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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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リビウスの今まで

リビウスは子供が何か伝えたいことがある時みたいに一気に話し始めた。


「メルドがザーザー雨の日にどうぞって家に入れてくれて、で、で、俺メルドとずっと一緒にいて、でもメルド死んで、でも一緒にいて、そしたらこの赤いのがなんかウジャウジャーって地面に入って、そしたらメルド出て来て…」


「もう少し主語を入れて最初から話をしてください」


サードがリビウスの話を遮ってもう一回最初から話せと促す。


「しゅご…」


リビウスはキョトンとしながらもまた続けた。


「俺リビウス、メルドが俺をザーザー雨の日に助けて家に入れて、俺リビウス、そのままメルドとずっと一緒にいて、俺リビウス…」


…。そもそもの主語の意味を理解してないのはよく分かった。主語って自分の名前のことじゃないのよ。


サードも額を押さえて思わずため息をついていて、そんなサードの肩にマイレージが手を置いて首を横に振る。


「こいつに説明を求めるな。こいつの話は翻訳が必要なくらい意味が分からねえんだ」


「マイレージ翻訳できんの?」


アレンが聞くとマイレージはものすごく嫌そうな顔をして、


「そりゃあ仲間だったから何となく分かるがよ…でも俺だってこいつが何言ってるか分かんねえから時間かかるぜ?それでも本気でこいつの話聞きてえってのかよ?」


やりたくないってのがあからさまに顔に出ているわ。


「少なからずゾルゲが関わっているのなら情報を少しでも手に入れたので聞きたいところですが…ゾルゲは知っていますか?ボサボサの白髪頭で鷲鼻の男性の老人姿なのですが」


「知ってる、その赤い奴と一緒にメルドの墓にきてた」


バリニエを指さしそう言うリビウスに、サードは頷きマイレージに視線を向ける。


「では翻訳をお願いします」


嫌そうな顔をするマイレージが延々とリビウスのまとまりのない話を聞いてまとめ上げた話はこんな感じ。


まずウチサザイ国で存命中のゾルゲに呼び出されたリビウスは、ゾルゲの小難しい話がさっぱり頭に入らないから興味を失ってすぐその場を離れたみたい。そのままあちこち移動していたある日、リビウスはフッと気づいた。


自分はどこに行けばいいんだろう、帰る場所も戻る場所も全く分からない。


そこで不安になったリビウスは自分が行く場所はどこだとあちこち移動したけれど、それでも行く当ても戻る当ても見つからなくて、心細くなってワンワン泣きながら移動していたって…。


「迷子の子供か」


その話の部分で多分皆が心の中で思っていたことをアレンがボソッと呟いたからか、皆かすかに吹きだした。


ともかく雨が降っている中をグシュグシュ泣きながら歩いているとメルドが窓を開け声をかけてきたって。


「お兄さんどうしたんですか?」


リビウスは気づいたら一人でどこに帰ればいいのかも分からないって伝えると、メルドはリビウスを不思議そうにジッと見ながら咳をして、


「だったら家に来ればいいですよ、僕の話し相手になってください、僕は体が弱くて家からあまり出られないんです」


いいの?とリビウスが聞くとメルドは控えめに笑い、


「できれば…友達になってくれたら嬉しいです」


リビウスは「友達!友達できた!」と大喜びでメルドの家に入って、あとはメルドが望むままに旅の中で起きたあれこれを話して聞かせていたって。


もちろんリビウスの話にまとまりがないのはさっきので分かっているから、メルドが完全にリビウスの話を理解していたのかどうかは分からない。

それでもメルドはリビウスの話をニコニコしながらずっと聞いてくれていたから、リビウスはそれが本当に嬉しかったみたい。こんなにいい奴と友達になれた自分は幸せ者だ!と毎日ウキウキ過ごしていたってリビウスは凄くはしゃぎながら言っていた。


そうやって賑やかに話すリビウスにメルドも触発されたのかしら。少しずつ性格が明るく前向きになって、毎日少しずつ庭に出るようになって、数分でも外を自力で歩けるくらいまでに体調が良くなっていったんですって。


それを喜ぶメルドの両親、それと医者夫婦、それとリビウス。

まあリビウスが見えるのはメルドだけで、その他の人たちには話しかけても無視されるとリビウスは言っていたけれど、それでもメルドと話せればそれでいいやと全然気にしていなかったみたい。

普通だったらかなり気にする所よね、それ…。


そうしてメルドともあれこれお互いの話をするようになって、マダリナが言っていた通りメルドは大きくなったら具合の悪い子供がいたらどこにでも駆け付け助ける医者になりたい、ってリビウスにも言っていたんだって。


「でも町の中すらろくに歩くこともできないのにすぐ駆けつける医者になろうとか、やっぱり無理だよね」


落ち込むメルドをリビウスは一生懸命励ました。

俺もずっと隣にいるから、勇者一行として魔族もドラゴンも魔王も倒してきた強い俺がついてる、メルドの助けになるし体の弱い所をカバーするから俺を頼れって。


するとメルドも嬉しそうに笑って「ありがとう」とリビウスにハグをして…。


何て良い話なのとホロリとしかけたけれど…その後どうなったかはもう分かってるから心が痛んだわ。

メルドは合併症を引き起こし、あっという間に息を引き取った。


皆が泣きながら参列したメルドの葬儀にはリビウスもむせび泣きながら参列し、土に埋められた後もお墓にしがみついて泣き続けていたら、隣に誰かが現れた。


それがバリニエとゾルゲ。


ゾルゲをどこかで見たことがある爺さんだと鼻をすすりシゲシゲと見ていたら、バリニエはメルドが埋められた場所を指さして、


「ここにあるのが今日死んだばっかりの新鮮な死体だな。聞いた限り熱と咳程度の病気みてえだから体の損壊もほとんどねえだろうしちょうどいいや。こいつは俺がもらうぜ」


「構わん、その子供の魔力は乏しいから私には向かん」


そんな会話をしてからバリニエは人型から赤い塊になると土の中にウジュウジュと潜り込んで、そうしているうちに土がボコボコ動き出したと思ったら棺桶をぶち破ってメルドが飛び出してきたんだって。


メルドが生き返ったと喜んだリビウスだったけれど、もちろん中身はバリニエ。

体はメルドでも中身がメルドじゃないなんて、どうにかバリニエをメルドの体から追い出すことはできないかとリビウスはメルドの周りをウロチョロしていたら、メルドの体に腕がズッとめり込んで、そのまま吸い込まれるようにメルドの中にシュッと入りこんでしまった。


それについてバリニエに聞いてみたけれど、バリニエの目からはリビウスの姿は見えなかったし、中に入りこまれたような感覚も一切なかったみたい。


「ただそのガキの体は傷ができても治るから不思議だったんだ、死体ってのは傷を負ったら二度と再生しねえもんなのによ」


バリニエの言葉、それとマイレージの説明によるとリビウスの体は攻撃を受けても傷がすぐに治ってしまう特殊な体質なんだって。それもすぐ治るから痛みも感じない。


「魔族に攻撃されても笑いながら向かって行ったエピソードって、それだったんだ!」


アレンがはしゃぐように言うとリビウスは大きく頷いて、


「うん!俺強い子だからすぐ治る!」


「強いかどうかは知らねえが、しぶといことは確かだな」


マイレージは冷静に突っ込んでた。


ともかくそこからが騒動の始まり。メルドの体をバリニエが操って好き放題にした。


リビウスはどうしてもバリニエを殺したかった、だって優しいメルドなのにバリニエは酷いことばかりして、それも町の人からはどんどんメルドが嫌われていくから。

それでもメルドが家に帰ってミスィはとても喜んでいたし、マダリナだって優しくメルドの体を抱きしめた。その二人のことを考えるとバリニエを殺してメルドが動かなくなったらとても悲しむんじゃないかとずっとリビウスは我慢して…我慢して…。


という所で今に至っているって。


「だからそいつ殺したい、俺いい子だからずっと殺すの我慢してたもん」


リビウスがバリニエを指さすけど、サードは首を横に振る。


「それでも約束は約束です。私は話を聞いたので彼は見逃します」


「…じゃあ俺、行ってもいい?」


…思えばさっきまで虫の息だったのに、何か時間がたつにつれて元気になってるわね…ある程度は勝手に回復していくのかしら。


「ええ、後はお好きなように」


バリニエはホッとした顔で「あー、話の分かる勇者で助かった…」と胸をなでおろしているけど…この人をこのまま見逃していいものかしら。だってそんなに良い人だと思えないもの。


人を殺した話は自慢げにしていたし、土地が貰えるってことでゾルゲに協力するような人で、それも人に暴力を振るうのはいとわないし、マダリナをいやらしい目で見ていたならきっと好色。放っておいたら色んな人たちに被害が出そう…。


「ああそういえば」


サードの大きい独り言に立ち去りかけていたバリニエが振り返る。


「新鮮な死体といえばウチサザイ国に大量にありましたね。特に首都のエーハには死体の数があまりに多く…ああ、今でもあの凄惨(せいさん)さは脳裏によぎる…」


サードが思い出したくないとばかりの動きをしながら言うと、バリニエはすぐに食いついた。


「ウチサザイ国のエーハ?なんだ、それならそこに行けば死体が選び放題なのか?」


良いこと聞いたとの顔をしながらバリニエはご機嫌な足取りで遠ざかって行った。その姿が完全に見えなくなって、アレンはチラとサードを見る。


「ウチサザイ国のエーハって、リッツが首都全部使ってダンジョンにしようとしてんじゃなかった?そんなとこに行ったらリッツたちに見つかって殺されんじゃ…」


サードはニッコリ笑う。


「どうなるかはあのバリニエの運次第ですよ」


今はヒズの前だからニッコリ微笑んでいるサードだけど、ヒズの目が無かったらとても悪い顔でケケケ、と笑っているんでしょうね。


去っていくバリニエを面白くなさそうに見送るリビウスをチラと見る。


リビウスと言ったら善良で罪もない人々を殺していく残酷な人というイメージだったけど、今の話を聞いた限り本に載っている人物像とはかなり違う気がする。

実際は…まあちょっと性格は普通とはいえないけど、それでも優しくしてくれたメルドに対する行動は子供みたいにとても純粋でひたむきだもの。


「けどマイレージなんで女?」


ギュリンとマイレージに視線を向けてリビウスが聞く。


「てめえは子供だろ」


「ヘハハ、俺メルド…」


リビウスは笑っていたけど、急にハッ顔つきを変えて、町のほうを振り返る。


「そうだ俺やんないといけないことある!俺行く!帰る!」


素早い動きで走り出そうとするリビウスの前にシュパンッ回り込んでマイレージが止める。


「帰るってどこに」


「メルドんち!」


「何しに」


そう言うとリビウスは手ぶりも大きく説明し始める。


「俺メルドとずっと一緒にいて、こんな風に体に入れるって分かんなかったんだけど、でも俺体すぐ治るからメルドも治ると思う!だから俺さ…」


またリビウスが勢いのままにまとまっていない話をしはじめて、マイレージが眉間にしわを寄せながら空を仰ぐ。


「またお前の翻訳かよ勘弁してくれ…お前の翻訳者はナディムだろうが」


ブツブツと文句を言いながらも、何だかんだでマイレージはリビウスの話に耳を傾ける。

それで一通り聞いてからマイレージは私たちを見た。


「リビウスの体が特異体質なのはさっき言ったな?」


うんうん頷くとマイレージは続ける。


「こいつは自分がそんな体質だから、こうやってメルドの中に入ってる状態で全力でその体質を使えばメルドが生き返るはずだって言って…」


「できる!」


リビウスはマイレージの言葉を遮りながら勢いよく言うと、スパンッとリビウスの頭をマイレージがすっぱたく。


「だがメルドってガキはもう死んだんだろ、死んだ奴が生き返るか」


「だって俺生き返って…」


リビウスはそう言いかけて、フッと何かに気づいたようで口をつぐんだ。そのまま首を傾げ、マイレージを見上げる。


「あれ?俺って死んだっけ?でも今生きてる?ん?」


どうやらリビウスも自分が死んだことに今の今まで気づいていなかったみたい。マイレージはため息をつき、


「今は俺らがいた時代から軽く六千年経ってるんだってよ。お前の体は頑丈でも老いには勝てねえだろうからどうせ老衰で死んだだろ」


「ろーすいって何?」


「年取って死ぬことだ」


「あ、じゃあ違う。俺な、インラス死んでから船に乗って海にいてな、そうしたら海の中にでっかい魚いて、でっかい魚カッコいいって捕まえようと思って海に飛び込んで追いかけてたら魚どんどん深くに潜って、俺息できなくなって死んだんだ」


「…」


「海って深いんだな!俺強い子なのに息できないだけで死ぬと思わなかった!ヒヘヘ」


ええ…そんな最期だったの…?リビウスのその死については色んな説が語られていたけど…まさかそんな死に様…。


マイレージも呆れたような顔をして、


「お前、本当に馬鹿だな…死んでも治んねえな、馬鹿は」


その言葉に思わずサードはプッと含み笑って、マイレージは気を取り直したように私たちを見る。


「つーか無理だよな?一回死んだ奴の体にそんな能力使ったって生き返るわけねえだろ?」


ガウリスは少し言いにくそうに口を開いた。


「皆さんが駆けつける前にあのバリニエは言っていました、『この体も限界だ』と。リビウスさんが中に入ったことで怪我はすぐに治っていたようですが、体は少しずつでも悪くなっていたのかもしれません。だとすれば…やはりメルドさんの体は死体のままで、これ以上どんなに手をつくしても生き返らせるのは…」


「無理なの?」


リビウスの問いかけにガウリスは痛ましそうな顔で頷くと、リビウスは眉を垂らしてションボリと落ち込む。


「…メルドが生きてる時にこうやって俺が中に入ってたらさ、メルド死ななかったかもしんないんだよな…。俺病気にならないから、メルド健康になったかもしんないんだよな、俺、俺が、もっと、もっと早く気づいて、たら…!」


リビウスはその場で膝を抱え、ヒーン、と泣き出してしまった。

その姿に思わず駆け寄ってあやすように背中をポンポンなでるように軽く叩くと、リビウスは泣きながら私を見上げてヒシッとしがみついてきたから、私も優しく抱きしめた。


しばらくそうやっているとリビウスも少しずつ落ち着いてきたのか泣き止んでくる。


「大丈夫?」


できる限り優しい声で問いかけると、リビウスはうんうん頷いて更にギューっと抱きついてくる。


…。なんか可愛い。


よしよしと頭をなでるとリビウスは嬉しそうに笑って更に抱きついてすり寄ってくる。


良かった、笑顔になって…。


「おっぱいふわふわ」


その言葉に私はすぐさまリビウスを力の限り突き離した。


「ああん、おっぱい」


名残惜しそうに手を伸ばすリビウスの頭をサードはガッと掴んでさらに私から引き離していく。


そうだわ、メルドの見た目とリビウスの子供っぽい性格に騙されちゃいけない、リビウスはれっきとした大人の男だったわ。危ない、危ない…。

エリーは巨乳ではありませんが形の整ったいいサイズの胸設定です。

今の所巨乳設定なのは女のファジズと女体化したサードと嫉妬の女神。マーリンもか。ちなみにロッテは巨乳じゃなくて美乳。女性下着のモデルのイメージ。

そんでぺったんこ設定なのはリギュラとラグナスとアレンの母ちゃんミリア。


ミリア

「私のおっぱいは息子四人に全部あげたからこうなったの!おかげで皆元気にたくましく育ったんだからね!プンスコ!」


リギュラ

「喧嘩売られているのかな?殺すよ?君」


ラグナス

「ころーす」


作者

「うわ、スライムで窒息する、うわ、息が、待て私を殺したらお前らも死ぬぞ」


リギュラ

「ハッハッハッ!僕はもう二度死んでるよ!くらえこめだわらびーむ」


作者

「ぐわー」


※くらえ米俵ビーム、ぐわーが分からない人は検索してください。まあ分からない人がほとんどだろう

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