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1000 BLADES-サウザンド=ブレイズ-  作者: 丁玖ふお
第3章 秘めし小火と級友の絆編
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68.第四試合と好敵手










 






「さぁ、お待たせしました!!いよいよ、交流試合を締め括る、第四試合を始めたいと思います!!」



 司会進行役のマグネスの声が、魔道マイクを通して演習場内に響き渡る。

 すると、その彼の声に負けないくらいの大歓声が、観客席の至る所から一斉に押し寄せてきたのだ。



「組み合わせは、もう決める必要はないでしょう!そう、第四試合はこの"二人だ"ッ!!」



 マグネスが、天井に吊り下がっている四枚の巨大なディスプレイに手を向けると、そこには未だ試合をしていないファイとリッドの名前が大きく映し出されていたのだった。



「じゃあ、僕たちは席に戻って応援してますね」


「………………頑張ってね、ファイ」


「うん、ありがとう二人とも」


「相手は、あの"八名家"です。油断は禁物ですよ」


「わかってる。あれから、二人に色々教えてもらったんだから、今なら誰にだって負ける気がしないよ!」



 そう言って意気込むファイが、いつもと変わらない様子で安心したのか、フリッドとクランは七組の待機席へと戻っていったのだった。





「まさか、ヒーティスがまでもが倒れてしまうなんて…………」



 先ほどの試合で、ヒーティスが引き分けになってしまった上に医務室へと運ばれてしまった事実を、未だに受け入れていないスコルドが、ただ呆然と席の前に立ち尽くしていた。


 すると、今まで後の席に座っていた筈のリッドが、半ば放心状態である彼のすぐ横を無言のまま通り過ぎて行ったのだ。


 演習場内の照明によって、輝くキャメル色の髪を靡かせながら堂々と歩くその姿は、観客である他の生徒のみならず、その場に居た教師たちも思わず見惚れてしまうほどに神々しいものであった。



「……………私は、意外に我儘なのかもしれないな」



 リッドは、誰も聞こえないような小さな声で呟いていた。


 本来であれば、この第四試合を自分が降参して負けてしまえば、スコルドを含む汚い大人たちの策略から、ファイたち七組を守ることができるのだろう。


 しかし、降参すると言うことは戦わずして負けを認めると言う、貴族としてはあるまじき行為であり、“八名家“の一つである“キンバーライト家“の者として、許されることではなかったのだ。


 いや、それ以前に“彼“に負けたくなかったのかも知れない。






 クロノス魔法学園に入学した日に、組分けの為に行われた実力テスト。

 当時、一番目の組だったリッドは、テスト終了に伴い、最初に待機していた教室へと戻っている最中であった。


 ふと、中庭を挟んだ向かい側の廊下に目をやると、おそらく演習場に向かっているのであろう三十名程の集団の中に、燃えるような赤い髪を持つ一人の少年が居たのだ。



「…………やけに、魔力量が多い。本当に、同じ歳の入学生なのか?」



 その赤髪の少年に興味を持ったリッドは、一緒に歩いていた一番目の組の集団から密かに離れると、急いで来た道を戻り、演習場の隅に身を潜めたのだ。


 そこで暫く待っていると、先ほど見かけた少年が居る組が、演習場へとやって来たのだった。


 この組の実力テストの試験官を務める、ウッドランドが造ったゴーレムに向けて、次々と魔法を放っていく入学生たち。

 その殆どの者が、年相応の魔力量であると共に、放った魔法も至って平凡なものであった。

 中には、とても同い年とは思えない程の魔力を秘めている者もいたのだが、あの少年とは比べ物にならなかったのだ。


 そして、いよいよ赤髪の少年の番がやってきたようで、鞘から抜き放った綺麗な白金色の剣を構えると共に、溢れんほどの真紅の魔力をその剣へと込めるのだった。



「……………なんて魔力だ!魔力量だけなら、“ハルト兄さん“……………いや、イグニア殿さえも凌駕している!!」



 赤髪の少年は、魔力を込めた剣を横に力強く振るうと、その剣に纏っていた真っ赤なオーラは三日月型の斬撃となり、試験管が造った木のゴーレムの集団に一筋の炎の線を刻んでいったのだ。


 リッドは、赤髪の少年が見せた真っ直ぐな剣筋に、思わず見惚れてしまっていた。



 幼い頃から、リッドは兄と一緒に様々なことを学んできていた。

 礼儀作法、馬術、戦術、算術、経営学、魔法に剣術、それらを数人の家庭教師から教わっていたのだが、中でも彼が一番惹かれたのが剣術だったのだ。


 だからこそ、リッドは少年が振るった剣筋に秘められた可能性を感じていた。

 まだまだ剣の扱い方自体が荒削りであり、世辞にも見事とは言えない出来ではあったものの、いずれは立派な剣士になることを予感させていたのだ。



 その少年が、今こうして"好敵手(ライバル)"となり目の前に居るのはおそらく、運命なのだろう。



 リッドは、ファイと審判役のウットランドが待つフィールドの中央に到着するや否や、右手を一組の待機席の方へと向けたのだった。

 すると、つい先ほどまで彼が座っていた席の影から、金属製の丸い“盾“が高速回転しながらこちらに向かってきたのだ。


 そして、回転しながら飛んできた丸い“盾“を右手だけで簡単にキャッチしてみせると、リッドはファイにこう言い放つのだった。




「─────さぁ、始めようか。この"交流試合(くだらない茶番)"の“終局(グランドフィナーレ)"を!」








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