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1000 BLADES-サウザンド=ブレイズ-  作者: 丁玖ふお
第3章 秘めし小火と級友の絆編
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53.特訓と謎の機械

食堂での一悶着があった次の日の休日に、"自然区"にある公園の一つに、7組の姿があった。


そこでは、ある"特訓"が行われようとしているのだが………!





「あ、ファイ!こっち、こっち〜!!」



遠くの方で手を振るウィン。彼女の他にも、フリッドとクランも既に到着しており、今来たファイで7組のメンバーが全員揃ったことになる。


しかし、今日は土曜日であり当然授業はないため全員私服姿である。


したがって、集まったこの場所も学園ではなく、"自然区"の奥にある人気(ひとけ)があまりない公園の一つであった。



「じゃあ、アタシの"とっておき"の特訓場所へ、しゅっぱーつ!!」



そう言うと、ウィンは張り切って公園の中へと進んで行く。

ファイたちも、まだ午前中だと言うのにやけにテンションの高いウィンに圧倒されつつも、彼女の後に続くように公園の敷地内へと足を踏み入れるのであった。


公園と言う扱いにはなってはいるものの、そこはもうほぼ森であり、うっかり道を間違えようものなら遭難してしまうほど鬱蒼とした樹々がどこまでも広がっていた。


今日、この場所に来たのは森林浴をするためではない。

ここに来た目的は、ウィンが空を高く飛べるようなるための"特訓"なのである。



「しかし、こんな森にいい練習場所があるんですか?ここまで木が生い茂っていると、逆に飛ぶのに邪魔なのでは?」


「それがね〜、この先に木が全くない広い空間があるの」


「へぇ、でもそんな穴場よく見つけたね」


「この前、迷子になりかけた時に見つけたんだ〜!」


「………今、さらっと不安なこと言いませんでした?」


「大丈夫、大丈夫!もう、4回くらい来てるから流石に迷わないって〜!!」


「………そうだと、いいんだけどね〜………」


「………はぁ、なんだか無事に着けるのか心配になってきました」


「……………ふぁああ〜〜〜……………」



自信満々に先頭を進むウィンの後をついていく3人であったが、ファイとフリッドはあからさまに不安でしかないと言う表情を浮かべているのに対して、クランだけは呑気にあくびをしているのだった。






「あ、見て見て!あそこだよ〜!!」



それから、20分ほど歩いた頃だろうか。

不意に、ウィンがはしゃぐ様に前方に向けて指を差したのだ。

すると、その指差す先にあったのは小高い丘の上に大きな木が一本だけ立っているだけの、広々とした原っぱであった。



「よし、今日は迷わないでついたぞ〜〜!」


「って、やっぱりいつも迷ってたんじゃないですか!」


「もう、無事着いたんだし細かいこと言いっこなし!そんなことよりフリッド、"例の物"持ってきてくれた?」


「もちろん、持ってきましたよ。"コレ"のために必死に兄さんと交渉したんですから、感謝してくださいね」



フリッドは、背負っていたカバンから丸い二つの機械を取り出した。

その謎の丸い機械には、2つとも穴が空いており不思議な形をしていた。



「ウィン、コレを左右の脚に1本ずつ装着してください」



次に、フリッドがカバンの中から取り出したのは、薄い菱形の機械に太いベルトが通っている怪しげな器具であった。


ウィンは、フリッドに言われた通りに与えられた器具を、自身の脚の太ももの部分に装着していく。

一人だと難しいので、クランとファイが手伝ってもらったので時間はあまりかからなかった。



「じゃあ、その器具に付いてるスイッチを押してみてください」


「はーい!」



ウィンが、何気なく器具に付いているスイッチを押すと、原っぱの上に置きっぱなしになっていた2つ丸い機械が、突然宙に浮き始めたのだった。



「え!ちょ、なになに?あの丸い機械浮いてるんですけどっ!?」



驚いているウィンの腰ぐらいの位置まで浮き上がったその丸い機械は、暫くその場をふわふわと漂ったあと、いきなりウィンの脚に装着された器具へと目掛け、結構なスピードで飛んできたのだった。



─────バッチーーーン!!!



物凄いスピードで飛んできた2つの丸い機械は、とても痛そうな音を立てながら、ウィンの太ももに装着された器具に貼り付いた。



「………いっったぁああーーー!?」


「あぁ、装着する時にちょっと痛いので気をつけてくださいね」


「………そ、それ………もうちょっと早く言って欲しかったんですけど………」



その場で、立ったまま悶えているウィン。

よほど痛かったのか、目にはうっすらと涙が滲んでいた。







「では、準備も出来たみたいなので早速やってみますか」


「………本当に、コレ大丈夫なの〜?ちょっと心配なんですけど〜………」



先ほどの痛みが未だに引かず、それを必死に我慢しているのかウィンの脚が小刻みに震えている。



「残念ながら、"あの"兄さんが開発した物なので性能は間違いないでしょうね」


「へぇ、ハロルドさんが作ったんだ?」


「………………ハロルド先生は、色々な物を開発してるの」


「そっか!じゃあ、大丈夫だねっ!!」


「それじゃあ、とりあえずちょっと飛んでみてください」


「オッケー!!」



ウィンは、そう言うと大きな木が立っている少しだけ高くなっている場所まで走っていくと、準備が出来た言わんばかりに大きく手を振って見せた。



「いっくよぉお〜〜!!」



手に持っていたお気に入りのホウキに跨ると、首元にかけていた革製のゴーグルで目を覆うと、静かに両目を瞑り集中し始める。

すると、風属性の魔力特有の黄緑色のオーラがウィンの体を包んでいった。


普段は、少々お調子者である彼女なのだが、今の顔は本気そのものである。


そして、綺麗な髪と同じその鮮やかな緑色の目をゆっくりと開いた次の瞬間、まるで突風の如き速さで飛び出したのだ。


青々と茂る芝生の斜面を、颯爽と低空飛行するウィン。

やがて、上昇に充分なスピードになったのか徐々に高度を上げて行く。



「今のところは、いい感じじゃない?」


「問題はこれからです。そろそろ、ウィンの上昇限界のはず………」



と、フリッドが言ったその時であった。

今まで、調子が良かったウィンの動きに、明らかな異変が起こっていたのだ。



「……………見て、ウィンの様子が………!」



心配するクランの声が辺りに木霊する。

フリッドの予想していた通り、ウィンが上昇できる限界の高度に達していたのだ。



「─────ッ!?」



なんとか、現在の高度を維持しようとしていたウィンであったが、過去の忌まわしい事故の記憶が脳裏をよぎったその瞬間、彼女の体を包んでいた黄緑色のオーラが、まるで風に吹き飛ばされたかのように消えてしまったのだった。



「…………きゃぁあああ!!!」



先ほどまで、かなり高い位置に居たウィンの体が、彼女の悲鳴と共に地面へと吸い込まれていく。



「ウィン!!」


「慌てないでください。そろそろ、"あの装着"が起動する筈です!!」


「……………"マッド・ブロック"!!」



それは、クランが土属性の魔法で柔らかい泥でできた立方体のクッションを設置したのと、ほぼ同じタイミングであった。




なんと、どこからともなく出現した謎の風がウィンの体を包み込んだのだ。


















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