第15話 お留守番AIの件
今度はちゃんと男物の服を用意してくれた。
白いチノパンに青いブルゾン。
これはやっぱ俺がブルーだから、青を強調するようなカラーのチョイスなんだろうか。
うーん、俺の今までの趣味とは大分離れてるわー。
青!原色!攻めてるなー。
差し色に青が入った白いスニーカーに黒いシャツ。
あまりこういう感じの服を着たこと無かったな。
と、言うわけで着替えて更衣室を出たらK子さんが待ってた。
「……………」
────気、気まずい。
「あ、あの………」
「さっきは色々失礼しました!」
───K子さんが何か言おうとしたが、先手必勝!被せて謝ったぜ。
こう言うのは先に謝ったもん勝ちだと思っている。
…………普通の相手にはね。
例えばおっさんみたいな変質者相手なら、俺は何がなんでも謝らないね。
変質者に頭を下げるって事は変質者を認めるって事だよな?
だから、変質者に謝っちゃったら自分も変質者になるんだからねっ!
─────でも、これは俺が今適当に考えた持論だから、良い子は真似すんなよなっ!
きっと俺も多分明日には忘れてる、どうでも良い持論だぜ。
「いえ、こちらこそ、私のミスで嫌な思いをさせてしまいました………」
────ほら、普通の人ならちゃんと歩み寄ってくれるんだよ。
「いえいえ、嫌な思いだなんて………むしろご褒美……ゴホンゴホン、いやお気になさらずに!」
───ヤバイヤバイ、初対面でセクハラかましちゃうところだったぜ。
もう少しで世界の俺の変質者ランキングが4096位くらい上がってしまうところだった。
………ふぅ、気を付けないとおっさんと同じ土俵に上がってしまうぜ。
────俺は心の中で額の汗を拭った。
「着替えたら第一指令室まで来るように、との事でしたので……ご案内します」
「……でもまだマナ・B君戻ってきてないから、K子さんまでここを離れると誰も居なくなっちゃいますよ?」
流石にさっきみたいに警報鳴った時に無人はまずいよなぁ………。
そう思ってK子さんに進言してみる。
俺としてはK子さんみたいな人と密室………いゃ、エレベーターで二人っきりというのも惹かれるけどな。
────ああ、なんかこれ変質者の思考じゃね?
おっさんから変質者成分伝染った?
────それはまずい!
『NO!変質者 YES!ハードボイルド!!』
───これをキャッチコピーにして、とりあえずなんとなく今日を生きるぜ。
そんなバカな事を考えていると(一応自覚はある)K子さんは俺にウィンクをかます。
────破壊力有りすぎ。
「その辺は心配ご無用です。ここは無人でも大丈夫なんです。AIが物凄く優秀なんです。仮想人格を起動しておけば、AIで判断つかない時はスマホに電話やメールが来ますから!」
────AIがスマホに仕事の相談で電話かけてくんの??
なんか想定外だけどすげぇ………。
「アイちゃん、ゴンサレス君、留守番お願いね!」
────K子さんがそう言うと、前面大型モニターに女の子と、なんか熊とも犬とも言えない微妙な獣が出現した。
「わかったよー!」
「なんだよ、自分達だけ出かけんのかよ」
女の子はアニメ声で、獣はダミ声のおっさんだ。
「このかわいい女の子がアイちゃん、このモフモフがゴンサレス君。二人は全く別の人格で、違う目線で物事を判断する優秀なAIなんです。ネットの情報でも学習するけど、基地内の公共場所にあるカメラやマイクから拾う情報でも成長していくのが特徴なんです。二人の意見は同じ時もあるけれど、バラバラの事が多くて………。最終審議は私達が行うのだけど、私達が居ない場合は、もう一つの人格を持たないAIが選択するの。前例が有ったり、最善策が導き出されたらそれを勝手に実行、判断出来なければアイちゃんやゴンサレス君に差し戻して……て繰り返して、何回やっても結論が出なくて、最終的にゴンサレス君が飽きたら、私達に電話してくるパターンになってます。そうやってどんどん情報を蓄積させていってるので、かなり安定した判断をしてくれてますよ」
ふ~ん、凄く考えられたるんだなぁ………。
「………ところで、ゴンサレス君のモチーフは何の動物なの?」
K子さんのウンチクより、そっちの方が気になっていた。
そんな俺の問いにゴンサレスくんが反応した。
「───気安く俺を見んなや、デコスケ野郎!」
これきっと俺がさっきおっさんに言った奴だ!
すげぇ!俺の事を真似してる!
俺、ゴンサレス君の事、気に入っちゃったよ!
そのままじゃなくて、ちょっとアレンジしてるし!
───すげぇ!ゴンサレス君、出きる子!!
「───ゴンサレス君!何!?その言い方!?」
アイちゃんが俺の事を庇ってくれる。
ああ、この子もすげぇ良い子や………。
思わず飴玉とかお小遣いあげたくなるぜ。
───AIじゃ何かあげても、お賽銭やお供えみたいになっちやうから、やんないけどな。
そんな中で────
「ゴンサレス君、デコスケ野郎ってのはもう少しおでこの広い奴に言った方が効果的だぞ!」
俺はゴンサレス君にアドバイスする。
「………そ、そうなのか、次から気を付ける」
───ゴンサレス君、なかなか見込みがあるな。
君の成長が楽しみだよ。
「ブ、ブルー………あ、あまりゴンサレス君に変なこと教えないで下さい………」
K子さんに袖口を引っ張られる。
あ、なんかキューンと来た。
甘酸っぱいなんかが、キューンと来た。
ヤバイ、ここに長くいると萌え死するかも。
────早く場所変えなきゃ。
「そんじゃまたな!二人とも!帰ってくるまで良い子に留守番してんだぞ!?帰ってきたらまた相手してやっから!」
「はーい!」
「お、おぅ!」
────さぁ、エレベーターで第一指令室とやらに案内して貰いましょうか。
次のお話くらいにはきっと敵の正体判明する予定です。
あくまで、予定です。
あと次の更新はきっと日付が変わってからでーす。
これから私がノー◯イドゲームを一気見するからでーす。
そんなかんじで感想お待ちしております。
ではまた!バイチャ!