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可能性の残滓  作者: ヴぁんぴーる
4/4

砕かれた可能性

Twitter企画、「新能と元能」のとあるキャラクター視線の小説です。

企画主さんからは許可を頂いています。

?日目

…麻酔が効いているのか、頭がぼーっとする。結局、記憶はぼんやりとしか取り戻せなかった。

しかし、なにかちがうことをわすれているきが…するのは、きのせいでしょうか。

ショックが大きかったんだろう。とにかく、どれくらい時間が経ったのかを調べなければ。今は安静にしていろと言われているが、動く分には大丈夫なはずだ。


25日目

1ヶ月ほど無駄にしていたようだ。無駄、という言い方が正しいのかはわからない。

しかし、元からの体質と…少食が災いしてか、筋力は明らかに衰えているし、かなり線が細いような…というか、やつれたように感じる。

丈夫さに自信はあるものの、このままトレーニングをするのはまずいだろう。

ゆっくり戻していくとしよう。


26日目

診察を終えた。両手と顔のやけどは、残念ながら消えないそうだ。腕はともかく、顔は…まぁ、女性としてショックを受けた。

少々過大評価かもしれないが、顔にはそこそこ自信があった方なのだ。こういう形で失うとは…

…やはり、だめなんでしょうか。かんがえればかんがえるほど、わたしはわたしがきらいになります。


27日目

最近、よく記憶が飛ぶようだ。これもショックの一つなのだろうか?

昨日も手記を書いている途中からの記憶が無い。そして幼児のような乱雑な文字で、最後が綴ってある。記憶はないが、おそらく私だろう。

どうしたものか。


28日目

まだ安静にというお咎めがあったが、特に違和感はなかったのでこっそり病室を抜け出した。

久々に自室に戻ると、部屋はあの時のまま…いや、誰かが掃除をしてくれたのか、綺麗になっていた。

特に家具の配置は変わっていない。武器もそのままのようだ。

今日はここで寝てもいいだろう。


29日目

病室を抜けたことには特に何も言われなかった。大丈夫ということか。

運動のために得物を持ったが、最初は重くて持てなかった。また振り出しに戻った気分だ。


演習場…基本的に誰かいる空間だが、誰もいない時間帯が少しだけある。私はこの時間を利用している。誰かに会うと気まずくてならない。

とりあえずリハビリ程度に動くが、すぐに息が切れてしまった。

体力付けも並行しなければ。


30日目

ちょうど入隊から1ヶ月である。

色々と思い返すようなこともない。顔と腕は実質失ったようなものだが。

そういえば腕に関してだが、傷跡を隠すために手袋を付けることにした。傷跡を晒すわけにもいくまい。それから、顔の方は髪で隠せそうだったので、そうした。

元から長い髪だった。幼い頃から髪について親が厳しかったせいか、髪を切ると背徳感を感じてしまって以降、切っていない。確かにかなり伸びているが、切るのは躊躇される。やめておこう。

…なんだか多く文字を書いた気がする。使えなくなった腕のリハビリにもなっているといいが。なんだか疲れたから、今日はこれで終わろう。


45日目

少し時間が空いてしまった。実質少しではないが、体力付けをするのに時間がかかってしまうのも無理はない。というか、ほとんど変わった気はしていないが。

しかし、武器はまともに扱える。身体も動く。まだまだ弱いだろうが、調子は戻ってきたように思う。

それから、少しではあるが、軍員と話すこともした。あまり会話は得意ではないが、みんな良い人だった。少なくとも、私が見た中では。

みんな、強い意志を持っている。みんな、見上げるほど高いところにいる気がする。みんな…

私では足りないかもしれないが、守りたいと思った。


48日目

あれから少し落ち着いた。ゆえに少し、入隊してからの自分のことについて考えてみた。

入隊から数日は順調だったものの、大きな怪我をしてしまった。そして今に至る。

…ではもし、もっと私が注意して怪我をしていなければ?いや、そもそも軍員の人間ともっと関わっていれば?そもそも入隊していなければ?

…様々な、可能性を考えてしまう。もちろん、どれもIFに過ぎず、過ぎてしまったことなのだが。

しかし、それによって私には「可能性の残滓」しか残されなくなってしまった。

残りカス、塵芥のような、微かな可能性だ。まぁ、元より少なかったのだろうが。


しかし、クヨクヨしていても仕方ないだろう。

自分で選んだ道だ。自らの意思で強くなることを望み、入隊した。後悔はない。

過去の自分であれば、諦めていたかもしれない。でも今は違う。少しは、マシになっただろう。

もっと強くならなければいけない。私のためにも。これが、仲間のためにも繋がればいいのだが。

私に残されたのは、もう…これしかない。

…いいのだ、構わない。僅かでもいい。残されたものにすがるとして、それが結果的に悪い方向へ転がったとしても。


私は、絶対に後悔はしない。

後悔するような結果になんて、絶対にさせないと。そう決めた。

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