(´(エ)`)クマー!
「エリー!とにかく捕えろ!」
「…分かった!」
まだサードの攻撃でお腹は痛いけどさっきよりは動ける。私は周りに生えている鬱蒼とした木々を全部動かす勢いで熊のモンスターに向かってギュルギュルと伸ばした。でも熊のモンスターは木に捕まることなく低木をへし折りながらどんどんと駆け上がってきている。
「何してんだてめえー!」
サードが怒鳴り散らして聖剣を引き抜いた。
「だ、だって捕まえようとしたらもうそこに居なくて…!」
おかしいわ、すごいスピードで走ってるけどすばしっこいわけでもないのに…!
熊のモンスターはもうサードの目の前まで来て二本足で立ちあがって手を振り上げている。
その背丈は四メートル…?ううん六メートルもあるかもしれない。
私はサードを守ろうと木の枝でバリケードを作ったけど、木の枝は一瞬でベキベキと破壊されてサードの頭上に振り下ろされた。
でもサードは私がバリケードを作った一瞬であっという間に近くの木に登って、木の真上から聖剣を首元に向かって突き立てようと熊のモンスターにジャンプし…。
「っつ!」
ジャンプしようとしていたサードに向かって木の枝がバサバサと葉っぱの音を立てながらパンッと当たった。サードは顔を押さえて木の上から落ちそうになるけどバランスを保っている。
「どうした!」
アレンがとっさに聞くけど、サードは私を睨んでくる。
何よと思ったけど…どうやら私がめちゃくちゃにねじ曲げて伸ばしてこんがらがっていた木の枝の一つが今の熊のモンスターの一撃で外れて、その反動でサードの顔に凄い勢いで当たったみたい。
っていうかそれ私が悪いわけじゃないんだから睨まないでよ。
サードにイラつくけどとにかく今は熊のモンスターを拘束して…ううん、もう倒す勢いで攻撃しないとダメだわ!
風を起こして熊のモンスターに向かって放った。
けど思えばサードを守ろうと木でバリケードを作っていたから私の風の攻撃は木のバリケードで阻まれて熊のモンスターには届かなかった。
熊のモンスターは私が破壊したバリケードの残骸の上を突き進んでくる。
でも今がチャンスだわ。
壊れたバリケードを私はメキメキと修復させて熊のモンスターのお腹の辺りをガッチリと拘束した。そのまま隙間もどんどん狭めてギリギリと体を締めあげ…。
「ぎゃあああ!」
「やめてくれええ!」
「!?」
そんな叫び声が聞こえて私は何事!?と辺りを見回すと、ガウリスが後ろから叫んだ。
「エリーさん!蜂たちも一緒に拘束されて締めつけられています!潰れそうです!」
「ウソ、ごめんなさい!」
「エリーが悪いんじゃねえ!おいゴラ蜂ども!エリーが木で熊を絡めとったら攻撃つっただろうが!捕まえてる最中に近寄るんじゃねえよクソが!平和ボケしてんじゃねえぞ!」
サードは怒鳴っているけど、どこに蜂が挟まれているかなんて分からないからとにかく締め上げているのをやめた。
その隙にサードが聖剣を構えながら熊のモンスターの首をかき切ろうと刃を下に向けて飛びかかってヒュンと斬りかかっていく。
すると、熊のモンスターはフッと真上を見てサードの剣を避けた。
「なっ!?」
サードから驚きの声が漏れて、私たちも驚いて目を見開く。サードが攻撃を空かすことなんて今まで一度も無かったのに。
その熊のモンスターの視線の先には黄色い蝶々がヒラヒラと飛んでいくのが見える。どうやら蝶々に目が向いて偶然にもサードの攻撃を避けた…みたい。
でも喉元が見えてる今がチャンス、今私のところから熊のモンスターまで障害物は何もない、だったら全力で風の魔法で喉元をかき切る…!
私が熊のモンスターに向かって思いっきり杖を伸ばして魔法を発動しようとすると、ポッポッと頭に冷たいものが当たった。
と次の瞬間、急激に雨がドッと降って来た。
滝みたいな雨にいきなり打たれて、思いっきり伸ばしていた杖が雨の勢いでポロッと手から抜け落ちて斜面を転がっていく。
「ああー!」
慌てて拾おうとしたけど、思えば杖が無くても魔法は使えると気づいて杖を拾わずまた攻撃しようと手を熊のモンスターに向かって向ける。
でもその一瞬の間に熊のモンスターは忽然と消えていた。
「逃げられちゃうわ!」
ただ雨の勢いが凄くて遠くが見えないだけでまだすぐそこに居るはずと思って追いかけようとすると、サードが私の杖を拾い上げて進むのを阻むように私の体に押し付けてきた。
「やめろ!こんな前も見えねえ土砂降りの中追いかけようとするな!」
サードが怒鳴りながら言ってくる。雨が滝みたいだから怒鳴るような大声でもよく聞こえない。
「朝から雨降りそうだなぁーって思ってたけど、まさかここで降るなんてなぁ!」
アレンも大声で言ってくるけど、アレンの大声でも所々ブツブツと声が途切れるように聞こえる。
私は上を見あげた。
…もしかして今までの全てが熊のモンスターに宿る幸運なの?
クシャミをされたせいで拘束できなかったこと、サードに木の枝が当たったこと、私の作った木のバリケードで風の攻撃が当たらなかったこと、蜂たちを巻き込んで締め上げてしまっていたこと、蝶々が熊の傍を通過したこと。
…もしかして朝から雨が降りそうな空模様だったことに、この突然の雨も?
全てが偶然かもしれない。でも確実に熊のモンスターが危険になった瞬間に熊のモンスターに有利な出来事が起き続けている気がする。「熊には勝てるが幸運が邪魔」といったハルピュイアの言葉ってこういうことだったのね。
それにしても酷い雨だわ。こんな雨じゃ質のいい特殊な服でも雨が染み込んじゃう…。しかも稲妻も光ってるし、ゴロゴロと低く怪しく鳴っている。音からして近いわ、ここら辺に落ちないわよね。
「蜂の野郎どもはどうした!」
「羽が濡れたら飛べないのでは!?」
ガウリスの言葉にサードは納得した表情になって、アレンを見た。
「この辺に氾濫しそうな川はあるか!?あの熊の幸運なら俺たちにそういう事態が起きるかもしれねえ!」
「川はない!」
アレンが大声で言い返す。
「土砂崩れの危険は!?」
サードが重ねて聞き返すと、
「ここら辺は向こうのガレ場と違って木がたくさん生えてるから大丈夫!けど地面の水を吸い込むキャパがオーバーになったら木ごと滑るかもしんね!でも山の天気変わりやすいから!晴れるのを期待しよう!」
と言った瞬間、近くの木にガァンッと雷が落ちて木の破片が私たちの頭上を通過して飛散していく。
アレンはギャアア!と頭を押さえて叫びながら、
「エリー!」
と私を抱え込むようにしがみついてきた。
…そりゃ私は自然のあれこれを弾き飛ばせるけど、これって普通、女が男にする対応でしょ?
「雷なら私が弾き飛ばせるから!これからどうする!?」
私も皆の耳に届くように怒鳴るように言った。
サードが少し悩むように視線を巡らせると、サードがギョッと目を見開いて私の後ろに向かって声を張り上げた。
「ガウリース!」
驚いてガウリスを振り返ると、ガウリスの背後に黒い塊…熊のモンスターが二本足で立って腕を振り上げていた!それも目が真っ赤に光っていて、口を大きく開けている…!
激しい雨で視界も音もほとんどふさがれていて、足音でも強い獣臭にも誰も気づけなかったんだ!
私の見ている目の前の動きの全部がスローになる。
ガウリスは後ろを振り向かなくても瞬間的に嫌な予感がしたのかゾッとした顔になって、後ろを振り向きながら槍を構えようと高く持ち上げて後ろを向こうとする。
でも一瞬遅かった。
熊のモンスターは腕を振り上げて降ろしている。ガウリスは攻撃よりも避けるのを優先してわずかに後ろに下がったけど爪がガウリスにどんどんと近寄って…ああダメ、ガウリスが爪で引き裂かれる…!
その瞬間、カッと辺りが光った。
思わず目を覆う。雷かと思ったけど、でもさっきみたいに雷が落ちた音なんてしてない。
チカチカする目を開けると、目の前にさっきまでなかったはずのターコイズブルーの物体が見えた。
…なにこれ。
思わずターコイズブルーの物体をツンツンすると固い鱗で覆われているのに気づく。するとズズズとターコイズブルーの物体が動き出して、頭をもたげてヌッとその顔が見えた。
発光しているような金の目、トゲのような毛、長い角、長いひげ…。あれ、これって…。
「ガウリス…?」
ドラゴンの姿のガウリスじゃないの?え?え?何で?何でガウリスがドラゴンになったの…!?もしかしてさっきの攻撃でガウリスの逆鱗に触っちゃったとか!?
ガウリスの海の上でのあの大暴れを思い出して血の気が引いた。
幸運の付きまとう熊のモンスターだけでも大変なのに、ドラゴンのガウリスとも戦わないといけないの…!?あんな自然災害を全て引き起こすようなガウリスを相手にしながら…!?
思わず口からヒィ、と息が漏れた。
ガウリスからグルルル、という唸り声が聞こえて私たちを見据えてくる。
「ガウリス落ち着け!俺たちだ!俺たちだよ!」
アレンがわぁわぁ叫んで、私もガウリスからの攻撃に備えて全方向に無効化の魔法を使う。
あ。
思えば私は自然の現象を無効化できるんだから、この一帯周辺に無効化の魔法を使えば熊のモンスターを雨で見逃すことも無かったんだわ。
でも今更よ、今更気づいたって意味なんて無いわ、私のバカ!
ガウリスからどんな攻撃か来ると警戒し続けていると、ガウリスは頭をこっちに動かして、あっちに動かしてと挙動不審な動きをしている。
ガウリスはそのまま自分の長い体躯をずーっと追いかけるように見ていって、驚いたように、
「ギャアアアアアア!」
と叫んだ。
熊のモンスターは地面が揺れるぐらいのガウリスの叫び声と巨大な体躯に驚いたようにわずかに逃げたけど、それでも二本足で立ち上がって腕を振りかぶって、ガウリスの体を切り裂こうとした。
ガリガリという音が雨の中でも響いたけど、ガウリスにはちっとも効いていない。むしろベキッと音が聞こえた。見ると熊のモンスターが咆哮を上げながら二本足で立って前足を押さえるような行動を取っている。
もしかして、爪が折れたとか…?
「グゥウウウ!」
熊のモンスターは四つ足になって、二本足になってとせわしなく動き回る中、ガウリスはわずかに空中に浮いて私たちを見た。
その顔を見ると怒り狂っている顔じゃなくて、初めてドラゴン姿のガウリスと出会った時のような穏やかな印象。それどころかどこか困惑しているようにも見える。
「ガウリス!声聞こえるか!」
サードが雨にも負けない大声で言うとガウリスは大きく頷いた。海の上のあの時とは違って声もしっかり届いているわ。でも…。
「どうして」
サードを思わず見るけど、サードは、
「どうでもいい、熊を殺せ!」
とガウリスに指示を出す。
ガウリスは、少し戸惑ったような顔つきを見せたけど、するする動くと熊のモンスターにグルリと巻き付いて締め上げ始めた。
「グアァア!」
熊のモンスターは目茶苦茶に手を振り回してガウリスの体を叩きつけたりガリガリと引っかいて噛みつくけど、やっぱりドラゴンの体は頑丈で強いみたい。ガウリスは全く痛そうな顔をしないでギリギリと締め上げていく。
唸り声のようなうめき声のような咆哮を上げながら熊のモンスターはジタバタともがいて脱出しようとしていたけど、段々と動きが鈍くなって上を向いて口を大きく開けて痙攣して、口端からあぶくを出して動かなくなった。
「…倒した?」
隣にいるサードに聞くと、サードは首を軽くかしげ、
「気絶しただけかもしれねえ。今のうちに止めを刺すか」
サードは聖剣を抜こうとしたけど、空でまだ雷がゴロゴロいっているのを見て私を見てくる。
「あの熊のところまでこの無効化するやつ広げろ。聖剣に雷が落ちたらたまったものじゃねえからな」
私は頷いて、言われた通り無効化の空間を広げると、サードは聖剣を抜いて熊のモンスターに近寄って熊の後ろ首に聖剣を突き立てる。
スルッと熊のモンスターの首が地面に落ちた。
「うわあああ!血だぁあああ!」
誰の声!?
驚いて喚いている声の正体を探すと、かごの中のエーデルだ。何だ、驚かさないでよ。
「だってこのチャンスを逃がしたら次は無いかもしれないじゃないの。そんなに騒がないでよ」
私が言うと、エーデルは私を見上げた。
「…お前は何とも思わないのか?血が、血が出てるのに!?」
「それは…あの熊のモンスターはあなたたちの国王と女王を飲み込んだから、二人を助けるためじゃない」
「…助け…」
するとサードは終わったとばかりの清々しい顔で私たちに目を向けてきた。
「ついでに解体して肉取るか。そうしたらしばらくは旅先の飯にも困らねえだろ。ガウリス、離していいぞ」
サードが言うと、ガウリスはスルスルと首のない熊の胴体から離れる。
「食えない分の肉はウィーリで売れるかもなぁ」
アレンはずぶ濡れになった髪の毛を上にあげながら近寄っていく。
サードも髪の毛を後ろに流してからアレンに声をかけた。
「これの心臓は高く売れるか?」
「売れるかなぁ。毛皮は売れると思うけど」
「俺のいた所じゃ熊の心臓は金と同じ値段で売れんだ」
「マジか、じゃあ持って行こう」
アレンも自分専用のサバイバルナイフを手に取ると、サードと談笑しながら毛皮を剥いで解体していく。
エーデルは驚愕の表情で口を押さえて私を見上げた。
「お前らいつもこんな残酷なことしてんのか!?」
「…残酷…?」
エーデルの言葉にカチンときた。
あんなに死ね死ねと連呼して実際に人を傷つけて殺してもいたくせに、いざ何かの命を奪ったら残酷といわれるのは納得がいかないわ。
エーデルにだけは残酷と言われる筋合いなんてない。
そう憤慨する気持ちが湧いたけど、それでもハタと思い直した。
…でも私だって冒険の最初のころはそれまで生きていた生き物をサードがしめて解体しているのも、アレンが捌いたりするのも残酷だわ生き物が可哀想だわって思って、それでできた料理が気持ち悪くて食べられなかったっけ…。
でも冒険をしている中で分かったことは、一番無いと困るのは食料だということ。
そう思うと二人のしていることは自分たちの命を繋ぐためのことで、残酷というのとは違うと思う。
「あ」
「お」
アレンとサードが同時に声を出したから二人の方向をを見ると、ドラゴンの姿が消えていて代わりに人間姿のガウリスがそこに居る。
「ガウリス、これで素っ裸三回目だな。盾で隠しとけよ」
アレンがガウリスの盾を拾って渡している。私は何も見なかったことにして顔を背けた。
「大丈夫です、服はあります…」
「っつーかお前、普通に戻れるんだな?」
ゴソゴソと荷物入れを漁っている音とサードの声が聞こえる。
サードの質問は気になるから耳を傾けていると、困惑したガウリスの声が聞こえてきた。
「私にもよく分からなくて…熊の爪が当たると思ったらあの姿になっていて、また気づいたら元に戻っていました」
「じゃあガウリスは大丈夫なのね?怪我はしてないのね?」
顔を背けながら聞くとガウリスはハッと気づいて慌てて服を着だしたみたいで、
「ええ大丈夫です、まともに当たる前にあの姿になったので」
と言う。
それならいいんだけど、何でガウリスはドラゴンになって普通に元に戻れたのかしら。自分の意思で変化して元に戻ったわけでもなさそうだし…。
「エリー、ガウリス服着たよ」
アレンの言葉に振り向くと、ガウリスは例の白くて長い布を巻き付けたあの服を着ていた。
アレンとサードは手を休めず熊の毛皮を剥いで腹を切り、解体している途中みたい。私は三人の近くに寄っていく。
「やめろぉ!俺をそんなグロいやつに近づけるなぁ!」
エーデルがかごの中でキーキーと喚いている。
「エリー、そこにおいとけ。腹の中が見える特等席だ」
サードがそう言いながら聖剣で地面をさすから、私はそっとサードの言う場所にかごを置いておいた。
別にサードの言う通りにしなくてもいいのだけれど、散々死ね死ねと言って自分も人の命を奪っていたくせに、自分のことを棚に上げて残酷だと言われたのに腹が立ったから。
「嫌だぁあ!やめろおお!人間なんて残酷だ!全員死ねばいいんだぁあ!うわああああん!」
エーデルはかごの中で手足をジタバタと動かして目を手で覆って泣き出してしまった。
「てめえは楽しさ半分で人間同士を争わせて殺してるじゃねえか。てめえのやってる方がよっぽど残酷だろ」
サードの言葉にエーデルは目を剥いた。
「人間の方が残酷に決まってんだろ!てめえなんて楽しそうに俺をいたぶって…!」
サードがエーデルに視線を向けるとエーデルは慌てて口をつぐんだ。
「俺は依頼があった時と、飯になりそうなモンスターだの動物だのを仕留める時しか生き物は殺さねえ。てめえは人の不幸が楽しいって理由で生き物を殺してるじゃねえか。俺とお前、どっちの考えの方が残酷だよ?」
エーデルは一瞬目を瞬かせたけどすぐに体を前に乗り出す。
「ふざけんな!いつの時代も人間は残酷だって決まってんだよ!今だっててめえたちは楽しそうに熊を殺して解体して…!」
「エーデルさん」
ガウリスの有無も言わせない声に、エーデルは体をすくませて黙り込んでガウリスを見た。
「いたずらに生きているものを傷つけ殺める行為と、命をいただいて自分の生きる糧にするのは根本的に違います。
前者はただ悲しむ者が増えるだけ、後者は何かの命を頂戴した分、自分の生きるための力になります。同じように命を取る行為だとしても、それが同じ行為だとひとくくりにするのはよろしくありません」
ガウリスがそう言うと、アレンも頷いた。
「そうそう。生きるためには食べないといけないからなぁ。それにサードは人をいたぶるのは好きだけどエーデルみたいに楽しいからって理由でモンスターも動物も殺したことなんてないぜ。基本面倒くさがりだもんな」
「ったりめーだ、特に返り血なんてろくに取れねえしクリーニングに出すとこれは何の血だって話から始まって面倒くせえ。誰がそんな時間も金も無駄にかかることなんてするかよ」
エーデルは顔から血の気が引いたような顔色になって、細かく震えた。
「何だよ…何だよてめえら…じゃあ、俺のほうがそっちの黒髪の男より残酷だって言いてえのかよ…神と精霊の中間の存在の俺が…」
「そうよ。今更分かったの?あなたって本当に馬鹿ね」
思ったことをそのまま言うと、エーデルは黙り込んで、「うえっ」と声を漏らしてめそめそと泣き出した。
「…エリーの言葉ってわりとキツイよな」
「女性の言葉は心にきますからね」
アレンとガウリスがヒソヒソと話し合っている。でもヒソヒソでもちゃんと聞こえてるんだからね、特にアレン。
「お」
サードが声を上げた。
「何かあった?」
私が声をかけると、サードは熊のモンスターの体に手を突っ込んで、何かを引きずり出して私に見せて来た。
何かの臓器かと思って少し引いたけど、それを見たアレンがあっ、と叫ぶ。
「もしかしてこれ、国王と女王じゃねえの!?」
「ウソ!」
近づくと赤い膜…ううん、血に染まっているけどもしかして元々は白い繭だったのかしら?薄い繭に包まれた中に大きい蜂が二匹並んでくるまっているわ。
サードは手で繭をビッと引き裂いて中から二匹を取り出し、エーデルの前に差し出した。
「これ、てめえらの国の国王と女王か?」
めそめそ泣きながらも、エーデルは頷いた。
カナダでヒグマに会ったら、後頭部を両手で抱えてその場にしゃがんで足の間に頭を入れるといいらしいですよ。そうすると頭がはじけ飛ばないから身元がすぐに分かるんですって。HAHAHA。
そんなカナダでオリンピックが開催される時に届けられたという質問と、職員の返答をどうぞ。
Q,カナダでシロクマは見られますか?
A,あなたの酔っている程度にもよります。




