「我々の持つ未知のテクノロジーは、どんな国際機関にも秘密なのだ」
「───協力はするが、技術提供はしない。そう言う条件で各国とも話をつけている。それでも諦めの悪い国際機関もあるがね………」
K子さんがお茶を入れてくれたんで、遠慮なくテーブルの上のお煎餅にも手を伸ばす。
お、こりゃうまいお煎餅だな。
流石はお年寄りの同居する家は、煎餅のチョイスがいいね!
─────バリバリ………ずずず────………
しばし、おやつタイム。
「それでは本題だ。我々が何と戦っているか?それを説明しよう」
お、とうとう本題だ。
待ってました!
「────君はパイオニア計画とボイジャー計画と言うのを知っているかい?」
「────パイオツ計画とボインじゃー計画?」
なんだ?初めて聞く計画だぜ。
───おっさん、K子さんの前でセクハラか?
「─────知らんのか」
おっさん呆れ顔。
「────自慢じゃないがパイオツもボインも縁がないんでな」
チラッとK子さんを見たけど、うつむいてて表情見えないぜ。
ほら、おっさん、セクハラ認定だぜ。
「パイオニア計画もボイジャー計画も、アメリカの宇宙計画の中の一つだ」
「アメリカの宇宙計画?────アポロ計画とかみたいな?」
「そうそう!それ!我々のこの技術も、敵との遭遇もこの二つの計画に端を発するのだ」
ずずず────………
おっさんお茶を啜る。
「アメリカの様々な宇宙計画の中でも、パイオニア10号と11号、ボイジャー1号と2号これらに共通することがある」
ずずず────………
またもや、おっさんお茶を啜る。
「SETI───地球外知的生命体探査の略だが、この4機の探査船はこの計画に関わる、重要な物を積んでいたのだ」
バリバリ……
おっさん、百歩譲ってお茶はいいとしても、大事な話の最中に煎餅はどうかと思うぜ?
まぁ、そっちがその気なら、俺も食うけど。
バリバリ………。
────うん、うまいね。
「パイオニアには金属板、ボイジャーにはゴールドレコードと言うものが積まれていたのだが、それは知っているかい?」
「なに、その金属板とかゴールドレコードって?」
「パイオニアの金属板には、人類からのメッセージとして、地球の位置や人間の男女などの記号が画かれていたのだが、ボイジャーのレコードはそれよりもさらに進化して、55か国語の言語による挨拶や画像、音声なども入っていたんだ」
「────何のために?」
「うーん、まぁ色々有るだろうが………一番は人類の知的好奇心だろうね。これは私も人類の素晴らしい特性の一つだと思うよ」
「───だが、好奇心は時に苦難を招くこともあるんだよ。エデンの園の禁断の果実やパンドラの箱の様にね」
────なんかどんどん難しくなってきたぞ。
そういえば、何の話してたんだっけ?
………まずいぞ、ボインの件しか思い浮かばねぇ。
まぁ、とりあえず、わかっている振りをしておこう。
「────実は、公表されていないが、太陽系外を目指した探査機の内、パイオニア10号とボイジャー1号が知的生命体と接触したのだ」
────え?それすごくね?
話についていくの諦めてたとこだったけど思い出した!
敵の存在について教えてもらってたんだっけ。
「そのパイオニア10号の金属板に接触したのが、我々の組織の元になった地球外生命体国家群に所属する星、仮にα星と呼ぼうか」
「こちらは友好的にネットワークを拡げていった、宇宙の複数の星々からなる星間国家だ」
────ほほう、と言うことは、俺はこの星間国家のテクノロジーとやらで生き返ったと言うことか。
「────問題はボイジャー1号に積まれたゴールドレコードの行方だ」
────おっさんがノリノリになってきた。
うーん、年末の音楽賞を誰が受賞するのか?みたいな言い方だが、まぁそこは気にしないでおこう。
「こちらは、ならず者国家として有名なβ星が手に入れてしまったのだ。
…………地球は狙われている!!」
────ほほう、それでそれで?
なんか俺とおっさんの温度差が凄いな。
「我々が対立する悪の組織『G-バースト団』は、β星の地球での出先機関なのだ!」
おっさんが今までで一番大きな声で力説した。
────だが、俺には伝わらなかった!!
「………Gのバスト??」
さっきからボインだのバストだの、おっさんは一体どんだけK子さんにセクハラかますんだよ。
………そう思いながら、K子さんの方を見る。
「ち、違います!gamma-ray burst!ガ・ン・マ・せ・ん・バースト!極超新星の爆発によって起こる現象から取ったネーミングだと思われます!」
───K子さん、真っ赤になってら。
あれ?なんか俺のせいになってね?
………不本意だ。断固抗議する。
「因みに、こっちにはなんか名前ないの?」
「Telecommunication /遠距離通信」
「odyssey /知的探求」
「Foundation /財団法人」
「United universe /団結する宇宙」
「────T.O.F.U!!略してトウフだ!」
「……………」
「…………ダサ」
「ダサいっていうな!正式な団体名なんだぞ!」
顔を赤くして抗議するおっさん。
「…………………英語出来ないくせに」
俺は、またおっさんを泣かしてしまったのだった。
はい、やっとこさ敵の組織とかの話が出てきました。
長かったですね。
はい、私が暴走するのが悪いんです。
あ、そうそう!
指令室→司令室の間違いです。
以前のものは気が向いたときに直しますです。はい。
次のお話はサ◯エさん見ながら読める時間を目指します。んがくっく。