お城に行くんですが?
昨日は偏頭痛がひどくて更新できませんでしたスマソ_(:3」∠)_
あと、主人公視点にしては短め
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異世界に来て4日目の朝になった。
俺のピンチをただ眺めていただけだと判明した武蔵をさんざんに問い詰めたが、暖簾に腕押し糠に釘、ひょうひょうと受け流されてしまってこちらが疲れるだけの結果に終わった。
あの程度はピンチでもなんでもなく、自力で脱出できるだろうと判断したので放置したと言われてしまい、否定しても実際に助かっただろうと言われては反論のしようもない。
そんな武蔵に、もしも命の危険があれば助けに入るつもりだったと言われても信用できるはずがなかった。
「いい加減その目で見るのをやめてもらえる?」
昨夜のことが忘れられず、朝食の席でジトッとした目で武蔵を見ていると呆れたふうに武蔵は言った。
どれだけ恨みがましい思いを込めた視線を向けたところで、平然としているのだからますます恨めしくなる。
「それで? 今日はどうするつもりなの?」
「……どうしようか?」
昨日は帰ってから武蔵を問い詰めるのに忙しく、その後には疲れていたのですぐ寝てしまったから何も考えていない。
キューティが城から呼び出しがあると言っていたけれど、それがいつになるのか具体的なことは言われなかったのでどうするべきかは悩みどころだ。
ギルドで仕事を受けてしまえば連絡を取るのにも問題が出るだろう。
幸いなことにさすがの武蔵も一応は悪いと思っているのか、昨日の宿代は武蔵の奢りだった。
おかげで昨日稼いだ分がそのまま今日の分にスライドできるので、今日は仕事をしなくても問題はない。
しかし、昨日の今日で呼び出しがあるのかという問題もある。
昨日の俺の稼ぎだと串焼きも買ってしまったこともあり、今日はともかく明日は素泊まりもできなくなる。
呼び出されるのはそれほど日を置かないだろうが、あいにくとこちらはほとんどその日暮らしなので、今日呼び出されるのか明日呼び出されるのかでも大きな問題になってしまうのだ。
「別に1日2日の分なら貸してもいいわよ?」
武蔵はそう言ってニヤリと笑みを浮かべた。
嫌だよ。
なんか、その笑みを見たら利子とか怖そうだもん。
それにしても武蔵は不思議だ。
フォークに刺したベーコンをワイルドに齧っているのになんというか、一見すると優雅な朝食に見える。
金持ちは違うと感じてしまうのは、俺の僻みだろうか?
そう、武蔵は俺と違ってかなりのリッチウーマンだ。
討伐という歩合制の仕事だった武蔵は、なんとまぁ昨日1日で小金貨1枚と大銀貨2枚という大金を稼ぎ出してきやがったのだ。
日給が日本円にして102万円なのだから驚きである。
しかも、これを生態系を壊さぬように配慮して手を抜きながら、実質半日以下の労働時間で稼いだのだから笑えない。
武蔵ほどの実力があればなにもおかしくはないのだけれど、自分の稼ぎと比較したらなんとも虚しくなってしまう。
「魅力的な提案だけど、ヒモになるつもりはない」
とても魅力的な提案だが、頷くわけにはいかない。
女の子の前では格好つけたくなる悲しい男の性ってやつだ。
まぁ、実際武蔵相手に金を借りるのが絶対に駄目だとは思わないが、だからといって甘えすぎるのは良くはない。
なにせ、武蔵の力があれば金を稼ぐのは簡単だ。
武蔵ほどの力があれば世の冒険者たちは軒並み廃業を余儀なくされ、独占禁止法違反待ったなしのレベルでモンスターを狩り尽くしてくれるかもしれない。
しかし、武蔵の力を利用して彼女をただの金蔓や財布のように扱えば、まず間違いなく簡単に見捨てられてしまうだろう。
それは嫌だし、それがわかっているのにそんなことをしようとも思わない。
だからこそそれぞれの財布は別々にしなくてはならないのだ。
「いや、でも今回は借りさせてもらおうかなぁ……」
だけど、今回の場合は状況が状況なので、明日の分の宿代を借りるのも悪くはない手だ。
そんな悪魔に誘惑されるような考えが頭をよぎり、思わず口の中でつぶやいてしまうが、俺は慌てて頭を振ってその考えを捨てた。
いくらなんでも格好つけた次の瞬間に言葉を反故にするのはダサすぎる。
しかし、そうするとどうするか……
さすがにお城に行っていつ呼び出しがあるのか確認するってのはなしだろう。
キューティに会いに来たという名目で呼び出してもらうってのも考えたが、彼女はこの国のお姫様だ。
身分が不確かな俺みたいな人間が呼び出しを頼んだところで、呼び出してもらえるはずもない。
「とりあえず……今日は休むよ。昨日はいろいろあったし、正直筋肉痛が辛い。武蔵は仕事をしてもいいけど、十分稼いでるだろうし、王都の観光でもしてみたらどうだ?」
結局、体のことを考えて俺はそう決めた。
正直なところ昨日の溝掃除で酷使した筋肉が悲鳴を上げているので、今日のところはおとなしくしていたい。
誘拐事件まであったおかげで、ただでさえ体力が少ないので肉体的なダメージが半端じゃないのだ。
「あらそうなの? そうね……そうさせてもらおうかしら」
俺の提案に武蔵は素直に従った。
孤高の存在で周囲には何も興味がないと誤解されることの多い武蔵だが、彼女は意外と茶目っ気もあるし、世の女性その多くの例に漏れずウィンドウショッピングをはじめとした買い物なども好んでいる。
侍学園の修学旅行編では、旅行を満喫するシーンも描かれているほどだ。
異世界の王都という彼女にとっても来たことがないだろう場所を観光するのは、武蔵にとっても楽しみなのだろう。
ウキウキしているのが見て取れる。
「頼もう!」
今日の予定を決め、さっさと食事を済ませようとしていた矢先、宿の入口から食堂にまで響くそんな声が聞こえてきた。
声の大きさ以上にどこかで聞いたことのある声が気になり、サラダを咀嚼しながらも入口の方に目を向ける。
宿に入ってすぐの受付ホールから食堂の間には扉こそないものの、暖簾というかすだれのようなものがかけられているので、向こうの様子は伺えない。
と、思っていたら宿の人に連れられて食堂に入ってきたのはフランシーヌさんだった。
あれ?
これってもしかしなくても、もしかするよな?
あまりにも早く来たので驚いてしまったが、そんな俺の姿を見つけたフランシーヌさんは食堂を利用している他の客の間を縫ってこちらへとやってきた。
「ヤナギノ、昨夜は世話になったな」
「あ、いえ……」
「姫から聞いていると思うが、お前たちを城に招待したい。これがその召喚状だ」
「あ、はい……」
フランシーヌさんから受け取った封筒を、表も裏もひっくり返しながらしげしげと眺める。
裏には封蝋ってやつだろう。
鷹のような感じの鳥が描かれている。
足が4本あるように見えるからグリフォンか?
「できれば今日中に城へ来てもらいたいが、何か用事はあるか?」
「え? あぁ……っと」
「構わないわ。さっさと面倒な用事は終わらせましょうよ」
俺は大丈夫だが、武蔵は観光の予定があったので、チラリと視線を向けるが武蔵はすべてを諦めたようにため息をつくと頷いた。
なんか申し訳ないけど、武蔵の言う通り観光は明日になっても変わらないだろう。
「わかりました。伺わせていただきます」
「うむ。表に馬車を待たせてある。準備ができたら来てくれ」
フランシーヌさんは俺の返事を聞くと1つ頷いて足早に食堂を出ていった。
なんというか、朝から慌ただしい人だ。
随分と急いでいるようだったけど、何か他にも用事があるのだろうか?
まぁそんなことを気にするよりも、準備をしないといけないので、さっさと朝食を終えてしまおう。
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