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1000 BLADES-サウザンド=ブレイズ-  作者: 丁玖ふお
第3章 秘めし小火と級友の絆編
65/72

65.黒煙と反撃

 







「フッ、僕としたことが少し本気を出し過ぎてしまったかな」



 ヒーティスはそう言うと、鮮やかな臙脂色の前髪を軽く手で払うのだった。


 彼の目の前には、先ほど自らが放った魔法による爆発で発生した黒い爆煙が、未だその場から消えずに留まっているのだ。

 しかも、それは一つではない。爆発した時に炎が周囲に飛散したのか、このフィールドの中には黒い煙が幾つも漂っていたのだ。



「君たち七組には悪いが、圧倒的に勝たせてもらうよ。我ら、一組のために」



 ヒーティスは、煙が立ち登っている付近に狙いを定めると、ウィンにトドメの強力な一撃を放つべく魔力を込め始める。


 火属性特有の赤いオーラが杖の先に集まり出すと、そのオーラはあっという間に灼熱の炎に変化したのだった。



「これで、終わりだよ。─────"フレイム・ボル……………!?」



 しかし、ヒーティスが放とうとした魔法は他ならぬヒーティスの手によって止められてしまったのだ。


 なぜなら、追い込んだ筈の"彼女"が突如予想外の場所から飛び出してくるや否や、魔法を打ち放つべく愛用のホウキを大きく振りかざしていたのだった。



「ウィンドォ・ストライクゥーーー!!」







 ヒーティスが立っている所から、少し離れた場所に立ち登る黒い煙。

 その煙の中から突如現れたウィンは、驚いた表情をしている彼に向けて、風の球を放ったのだ。



「くっ…………"ファイヤー・ボール"!」



 ヒーティスは、迫り来る風の球を無力化すべく火球を放つ。

 だが、あまりにも距離が近過ぎたためか二つの魔法がぶつかった時に生じた爆発に巻き込まれたヒーティスは、後ろに大きく吹き飛ばされた上にうつ伏せの状態で床に倒れてしまうのだった。



「…………なぜ君がそんなところに?私の"フレイム・ボルト”を受けて動けるはずがない!」


「ふっふーん♪さぁて、どうしてかな〜?」


「くっ…………だったら、今度こそ私の魔法で倒してみせよう!!」



 ヒーティスは、ゆっくりと立ち上がると杖を回しながら魔力を込め始める。


 この試合が始まる前までシミ一つ無かった彼の制服は、先ほど床に倒れた時に付いてしまったのであろう埃などで、黒く汚れてしまっていた。

 だが、そんなことを気にする余裕もないのか、ヒーティスは一心不乱に魔法を放つ準備を整えていたのだった。



「さぁ、私の魔法を喰らうがいい……………"フレイム・ボルト"!!」



 ウィンに向けて放った瞬間に加速した火球は、あっという間に彼女の目の前にまで迫っていたのだ。



 だが、ウィンは目の前に迫り来る火球に対して、避けたり逃げたりするする様子は見られず、ただ自信満々な表情を浮かべているのだった。



「もうその魔法は、アタシには通用しないもんね!」



 ウィンがそう言った瞬間、なんと彼女の姿がヒーティスの目の前から忽然と消えてしまったのだ。

 当然ながら、彼女目掛けて飛んでいた高速の火球も、まるで後の壁へと吸い込まれるかのように激突すると、激しい爆発音と共に黒い煙が上がるのだった。



「なっ…………!?今度は、一体どこに?」



 ウィンが目の前から消えたことでかなり動揺しているのか、何度も左右に首を振りながら周囲を警戒するヒーティスであったが、その背後から“何者“かによって左肩をポンポンと叩かれたのだった。



「……………!?」



 ヒーティスは、驚きながらも肩を叩かれた方を振り向こうとするのだが、左の頬に当たる細い“何か“に邪魔され上手く振り向くことができなかったのだ。



「あれれ〜、そんなにキョロキョロしちゃって、一体誰を探してるのかな〜?」



 なんと、ヒーティスの肩を叩いていたのは、知らぬ間に彼の背後へと回り込んでいたウィンであった。



「ひ、ひつの間にしょんなとこに…………?」



 そして、振り向こうとしていたヒーティスの左頬には、彼女の細い人差し指がまるでつっかえ棒のように当たっているため、上手く喋れずとても間抜けな口調となっていたのだ。



「今度は、こっちの番だよ!─────“ウィンド・ストライク“!!」



 ウィンは、ヒーティスの背中に向けて風の球を押し付けると、それを右手で思いきり押し潰す。


 すると、その押し潰された風の球は『パンッ!』と言う良い音を立てて破裂すると、中から凄まじい突風が噴き出し、ヒーティスを前方へと吹き飛ばしたのだった。



「ぐへぇッ!?」



 凄まじい突風によるゼロ距離攻撃を背中に受けたヒーティスは、無論防御することなど出来る筈もなく、数メートル先の床へと叩きつけられてしまい、そのままうつ伏せの状態で倒れてしまう。

 しかも、倒れた時になぜかお尻が上がってしまうと言う滑稽なポーズになっており、それを見た一部の観客たちからはクスクスと笑い声が聞こえてきたのだ。



「くっ…………このヒーティス・ハイスヴァルムが、こんな醜態を晒してしまうとは、なんと言う屈辱……………」



 ヒーティスは、高価そうなその愛用の杖で体を支えるようにしながら立ち上がるのだが、先ほど受けた魔法のダメージが残っているのか、足元が覚束ない様子であった。


 そんなヒーティスに、ウィンは人差し指を突きつけると得意げにこう言い放ったのだった。






「──────さぁ、反撃開始だよっ!!」







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