誘拐されてしまったらしいんですが?
昨日はすいませんでした。
活動報告では触れていたんですが、買い換えたスマホが昨夜届き、初期設定やら移行作業やらゲームのデイリー消化やらをしていたら間に合いそうになくなったので放置しました_(:3」∠)_
21
目が覚めると見知らぬ天井が目に入った。
天井が視界に映ると言うことは、仰向けに倒れているのだろう。
ぼんやりとしか思考は働かず、なんだか妙に頭が重い感じがする。
回転が鈍くなっている頭を無理矢理働かせて、何がどうなっているのかを考えたところ意識を失う直前に何か薬のようなものを嗅がされたことを思い出した。
意識を失う前後の状況を考えれば、俺は誘拐されたのだろう。
すぐにその結果に辿り着き、まさか異世界へ誘拐された次は異世界で誘拐されるとは思わなかったと苦笑する。
次いでここがどこなのかもう少し確認しようと起き上がろうとするが、身体がロープでグルグル巻きに縛られており身体を起こすことさえ出来はしない。
それでもなんとか頭だけを動かして周囲を確認したところ、どうやら寂れた倉庫のような場所らしい。
それともう1つ、誘拐されているのは俺だけではなかった。
すぐ横にはキューティが倒れており、俺と違ってまだ目覚めていないらしい。
やはり彼女は怪しげなローブの2人組とグルではなかったようだ。
それだけではない。
あちらこちらからすすり泣く声が聞こえ、助けを呼ぶ声も1人や2人のものではない。
ざっと声を数えても10人以上いるだろう。
それも聞こえる声は女性のものばかりで、男のものは1つもない。
なんとも大胆な誘拐集団だな。
王都には多くの人がいるとは言え、これだけの人間を誘拐したらけっこうな事件になるのは間違いない。
いったい何が目的なのかはわからないが、これだけの人数を誘拐するのだからこの世界に奴隷制があるかは分からないけど、あったとしても奴隷として売るなんてちんけな理由ではないだろう。
何かしらの理由があるとしたら、誘拐された人間が女性ばかりだという点が手がかりだ。
おそらくだが、俺が誘拐されたのはキューティと一緒にいたので目覚めた時に騒ぎを起こさせないためにキューティのついでで誘拐したのだろう。
殺されなかったことだけは幸いだ。
「ん……んん………………あれ?」
現状確認で頭を働かせているとキューティが身じろぎし、やがて目を覚ました。
しばらくは状況が分かっていないようだったが、彼女も頭が働くようになって現状を理解したのだろう。
「よぅ……おはよう」
「おはよう……ねぇ、ヨータ……もしかして私たち誘拐されたの?」
「まぁそうだろうな。お前を見つけた家族が、今度は家出なんて出来ないように捕まえたら縛っておくなんて野蛮な人間じゃなければそうだと思うよ」
「…………じゃあ、誘拐だね」
おい。
なんだ今の間は……
もしかして、その可能性も否定できないのか?
「でも、誰もいなかったのにどうして?」
「ホントにキューティはあの2人が見えなかったのか? なんか頭まですっぽり土色のローブ着た2人組がいたぞ?」
「土色…………もしかしたら隠者のローブかもしれない……」
「隠者のローブ?」
「うん。認識阻害がかけられたローブで、魔力を流したら一定以上の魔力がない人間には見えなくなるローブなの」
「おいおい……そんなもんがあるのか?」
その特性を考えれば俺だけがあの2人に気づいたのも納得できる。
俺の魔力量は普通の宮廷魔術師すら軽く凌駕するレベルで多い。
しかし、その隠者のローブトやらは、犯罪者のためにあるようなローブだな。
そんなもんがあったら泥棒に入り放題になるぞ。
どこかの天下無敵の大泥棒が持ってたら物語が成立しなくなるレベルのアイテムじゃないか。
「でもあれは1枚で大金貨2枚ぐらいするし、数も少ないよ。買えるのはよっぽどの大貴族に限られるから、誘拐なんかする人間が持ってるわけないよ」
あぁ、なるほど。
そんなヤバいアイテムなら国が色々と管理するのが当然だ。
値段も2000万円となれば――効果を考えれば安いだろうが、普通の盗賊なんかが買えるような値段ではないだろう。
厄介なアイテムがあることはわかっているのだから、泥棒なんかに入られたら拙いところには当然のように対策もされているんだろうな。
しかし、そうだとすればあそこまで怪しげな格好をしていた2人組が誰も気づかないなんてことはないだろうし、キューティが姿を確認できなかったことも説明できなくなる。
だとすれば、彼らは隠者のローブを所持していると言うことであり、それはつまり彼らの背後にそれを購入できる貴族が背後にいる可能性があるということだ。
もしかしたら盗んだり、奪ったなんて可能性もあるが、こうやって誘拐なんていう方法に手を出しているなら背後に貴族がいる可能性の方が高いだろう。
なにせ、狙われているのは女性ばかりなのだ。
貴族が無理矢理女性を自らの手に入れようと暗躍するなんてのは物語においての定番だ。
物語の定番と言うことは、武蔵曰く物語で語られる世界が実在するということなので、別の世界において頻繁に見られるということでもある。
「…………ごめんなさい」
「どうしたの?」
突然謝られても何が言いたいのかわからない。
しかし、キューティは心の底から申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「あなたが……いえ、ここにいる他の人たちも私のせいで巻き込まれたんだと思う」
「え?」
突然何を言い出すのか。
なぜ俺や他の女性が誘拐された責任がキューティにあると言うのだろうか?
「悪いのは誘拐した奴で、キューティが悪いわけじゃないだろ?」
「え?」
俺が思ったことをそのまま口にすると、今度はキューティの方が戸惑ったような表情になった。
「まぁ、責任云々よりこれからどうするかだよな……」
誰のせいとか、なんでこんなことにとかは後で落ち着いた時にでも考えればいい。
そんなことよりも今重要なのはこの状況をどうやって脱出するのかと言うことだ。
武蔵がいればこんな状況は近所のコンビニに出かけるのと大差ないレベルの話だが、生憎と武蔵はこの場にいない。
「試すか……宮本武蔵」
アビリティを使う感覚で武蔵に呼びかけるが、光り輝く紋様は現れない。
どうやら、一度召喚した人間をアビリティで自分のいるところに瞬間移動させることはできないらしい。
それに武蔵をもう1人召喚することも、だ。
板垣さんは何人も召喚できるのに何故だろうか?
武蔵と板垣さんの違いと言えば、俺が持つ知識量の差と自分の意志を持っているかどうかだが、どちらが原因なのか分からない。
可能性としては後者だろうな。
っと、こんなことを考えている場合じゃない。
なんとかこの状況を――ん?
あれ?
俺はロープで縛られているから動けない。
キューティや他の女性もそれは同様だろう。
この場にロープをほどいてくれるような人間はいない。
だったら、ロープをほどいてくれる人間を呼べばいいのである。
「あぁ……ちょっと皆聞いて欲しい」
俺はどこにあの2人組がいるのかわからないので、出来るだけ小さな声で……それでも出来るだけ皆に聞こえるように言った。
すすり泣いていた女性も助けを求めていた女性も何事かとこちらに注目しているようで、倉庫の中に静寂が訪れる。
「今からロープだけでも外せるように俺のアビリティを使う。ちょっと眩しいし、変な状況になるだろうけど外に気づかれないよう声は出さないでくれ」
俺の言葉に倉庫内は小さくざわめいた。
顔は見えないけれど、困惑しているのだろう。
近くに居る人間と本当に助かるのかなどと話している声が聞こえる。
「そんなことできるの?」
「あぁ、大丈夫だ」
隣にいるキューティも心配そうな顔をしているが、俺は自信を持って頷いた。
戦闘能力は皆無だが、攻撃力がないだけで何かに触ることも出来ないわけではない。
ロープをほどくぐらいなら出来るはずだ。
「じゃあ、始める。板垣退助、板垣退助、板垣退助、板垣退助、板垣退助」
とりあえず同時に召喚できる最大数の5人を一気に召喚する。
名前を呼んでおけば、召喚が終わったら自動で待機していた分も召喚できるが、とりあえずは5人もいれば十分だろう。
光が収まると5人の板垣さんがジッとこちらを見下ろしている。
「板垣さん、ロープをほどいてくれ。俺以外の人も順番に頼む」
そう指示を出すと板垣さんはそれまで身じろぎもせずジッとしていたのが嘘のように即座に動き出した。
1人が俺のロープに手をつけ、残りの4人も近くに居た人間のロープをほどき始める。
ナイフなんて道具はなく、力がないので固く結ばれた結び目をほどくのに時間は掛かるが、それでも少しずつロープは緩んでいく。
完全に抜け出せるほどロープが緩んだので、俺はさっさと立ち上がり怪我がないか確認する。
問題がなかったので、板垣さんがまだ手をつけていない人のロープをほどきにかかる。
解放された人間が増えるほど新たに解放される人間は増え、10人どころか20人以上いたのに10分も経たないうちに全員が無事に解放された。
だが、問題はこの後だ。
あくまでもロープがほどけただけで、この倉庫から抜け出せたわけではない。
俺が言った通り、大きな声は出さずに解放されたことを喜んでいる女性たちを置いて、俺は扉の前に立って耳を寄せた。
「で? なんで男まで連れてきたんだ?」
「あの男、隠者のローブを着ていた俺たちの姿に気づいていたようなんです」
ぴったりくっつくほど耳を寄せると扉の向こうから男の話し声が聞こえてくる。
男ってのは俺のことだな。
それにしても、やはりこの倉庫の唯一の出入り口であるこの扉の向こうには当然のごとく見張りがいるようだ。
「なにぃ? するってぇと、魔法使いか?」
「それはわかりませんが、動きは素人でしたからその可能性も高いかと……」
「それなら高く売れそうだな。女は依頼の通り渡しちまうんだから、ついでにこの便利な道具で小遣い稼ぎもしておくか」
「へい。それがいいかと……」
やはり、俺はついでで誘拐されたんだな。
小遣い稼ぎってことは、この世界には合法か非合法かはわからないが奴隷制があるみたいだ。
マジで抜け出さないとピンチだ。
しかし、どうやって抜け出すか……
俺を薬で眠らせた男らしい声が言う通り、俺は素人だ。
戦うことなんて出来はしない。
俺はこちらの様子を窺っていたキューティを手招きして呼び、助けた女性の中に戦闘系のアビリティを持っている人間がいないか確認するよう伝える。
キューティは頷いてすぐに女性たちの方に向かったが、もしもいなければかなり状況は厳しいだろう。
彼女たちの中に戦闘系アビリティを持った人間がいなければ、こちらの戦力は俺の英雄召喚による物量作戦以外に攻撃手段はないことになる。
「ん?」
キューティの言葉に耳を傾ける女性たちを見ながらどうすべきか考えていると俺は何か引っかかるものを感じた。
この状況を打開できるようなアイディアが湧いたわけではなく、女性たちの姿が何か……そう、彼女たちは全員、金髪でショートボブだ。
だから違和感を感じたんだな。
20人以上の女性が集まっているのに全員が全員同じ髪色で同じ髪型なのは偶然ではないだろう。
扉の向こうの会話でも触れていた事実から察するに、誰かがショートボブの女性を誘拐するために扉の向こうの連中に依頼を出したのだ。
そして、その相手が連中に隠者のローブを貸し与えているのだろう。
そうであるなら、その相手は高位の貴族だと言うことになる。
これはまたずいぶんと重大な問題に巻き込まれてしまったらしいな……
そう言えば、スマホを買い換えたのでこれを機会にゲームのミッションにしか使っていなかったツィッターを活用しようと思っています。
2つ呟きましたが、2つ目の時点で何を呟けばいいのかわかりません。
なにせ周りでやっている人もいないし、つぶやきなんて見たいとも思わないんですよねぇ……
なんかツィッターの存在意義を全否定してるみたいだな……