とりあえず、平和守った
「うぇ~ん。アシズムさ~ん」
「ど、どうしたんだいミムラちゃん。傷だらけじゃないか!」
泣いている女の子が、とある喫茶店にやって来た。
「広嶋くんと一緒に異世界行ったのに、ボロボロにされました~!も~、せっかくの旅行が~」
「彼がいたのに!?何があったの!?」
とんでもない事を簡単に説明してくれてありがとう。
手間が省ける。
◇ ◇
忍びの世界。ここに2人はやってきた。
ミムラは世界観に合わせて可愛い着物でやってきたのに、相方の広嶋ときたら
「カジュアルな格好でバットケース背負ってるのはどうかと思うよ。世界観に合わないよ!」
「うっせーな。旅行に来たんじゃねぇーんだぞ。なんだその、トランクケースは?」
「旅行するために買ったから使った」
旅行気分の沖ミムラと、任務を遂行するための広嶋健吾。こんな楽しい事を楽しんでくれない。けど、めげないね。ミムラはちょっとでも楽しくしようと努力はしたい。
「暗殺だの殺人だの。積極的にやるのは良くないよ、広嶋くん」
「それは敵に言え。俺もお前もアシズムに変わって、こーんなちっさい世界が終わりそうなところを止める役目だ。危険な種が芽吹く前に親玉を潰しに行く。そんだけだ」
「自分の身が危なくなるのに?」
「俺が危ない?んなことあるわけないだろ」
「そっか!じゃあ、のんびりしよう。今のこの世界はのどかなんだから」
「俺はさっさと地球に戻りたい。バッセンすらねぇーんだ」
「いいからいいから!」
そー言われるがまま、広嶋はしぶしぶミムラの異世界旅行に付き合う羽目になった。
まぁ、広嶋だってミムラを付き合わせているわけだから。多少の気持ちがあるのかもしれない。
◇ ◇
今回のターゲットは忍びである。
この異世界に忍びという怪物を表に解き放ち、まさに戦乱の世へと変えようとする。
それを未然に防ぐため、広嶋は親玉の首を獲りに来た。親玉さえ死ねば、そんな世にはならない。
ガキイィッ
野球のバット。その一振りで部下の忍者共を一掃。
「どーした?こんなんで世界を獲れると思ってんのか?忍者共」
「くっ。異国の分際で!我が思想、夢に歯向かうとは!」
とてつもない余力を見せられ、勝ち目がない事は分かっていた。
「お、覚えていろ!」
親玉は撒き微視を地面にばら撒き、わずかでも広嶋の足を止め、逃げる戦略をとる。
「無駄なこった。時間の問題だぜ」
「待って広嶋くん!!」
「あ?なんだ、ミムラ」
ばら撒かれた撒き微視には毒がある。そう言いたいのか?気付いているんだけど?
「”撒き微視”を撒かれたよ!”ま~キビシー”。……どー!?即興にして、渾身の駄洒落!!」
「………………」
「笑っちゃう!?笑っちゃうよね!」
広嶋は笑わずに、満面な笑みのミムラの横に立って、打つ構えをとった。
バゴオオォォッ
「お前を殺そうとしたら、ゴロになっちまったわ~」
「ぎゃあああぁぁぁっ!!」
言葉通り、ミムラをバットで打って強いゴロとなる。ミムラは転がりながら、撒き微視に突き刺さり、ターゲットへと向かっていく。
「うあああぁぁっ」
「ああああっっ」
ドーーーーンッ
ゴロでも当たりはホームランってところ。100点満点の当たりである。
見事に広嶋とミムラは親玉を討ち取り、この世界の平和を維持したのであった。
◇ ◇
というわけで、ミムラはボロボロな体になって、地球へ帰還したのである。
「ねっ!酷いでしょ!広嶋くん!私をバットで打つ意味あった!?広嶋くんの駄洒落の方がつまらないのに!!私が広嶋くんを蹴飛ばしたかった!」
「話しを3分聞いたけど、絶対に君が悪いよ。殺されなくて良かったね」