表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

中編


 チュートリアルさんに見送られるようにして、いざプレイ開始だ!

「天狗が飛べるのは、バトルの最中だと一回だけ! 五秒間だけですから、使い方に気をつけてくださいね!」

「あぁ、わかったよ!」

 まずは少人数、六対六のド突き合い。

 倒されたらインターバルをあけて、また復活。制限時間の中で、どれだけ倒せるかを競うルール。非常に簡単だ。

「ということで戦場へイン!」

 ゲーマーではない、剣士として戦場に降り立った。

 パッと見て六人の剣士槍士が並んでいる。

 いずれも額に鉄を呑んだ鉢巻きで、撃剣の胴と袴の裾を脚絆で巻いた姿。もちろん和装である。

 俺もすばやくタスキをかけて、戦闘準備完了。

 空間に浮かんだ数字が、3から2。そして1から0へ!

 ドンという太鼓の音、そして何者かの「戦闘開始!」という宣言。

 六人の戦士に向かって、天狗と河童の魔軍が駆け出した。

 まずは天狗が二人抜け出した。天狗の得物は剣、河童の得物は槍なので、天狗は後からの攻めが良いのではないかと思うのだが。

 あ、やっぱりサムライの槍士に一人殺られた。

 天狗が一人殺られた穴は、すぐに俺が埋めた。

 サッと剣を振る。

 サッと言ったが、槍を払うのと小手を斬る動作が一拍子

 怯んだようだ。さらに首をねらう。サムライの首に電撃のような演出が走る。

 サムライは姿を消した。撤退したようだ。

 槍士の背後から、剣士たちが現れた。

 二人とも八相。一度頭上に構えてから、降り下ろして来るが。

 当然かわして下から斬り上げる胴。それを二人とも。

 俺だけで三人。

 左手は剣から伝わる斬撃の感触に悦んでいた。

 河童たちの奮戦で、さらにサムライを一人仕留めていた。もう一人の天狗は、すでに撤退。

 魔軍とサムライの戦力は、四対二。そのうち一人を俺が一人倒し、逃亡しようとする最後の一人を、河童たちが捕らえた。

 あとは残酷な各個撃破である。

 俺が斬る。河童たちが攻める。復帰した天狗たちも二人がかりで、サムライを斬り刻んだ。

 結果。

 大差をつけて、魔軍の勝利。わが軍は最初に撤退した天狗二人と、河童が一人殺られただけ。

 サムライ軍団に関しては………。

 撤退を何周したのだろうか? というくらいに撤退を繰り返した。

 しかし、ラウンドの勝利など俺にとってはどうでも良い。

 剣を活かすことができた。

 子供の頃から習い覚えた技を、存分に振るうことができたのだ。

 それも、失った左手がよみがえった状態でだ。


 涙がこぼれそうになった。

 もう駄目だ、俺には何ものこされていない。そう思っていた俺に、新しい光が差したのだ。

 仮想現実かもしれない。

 擬似体験に過ぎないかもしれない。

 しかし剣をとる左手はここにあり、人を斬り倒していた。

 よみがえった俺とともに。

 生きる望みが湧く。

 かつてこれほど、左手健在の頃もふくめて、生き生きとすることができただろうか?

 いや、無い。

 剣は現代において不要無用のもの。

 しかしこの世界ならば。

 仮想現実の世界であるならば。

 俺の技術もまた生き生きと閃いている。

 あっという間にレベルが上がる。

 クラスが変わった。

 難敵と誉れ高い称号を持つ者も、すべて俺の前に倒れてゆく。

 慢心してはならないが。一週間ほどで強豪たちに挑むことができるようになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ