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1000 BLADES-サウザンド=ブレイズ-  作者: 丁玖ふお
第3章 秘めし小火と級友の絆編
43/72

43.拘束と大技

「────勝利条件は整いました」


兄であるハロルドに、そう言い放ったフリッド。自信に満ちたその目に映るのは念願の勝利か、それとも………。



 






「────勝利条件は整いました。勝たせてもらいますよ、兄さん!」



 フリッドは右手の中指で眼鏡のブリッジを抑えながら不敵な笑みを浮かべ、大胆にも勝利宣言をする。

 その自らの勝利を確信したフリッドの表情は自信に満ちており、それはこれから彼が敗北してしまうことなど、満に一つもあり得ないと思わせるほどであった。



「ほぅ。私にわざわざそんな勝利宣言をするなど、余程の自信があるようだな」


「今から、証明してみせます。3年前の僕とは違うと言うことを」



 徐に足元の床に右手を添えるフリッド。それから、全身の魔力をその右手に集中させると、そこに複雑な術式が描かれている白い色の魔法陣が現れるのであった。



「そして、兄さんを超えてみせます。今、この場所で!!」



 現れた白い魔法陣から、白い湯気のようなものがが徐々に溢れ出してくる。触れるとひんやりする事から、どうやら冷気のようであった。

 また、相当なその魔法陣に魔力を流し込んでいるのだろう、描かれている複雑な術式からは眩しすぎるほどの白い光が放たれ、まるで床から浮かび上がっているかのように見えたのだ。



「────領域型魔法陣 "氷結(フリージング)空間(・スペーシオン)"!!」



 フリッドの声が、部屋の中で反響する。

 すると、それに呼応するかの如く、足元の魔法陣からは先ほどから放たれていた光とは比べ物にならないほどの、赫々たる白い光が激しく迸ったのだ。


 あまりの眩しさに、その場にした全員が反射的に手や腕で目を覆い隠してしまう。おそらく、この状況でそうしない者など絶対居ないだろうと思うほどの眩光であった。


 暫くして、部屋中を包み込んでいた光が収まったので、目を覆い隠していた腕をどける。魔法を発動した時の光が少し目に入ってしまったのか、眩んでしまった目を段々と鳴らしながら徐々に鮮明になってくる視界に飛び込んできた光景に、ファイたちはただただ困惑することなった。


 なんと、先ほどまで白いパネルが敷き詰められていただけの、だだっ広い部屋であったはずのこの場所が、床、壁、天井に至るまでの全てが分厚い氷に覆われてしまっているのだ。



「さ、さっむぃいいい〜〜〜!!!」


「…………くしゅん!」


「大丈夫?二人とも」


「な、なんとか。って、ファイは寒くないの?」


「まぁね。なんでかはわからないけど」


「………それはお前さんが炎の魔法を使うからだ」



 突然、黒いコートがクランの頭に掛けられる。それと同時に聞こえてきた、やけに聞き馴染みのある声に振り向くと、そこに居たのは遅れてやってきたレイヴンであった。



「…………レイヴン!」


「前に授業で教えたろ?魔法には、“相性“があるって」


「そっか、炎は氷に対して耐性があるから………」


「炎系の魔法を使うファイは、アタシたちと比べて寒さに強いんだね♪………と言うわけでファイ、上着貸して〜〜〜〜!!」


「…………よく、私たちが居る場所がわかったね?」


「まぁな。アイツのことだから、お前たちを“研究室“に招くだろうと思ってな」


「先生、フリッドのお兄さんのこと知ってるの?」



 ファイから半ば強引に奪った上着を肩に羽織っているウィンが、レイヴンに訊ねる。一方、ファイもその話に興味があるのか、薄着になって少しだけ寒くなった体を手で摩りながら聞いていた。



「………あぁ、昔からの知り合いだ。だから、フリッドがアイツの弟だってのも知ってた」


「…………私は知らなかった。ハロルド先生の名前、正確には覚えてなかったし………」


「そうなんだぁ?」


「アイツらが、こう言った勝負をしているのも聞いてはいた。が、まさかこんなに激しいとは思わなかった」






「………“領域魔法陣“か。まさか、3年でここまで使えるようになるとは、正直驚いた」


「こんな序の口で驚かれても困りますよ。なにせ、今から兄さんを凌駕するんですからね」


「フッ。それは、楽しみだ」


「チッ………いつまでも、余裕ぶっていられると思わないでください!!」



 床に添えていた右手に、さらに魔力を込めるフリッド。すると、幾つもの白い魔法陣が不意に現れ、ハロルドを完全包囲する。



「アイシクル・バインド!………多重拘束!!」



 その突如現れた全ての魔法陣から、白い氷の鎖が一斉にハロルドへと襲いかかり、あっという間にに拘束してしまったのだ。



「いつの間に、こんな魔法陣を………なるほど、“アイシクル・スパイク“をわざと逸らせて魔法陣を作っていたか」



 ハロルドが、また自己完結して一人で勝手に頷いている。どうやら、フリッドが滅多矢鱈攻撃して居たのは、ハロルドに当てるためではなく魔法陣を作るためだったらしいのだ。



「まだです!────“強化魔法陣“展開!!」



 今度は、フリッドと拘束されてしまったハロルドとの間に、複数の魔法陣が出現する。

 さらに、間髪入れず次の魔法の発動のために再び魔力を込め始める。



「"我が前に立ちはだかる全ての障害を、その凍てつく鋭き大槍で貫き砕け!!"」



 フリッドが呪文のような言葉を呟くと、兄弟の間に現れた魔法がその言葉に反応して、白い光を放ち始めた。



「バカなっ!その魔法は、フリッドにはまだ魔力が足りなくて使えないはず………!」



 驚くレイヴンをよそに、フリッドは準備万端整ったと言わんばかりに、これから繰り出そうとしている"大技"による攻撃の標準を、拘束されて身動きが取れない状態のハロルドへと合わせ、そして─────。



「────穿(うが)てッ!!"アイシクル・ランス“!!!」



 フリッドが右足を思いっきり氷の床に叩きつけると、そこからハロルドが居る場所まで続いている床の魔法陣をなぞる様に、槍のように尖った無数の氷の結晶が、ガチガチと不気味な音を鳴らしながら一直線に進んでいく。



 ガチガチガチガチ、ガキーーーーン!!!



 無数の氷の結晶がハロルドに触れた瞬間、そのまま彼の体を分厚い氷が包み込んでいく。

 その氷は、あっという間に大きくなっていき、ついさっきまでハロルドが立っていた場所には巨大な氷塊が鎮座していたのであった。



「────"完全防御機構-アイギス-"、起動!」



 しかし、それから僅か10秒も経たないうちに、つい今し方造られた巨大な氷塊が激しい音を立てて崩れ去っていく。

 あまりにも一瞬の出来事だったため、ファイたちには一体何が起きのか皆目検討もつかず混乱気味なのだが、フリッドはこうなる事がわかっていたのか、えらく冷静であった。


 そして、無残にも崩れた氷塊の中から現したのは、この勝負が始まってから初めて見るであろう、神秘的な雪の結晶を象った盾を悠然と構えるハロルドの姿であった。



「………まずは、第一段階は"達成"ってとこですか」



 フリッドは、そう呟くと心を落ち着かせるようにゆっくりと深呼吸をしたあと、相も変わらず涼しげな顔のハロルドを睨み付けた。







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