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力の証明なんですが?

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「えっと……」

「なんだ! なにか言いたいことがあるなら言ってみろ! だがなぁ……言葉を選べよ? 万が一にもキューティちゃんを嫁にほしいとでも言ったらどうなるかわかっているだろうなぁ!?」


 …………いや、ちょっとあなた雰囲気変わり過ぎじゃないですか?

 もう完全にヤクザだよ……

 さっきまでは威厳あふれる王様の鑑みたいな感じだったのに……これがこの国の王様でいいんだろうか?

 今更ながらにフランシーヌさんの言葉の意味がわかったよ。


「いえ……あの、キューティを嫁にくれとか言うつもりはないんで……」

「あぁん!? キューティだぁ!? しかも言うに事欠いてキューティちゃんに魅力がないとでも言うつもりかぁ!?」


 めんどくせぇ……

 俺の言葉に噛み付くように勢いよく立ち上がった王様がドスの利いた声で怒鳴りつけてくる。

 興奮し過ぎの王様は他の4人になだめられて椅子に座り直したが、こちらを見る目つきの険しさは少しも和らいでいない。


「えぇ……あのぉ……娘さんは非常に魅力的ですが、僕は嫁にほしいとか分不相応な望みを口にするつもりはありません。それに今の僕は非常に逼迫した状況にあるので、そちらを優先したいと思っているんです」

「ほぅ……」


 キューティを褒めつつ自分では釣り合わないと伝えると幾分か王様の表情が和らいだ。

 他の4人もよくやったと言いたげな表情を浮かべている。

 なんかこの短いやり取りでドッと疲れてしまったが、話を進めないと協力を取り付けることもできない。

 なんとか説得しないとならないのだから、頑張ろう。


「えぇ……僕のアビリティが英雄召喚だというのは実演してお見せすることで証明できると思います。まぁ、やってみせたのと同じことができるアビリティが他にあると言われたらどうしようもありませんが……」


 俺の言葉に王様を除いた4人がざわついて顔を見合わせている。

 歴史上1人しかいないらしい英雄召喚のアビリティを実際に目にできることに興奮しているようだ。

 王様はなんとも判断が難しいけれど、この反応を見た限り王様以外の4人は俺の話をほとんど疑っていないらしい。


「ただ……先に言っておきますけど俺が召喚できる英雄は2人で、そのうちの1人はここにいる武蔵です。彼女は1人しか召喚できないので、実際にお見せするのはもう1人になります」

「それがどうかしたのかね?」

「もう1人の方ははっきり言ってまともに戦えません。英雄召喚で召喚される英雄の能力がどうすれば高いものになるかは知ってますか?」

「知識量だろう?」


 どうやら歴史上1人しかいなかったとはいえ、偉業をなした有名人のアビリティだったらしいので情報自体は普通に残っているようだ。


「はいそうです。そのもう1人はこの世界に来たばかりで、英雄召喚の特性などをよく知らずに召喚してしまいました。なので、もう1人は自分でもよく知らない人物なので、すごく弱いです」

「ふむ…………状況がよくわからないですね。実際に見せて貰う前にもう一度本人から詳しく話を聞くべきじゃないでしょうか?」

「私も興味があるな」

「よかろう。まずはお前自身の話を初めから話すがいい」

「えぇっと……はい」


 王様の隣りにいたメガネのお兄さんの提案で、詳しい話をすることから始めることになった。

 5人からの視線を一身に浴びながら話をするのはやっぱり苦手だけど、俺は必死で話をする。

 この世界に召喚されたところから始まり、英雄召喚を試していたら大きな失敗をしたことに気づいたこと、クラスメイトから情報を集めてもきちんとした知識が得られなかったこと、そして城から抜け出しゴブリンと戦ったことにまで話が達する。


「ふむ。その話では、お前の言うミヤモトの力が説明できぬのではないか?」

「えぇ、まぁ……ここまでだとそうなります。ただ、ここからは話が変わってきます」


 王様に突っ込まれるが、エンペラーオーガに襲われピンチに陥りながらも偶然が重なって武蔵が召喚できたこと、彼女が俺にとっては物語の登場人物であり、英雄召喚にはこの世界の情報とはまた違う力があることを順に説明する。

 一応は、それで王様たちも話に納得ができたようで、その先は武蔵に担がれてこの国に来たことまでを話して話を終える。


「そのうきよえ・・・・とやらの状態のミヤモトは召喚できないのかね?」

「はい。それは試してみましたが、できませんでした」

「ふむ……」


 左端に座るロマンスグレーのナイスミドルの問いに答えると皆が揃って困ったような表情を浮かべる。

 武蔵を改めて召喚できないため、彼女が俺の召喚した英雄だということが証明できないのが問題なのだろう。

 しかし、英雄召喚というアビリティの制限なので、俺にはその疑問を解決する方法がない。


「ひとまず、イタガキタイスケとやらを召喚してもらってはどうでしょう? それだけでも彼のアビリティが英雄召喚だと証明はできるのではありませんか?」

「うむ……そうだな。よろしいですかな?」

「よかろう」

「では、ヤナギノくん。お願いするよ」


 この世界に来た最初から話をするよう提案した王様の右隣に座っているメガネのお兄さんにそう促される。

 だけど、こんなところで召喚しても問題はないのだろうか?


「あの……ここでやってかまわないんですか?」


 湧いた疑問を素直に問うと構わないと答えられた。

 万が一にも俺の話した板垣さんの実力が嘘であっても、俺にはわからないよう対処する準備ができているのだろう。

 構わないというので、俺は椅子から立ち上がると素直に板垣さんを召喚した。


「おぉっ!」


 実際に召喚を目にするとこの時ばかりは王様も含めて全員が感動したように声を上げた。

 でも、召喚されるのは格好いい歴戦の英雄みたいな人物じゃなくて板垣さんなんだよね……

 まぁ、板垣さんも軍服を着てはいるけど、この世界の人が想像しそうな鎧を纏った戦士的な英雄とは違うので、落胆されないか不安だ。


「なるほど、アビリティに嘘はないようだな」

「ふむ、これがイタガキタイスケか」


 椅子から立った王様たちが板垣さんの周りに集まってくる。

 どうやら、板垣さんの姿を見てもその姿以上に英雄が召喚されたという事実が重要なようだ。

 もともと、俺のアビリティが英雄召喚だと証明するのが目的だったので、俺の不安は取り越し苦労だったのだろう。


「彼は弱いということだが、実際にどの程度なのだ?」

「えっと……防御力に関しては軽く小突いた程度で倒せます。攻撃力は……ん?」


 攻撃力はどうなんだろう?

 集団で囲んだゴブリンを蹴って殴ってのしかかれば倒せるのだから、皆無というわけではないだろう。

 だが、強いのかと言われれば疑問を抱かざるを得ない。

 しかし、どの程度のダメージが有るかを試したのは硬化という全身を金属のように硬くできるアビリティを使ったクラスメイト相手だけなので、生身を相手にした場合はどの程度なのか想像がつかない。

 あの時は、自分の攻撃で骨が外れたり、骨折していたから意外と攻撃力は高いのか?


「武蔵、わかるか?」


 こういう時に武蔵の眼力は便利だ。

 武蔵であれば、ひと目見ただけで相手の実力を察することなど赤子の手をひねるよりも簡単なことだろう。


「一般成人と同じぐらいね」


 問いかければ武蔵はどうでも良さそうにひと目見て、端的に答えた。

 どうやら攻撃力に関しては普通だったらしい。

 強いとは言えないまでもゴブリンを倒すのに役立つ程度の攻撃力はあるということだ。


「なるほど」


 物珍しげに板垣さんを上から下までじっくりと観察している5人が感心したように頷く。


「これは何人でも召喚できるという話だったな?」

「えぇ……まぁ。ただ、魔力の消費がないからいくらでも召喚できる余裕があるだけで、同時に召喚できるのは5人までです。先に召喚のために名前を呼んでおけば、召喚が終わったら自動で呼んでいた分の召喚が始まります」


 俺の説明に5人がまた頷く。

 何やら話しているようだが、難しい内容で俺にはまったく理解できなかった。

 専門用語ってのは、どうしてこうも耳を流れていくのだろうか……


「お前のアビリティが英雄召喚だということはわかった。お前の話も一応は信じよう」

「ありがとうございます?」


 どうやら無事に信用してもらえたようだが、なんとも奥歯に物が挟まるような物言いだ。

 なにか問題でもあるのだろうか?


「お前の望みは仲間を助けるために我が国の力を借りたいということで相違ないな?」

「そうです」


 実際にクラスメイトを助けるために協力もしてもらいたいし、この世界に関する知識を得ることや元の世界に帰る方法を調べること、帰るまでの生活に関して力を借りたい。

 これは、昨日の時点でキューティにも話していたので、無事に伝わっていたようだ。


「それで? お前は我が国に何を提供するつもりだ?」

「え?」


 俺から提供するもの?

 俺が戸惑っていることが意外なのか王様は呆れたような表情を浮かべた。


「何も考えていなかったのか?」

「いぇ……あの……はい」

「利益を享受するためには自身もまたその利益の対価を払わねばならん。この世界では当然のことだが、お前の世界では違うのか?」


 言われてみれば至極最もな話だが、あいにくと俺は未成年だし学生だ。

 親の庇護の下にあり、小遣いの対価に手伝いをすることはあっても、養ってもらうのが当然、バイトをする人間もいるが、社会経験などないのもおかしくない環境にあった。

 そのことを率直に話すと王様は驚いたようだが、頷いた。

 この世界では15才で成人を迎え、社会に出るのが当たり前なので世界による常識の差を理解してくれたようだ。


「なるほど。お前の考えが甘い理由はわかった。だが、この世界においてはこの世界の常識に従ってもらう。幸いにも事をこの場で決めるわけにはいかん。議会にて我が国としての方針を話し合わねばならんから、時はある」


 王様は、理解を示しつつもこの世界のルールに従うことを求めてきた。

 当然のことだ。

 この世界でこの世界の相手にお願いをするのだから、この世界の流儀に従わなくてはならない。

 しかし、そうすると俺には一体が何ができるというのだろうか。


「明日、改めて話をする。その時までに対価を考えておけ。今夜は城に部屋を用意する」


 どうやらフールン王国では経験できなかったお城でのお泊りが経験できるらしい。

 しかし、対価について考えるという宿題に気が重くなった俺は、そのことを素直に喜ぶことはできなかった。


こういうつなぎの話は苦手

どうにも筆が重くなってしまい、面白みのない話になってしまうorz

才能ってどこで売ってるんだろう( ゜д゜)

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