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1000 BLADES-サウザンド=ブレイズ-  作者: 丁玖ふお
第3章 秘めし小火と級友の絆編
60/72

60.氷上と鎖



ミエルの"スパークル・ジャベリン"がフリッドを貫



いたと思いきや、なんとフリッドの姿をした氷像で



あった。



「勝利条件は整いました」



果たして、フリッドはミエルに勝つことができるの



であろうか──────。


 






「勝利条件は整った、だと…………?」



 先ほど放った技が、ミエルにとっての決め技であったのだろう。

 それを、こうもあっさりと躱されてしまった上に、挙げ句の果てには勝利宣言まで言われてしまっては、彼が不愉快極まりない表情になるのは当然であった。



「おい、お前!どうやって、俺の"スパークル・ジャベリン"から逃れやがった!!」


「まだ、わからないんですか?周りをよく見た方がいいですよ」


「なに………!?」



 フリッドに言われた通り見渡すと、周囲には白い冷気が漂っており、さらにフィールドの至る所が凍りついていたのだ。

 その上、床を侵食している氷は未だ範囲を広げており、今にもミエルの足元にまで到達する勢いであった。



「先生、アレって!!」


「あぁ、ハル坊の時に使った領域型魔法陣、"氷結(フリージング)空間(・スペーシオン)"だな」


「そっか、フリッドは単に逃げ回ってたんじゃなくて」


「………………逃げながら、魔法陣を描いていた」


「それに、"氷結(フリージング)空間(・スペーシオン)"の発動によって発生する冷気を、氷像と入れ替わる為の目隠しにするなんて、フリッド奴中々やるじゃないか」


「チッ、変な小細工しやがって。だがな、反撃できないままじゃ、俺は倒せないんだよッ!!」



 ミエルが、再び魔法を発動させようと魔道具である右手のブレスレットに魔力を込め始める。



「─────"スパークル・スパイク"!!」



 ミエルは、先ほどと同じようにフリッドの逃げ道を封じるべく、三本の雷撃の針を続け様に放つ。


 しかし、その三本の針が凍りついた床に突き刺さった時には、もう既にフリッドの姿はミエルの前から忽然と消えていたのだった。



「あの野郎、どこ行きやがった?」



 いや、正確には消えたのではない。


 警戒しながら辺りを見渡すミエルであったが、不意に背後から妙な視線を感じ、まさかと思いながらも慌てて振り返る。

 すると、なんとそこには悠然とした様子で立っているフリッドの姿があったのだ。



「フリッド、いつの間にあんな所に!?」


「すご〜い♪でもでも、どうやったんだろう??」


「アイツの靴をよく見てみろ」


「靴???」



 ファイとウィンは、フリッドの靴を注意深く

 観察すると、彼の靴の裏に氷で造られた刃が装着されているのに気がついたのだ。


 つまり、フリッドはこのフィールド中に広がっている氷の上を、まるでアイススケートの選手のように滑りながら素早く移動していたのだった。



「また妙な真似を!喰らえ"スパークル・スパイク"!!」



 ミエルから放たれた三本の針が、フリッドへと迫る。

 だが、フリッドはまたもや氷上を滑りながらミエルからの攻撃を難なく躱したのだった。



「チョコマカと逃げやがって!当たれぇ!!」



 その後も、ミエルは何十本も雷の針を休むことなく撃ち続けたのだがフリッドには一本たりとも命中せず、それどころか掠ることすらなかった。


 まるで、踊っているかのように氷の上を颯爽と滑るフリッドの姿に、いつの間にか観客たちの視線は釘付けになってしまっていたのだ。



「舐めやがって…………ちくしょう!!」



 あまりにも余裕を見せつけているかのようなフリッドの避け方に、ミエルの苛つきは増していくばかりであった。

 そのため、次第にコントロールも全く定まらなくなり、せっかく魔力を消費して放っている魔法も明後日の方向へと撃ち込んでいると言う始末である。


 やがて、そんな考えなしに魔法を使っていたツケが回ってきたか、ミエルの右腕に装着されてている金色のブレスレットから黄色の光が消失したのと同時に、当然ながら彼の手からも雷の魔法が出ることはなかったのだ。



「なっ!?…………魔法が出ない…………?」



 ミエルは、さっきまで使えていたはずの魔法が突然使えなくなったことで、酷く混乱しているようであった。



「─────"アイシクル・バインド"!!」



 そんなミエルの隙を、フリッドが見逃すはずがなく、すぐ様氷で作った鎖をミエルへと伸ばし、両腕と胴体に何重にも巻きつけると、見事拘束することに成功したのだった。



「しまった…………!?」


「知ってましたか?"カロール社"製の魔道具は性能は高いですが、魔力消費量が多いんですよ」


「クソッ、こんな筈じゃ…………」



 氷の鎖によって拘束されてしまったミエルは、今更になって後悔していた。

 だが、今となっては何もかも遅過ぎたのだ。


 なぜなら、"氷結(フリージング)空間(・スペーシオン)"を発動させる魔法陣が描き終えていた時点で、フリッドの勝利条件は整っていたのだから。



「さて、これから僕がこの鎖を一体どうするのか、もうわかりますよね?」



 今から起こる事態を察したのか、段々と青ざめた表情へと変わっていくミエル。

 そんな彼に向かって、フリッドは彼の体に巻き付いている鎖の端を握りながら、怖い笑顔を浮かべているであった。



「ま、待ってくれ!やめろぉっ!!…………降さ────」



 フリッドは、ミエルから"降参"という言葉が出尽くす前に、氷の鎖の端を力一杯引っ張ると、ミエルは情けない声をあげながら、その場でコマのようにクルクルと回転し始めたのだった。



「─────うわあぁぁぁぁ〜〜〜〜!!」





 暫くして、ようやく回転が弱まった頃には、今度はミエルの目が完全に回っており、あっという間に凍りついた床へと倒れ込んでしまったのだ。





「─────そこまで!勝者、フリッド・グラース!!」

































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