表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/63

送る月日に関守なしなんですが?

体調が良くなったかと思えばまた偏頭痛でした。

昨日はスマソ_(:3」∠)_


途中は説明多め

41

 なぜか今日も気づいたら練兵場で朝を迎えたことに首を傾げながらギルドへ向かおうとしたところ、城を出る寸前で青い顔のメガネさんに呼び止められた。

 なにか問題でも起きたのかと不安を覚えながら立ち止まるが、メガネさんはそのまま何でもなかったと踵を返してしまい、何が何なのかよくわからない。

 今のは何だったのだろうかと思っていたら、ちょうど武蔵が通りがかってギルドに向かう俺を見送ってくれた。

 そんな出来事があっての初心者講習3日目である。

 あいも変わらず午前中は座学、午後になると実技だ。

 昨日はギルドにある訓練用の武器を借りていたのだが、今日は片刃の剣を持参しているのでちょっとばかり実技が楽しみだったりする。

 この剣、今朝になって練兵場で目覚めた時に握っていたものだ。

 自主トレでも練兵場に置かれていた剣を借りたはずなのだがそれとはまったく別のもので、念のために備品係さんにも確認したがこれまた青い顔をした備品係さんに城の備品ではないので自分のモノにしてもらって構わないと言われた一品である。

 なんというか、自分で買ったわけでもないが新しい自分用の道具というのは非常に心が躍る。

 パソコンやスマホを買い替えた時、意味もなく触ってしまうのと同じだ。

 そんなこんなで、午後の実技訓練を迎えたわけだが、昨日とは剣の構え方や振り方が違うことをデスフラー教官に指摘されたが、理に適っているのでそのまま続けるように言われた。

 構えと振り方が変わっていることは指摘されるまでまったく気づかなかったが、言われてみればたしかに変わっている。

 あまりにも自然に構えて剣を振っていたので、自分では全く気づかなかった。

 昨日の自主トレでは、デスフラー教官に教わったとおりに練習していたはずなんだけど、いったいどうして変わってしまったんだろう――っう……

 何故か頭が痛い。

 寒くもないのに体が震えだし、本能がソレを思い出してはいけないと訴えているような気がして、それ以上考えるのをやめた。

 理には適っているらしいから気にしなくてもいいだろう。

 この日もいいところまでいったがフィアに勝つことはできなかったが、こうも連日部屋に戻ることもなく練兵場で目覚めるのはおかしいと考えて、自主トレはやめておくことにした。

 きっと自分では気づいていないけど、ひどく疲れているんだろう。

 だから気を失うように倒れて、練兵場で目覚めることになるのだ。

 そう思って部屋に戻ったのだが、その後の記憶がない。


 部屋に戻ったはずが今日も練兵場で朝を迎えたことに恐怖を感じる初心者講習4日目である。

 もしかして、俺は夢遊病とか寝ている間に動きまわるような病気なのだろうか?

 それとも……いや、深く考えるのはやめておこう。

 午前中の座学では、ついに魔物について扱うようになった。

 まず習うのは初心者が最初に戦うであろうゴブリンやコボルトについてだ。

 基本的にはフールン王国で習った内容と変わらないようだが、フールン王国で習った時は上の空だったので改めてしっかり説明に耳を傾ける。

 この世界における魔物の基本がゴブリンとコボルトらしい。

 それはなにも戦いにおける基本だけではない。

 むしろ重要になるのは、その生態というか性質というかそんな感じのものだ。

 ゴブリンもコボルトも人型の魔物であるため手にする武器で呼称が変わる。

 剣や棍棒を持ったものは名前そのままだが、弓を持てばゴブリンアーチャー、魔法を使えばコボルトメイジと言ったぐあいに名前が変わる。

 これらはあくまでゴブリンやコボルトの派生形であり、戦い方を区別するための呼称だ。

 この派生形が存在するという点ではゴブリンもコボルトも、その他の魔物でも同様で、水竜や火竜、アイアンスライムにブロンズゴーレムなどなど、属性や体の材質などによって様々な派生がある。

 そう言った派生とは別の形が存在するのがゴブリンであり、存在しないのがコボルトだ。

 なにがどういうことかといえば、コボルトはコボルトという魔物でありコボルトメイジだろうが、コボルトアーチャーだろうがコボルトであることに変わりはない。

 コボルトのような魔物を固有種という。

 それに対するのがゴブリンだ。

 ゴブリンは進化種という呼ばれる文字通り進化する種族だ。

 そしてこれが基本と言われる所以で、魔物はごく一部の例外を除いて固有種と進化種に分けられる。

 今回習ったゴブリンで例をあげよう。

 ゴブリンはどのような手段、どのような理由で進化するのかはわかっていないものの、ゴブリン、ゴブリンファイター、ゴブリンウォリアー、ゴブリンソルジャー、ゴブリンナイト、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキングと進化していく。

 基本となるゴブリンは一つ星――その中でも最下層の魔物だ。

 それがゴブリンファイターになると一つ星でも上位に位置する魔物になり、進化していけば進化するほど危険度は上がっていく。

 キングともなればその危険度は三つ星に達する。

 大雑把に言えば、最終進化型は基本形よりも2つぐらい星が増えるらしい。

 しかも、これはあくまで単体の危険度であり、進化種の恐ろしい所は同種の下位種族を統率する点にあるのだ。

 ゴブリンキングともなればファイターやソルジャーなど多くの同種を付き従え、危険度は四つ星――下手をすれば五つ星にもなる。

 キングなどはそうそう現れることのない魔物であるが、ソルジャーまでなら頻繁に現れ、ナイトクラスならば年に1つか2つは発見報告があるレベルだ。

 ソルジャーでも規模こそ大きくないものの何体かのゴブリンを引き連れる例は珍しくない。

 俺たちのような新人冒険者はゴブリン討伐の依頼であっても油断せず、安全マージンを確実に確保することが重要になるそうだ。

 それもそうだろう。

 ゴブリン討伐の依頼を受け、ゴブリン程度なら楽勝だと意気揚々と討伐に向かったら、討伐相手が実はゴブリンソルジャーなんてことになれば目も当てられない。

 ソルジャーともなれば二つ星、新人冒険者には荷が重すぎる相手だ。

 そう言った事が起きないよう事前に依頼内容の確認を徹底することや簡単な依頼でも複数人での受注が推奨されるらしい。

 ちなみに、これは新人だけに限った話ではない。

 例えば、ハーピィやトロールといった固有種ならば問題はないが、二つ星のオーク、三つ星のオーガも進化種なので、上位種が出てきた時の危険度はゴブリンの比ではないのだ。

 どれだけ経験を積んでも慢心は死につながる。

 初心忘れるべからずの精神が重要なのだそうだ。

 なるほどとデスフラー教官の言葉に頷きながら、その後の話に耳を傾ける。

 ゴブリンやコボルトの習性、攻撃のパターンなど実戦的な内容にできればノートがほしいと切に思った。

 そんな座学の後の実技トレーニングで予想外の事が起こった。

 ウォーミングアップのスポーツテストでフィアに勝利したのだ。

 それもどれか1つなどではなく、長距離走から短距離など全てで、だ……あ、反復横跳びは初日しかやっていないので、全てとは言えないかもしれない。

 それにしても目覚ましい成長に皆驚いているが、一番驚いているのは俺である。

 フィアに勝てればいいと思っていたのは間違いないが、まさか全ての項目で勝利できるとは思っていなかった。

 次の目標にするなら総合的に見て2位のリングだろうが、さすがに彼女に勝つのは無理だろう。

 なにせ、長距離走は1周遅れ、2日目から行われていた各種筋トレの回数は1.3倍近い開きがある。

 残り3日で勝てるはずがない。

 とりあえず、この世界では運動音痴と言えるフィアには最低限勝てるぐらいの身体能力を手に入れられたことを喜ぼう。

 この日は、フィアに勝利して意気揚々と城に戻った。

 もう自主トレは必要ないな。


 なんで俺は今日も練兵場で目を覚ましたんだろう?

 昨日部屋に戻ってから一度も部屋を出た覚えがない。

 それどころか、部屋に戻ってからの記憶も何一つない……

 マジでなんか俺ヤバいんじゃないのか?

 戦々恐々としながらも初心者講習5日目である。

 座学は昨日に引き続き魔物についてのお勉強だ。

 今日の主題はオークについてだった。

 物語ではゴブリンの次か、場合によっては最初に戦うことが多いイメージのオークは、この世界では二つ星の象徴とも言えるポジションの魔物である。

 冒険者は1人でオークを倒せて一人前と言われるほどで、その特徴はゴブリンを大きく超える力と圧倒的な回復力だ。

 タックルで木をへし折り、殴って鉄製の盾を大きく凹ませるほどの力を誇り、擦り傷やちょっとした切り傷程度は3分もあれば治ってしまう。

 おそろしいのは、進化すればするほどにこの特徴が強化されることで、オークキングともなれば剣で腕を切り落としても切断面を押し当てれば即座にくっついてしまうほどである。

 武蔵の戻し斬りみたいなマネをセルフでできるとなれば反則級だろう。

 そんな化け物を敵に回したらどうやって倒すのかと思えば、回復が追いつかないほどの飽和攻撃というなんともゴリ押しとしか思えない脳筋作戦だった。

 いや、これは作戦と言っていいのだろうか?

 まぁ、オークキングなど最後に現れたのは50年以上前の話で、今後も50年は現れないだろうという話なので、俺が戦うことなんてありえない話だな。

 脳筋作戦だのと批判したり、もっと効率的な攻略法を考えるなんて無駄だ。

 俺が戦う可能性のある普通のオークであれば回復力もたかが知れているので、一人前と言える冒険者であれば多少苦戦することはあっても勝てないということはないらしい。

 冒険者になるのならば、当面の目標はオークを相手に危なげなく戦えるようになることだ。と、デスフラー教官は笑った。

 俺はそんな一人前なんて言える冒険者になるまでこの世界にいるのだろうか?

 冒険者になったのだからそこまで成長したいと思う反面、早く元の世界に戻りたいという思いもあるので心境は複雑だ。

 そんな気持ちで午後の実技訓練に臨むと、短距離走以外の全てでギリギリリングに負けた。

 勝てはしないものの、ほとんどの項目であと一歩及ばないという程度の差しかない。

 さすがに5日目ともなって女の子のリングには疲れが出てきたのだろうと思ったら、彼女の結果にはほとんど変化が見られない。

 むしろ俺の方が驚くほど伸びている。

 その結果が恐ろしくなり、初心者講習を終えて城に戻ると自室に鍵をかけ、部屋の隅で毛布を被って蹲る。

 俺は一体どうしてしまったのか。

 記録の伸び方がどう考えても異常だ。

 自分の体がどうにかなってしまうのではないかという恐怖で震えていると、不意に武蔵の声が聞こえた気がした。


「無駄な抵抗はやめなさい」


 そこで俺の意識は途切れた。


固有種としたコボルトですが、どこかでコボルトキングと書いてしまった気がして仕方がない。

見つけた方はご一報ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ