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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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初代皇帝の語る昔話

私は戦いが嫌いだった。


痛いのはいやだし死にたくない。何よりそこかしこで血の臭いと傷口が悪化し()んでいる臭いと死臭が日常的に漂っていてな、物心つく時から嗅いでいてもどうにも慣れずいつも気分が悪かった。


我が部族も子供の時分から戦いに参加していたさ、そしてそのほとんどが白髪が生えるより先に戦いで死んでいく。

物心つくころからむごい死に様の死体を毎日のように見てきた、皆はそんなもの足元の雑草のようにあってないもの程度に扱っていたが、私はそれを見る度に戦いに出たら自分もいずれああなるのかと思うと足がすくみ、口先で人をいいくるめ目いっぱい戦いから逃げていた。


だが成人を迎えたある時、いい加減一人ぐらい人を殺せ、でなければ部族内から追い出すと言われてしまったんだ。

その時も目いっぱい逃げようとしたが…結局気の落ち込むところで話の決着がついた。


拷問され弱っている隣の部族の男を、隣の部族から見える高台で見せしめに殺すというものだ。


あの男はかろうじて息がある程度で体も腐り始め、ウジが湧いてるような状態だった。

そんな状態の人間なんてできれば触りたくないし、放っておいてももうすぐ死にそうな奴だ、なのに何でわざわざ手をかけなければならないと思ったね。


しかし部族内から一人放り出されても困る。


しょうがなく私は族長と、同じ部族の男らに見張られながら高台に行って…死にかけている男の首を切り落とした。

その首は高台から隣の部族の土地まで転がっていき、族長らには「よくやった、これでお前も一人前の男だ」と肩を叩かれ褒められたが…何だったんだろうな、あのセリフは。


今でも人を殺して何が一人前になるのかさっぱり分からん。

何よりその男の流れる血、転がっていく首を見て吐き戻している私にかける言葉が他にあったろうに。


そうして高台から去る時に見えた。転がった男の首に駆け寄りすがりつき泣いている…恐らく男の妻と子供の姿が。


嫌なものを見た、見なかったことにしようとすぐ目を逸らしたが、同じ部族の男たちがその女と子供を遊びのように射殺(いころ)したんだ。あの時の断末魔と泣き叫ぶ声は…。


…トラウマになったんだろうなぁ。


毎日夢の中でそのシーンが繰り返された。男の首を切り落とし、吐き戻し、男の首に妻と子がすがりつき、その二人が矢で射られ断末魔をあげ泣き叫ぶ…。それが延々と続くんだ。


毎夜毎夜繰り返される悪夢で頭はガンガンと痛み、余計寝付けなくなった。

睡眠もろくに取れず頭も回らなくなり、家からも出られなくなり、そんな外に出られない自分が情けなくて落ち込んでいた。


そんなある日のことだ、寝っ転がって天井を黙って見ていた私はフッと思った。


何で私はこんなにも悪夢に(さいな)まされて体が弱り家から出られなくなったんだ?

誰が私をこんなにした?

人を殺せと命じた族長たちか?

それとも度々争いをしかけてくる他部族か?


いいや、そのどっちもだ、この世の中が狂っているから私も狂ったのだ。


そこで私の中の何かがプツンと切れた。


そして決めた。


私は自分の部族を含め近隣の百を超える部族どもを根絶やしにしてやる。自分が死ぬまでに最低でも九割の部族を消滅させてやると。


私はこの王冠を二日かけて作りあげ、近辺で一番の大きさと武力を誇る部族の元へ一人向かった。


あの部族との交戦だけはやめておけと我が部族の者がこぞって言うほどの戦闘部族でな、即座に捕まって殺されそうになったが、そこから私の独断場だ。


「私は天使を通じ神からこの王冠を賜った。その過程でこの部族の族長と話をせよと言われここへ来たのだ、私に手を出すでない、武器を収めよ」


どんなペテン師になるのやらと親に呆れられ、大人になるまで争いから逃げ続けていた調子のいい口先が、そして毎晩悪夢にうなされほとんど頭が回らないままヤケになって恐怖心もなくなっていたのも役に立った。


首に武器を突きつけられ今にも殺されそうなのに自分でも驚くほど落ち着いた威厳のある態度で堂々と話ができた。


こんな戦いをやめるのだ、手を取り合いまとまる時がきた、これ以上親が悲しみ、妻が悲しみ、子が悲しむ世界を続けるべきではない、こんな部族同士の小競り合いで今日生まれた子でさえ二十年生きるか生きないかの若さで死んでいく。

今だ、天使や神が手を差しのべた今からこんなあり方を変えるのだ、争う世界より平和な世界を我々の子供たちに残したいと思わないか、さあお前たちはどうする。神、天使、私と手を取り平和への道を歩み出すか、それとも私の手を退けこれからも争い血を流す毎日を繰り返すか…。


そんな偽善的な耳に心地よい話をとくとくと騙って聞かせたら呆れるほどその場にいた者たちは私の言葉に耳を傾け、涙を流し私の手を取った。


他の部族にもそのような話を騙ってやったさ。そうして族長やその立場に近いリーダーなどと手を取り合う度に、ざまぁみろと心の中で舌を出して大いに笑っていた。


こんなペテン師の言葉に丸め込まれるなんてとんだ大馬鹿どもだ、何が族長だ、何がリーダーだ、そんな偉い立場にあるくせに口先だけで生きてきた私にこんなにも簡単に騙されるとはと実に愉快だった。


…ん?それは普通に平和のために説得をしているだけじゃないかって?


いいや、私の計画ではすぐ内部分裂が起きるはずだった。

私が真っ先に声をかけ手を取り合った部族たちの中には激しく対立する同士の戦闘部族がいくつも混在していたんだ、だからいずれ内部でいさかいが起き、激しく対立し、そして互いの戦力を削り合い弱体化するはず。

そこで更に敵対する部族を投入し次々に戦わせ、部族の数を大いに減らす考えだった。


だが実際は内部分裂なんぞ起きず私の後ろを皆がついてきた。

皆が私を支え、前に立たせ、守り、鼓舞し、団結し、その勢いに飲み込まれるように数々の部族が私の後ろに続いてきた。


そこまで来ると段々と私は怖くなってきた。

私の計画では大半の部族がとっくに消えているはずなのに、皆がまとまって私の後ろに立っている。まるで背後に武器を突き付けられ、前へ進め、前へ進め、と脅されている気持ちだった。


…だがきっと、どの部族も多かれ少なかれ争いの日々に辟易(へきえき)していたのだろうよ。


そうして後ろに続く者たちにせっつかれるがまま他部族と交渉を重ね、百を超す部族のほとんどは一つにまとまって…最終的にずっと前に立っていた私が全ての部族をまとめ上げた偉大な初代皇帝の立場に自然と収まった。


…しかし偉大な初代皇帝なんて名ばかりだ。


ペテン師の役目を終え皇帝の立場で政治というものに関わってから十分に分かった、私は人の上に立つ器じゃない。


配下の立場であった元族長やリーダーたちの働きは本当にすごかった。

私が椅子に座り皆の話にウンウン頷いている間に小さい反発があればあり得ないスピードで鎮め、帝国をまとめる法律を造り上げ、国境線を決めリベラリスム大帝国を興し、即座に繁栄させてしまった。


こんなペテン師に騙されてと見下していた者たちはこんなにも有能揃いだったのかと思うと改めて怖くなった。


もし私の王冠は神や天使から賜った物ではなく、それも私が口先だけのペテン師だと知られてしまった時、この有能な者たちは一体どのような行動にでるのかと…。


そこから新たな悪夢が始まった。


こいつの王冠は神から賜ったものではない、こいつは一度も剣を持ち人と戦ったこともない臆病者のペテン師だと糾弾され、帝国中の者に悪態をつかれ石を打ち付けられ殺される夢だ。


私の子らが一人でも有能なら救いがあったんだがな、残念なことに全員が私に似た口先だけの無能揃いで、神から賜った王冠さえあれば大帝国も大丈夫とヘラヘラ笑い安心しきっていた。

このままでは悪夢が現実になるとゾッとした。子供に王冠が譲られたら知られてしまう、王冠になんの力も加護もないことが、そうなれば私も子供らも殺される。


ともかく王冠をどうにかしなければならない、しかし大帝国の象徴になってしまった王冠を安易に捨てるも処分するもできず悩んでいた時だ、魔族が現れたのは。


あの魔族は、自らはこの地に住まう良い精霊だとうそぶき私に近寄ってきた。


「お前の持つ金銀財宝を全て私に差し出し私の頼みを引き受けるのであれば、その王冠を他の者に一切触れられないようにしてやろう」


自分や子供らの命には代えられん、二つ返事で頷き、そのまま精霊とうそぶく魔族に連れられ、完成して十年は経っていたこのエディンム地下墳墓の前に連れて来られた。


「この中には大量のナムタルが発生している、原因は分かるか」


分からない、と私は答えた。すると魔族は返した。


「葬儀が不十分で死体を雑に扱われた恨みからナムタルは生まれた」


まさか、と私は驚いたよ。

幼いころから酷い腐敗臭が漂っているのが苦痛であったから、死んだ者の埋葬はしっかり行うように言いつけていた。


だが魔族が言うには、墓守の者たちは広い地下墳墓の中でそれぞれの身分に応じた部屋に遺体を運ぶのを面倒臭がり、魔導士に転移の魔法陣を描かせたあとは階段の上から遺体を放り投げ、各部屋へ遺体をゴミのように排出させていた。

それもこの町の聖職者へ年に一度慰霊を行うように資金を渡していたが、その金は聖職者が着服し慰霊など一度もされていなかったと。


愕然(がくぜん)としたが、それをその時知らされてもどうにもならん。魔族はそこで自らは魔族であると明かし、続けて言った。


「可哀想ではないかナムタルたちが。大半がこの大帝国を作るため犠牲になった者たちであるのに、そのような仕打ちをされ無念のあまり悪しき精霊となりこの地下墳墓を今もさ迷っているなどと」


そう言いながら魔族は私を地下墳墓の中へ片手で押し込みつつ、


「であるからして皇帝であるお前は責任を取りこの中でナムタルの王となるがよい。これから先は王として地下墳墓の領地内へ立ち入った者を殺し、その魂を私へ献上する役職を与える」


その言葉のあと、ナムタル…緑色のモヤの塊が現れ人間のような形になると、ウジャウジャとゾンビのように私に群がってきて…。


意識を失う直前「財宝だけは我が子たちに返してくれ」と叫んだが、魔族は、


「いいや財宝はこの中に置いておく。ナムタルに命を取られるのが先か、宝を探し出すのが先かの命を懸けたお宝探しゲームだ。おっと、だが王冠の約束だけは守ってやろう、王冠はお前のものだ、永遠にな」


と楽しそうに笑うだけだった。


…はは、笑い草だな。ペテン師として生き、最後は魔族のペテンで終わったんだ。

ゾンビ映画は「ショーン・オブ・ザ・デッド」が最高です。

サスペンスなら「羊たちの沈黙」「レッドドラゴン」

ホラーなら「エスター」「エクソシスト(1973年ディレクターズカット版)」

壮大な失恋映画なら「ミッドサマー」


好きな映画でその人の性格が大体分かると言いますが上記のみだとサイコパスですが、私の一番好きな映画は「となりのトトロ」なので十分中和できる。


あとパッと思いつく限りこんな映画好きっての載せます。この後書きにある映画、上記の含め全部好きって人は勝手に心の友認定するね(ジブリ・ディズニー・ピクサーは良作が多すぎるので割愛)


コメディ

…天使にラブソングを/ナイトミュージアム/テルマエ・ロマエ/超高速参勤交代/ホームアローン/黄金狂時代/ポリスアカデミー/帰ってきたヒトラー/魁!!クロマティ高校


ヒューマンドラマ

…8mile/34丁目の奇跡/ニュー・シネマ・パラダイス/ショーシャンクの空に/バルトの楽園/椿山課長の七日間


長編アニメ

…AKIRA/パプリカ/千年女優/アイアン・ジャイアント


SF?

…デイ・アフター・トゥモロー/猿の惑星ジェネシス


アクション?マーベル?

…ターミネーター2/X-MEN/デッドプール/ヴェノム/スーサイド・スクワッド


ミュージカル

…オペラ座の怪人(2004)/レ・ミゼラブル/グレイテストショーマン


戦争

…ハクソー・リッジ/戦場でワルツを/トンマッコルへようこそ

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