黒魔術を習おう
カーミと合流した次の日。私たちは宿から出発して少し向こうの貸し倉庫に停めてあるクッルスに向かっている。
「リンカは?これからどうするの」
聞いてみるとリンカは少しうーん、と悩んで、
「私はここでお別れするわ。色んな経験をするのが私の修行だから」
そっか、と頷いて、
「頑張ってね」
と声をかける。私の言葉にリンカは微笑んで頷いた。
それにしても三回も対戦したラスボスとこう朗らかに話す関係になるだなんてね、しかも私は忠誠も誓って黒魔術も使えるようになったし…。
それにしてもあまり目立たないナディムがまさかの魔族で、インラスも黒魔術を覚えていたのには驚いたけど。…ん?ちょっと待って、ナディムって聖職者にしがみついたとか言ってなかった?魔族なのに?
「ねえナディムって本当に魔族?魔族なのに聖職者にしがみついたの?」
私の質問に前を歩くマイレージは振り向いて、
「あいつは魔族らしくねえ奴だったぜ。なんつーか…」
マイレージはそこで区切りるとリンカを見て、
「そいつみてえな感じの野郎だった。魔族なのに神を称える讃美歌をよく歌ってたな」
「讃美歌?俺も讃美歌うたえるぜ。神は〜おっしゃられました~♪汝を愛し〜…愛し〜ルルル〜♪ふんふふんふ〜♪」
アレンが横からニュッと出てきて歌うけど、
「うろ覚えじゃねえか、すっこめ」
マイレージは消えろとアレンの背中を押して遠くに追いやる。
すると私たちの会話を聞いていたリンカは、恐る恐る私たち…っていうか主にサードに視線を向けて、
「あの…そのナディムって魔族の元に向かうなら、その、私も一緒に行ってもいい?駄目じゃなければ…」
ってオドオドと声をかけている。
魔族なのに讃美歌を歌うナディムに近しいものを感じて興味を持ったのかしらと見ていると、サードは表向きの顔ながら嫌そうな顔をして振り向いた。
私が黒魔術を使えるようになったならもうリンカは用無し、そこまで連れて行くとなると宿泊代に食事代がかかるとか思ってるんでしょうね、きっと。
金が絡んだサードを説得するのは至難の技よ、リンカ…。
すると他人のふりをしつつ近くを歩いているカーミが独り言のように呟く。
「いいんじゃない?そういう神好きな特殊な魔族同士なら話も合うだろうし。だったらエリーさん、気分の良くなったナディムさんにも忠誠誓えてより強くなるかもよ」
その言葉にサードが反応した。でもお互い他人のふりをしているからカーミを見ず、
「二重に忠誠を誓うのはありなのですか」
と言うとカーミは返す。
「ありあり全然あり。やれるんならいくらでもオーケー。ただ『俺以外の魔族にも忠誠誓うとかてめえ何様だ』って基本的に魔族はブチ切れるっぽいけど、リンカさんもそのナディムさんも温厚そうだし?大丈夫でしょ」
それならまだリンカは使い道はありそうだと感じたのかサードは振り向いた。
「いいですよ、共に行きましょう」
…。むしろリンカに忠誠を誓って早々他の魔族に忠誠を誓わせようとするんじゃないわよ、リンカに失礼じゃない。
ほらリンカだって何とも言えない微笑みを浮かべているし…。
「ごめんなさいね、あいつ本当にああいう性格で…」
「あ、ううん、いいの、魔界だと大体こうだったから…」
そんな話をしているうちにクッルスを停めている貸し倉庫にたどり着いて、管理者に挨拶とお礼を伝えてから出発した。
人の視線がなくなったサードは裏の顔になって私に視線を向ける。
「それなら早速黒魔術を覚えろ。カーミ、お前が覚えてるやつで良さそうなもんがあったな、攻撃されそうになったら自分の体を別の空間にずらすあれだ」
「ああ、しばらくそのままだと体がどっかに消えちゃうアレ?」
「やだそんなの覚えたくない」
思いっきり首を横に振るけど、サードは私を無視してカーミに話し続ける。
「その他に何かいいもんねえか」
「拷問に使えそうなやつあるけど」
「それは駄目だ、エリーが覚えたら何に使うか分かったもんじゃねえ」
その言い様何かイラッとした。
「それ覚えるから教えて」
サードを押しやってカーミに詰め寄ると、カーミはおかしそうに笑う。
「二人が覚えて欲しいのと覚えさせたくないの全く正反対じゃん、どうしろっての俺に」
カーミはそう言いながら頬杖をついて私たちを見る。
「けど黒魔術の原本あんでしょ?それ見ながら覚えたいの選べばいいんじゃないの?」
「前よりは読めるようになったがまだまだ虫食い状態で選べる状態じゃねえんだよ」
そう言いながらサードは黒魔術の本を広げて、ノートみたいな紙を三枚取り出して広げる。
「完全に分かってるのはこの三枚、計六ページ分だな」
身を乗り出してみると、それは私にも読めるわ。それもきっちりと均等に書かれた読みやすい文字…。えーと、
『「ウェザード」…自然災害を誘発する魔術。自身の足で歩き術をかけるもの。自然災害を起こしたい地域を毎日丹念に歩き呪文を唱える。最低でも一年、しかし年数をかければかける程確実に効果があり、その地に最も起こりうる自然災害が誘発される。そのやり方は以下の通り…』
「ん!?これってクレンジ国のイゾノドリコ町でキシャがやっていたものじゃないの?なにこれ…!」
呟くとサードはニヤと笑う。
「ミラーニョが黒魔術の本を訳したもんだ。ジルに見つかっても読めねえようにするためだろうな、人間界の文字で訳されてる」
「でも何で三枚だけ?」
アレンが言うとサードは更にニヤニヤと笑って、
「ミラーニョは俺がそのノートを狙ってると察してからずっと警戒してカバンに入れたまま脇に抱えていやがったんだ。その状態で丸ごと盗んだのがバレたら何が何でも取り戻されるだろ。だからミラーニョのカバンからノートを拝借して手早く数枚だけ破いて元に戻したんだ。その夜には暖炉にくべて燃やしやがったからその前に抜き取れて良かったぜ」
ケケケ、とサードは笑う。
ミラーニョ…頭は良くてもサードの盗みの技術には勝てなかったのね…。
サードはニヤニヤ笑いを収めると黒魔術の本をめくり、あるこうもくを指さす。
「これはシュッツランドで俺がかけられた術だ。暗闇で人を動けなくする…」
「あ、それ黒魔術の初歩の術だぜ、暗闇と仲良くなろうぜってやつで」
暗闇と仲良くって…。表現は楽しそうだけど、実際かけられたことのあるサードと私は微妙な顔でカーミを横目で見る。
するとアレンが口を開いた。
「楽しそうな黒魔術とかないの?」
楽しそうな黒魔術って矛盾してんのよ。
するとカーミはパッと顔を明るくして、
「楽しいのあるぜ!俺は使えないけど死ぬまで踊り狂わせる術!それ疲れても失神しても足がボロボロになって骨がむき出しになっても術をかけた全員が死ぬまで止まんねえんだって。
大昔一つの町全体にその術かけた人がいたんだけど、町の連中は口から血の泡吹いて白目剥いて泣き叫んで最初に死んだ奴が腐り始めても止まんなくて『誰か止めて』って悲鳴が町のあちこちから…」
「そんなの怖いですう」
ヒズは悲しそうに耳を抑えてイヤイヤと首を横に振っている。
「えー、死ぬまで踊り狂う絵面めっちゃ面白そうだけどなぁー」
「もっと優しい黒魔術はないんですかあ?」
ヒズはそんなこと言うけど、優しい黒魔術って矛盾してんのよ。
「人の体を癒す魔術あるぜ。いわゆる回復魔法」
カーミの言葉に私は顔を上げる。
それは覚えたいかも。自然を操る魔法しかできないから回復系なんて全然できないし。
「それ覚えたいわ、回復魔法」
するとカーミはニコニコと笑いながら私を真っすぐ見てくるから私はウッ、と引いた。
だってカーミがこういう良い笑顔を見せてくる時って薄ら恐ろしいこと言うんだもの…!
「一人の体の悪い所治したら、近くにいる人がその部分そっくりそのまま悪くなるんだ。下手したら周りの人の悪い所が全部自分にかかって死ぬ」
やっぱいい、と私は首を横に振った。
うーん、やっぱり黒魔術って人に害のある魔法が多いわ。どうしよう、私が覚えたくなるような魔法ってあるものかしら。それともカーミは私が嫌がりそうなものをわざとピックアップしているだけ?
あれこれと悩みながら改めてカーミに聞いてみる。
「もっとこう、これは覚えておいたほうが便利ってものはないの?」
「んー…。やっぱ暗闇で人を動けなくする『クネスタ』と、別次元に逃げて攻撃をかわす『アーウェルサ』かな。クネスタがあれば暗闇に夜も安心だし、アーウェルサがあれば致命傷は確実に避けられるから。あ、エリーさんは拷問も覚えたいんだっけ?」
「とりあえず拷問はいいわ。それなら暗闇で人を動けなくする…クネスタ?とアーウェルサだっけ?その術のやり方教えてちょうだい?所でそのアーウェルサって何分くらいで体が消えるって?」
「十五分以上別次元にいる状態だと体がどっかに消える」
十五分…。それなら一瞬の攻撃をアーウェルサで避けて解除して、また攻撃されそうになったらアーウェルサを使って解除してを繰り返せば十五分以上そのままってことにはならないわね。
「他にいいものは?」
「拷問系☆」
「それはいい」
つまんなーい、とカーミはのけ反る。
「勇者様が何かやらかしたらその拷問で脅しちゃえばいいのに。勇者様魔法の対応力ゼロなんだからやりたい放題なんだぜ?」
「…」
そう言われると…あのサードを脅せるなんてことそうそうできないし、魅力的かも…。
するとサードはガッとカーミの頭を掴んで、その脇腹に聖剣の剣先を押し当てる。
「いいから、てめえは言われた通りにやれ…」
「きゃー、勇者様こわーい」
カーミはそんなに怖くなさそうな言い方でヒズの後ろに逃げ込んで隠れた。呆れながらも私はカーミに聞く。
「まずそういうおふざけはもういいから私の質問に真面目に答えてくれない?他に良さそうな術はないの?」
「だったら『ヴォーチェ』とかいいんじゃない?魔界の生き物を召喚して使い魔にできる魔術で人の望みごとに呼び出される生き物変わるらしいから、ゾルゲさん探すのに特化した魔界の生き物呼び出せるかも」
「へえ、それはいいわね」
「でも魔界から生き物召喚するための呪文覚えてないんだなぁ~。教わったんだけど俺は必要ねえやって思っててテスト終わったらすぐ忘れちゃったからさ~」
「ダメじゃねえか」
サードはそう言いながらリンカを見る。
「リンカ、てめえその呪文知らねえのか?」
「ご、ごめんなさ…私、黒魔術はよく分かんなくて…人間が使う魔術くらいしか…」
サードから使えねえって冷めた視線を送られたリンカはどんどん落ち込んでいくけれど「あっ」と何か思い出したように顔を上げる。
「そ、それでも魔界にいたころお爺様が言っていたわ。昔はもっと黒魔術を使う人間が多かったから人間界に引っ張られる哀れなモンスターに魔族たちが多かったけど、最近はそんなこともろくにないなって」
リンカの言葉にサードがいち早く反応する。
「人間界に引っ張られるモンスターに、魔族?ってことは魔族も使い魔にできるってことか」
リンカは何度か頷いて、
「貴族以上の魔族はさすがに人間に扱えないから引っ張られたことは一度もないみたいだけど…。人間界に引っ張られて行くのは大体が獣型のモンスター、魔族だと家も持てないくらいの下層の魔族たちが多かったとか言っていた気がする。
それでも人間は魔族を呼び寄せることができたらとても大喜びだったらしいわ。お爺様はあんな最下層の魔族を呼び寄せて喜ぶ奴の気が知れないって鼻で笑っていたけれど」
「…魔族を使い魔に、か…。いいな」
サードはあごをさすりながらニヤニヤ笑っている。使えるものはどこまでも使ってやるって性根がうずいているわね、こいつ。
それでもサードは楽しそうなニヤニヤ笑いを収めてフッ、とため息をついた。
「だが肝心の呪文が分からねえんじゃあな…」
するとヒズの顔がヒュッとリビウスに変わる。
「ナディムに聞けば分かると思う、ナディム頭いい」
サードはため息一つついて、黒魔術の本を閉じると私の大きいバッグに戻す。
「…結局ナディム任せか、…こういうことの話が通じる奴だといいがな。それならエリーはカーミからクネスタとアーウェルサを教わっておけ。そうしてるうちにナディムのいる国にたどり着くだろ」
「オッケー。じゃ、アーウェルサからやろっか。今は朝だからクネスタは無理だし」
私の隣に座ってきたカーミはニヤニヤッと笑う。
「いやぁ俺が勇者御一行のエリーさんに魔法を教えるなんてなぁ。まいったなぁ、俺先輩どころか先生じゃん。先生って呼んでみてよ、カーミ先生って」
「いいからとっととやれ」
サードの一言にカーミは「はいはーい」って言いながら私に向き直って握手してくる。
「アーウェルサはコツがいるんだ。とりあえず今手触ってるだろ?そんで発動するとこう」
その瞬間手を握られている感覚が全くなくなって、手がスカッとすり抜けていく。
「…すごいわね、これ」
手をにぎにぎ動かすけれど、私の手はカーミの手をスカスカ通り抜けていく。それを見ていたガウリスは声をかけてきた。
「それは魔法を発動している時は触れられず、発動をしなければ再び触れられるようになるのですよね?」
「そうそう」
頷くカーミにガウリスは重ねて質問する。
「それならカーミさんの体に触れている状態の時にカーミさんがアーウェルサの発動を止めたらどうなるのです?」
「いいところに気づいたガウリスさん!」
カーミはビシッとガウリスを指さしてニコニコ楽しそうに笑っている。
けど分かるわ、カーミがこんなにニコニコ笑うってことはきっと嫌なことが起きるのよ。
「ちょっと俺の体に手突っ込んでみてエリーさん」
カーミがそう言ってくるけど、私は大きく首を横に振って拒否する。
「じゃあ俺が。おりゃ」
アレンが身を乗り出してカーミの首から脇の下に向かって手を突っ込んだ。
するとアレンは「ヒッ」と声を上げる。
「ギャー!」
叫びながらアレンが手を引っこめようとするけれど、それにつられるようにカーミもくっついて立ち上がる。
「ギャーーー!うああああ!カーミの首、首…!くっついてる、俺の腕何これギャー!助けてー!」
アレンは腕をブンブン振り回してソファーから離れて少し広い場所でグルグル回転しているけれど、ゲラゲラ笑ってるカーミがアレンの腕の動きに合わせて走り回っている。
その状態のままカーミは説明した。
「何かが体を通り抜けてる状態でアーウェルサやめるとこんな感じでくっついちゃうんだよね。楽しいだろ」
「…痛くないの?」
うわぁ…と思いながらアレンの腕と一体化しているカーミに聞く。見るとマイレージもうわぁ…って引いている。
でもカーミはケロッとした顔で、
「全然?近くで見てみる?元々こうだったかなってくらい一体化してるぜ」
そう言いながらカーミはとことこ歩いてきて、アレンは「うわああああ…」と情けない声をあげながら泣きそうな顔でカーミについてくる。
「アレン、てめえ今どんな感覚なんだ?それ」
サードが聞くとアレンは泣きそうな声で、
「…特に何ともないけど…でも何か…何かやだぁ…カーミの体貫通して俺の腕くっついてるぅ…カーミが喋ると腕に声の振動がくるぅ…」
近くで見ると確かに…皮膚も無理やりくっついた感じじゃなくて、胴体に腕とか足が繋がってるくらいの自然な感じでカーミの首とアレンの腕が一体化してるみたい。
触ってみるとアレンのごつっと骨ばった腕の感触がして、そこから下に動かすとカーミの少し柔らかい首の感触…。それでもアレンの皮膚とカーミの皮膚、どっちも私の指の動きに合わせて一緒に動く…。
「…本当に一つになってる…」
変な所でこの魔法を解いたらこうなってしまうのね。…やっぱり覚えたくないかも…だってこんな風に色んなものとくっついた姿になんてなりたくないし…。やっぱり覚えるのやめよう。
するとアーウェルサが解かれたのか、アレンが腕をシュパッとカーミの体から引き抜くと素早く遠くに逃げた。
「じゃあエリーさん、やってみよっか」
私が何か言う前にカーミが私の肩に手をズッと貫通させると、そのまま私の肩とカーミの手が一体化する。
「ヒッ」
身をのけ反らせたけど、のけ反るとカーミの手も一緒に動く。
確かにアレンの言う通り全然痛くない。だけど…人の体が私の体にめり込んでるこの状況…不気味すぎる…。
「やり方はコツを覚えるまでは大変だけど一回覚えちゃえば簡単だよ。ただ自分の体を目の前からフッと居なくなるように意識を隣に持ってく。それだけ。じゃ、あとは頑張って俺の手から逃げてみてー」
「それだけって言われたって…。もっと具体的な説明とかないわけ?そんな説明だけでできるわけないじゃない」
カーミはニコニコ笑いながら、
「俺は先生に今の説明されながら頭の後ろから目に両手の人さし指突っ込まれて『このままできないとあなた一生目から先生の指が生えたままでーす』って言われたけど。ミラなんて鼻穴から両手の人さし指出されて『このままできないとあなた一生鼻穴から先生の指生えたままでーす』って…」
「分かった!やるわよ!やればいいんでしょ!」
このままじゃ目とか鼻穴から人さし指を出されそうだからカーミを黙らせるために言い切ると、意識を集中させる。
うーん、うーん、と意識を集中するけれど、カーミの手はいつまでも私の肩に突っ込まれたまま。
「こう、ボロッと隣に頭もげてく感じでさぁ」
「分かるわけないでしょ、そんな説明」
「成功したら周りの音とか感覚がちょっとボワッとした感じになるぜ」
「…ボワッ…?」
あれ?もしかしてそれってマダイのダンジョンみたいな、ラーダリア湖の精霊の国みたいなあんな感じ?
そう言われればマダイのダンジョンは別次元にずれて隠されてて、ラーダリア湖だって人間界とは違う次元にある国だったじゃない。
マダイの隠されたダンジョンに当たった時のボワッとした感覚、ラーダリア国での水みたいな空気みたいなモヤモヤした感覚…。
あの時の感覚を思い出したら、カーミの手がズッと私の肩から外れて行った。
するとカーミが驚いた声を出す。
「おっ!すごいすごい!こんなすぐできるもん!?俺とミラだってもっと時間かかったのに」
「え?できた?」
「できてるできてる、ほら」
カーミが躊躇なく私に目つぶしをしてきた。それでもカーミの指は私の目をスッと通りぬけ…、
「って、やめてよ!大丈夫って分かっててもそういうのイヤ!」
後ろに下がって拒否すると、後ろにいるガウリスの体に背中がドッと当たる。いつの間にかアーウェルサの魔法も解けたみたい。
…でも今のがその感覚なのよね、もう一度試しにやってみようかしら。
ボワッとした感覚を意識して目の前のテーブルを触ってみようとする。手はスカッとテーブルを透き通る。
ボワッと感覚を意識しないでテーブルをもう一度触ってみようとする。ちゃんと触れる。
「ああ…こういうこと。思ったより簡単ね」
呟くと、カーミはどこかつまらなそうな顔をした。
「こんなすぐ覚えるなんて、やっぱ勇者御一行って肩書あるだけあるなぁ。けどつまんねー、もっと苦労してヒィヒィ言ってもらわないと俺全然楽しくなーい」
「…」
別にカーミを楽しませるために覚えようとしてるわけじゃないから。
昔の戦争時、アインシュタインの相対性理論を使って物を異次元に隠そうと実験したけど人が鉄などと一体化してしまってダメだったって地獄先生ぬ~べ~で見ました。
それでも後先考えなければ別の次元に行くことは可能なんだなぁって。
ぬ~べ~では、千鬼姫、てけてけ、赤いちゃんちゃんこ、宇宙人、上記の異次元の魔物、寄生虫、海難法師、泥のゴーレム、ブキミちゃん、メリーさんがトラウマ回ですね私は。
七人ミサキもトラウマになってる人多いようだけど、うちの地域にその妖怪出ないからと私は平気でした。四国在住だったら脅えてました。




