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戦隊モノの青にされたけど俺以外は敵に寝返った件  作者: 観音寺 和
たった一人の戦隊ヒーローの冒険
104/208

第104話 謎の食物ル◯ーブの件(アエテ名ヲ秘ス)

霧が濃くてわからなかったが、実は俺達が分け入った林はそんなに深い林ではなく、すぐに低木と草原に変わり、少し歩くうちに小道に出て比較的歩きやすくなった。


「────なんか脱出出来そうな気がしますね!」

「────まだ気は抜けないけど、さっきのマジックの伝言とかおっさんの落書きのガードレールはもう見たくないね」


「────あれ?なんか話し声聞こえません?」

「────あ、確かに聞こえる!やった!俺達脱出出来たのかも!」

────俺達は早足で声のする方へ向かった。


「────あ、池?───いや、かなり大きいな?湖?」

─────相変わらずの霧だったが、大きな湖の外周に作られたアスファルト舗装された道路に出た。

「────声はあっちからしますね!」

俺達は久眠の指差す方へ向かって早足で向かった。


────少し歩くと、湖の畔に年配の女性達が何やら集まっているのをみつけた。

オレたちは誘われるようにそこに近寄っていった。


────第一村人(?)発見!

湖畔に簡単な骨組みにビニールシートをかけた簡易テントの様なところで、おばさん達がお茶をのみながら談笑していた。


「───おやおや、こんなところに若者とは珍しいね。一体どうしたんだい?」

俺達に気づいた一人が声をかけてきた。


「────いや~道に迷ってしまって………」

「────それはそれは。お茶でも飲んで行くかね?」

「────あ、ありがとうございます」

「────こんなところに何しに来たんだい?」

「────店のお客様に頼まれた花を買い付けに来たんですが、道に迷ってしまって………」

「────花?この辺りで花なんか作ってる農家とか有ったかね?───佐藤さん知っとる?」

「────(やしろ)のとこの山田さんちがチューリップの球根やってたんじゃなかったっけね?」

「────お嬢さん、買い付けようとしてたのはチューリップかえ?」

「いえ、チューリップではないんですが………」

「────じゃあなに?急ぎなら婦人会の連絡網で聞いてあげるけど………」

「────紫苑(しおん)って花なんですけど………」

「────あぁ?紫苑?あんなの秋の花じゃないけ?そりゃ今買おうとしてもどこにもないわ」

「────紫苑は秋になると湖のあっち側にいっぱい咲きよるけどなぁ!」

「────今の時期だと勿忘草(わすれなぐさ)が咲きよるよ、あの辺は」

「────勿忘草はもう終わりの時期やったんと違う?」

「────いやいや、この辺はまだまだ時期は長いからね」

おばちゃん達の花談義がめちゃくちゃ盛り上がっとる。

「───実は勿忘草は今日作った花束にも少し使ってましたよ!あの、水色とピンクの………」

「────あぁ!あれ?あれ色違うのに同じ種類なんだ?」

「────男の人はお花はあまり興味無いですよね?」

「────でも、きれいなものは、きれいだと思うぞ。勿忘草って初めて見たけど………うん、いいね、気に入ったよ。………覚えた!」

これで俺の知ってる花は向日葵(ひまわり)、朝顔、チューリップ、パンジー、勿忘草で五種類になったぞ!


「────とりあえず紫苑も勿忘草も湖の反対行けば好きなだけ持っていけるよ!今は紫苑は咲いてないかもだけど、どこかに植えておけば秋には咲くから好きなだけ持っていけば?誰の土地でもないから文句は言われないよ」


「────とりあえず、お言葉に甘えて取りに行ってみるか?」

「────そうですね、最悪それを持っていって………」

「────とりあえずお茶のお礼言ってから、その咲いてるとこ行ってみるか」

「───そうですね!」


「────ところで皆さんここで何してるんですか?」


「───私達はね、ここであるものを売るようにいいつけられてここにいるんだよ。婦人部で毎週持ち回りでね、今週は私らなのさ」


「────何を売っているんですか?」

俺が訪ねると、おばさん達は少し眉間にシワを寄せて、目配せした後小さな声でゆっくりとこう言った。


「───────ルバーブ」


「─────え?聞こえなかったです!」


「───────ルバーブ」


「───ルバーブ?初めて聞くものですね。それは一体何なのですか?」


俺の質問におばさん達は顔を見合わせたのち、こう言った。

「この辺の村起こしで特産品にしようとしているものだよ」


「────そうなのか。どんな物があるの?」


「ジュースとジャムだね・・・・・」

「─────それではそれ買おうかな?」

俺は財布からお金を出してルバーブジュースとジャムを買おうとした。

お茶をご馳走になったし、おばさん達のお陰で張り詰めてた緊張が和らいだしね。

あとはアオマルがどうなったか確認して、場合によって助けに行けばいい。

だからお礼に売上に貢献しようと思ったのだ。


「────やめておいた方がいいよ」

俺の思いとは裏腹に、おばさん達はルバーブ製品は買うなと言った。


「────売り物じゃないんですか?」

言われて、はいそうですかってのも癪に障る。

「───いや、ちゃんと売っているよ」


「なら、なんで俺には売ってくれないんですか?」


「────味がね・・・・」


「────味?一体どんな味なんですか?」


────売り物だと言うのに売ってくれない商品に、俺は次第に興味が湧いてきた。


「────味はねぇ・・・酸味があって・・・」

「────酸味?酸っぱいのですか?

「─────酸っぱいと言っても、レモンとか・・・」

───おばさんは言葉を濁す。


「─────レモンとかみたいな柑橘系なんですか?」


「う────ん、レモンとかみたいな酸っぱさではないねぇ・・・」


「───じゃあ、どんな酸っぱさなんですか!?」


「────草の酸っぱさ。」


「────草なんですか?」


「草だね」


「────どんな草なんですか?」


「うーん、勝手にほっとくと増える草だね・・・」

「―――その辺にいっぱい生えてるね」

「―――――雑草」

その後はおばさん達は俺の質問にまともに答えようとはしなかった。

「―――雑草と言えば除草剤買わないと」

「―――うちの旦那のスネ毛も除草剤効くかね?」

「―――除草剤効いたらスカートでも履かせて女装でもさせるんけ?」

「それじゃじょそう剤(・・・・・)の漢字を女の装いって漢字に変えないとだね」

「―――でも佐藤さんとこの旦那の女装は見たくないね」

「―――三日三晩食欲無くなりそうだね」

――――内輪ネタで爆笑するおばさん達。

────なんとか俺には買わせないように話題を逸らそうとするな。


──そんなにやましい(いかがわしい?)何かがそのルバーブにあると言うのか。

────そうなるとそれは、絶対おっさんに食わせなけりゃいかんな。

――――こうなりゃ、しつこく売ってくれと交渉するか。


「───試食とかそう言うのはないんですか?」

「────ホントにやめた方がいいよ!」

「────ホントに美味しくないから。若い人には絶対勧められないよ。どっちかって言うと健康食品的な意味合いが強いし………でも健康になるかどうかも………」

「若い人がこんなのにお金使うの勿体ない………」

「────そっちの佐々木さんなんか食べもしないで売ってるしね」

「────作ってる時の匂いでもう食べなくてもいいやって思ったのよ」

「婦人会で交代で売り子させられてるけどね、村起こしって言ってもこんなの売って、なんかお客さん騙してるみたいでねぇ………」


売ってくれとお願いすればするだけ、売り子のおばさん達の表情が暗くなり、空気が重くなる。


「────私は本当はこんなもの売りたくないよ!」

「────どうしてこんなもので村起こししようと………」

────更に澱む空気。


「────後で文句とか絶対言わないから、これで売ってくれませんか?」

そう言って千円札を出す。


「────?」

おばさん達が顔を見合わせる。

「────外国のお金じゃあ流石に駄目だよ」

「────え?」

「────日本のお金、持ってない?ほらこんなの……」

おばさんが俺に自分の財布から千円札を出して見せた。

─────俺はそれを見て驚いた。

その札には緑がかったインクで肖像画が描かれていて………


―――それは伊藤博文の描かれた昔の千円札だった。


─────おいおい、一体どう言うことだ?

あんなの俺が生まれるよりずっと前に変わった図柄だぞ??

古銭とか集めた事あるから知ってるが、あんなのその辺のおばさんが財布に普通にいれてるもんじゃないぞ………さっきちらっと見たけど、財布にはまだ何枚か同じ柄の千円が有ったようだ。


「────あ、すみません、財布間違えて持ってきたみたいだ………ルバーブは興味あるのでまた出直します!」


「────買わないんですか?」

────首を傾げる久眠。

「────なんか様子がおかしい。あのおばさんが見せてくれたの、凄く昔のお金だ。あんなお金持ってないよ」

────小声で久眠に話す。

久眠は鳩が豆鉄砲食らったようにきょとんとしている。

─────頼む、空気呼んで話を合わせてくれ。


「─────私、あれと同じお金、今いっぱい持ってますよ?」

───久眠の衝撃発言。


「…………何で持ってるんだとかは聞かないでおこう。とりあえずルバーブ代金で千円貸してくれない?」

久眠から古いお札を借りて俺はなんとかルバーブを手に入れた。


で、ここで思ったこと。


────ここまでしてまでルバーブ欲しかったか、俺!?


はい、冒険が始まりました。

本筋は色々想像していただくとして、

謎の食物ルバーブについて。


恐ろしいことに、これはほぼ実話です(笑)


村おこしでルバーブ製品を作って、売り子を道路脇でさせられていた婦人部の皆様。

私が道に迷った際に道を訪ねたのですが、親切に教えてくださったのでお礼も兼ねてルバーブ製品を買おうとしたのですが、頑なにやめた方がいいと説得されました。

ちなみに、その時はとうとう買うことが出来ませんでした。

当時の製品は不味過ぎで、売り子のおばさんが四人いたのですが、2人しか食べてなかったようです。

残りの人達は他の反応をみて食べなかったようです。

自分達が美味しいと思ってなかったので、罪悪感を感じながら売っていたようでした。

………逆に愚痴られましたもん(笑)


昨年某番組で芸人さんが農家さんを訪ねていましたが、ビミョーな反応でした。

いつもは目が輝いてウマイ連発してるのにね。

ゲストは特に慣れてないから正直だったなぁ。


―――――でも、最近ジャムを手に入れまして食べてみたんです。

今は改良されていてパンに付けて食べたら非常に美味しかったです。

食材としては主役になろうとすると難しいが、添え物にすると活きてくる感じでしょうか?


皆様、興味が湧いたら是非話の種にルバーブをどうぞ。

ルバーブジュースはまだ飲めていません。

飲んだ事がある方がいましたら是非感想をお聞かせください。

こんなとこで私は一体何を言ってんだ(笑)

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