表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

414/507

ンガクク

それにしても結局レディアの黒い噂は一切なくて、むしろ敏腕な非の打ちどころもない経営者ということで収まってしまったわ。

でももしこれでボーチを影でいたぶっているのだとしたら、サードと同じくらい裏表のある性格だともいえるけど…。


するとガタ、とサードは立ち上がりながら、


「もうこれだけ調べりゃ十分だろ、レディアは単にボーチへの当たりがキツイだけの経営者だ。俺が思う限りお前らが心配するようなことは起きねえよ」


「でも…ボーチはレディアに強く出られないからろくに言い返せないのよ。それだったらこのままにしておくのは可哀想よ」


「あそこまでの女を相手にすると骨が折れるぜ。それにいくら俺らが世間で有名で慕われてる勇者一行だろうが、フラッとやって来ただけの名のある冒険者と今まで地域に根差して活動して国からも信頼ある経営者、どっちの言い分を信じる?長く付き合ってきたレディアだろ?

あんな奴隷のガキ一人のためにあんな女相手にするのは時間も金ももったいねえ。下手すりゃ逆に名誉棄損で訴えられるぜ。ただでさえヲコの件で何の進展もねえんだ、そろそろ次にいかねえといけねえだろ」


「…」


「明日出発する、荷物まとめとけ。エリーは何にも考えずさっさと寝ろ」


サードはもうこの話は終わりだとばかりに部屋から去って行ってしまい、部屋にはアレンとガウリス、リロイが残る。

その皆に私は聞いてみた。


「皆はどう思う?レディアのこと…」


「俺は性格が怖いだけのまともな人じゃないかなって思う」


「私もアレンさんと同意見ですが…それでもボーチさんへの対応はもっと優しくして欲しいとは思いますね。それとエリーさんが頭を撫でようとした際の脅えた様子も気になります」


アレンとガウリスが続けて言って、残りのリロイに視線を向ける。リロイは外を見ていたけれど視線を感じたのか私たちに首を動かして、


「そんなにボーチをあのレディアという女から解放したいのなら、今からレディアを食い殺しに行くが?」


「ダメダメダメダメダメダメ」


立ち上がりかけるリロイをアレンと私が同時に立ち上がって止めると「そうか」とリロイは座り直した。


あっぶな…!思えばドラゴンって普通に人を食べるのよね、怖…。


すると、コンコンと扉をノックされた。


「はい」


返事をしてから扉に近づきドアの丸い穴から廊下を確認すると、下の方にピンク色のボサボサの髪の毛が見える。


え、このボサボサのピンク色の頭って…と目を見開き扉を開けた。


「ボーチ!?」


外に立っていたボーチは両手を後ろに回した状態で遠慮がちにはにかみながら、


「こんばんは…」


と私を見上げ挨拶してくるけど…思えばレディアとボーチは朝にこのホテルを発っていたはず。

そうよ、バイキング形式の朝食を食べ終わったあと二人がホテルの支配人らしき人たちに頭を下げられながら出て行くのを私は見たわ。なのにどうしてボーチが一人でここに…?


私が戸惑っているとガウリスも何か起きたのかと心配になったのか、しゃがんでボーチと目を合わせる。


「どうかしましたか?」


ボーチはモジモジと体を動かしながら、後ろ手にしていた両手を前に出した。その小さい両手のうちには少し大きめの紙箱がある。


「あ、あの、昨日私がレディア様のトートバッグを忘れてどうやって取ってきたのか聞かれて…その時の話をしたら、お礼を言ってきなさいって言われて、その、このお礼の品もって言われて持ってきたんです…。本当に昨日は、ありがとうございました…!」


皆で顔を見合わせて、とりあえずボーチの目の前にしゃがんでいるガウリスが代表でその紙箱を受け取る。


「ありがとうね、わざわざ…」


そう言いながらついボーチの頭を撫でようと手を伸ばしかけたけれど「あ」とすぐに気づいて引っ込める。


「でもレディアどこにいんの?もしかして一人で馬車に乗って来たとか?」


アレンの質問にボーチはプルプルと首を横に振った。


「今はここから百メートル先のホテルに泊まってるんです。昨日はここに泊まったから次は遠くにいくだろうって、この辺の宿の人たちが油断してるかもしれないって」


「…」


そうやってホテル側を戦々恐々とさせて、いつでも最高のサービスを提供できるようにしなさいよと静かに威圧してるのかしら。


「それじゃあレディアって一ヶ所に定住してるわけじゃなくて、毎日いろんなホテルとか宿を転々としてんだ」


アレンの言葉にボーチはうんうん頷く。


「じゃあレディアの家族とかは?」


アレンの言葉にボーチは首を傾げた。


「分からないです、レディア様は自分の話はしてくれなくて…」


そのままションボリとした顔で、


「でも…そう、ですよね…奴隷に自分の話をするわけ、ないですよね…」


あんなにキツイ言い方をされているというのに、それでもボーチはレディアの事を慕っている。…本当になんていい子なの。


でもいい子すぎてどんな理不尽なことも我慢しているんじゃないのかしら。それだとしたらレディアが近くにいないこの状況はチャンスかも。


「ねえボーチ、少しあなたに聞きたいことがあるんだけど…少し休んでいかない?お茶を用意するわ」


ボーチは「え」と少しのけ反って、


「い…いいんですか?私奴隷なのに…あ、でも私の服こんなに汚れてて、綺麗なお部屋が汚れちゃいます…!」


必死にそんなそんなとばかりに手を動かしているけれど、そんなこと気にしない。

多分皆もレディアが傍にいないのなら今が色々と聞けるチャンスだと思ったのかもしれない。


「大丈夫よ、遠慮しないで。お菓子もあるから食べていってちょうだい」


と声をかけるとボーチは「お菓子…!」と顔を輝かせてすごく心が動かされているみたい。ガウリスも立ち上がって軽く「どうぞ」と中に入るよう促した。


ボーチは恐る恐ると中に入って、アレンもここに座りなよとポンポンとソファーを叩くからそこにボーチはゆっくりと腰掛ける。

大きいバッグから紅茶セットを取り出し、あれこれ準備をしながらお菓子も用意してボーチの目の前に出す。ボーチはテーブルの上に手をついて食い入るように紅茶とお菓子を見ている…。


もしかしてこの反応を見る限り、ボーチはこういうお菓子とか紅茶も普段から口にしていない…?


「お砂糖はいくつ入れる?」


そう聞きながらシュガーポットも荷物入れから取り出すと、


「ど…どれくらい入れても…いいんです…?」


まるで一週間食事にありつけなかった人のような目でボーチは私を見てくる。


「好きなだけ入れなよ、ほら」


アレンがそう言いながらシュガーポットをボーチの前に置くと、ボーチは「はぁあっ」と息を飲みながら…緊張と興奮の入り混じった顔で恐る恐るふたを開ける。

そして角砂糖を一つつまむと、紅茶にポチャンと入れてチラと私の顔を見てきた。


「もっと入れていいのよ」


ボーチは顔を輝かせて喜びで頬を赤くしながらもう一個、もう一個、もう一個と続けて入れていく。


「流石にそれ以上は溶けないんじゃね?底で砂糖がジャリジャリになるぜ」


アレンが止めた。ボーチはハッとして、


「ご、ごめんなさい…!こんなにお洒落な入れ物に入ったお洒落なお砂糖なんて使ったことないからつい…!」


お洒落なお砂糖って…もしかしてこの角砂糖のことを言っている?

え、待って、まさか大量パックで安くなっていたこの角砂糖をお洒落なものって言ってこんなに喜んでくれているわけ…!?可愛すぎじゃない…!?


胸がキューンとしてしまって、思わず手を広げてギューっとボーチを抱きしめる。


「ひうっ」


ボーチは引きつったような声を出して体を硬直させた。

その硬直した体に、抱きしめられるたびに体を硬直させるサード、ウチサザイ国で出会った悲観と絶望の小さい女神を思い出す。


まるで今のボーチの反応は…ハグを全くされてこなかった人と同じだったから…。


それでも頭を撫でられるのすら苦手な子にハグはダメかしらと瞬間的に思い直して、慌てて離れた。それもいつもの子供をハグをした後は頭を撫でるの流れで自然に頭に手を伸ばしてしまって、ボーチは息が止まってしまうんじゃないかってくらいの勢いで目を見開いて自分の頭を覆って膝に頭を埋めるぐらい身を固く低くした。


「あ、あああああごめんなさい、ごめんなさい、わざとじゃないの、つい可愛くてハグして頭撫でたくなっちゃってえ…!」


体をポンポンして慰めたいけれどそれもダメな気がして、その場でワタワタと手を動かす。


「暴力を振るわれているのか?」


部屋にリロイの声が響き渡る。


「…」


顔を青くしたボーチがそろそろと顔を上げてリロイを見た。リロイはボーチと目を合わせて、


「こいつらはお前がレディアから暴力を受けているんじゃないかと心配している。実際どうなんだ、殴られているのか」


ボーチは目を激しく瞬かせて、前に見た時と同じようにぎこちない笑みを浮かべる。


「そ、そんなこと…ないですよ…」


それでもその声はうわずって震えているわ。


「嘘くさいな、じゃあ何で腕を振り上げられたらそんなに頭を隠す、暴力を受けているんだったら今ここで言ってしまったほうが楽だぞ」


「リロイさん、そんな聞き方では何も答えられません」


ガウリスがリロイを静止して、ボーチに視線を向けた。


「まず紅茶をどうぞ、冷めてしまいます」


ボーチはまだ落ち着かない表情をしているけれど、それでもスプーンで紅茶をクルクルかき回してズッとすすった。

紅茶を口にするとボーチは目を見開いて手で口を押える。


「甘い…美味しい」


どうやら甘い紅茶で少し気分は晴れたみたい。とりあえず余計なことをして脅えさせてしまった私は、できる限り静かに大人しくしておこうと気配を消しておく。


「ボーチさんたちはしばらくこの辺にいるのですか?」


ガウリスが問いかけるとお菓子をもぐもぐしているボーチは、何でそんなことを聞くのだろうと不思議そうな顔をしてから、


「多分…そうだと思います。明日は向こうの通りにあるホテルの支配人と会議とか、商店街の視察とか、観光助言とか色々言ってましたから…。それだと多分一週間くらいはこの町にいるのかも…」


ガウリスは頷いた。


「ならば私たちは一週間この宿にいます。もしボーチさんが助けを求めたいのであれば、その間にまたここを訪れてください、きっと私たちが力になります」


ガウリスの言葉に驚いて視線を向ける。だって明日出発するってサードの意見を無視して勝手に一週間ここに居るとか、後からサードに何を言われるか…!


そんな私の視線を受けてガウリスは苦笑した。


「私が責任をもってサードさんに怒られますよ」


そのままガウリスはボーチの反応を見た。もしかしたら今すぐにでも助けてほしいと言うかもしれないと思ったのかもしれない。私も同じくボーチを見るけれど、なんとなく皆から注目を受けている状況が気まずくなってきたのかボーチは紅茶を飲み切ってソファーから立ち上がる。


「そ、そろそろ…戻ります」


「大丈夫?一人で戻れる?」


アレンが声をかけるとボーチはニコ、と奥ゆかしそうに笑う。


「ここまでも一人で来ましたから、大丈夫です」


「いや、送ろう」


リロイがそう言って立ち上がった。皆がリロイに目を移す。リロイは皆の視線を受けて「ん?」と見渡した。


「何だ」


するとアレンは少し驚いたような顔をして、


「いや…リロイがそうやって率先して送るって言うなんて意外だなぁって思って」


「昨日馬車で送られた礼をしていないのに気づいた。あの女はバッグを取りに行っただけでこれだけの礼をしてきたんだ、我とて言葉だけでも礼を言わねばなるまい。それに…」


リロイはボーチを見て、


「ボーチが殴られているかどうかは分からんが、どうであれ子供が大人に怒鳴られ続けるのを見るのは不快だ。これからも同じことをするようなら脅してくる」


「ダメダメダメダメダメダメダメ」


アレンと私が同時に立ち上がってここから先には行かせないとばかりに立ちふさがる。


「心配するな、ほんの少しドラゴンの姿に変化して口から火を吹くだけだ。食い殺しはしない」


「ダメダメダメダメダメダメダメ」

「いけません、いけません、いけません」


アレンと私がリロイの腕をしっかと掴んで、ガウリスもリロイの前に立ちふさがった。


「…ドラゴン?火を吹く?食い殺す…?」


目をぱちくりさせながらボーチがは何のこと?という顔をしているから、私は慌てて、


「気にしなくていいの!リロイのジョークだから!」


「ジョークじゃない、我はゲオルギオスドラゴンガクク」


途中でガウリスがその大きい手でリロイの口をふさいだけれど、もうほとんど言った後。


「ゲオルギオスドラゴン…って、あの、すごく狂暴で人を襲う…?」


ガウリスに口をふさがれながらもリロイは堂々と肯定するように頷く。


しばらく沈黙が流れたけれど、ボーチはクスッと笑って、ケラケラと笑いだした。


初めて見るボーチの屈託のない笑顔に思わず皆が見ていると、ボーチはハッと笑顔を引っ込める。それでもやっぱりおかしいのか口元をむずむずと動かして小さい手で口元を押さえ、クスクスと笑い続けている。


「自分はドラゴンだなんて、面白い」


どうやら本当にジョークだと思ってくれたみたい。よかった…。


ホッとしているとリロイはジッとボーチを見て、声をかけた。


「…笑ったほうが可愛いぞ」


「え」


リロイの一言にボーチが顔を上げる。


「人の顔色を伺って自分を抑えてるより、笑っていたほうが断然可愛い」


「…」


リロイの言葉にボーチは目を瞬かせて、少し対応に困ったのか曖昧(あいまい)に「えへ」と肩をすくめてモジモジしている。


それより今、リロイが可愛いって言ったわよね?ボーチに対して可愛いって。

今まで女の子が傍に居てもチラとも見ないでボーっとしていたのに。それもミレルほどの女の子すらサードの女装姿にかすむとばかりの反応で可愛いとは言わなかったのに。


初めてリロイが、女の子に可愛いって言葉に出して伝えた…!?


「まず送ろう。あの女に礼を言わなければならん、脅すのは冗談だ」


そのままリロイは呆然としている私たちを押しのけ入口に向かって扉を開けると、ボーチに行くぞと目で促す。ボーチは私たちに頭をぺこぺこ下げると、トテテと小走りでリロイを追いかけた。


そんな自分に向かって小走りするボーチを見たリロイの無表情がふっと変わる。まるで愛らしいものを見つめるかのような優しい微笑み。そのままボーチから視線を逸らさず外に出るのを待って…扉を閉めた。


扉を閉める瞬間のあの優しい表情…。もしかして…?え、もしかして…?


ちょっとふっと思ったけれど何も言わずにいると、アレンは恐る恐るリロイたちのいた場所を指さした。


「リロイって…もしかしてロリコ…」


「言っちゃダメ!思ってても言っちゃダメ!」


大きく首を横に振ってアレンの言葉を遮る。そこでテーブルの上をみて「あら?」と声が漏れた。


テーブルの上にあったはずのシュガーポットがなくなっている。

このあとアレンとガウリスにもシュガーポットを探してもらったけれど、どこをどう探しても見つからなかった。

まぁ…別に中古の安いやつだったけど…それでもどこにいったのかしら、不思議だわ…。


…それよりリロイって…やっぱり…?

0~5歳女児が恋愛対象なのはベビーコンプレクッス

5~7歳女児が恋愛対象なのはハイジコンプレックス

7~12歳女児が恋愛対象なのはアリスコンプレックス

12~15歳女児が恋愛対象なのはロリータコンプレックス


らしいので、今一般的に思われているロリコンは大体ハイコンかアリコン枠なのでしょうね。

私はロリコン枠よりギルティギアの梅喧みたいな姉御系が好きです。でもロリコン枠だとヴァンパイアセイヴァーに出てくるバレッタが好きです。

総じて男が恐れるような強い女性が好きです。ぅゎっょぃ。ぃゃゃゎぁ、っょぃゎぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ