サブタイ全く思いつかないんですが?
サブタイで遊んだ。
思いつかなかったのでしょうがない。
かなり短め(通常の半分)
33
異世界に来て5日目になった。
武蔵から対価についての承諾を得ることができたおかげで、頭を悩ませる問題は無事に解決した。
王様と再度話し合うのに1日しか時間はなくぜんぜん時間が足りないと思っていたが、あまりにもあっさりと解決することになって拍子抜けだ。
むしろ、武蔵からの承諾を受けた後の時間をどう過ごすか悩んだほどである。
朝の時点では武蔵は王都の観光をする予定だったので、半日が潰れてしまったとはいえ観光にでも行こうかと思ったのだが、街に出てしまうと城に戻る手続きが面倒になると言われてしまい断念した。
その代わりと言ってはなんだが、メイドさんの案内で城の中を見学することになった。
これには武蔵も満足したようで、あれこれと質問しては答えを聞いて頷いていた。
飾ってある美術品の作者だけでなく年代や様式などそれを知ってどうするのか俺にはまったくわからないことまで聞く武蔵にも驚いたが、一切考える様子もなくスラスラと質問に答えられたメイドさんの凄さのほうが驚きだ。
その後はお城の夕食に舌鼓をうち、柔らかいベッドでゆっくりと眠った。
いやぁ、本当にいい気分だ。
そう思っていないと今すぐにでも帰りたくなってしまう。
朝食を終え、昨日と同じ会議室に向かう最中、俺は必死で自分を奮い立たせていた。
正直なところ、昨日考えの甘さを指摘されたおかげで王様にちょっとばかり苦手意識を持ってしまったのだ。
言っていることは正論で、当然のことを言われただけなのだがどうにもまた失敗しないようにと考えて萎縮してしまう。
ただでさえ、大人と話すのは苦手な上に苦手意識のある相手と話をしなければならないのだから、気が滅入るのも無理はないと言えるだろう。
加えて、あの王様はちょっとばかり性格がアレなので、なおさら気が進まなくなる。
だがしかし、必要なことなのだから頑張らないといけない。
俺は扉の前で深呼吸する。
顔を上げると俺の準備ができるのを待っていたメイドさんが扉をノックした。
入室を促されて部屋に入れば、昨日と同じく王様たちはすでに全員が揃っている。
「おはよう。昨夜はよく眠れたか?」
「…………はい。えぇと……おかげさまで」
本人を前にすると扉の前で奮い立たせた勇気が急激に萎んでいってしまった。
大丈夫だ。
俺には武蔵がついているのだから失敗するはずがない。
「さて、早速本題にはいるとしよう」
そう前置いて居住まいを正した王様の言葉に反応して、思わず肩が震える。
大丈夫。
大丈夫だ。
「議会でもお前の話が真実であれば、協力すべきだという声と協力すべきではないという声がある。対価がなにもないとなればどちらが優勢になるかはわかるな?」
「…………はい」
「では、お前は何を対価とする?」
王様の問いかけに俺は一度武蔵を見て、王様に視線を戻してから目を閉じて深く深呼吸をする。
心のなかで大丈夫だと自分に言い聞かせながら意を決すると目を開く。
「こちらが提供できるのは武力です」
「ほぅ……無尽蔵に生み出せるイタガキタイスケのことか?」
「いえ……いや、それもありますが、メインになるのはこの武蔵です」
「なるほどな……」
王様たちも俺が武蔵の戦力を提供するとは思っていなかったのか、少しばかり驚いた表情をしている。
それはそうだ。
昨日の話し合いの場での武蔵はただそこにいるだけで、とても俺に協力的だとは思えない態度だった。
たぶん俺では武蔵が制御できないのだと思っていたのだろう。
実際、武蔵を制御できるかと言われれば首を傾げざるを得ないが、武蔵自身は俺を仮初めとはいえ主と認めているので、少なくとも今は大丈夫だ。
「仮にミヤモトの力がお前の話している通りのものであるなら対価として十分だろう。だが……」
だが?
え? だが、なんですか?
武蔵の力じゃ不満だって言うんですか?
「お前の話していたことをすべて鵜呑みにするわけにもいかん。英雄召喚というアビリティを所持していることは間違いないが、我らはミヤモトの力を見たわけではない」
あぁ……なるほど……
確かに武蔵は剣を佩いているとはいえ、一見しただけだとただの美少女だ。
ギルドで見かけたムキムキの冒険者たちと違い、見た目は力があるようにも見えない。
見ただけでは誰だって、彼女にエンペラーオーガとか言う化け物を圧倒できるほどの力があるとはとても思えないだろう。
「議会でも英雄召喚のことを認めたとしても、それ以外はお前の話を真実たらしめる証拠がない点も指摘されている」
たしかに、フールン王国の森でエンペラーオーガを倒したのも、わずか一晩でフールン王国の王都からこのジャスティ王国の王都まで来れたのも武蔵のおかげだと説明した。
もしも武蔵に力がなければ、俺の話はすべてが嘘なんじゃないかと言われても反論できなくなってしまう。
「なら、証明すればいいんでしょう?」
「む、武蔵!?」
昨日からずっと話し合いには一切参加しようとしなかった武蔵が口を挟んでくるとは思わなかった。
まさか自分の力を疑われているのが気に食わないのか?
だけど、武蔵がそんな性格じゃないことはよく知っている。
相手が自分の実力がわからなければ、呆れたり無視することはあっても見せつけるようなマネをするわけがない。
「それならば話が早い。しかし、よいのか?」
「問題があればこちらから言い出したりしないわ」
「ふむ……大した自信だ」
王様の言葉に武蔵はただ笑みを浮かべて返した。