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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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天地創造の話(伝説)

その夜はそれぞれが毛布一枚片手にソファーのある部屋で各自寝ることになった。


ロッテ曰く、


「悪いねぇ。来客用の部屋作るの忘れてたわ」


ということで。


ここでいいかしらと入った部屋の本棚を見回すけど、この部屋は辞書ばっかりで特に見ても楽しくなさそう。じゃあ寝よ。


ロッテに渡されたロウソクの火を消してソファーに横になると周りは真っ暗になって、天井の明り取りから星が見える。


…思えばここってどこなのかしら。窓は天井についている明り取り程度しかないから、この屋敷の中からは空しか見えないし…。


でも砂漠の王都付近じゃない気がする、お昼の砂漠地帯は日差しが暑いを通り越して痛いくらいで、夜になると急激に冷え込む。

でもこの屋敷はお昼でも夜でも暑いも寒もなくて快適な温度だもの。もしかしたら一定の温度を保つ魔法でもかけられているのかもしれないけど。


それにしても本の片付けが一段落ついたら水のモンスターについて教えるって言われたけど、夜までつきっきりでやっても作業が進んだ実感がわかない。


サードなんてソファーに寝転がって本を読んでいて動く気配が無いし、アレンは数少ない絵本と児童書を終わらせて私たちと同じような本の選別作業に取りかかったけど、


「うわぁ意味わかんねー。この『庭の造形美の作り方の歴史』って何だよー、植物?建築?美術?歴史?ロッテーこれなにー?」


とロッテにいちいち聞きにいっている。


この状態だといつまでかかるのかしらと思っているうちに眠ってしまったんだと思う、…でも夢の中でウンウン唸りながら本を選別して、ハッと目覚めるのを何度か繰り返した。


何度目かの目覚めを体験してもまだ空は暗い。明るくなる気配もないからまだまだ夜みたい。


こうなったら気分を変えに水を飲みに行こうと辞書の部屋を出て、キッチンに向かう。


ロッテは本の周りに湿気のあるものは置きたくないみたいで、水気のあるキッチン、お風呂にトイレは屋敷の一番奥の辺りにあるからかなり歩く(ついでにロッテの部屋も屋敷の奥にある)。


お昼は暗い廊下と思ったけど夜は壁にかけられたロウソク型のランプがほのかに廊下を照らしているから、下手したらお昼より明るい気がする。


すると声が聞こえてきた。ロッテとサードの声が少し先の部屋から…。


ん?ロッテとサードが二人で?


まさかサードがロッテを口説いてる?でもロッテの二度と使い物にならないの言葉で諦めたはずだけど…もしやギリギリのセクハラ紛いのことをしようと迫ってるんじゃ…!?


心配になってそろそろと部屋に近寄って聞き耳を立てた。

これで嫌な予感が当たっていたらすぐにサードの魔の手からロッテを助けないと、と思っているとロッテの声が聞こえてきた。


「まずは自分の魔法の特性を知ることから始まるね。例えばガウリスみたいに神官をやってた人間が黒魔術を使おうとすると上手くいかない。ここまでは理解できる?」


…何の話?


「とりあえずなんでもいいから話せ。そうしたら覚える」


どうやら話の内容的に心配しているようなことにはなっていないようね、良かった。


安心しているうちにロッテは話し始めた。


「まず人間が扱う魔法には沢山の種類がある。魔の力を借りる黒魔術、神の力を借りる聖魔術、精霊の力を借りる精霊魔術、魔法陣を描く正当魔術、呪文を唱える詠唱魔術。

正当魔術と詠唱魔術が人間界では一般的な魔法と言えるかな。それでその二つが人間の間で一般的になったのは…」


やっぱりこの話からじゃ変なことになりそうにないわね。

まぁ何で魔力ゼロのサードが魔術のことを聞いているのか分からないけど、いつまでも聞き耳を立てるのも悪いし別の通路からキッチンに…。


「じゃあ呪文を唱えないままに自然の力をあらん限りに活用して増幅(ぞうふく)する魔法はどれにあたるんだ?」


サードの言葉に足を止めた。


「自然の力を活用してあらん限りに増幅?そりゃ精霊魔法じゃないの、精霊は基本的に自然の存在だから力を分けられたら自在に扱える…」


「違う、そんなもんじゃない。火種があれば大火事になる、飲み水があれば洪水を起こせる、風を起こせば竜巻になって、地面を壁みてえに盛り上げて攻撃を防ぐことができる。

ちなみに風を起こして竜巻を起こした時にゃ雷と大雨も同時に引き起こして、木もあっという間に成長させて好きな方向に枝も幹も伸ばすことができんだ」


それって私のことじゃないの。


ソッと足音を立てないように部屋の近くまで戻ると楽しそうにロッテが呟く。


「まるで天地創造だね」


「天地創造?」


「この世界ができた話…まあ伝説なんだけど、知らない?」


「知らねえ」


ロッテから笑いをかみ殺したような含み笑いが漏れる。


「あんたって本当に正直だよね。それくらいプライドが高けりゃ知ったかぶりしそうなもんなのに」


「知らねえもんを知ってるふりして知識を手に入れるチャンスを逃すものほど馬鹿な行為はねえだろ」


「はは、あんたもあたしに負けず劣らず知識に対しては貪欲だねぇ」


ロッテは笑いをにじませながら話を始めた。天地創造の話なら大体の人は知っている。だってこの世界が出来た話なんだから。


昔々。まだ魔界・人間界・天界の区別もなく、魔族も人間も神も同じく過ごしていたころ。


神は人間を愛し魔族を愛し分け隔てなく愛を注ぎ、安全なものを生きとし生けるものに与えていた。

そして魔族は危険な事や危険なものを察知する能力に長けていたから、人間や神を危険な事から遠ざけ守っていた。

人間は力を持たない存在で、ある者は神に感謝し、ある者は魔族に感謝し日々を過ごしていた。


すると次第に人間たちの中で口論が起き始める。


「神こそが我々に恩恵を与えてくれる最も素晴らしい存在だ」


「いいや魔族こそが我々を危険から守ってくれる最も素晴らしい存在だ」


神は人間たちをなだめた。


「我々は同じ仲間。互いが愛し合い、物を分かち合うのは当たり前のこと」


魔族も人間たちをなだめた。


「我々は皆を危険から守るのに長けているので、その役目に徹しているだけ」


そんななだめる言葉は人間に届かず口論はヒートアップし、ついには戦いを始めた。


これが人間の起こした最初の戦争だとされている。


神は人間にやめるよう説得し続けたけど、これは神のためだと戦争を止めない人間に神は呆れを起こすと同時に納得した。


「なるほど、いくら私たちがやめなさいとたしなめても人間たちは平和より争うのが望みらしい。それならば私たちは人間の望み通り自由に戦わせてやろう。自身らが自身らの間違いに気づき平和を望む心が生まれるまで私たちは手も口も出すまいよ」


神は静観に徹し、魔族は危険から人間を遠ざけようと躍起になって戦争を止めようとして、共通の敵を作れば戦いをやめるはずとモンスターを作り出した。


これがモンスターが生まれた所以(ゆえん)で、魔族が作りだしたからモンスターは魔族が扱いやすいものとされている。


魔族の作戦は功を奏して、人間はモンスターを倒すため互いに協力し合って戦いは収束を迎えつつあった。


すると静観していた神が戻ってきて、何事もなかったかのように自分たちに接してくる。

魔族は腹を立て文句を言った。


「我々が戦いを止めようとしている時に何もしなかったくせに、終わった途端に戻って来て。お前は何のための神なんだ」


神は言った。


「我々は人間の戦いたいという望み通りにさせていたまで。今の人間の望みは以前と同じく平和に暮らすことであるからその望み通り戻ってきた。我々のためといがみ合っていた人間たちも以前の生活を望んでいる」


この言葉に魔族が怒りだした。


「そんな勝手な言い分ばかりするような者と以前のように暮らせるか」


今度は魔族が神にそっぽ向き、人間どものせいでこんなに腹の悪い事になったのだと人間すらも見捨てた。

神と人間は魔族を説得したけど魔族の口と頭はよく回り、どうあっても言いくるめられて説得できない。


業を煮やした神は言った。


「これ以上意地を張るのなら愛と恩恵を与えないぞ」


魔族は返した。


「お前らの愛と恩恵なぞいらん。お前らとはこれから先、未来永劫交わることなどないだろう。それよりお前らが困ることを望んでやってやる。神であるお前らは我らの困らせてやるという望みを喜んで受け入れるのだろう」


魔族が神を拒否し呪い決別の言葉吐いた時から魔族は神からの愛と恩恵を受け取れなくなって、神に唾を吐き(ののし)り、人間を悪い道へ陥れる存在になったとされている。


魔族は言葉の通り神を困らせるため純真な人間たちを甘い言葉で(たぶら)かしては使役し始めた。

魔族の手によりあっという間に悪い心持ちの人間は増え、善良な人間に害をだし神が困ることを水面下で静かにしかけてくる。


まさか人間の望みをそのまま受け入れただけでこのような事になるとはと神も大いに困惑して深く反省した。


悩んだ末に神は魔族とは正反対の存在であろう、人間を魔族から守る存在になろうと決断し、身体から明るい光を放ち善の心をもつ人間と力を合わせ魔族に対抗した。


次第にその攻防戦は世界に広がり、ついには神・人間・魔族全てを巻き込んだ大戦争に発展した。

その戦いは凄まじく神・人間・魔族の暮らしていた世界は破壊された。


戦いの勝負はつかなくて、神の放つ光が傷に障るから魔族はひび割れた地面の下に退避して、神は自身の放つ光で人の目も潰さんばかりになっていたから天の上に昇っていった。


人間はその中間地点に取り残されて、神と魔族の戦った後の荒れた世界に絶望した。


その様子を見た神は天の上から新しい世界を創って今の世界が誕生した。


これが天地創造。


でも神は地面のヒビ割れを渓谷と勘違いして直さなかったから、魔族は今でも地上に現れ人間を(たぶら)かすのだという。


「…というわけ」


丁度ロッテもサードに話し終えたみたい。


「で、話の流れ的にエリーが天地創造まがいの魔法が使えるの?だとしたら神の血が入ってるってことになるけど」


ロッテの言葉に胸がドクンと高鳴る。


私は人間のようで人間じゃない、新しい種族だと言われている。

でもまさか、神様の血が入ってるだなんてこと…。


ロッテの言葉にサードは何ていうのかしらと聞いていると、サードは逆に質問した。


「あんたはどう思う?」


ロッテはうーん…、と少し黙ってから、


「天地創造の話は魔界でもおとぎ話レベルにしか認識されてない。ちなみに今あんたに話した天地創造の話は人間のものなんだ。

魔界に伝わる話だと神はもっと陰険で自分の身の保身ばかりで何もしない無能みたいに書かれてるし、人間は自分たちの楽しみのために存在する家畜程度にしか書かれてない。

神に天地創造の話がどう伝わってるか分からないけど、まず人間界の伝説が実際にあったことで中立の立場で書かれてると想定して『昔この地上には魔族・人間・神が一緒に暮らしていた』と始まる。さて、それぞれの種族はその種族だけで固まって過ごしていたと思う?」


「いんや。それぞれ違う種類でも関わり合ってたと思うね」


「そう。魔族と人間、人間と神、魔族と神が結婚してその子供が出来ていたかもしれない。もし神との子がそのまま人間として地上に残ったなら、あり得ない話じゃないと思うけど」


「…魔族のあんたから見てエリーは神と感じるか?」


ロッテの無言が長く続く。


「…分からない。色んな種族っぽいけど、これだ、って断定できない」


「…そうか。どれかに近いんだったらその特性の魔法をもっと覚えさせようと思ったんだがな。あいつの魔法、変に強いから使い勝手悪いんだ」


悪かったわね、とイラッとしているとロッテは笑う。


「ああそういうこと。いきなり魔法教えろって言うからあんたが魔法使いたいのかと思った」


「俺が使えるわけねえだろうが。あいつ魔導士のくせにろくに魔法のこと知らねえから俺だって自分で分かる限り情報収集しねえといけねえだろ」


少し間があいた。


「今あたしが言った程度ならエリーだって知ってると思うけど」


そうよそうよ、最低限の魔法の知識なら子供の頃にキッチリと叩きこまれたから今ロッテに質問した程度なら私にだって答えられるわよ。


「あんたが思ってる以上にあいつは馬鹿なんだぜ?覚えてるふりしてほとんど穴抜け状態で覚えてるだろうよ」


なにそれ失礼な!


カッとなって部屋に突撃しそうになったけど、そうすると今まで聞き耳を立てているのがバレると慌てて踏みとどまって深く深呼吸して落ち着く。


中からはロッテの含み笑いが聞こえてくる。


「年下の女の子に聞くのは男のプライドが許さない感じ?」


「そんなんじゃねえ、あいつのうろ覚えの知識を信用して、いざ生死の分れ目って時にその知識は間違った情報でした。そんなオチ笑えねえだろ」


だから失礼な!言っておくけど勉強は得意なんだからね、私!


「試しに色々聞いてみなよ、今日見ただけでもエリーは真面目だし難しい文字も読めるし分からないことはすぐ質問して覚えようとする努力家だし、頭のいい子だと思うよ」


「はぁ?頭がいい?頭がいいってのは頭に入れた知識を活用して応用できる奴のことを言うんだぜ、知識だけじゃ馬鹿と同じだ」


「ふざけないで!何よいちいち馬鹿にして!」


ついに我慢しきれず部屋に突撃した。でも二人からは驚いた素振りもなく、


「あ、やっと入って来た」


「いつまでも聞き耳立ててんじゃねえよ」


という反応が返って来る。


…どうやらとっくに部屋の外に居るのがバレていたみたい。

気恥ずかしさで口ごもり、モゴモゴ返す。


「気づいていたなら声をかけてくれたっていいじゃないの」


「いや普通に足音立ててきて急にそこで止まるから…どうしたのかなって」


そんなに私の足音は響いていたの?やだ余計に気恥ずかしい…。


ロッテは椅子を引いて私にすすめ、


「で、エリーは自分で自分のことどう思ってるの?家に代々伝わる言い伝えみたいなものとかない?」


椅子に座って少し黙る。


私の家、ディーナ家はその力の強さを調べたいとの学者の申し出を快諾(かいだく)した。でもそれから戦争が起きたんだから、軽々しく話すのは気が引ける。

特にサードは私の純金になる髪のことは神経質なまでに隠したがっているし…。


黙っているとサードが私の代わりに話し始めた。


「こいつとその親父は今まで見つかってねえ新種族じゃねえかって話があるんだ。本当なのか分からねえがな」


「新種族!?へえ~!」


ロッテの目が興味深々という輝きに満ちている。


「新しい種族ならそりゃどの種族なのか分かるわけないわ。へえ~、新種族か…レアなのが目の前にいるんだわぁ…感動~!」


空中からロッテのメモ用の本とペンが落ちて来て、新しいページにカリカリと読めない文字を綴っていく。


「なあロッテ。人間界、天界、魔界の他の世界のことは知らねえか?」


サードがふいに口を開くとロッテは文字を綴る手を止めて、サードの言葉の意味を少し考え込んでから質問を返す。


「他って?」


「モンスター、魔法、魔族、神、ガウリスのあのリュー…ドラゴンなんてものは存在しない世界。そういうのが主に存在するのは物語の中でだけで実際に見たとも会ったとも言う奴はろくにいない。だから大半以上の人間はそんなものこの世に本当にいるのかどうかも怪しいとさえ感じている。…そんなモンスターも魔法も何もねえ世界の話は聞いたことはねえか?」


「…?」


サードが何を言おうとしているのか分からない。


魔法、モンスター、魔族、神様の全てが存在してなくて、ろくに見ることも会うこともない世界なんてものが存在するの?

そりゃあ魔族と神様はおいそれと会う存在じゃないでしょうけど、強弱はあれ魔法を使える人は多いしモンスターなんてその辺を歩いていたら嫌でも遭う。


それにサードは私たちの知らないガウリスのドラゴンのことはよく知っていたし…。


…ん?あれ待って何かおかしくない?何かおかしい。


ガウリスのドラゴン姿はモンスター辞典に載ってない。私たちもロッテでさえも知らない。

サードは知っている。それもそんなドラゴンが存在しない世界は知らないかと聞いている。


…そうよ、何でサードはそんなものが存在しない世界のことをわざわざ聞いたの?だとしたらその世界を知っている…それだとサードは…。


頭が混乱してきた。


ロッテは少し黙りこんだあと…どこか信じられないという表情でゆっくりと身を乗り出す。


「…その世界ってもしかしてあんたの生まれ故郷?だとしたら魔界、人間、界天界以外にもここと同じような、でも何もかもが違う世界があるっていうの?」


サードはそんなロッテの姿に、ニヤと笑った。


「なるほど知らねえか。ならいい、あんたなら分かるかどうか聞いただけだ」


サードはサッと立ち上がって部屋から出て行こうとする。


「ああ待って、その世界のこともっと詳しく教えて」


ロッテが軽く腰を浮かせてサードをひき止めるけど、サードはニヤニヤしながら振り向いた。


「あんたぐらいのいい女にすがりつかれる切り札を見つけたんだ、とことん焦らしてやるさ」


ロッテはこいつ、と鼻で笑って座り直したけど、すぐさま私がサードの服をつまんでひき止める。


「ちょっとサード、そこまで言ったんなら最後まで教えてよ。あなた結局どこの生まれなの」


「出稼ぎに病人、死人、娼婦、罪人の多い所の生まれだ」


そう言うとサードは私の手を払って行ってしまった。


「エリーもサードの故郷の話って聞いたことないの?」


頷きながら、


「会ったころは旅に慣れるのに必死で過去を聞く余裕なんてなかったのよ。この前初めて聞いてみたらあんなこと言うから聞かれたくないのかもしれないけど…」


けどロッテ相手だと普段言わない自分の話を素直に言っていたのよね、何なの。


「ロッテには色々言うのに何で私たちには何も言わないのよあいつ」


ロッテは笑った。


「あいつは単純にあたしから知識を吸収したいだけだよ。それと自分が有利になる情報を少しさらけ出しただけでしょ」


「でもずっと旅してんのにお互いのことろくに分からないとかどうなの?アレンはどこそこ出身で商人の家の出で~ってちゃんと答えてくれるのに…」


「どう見たって気難しい奴なんだから放っておきなさいって。言いたくなったら自分で言いにくるでしょ」


そうかなぁ、サードがそんな風に話を聞いて聞いてって来るわけなさそうだけど。


不満だらけの口をつぐむと、ロッテは時計を見てから私に視線を戻す。


「もう夜も更けたよ。人間はそろそろ寝る時間じゃない?」


時計をみると、夜中の十二時を過ぎている。


「ロッテはまだ起きてるの?」


そう聞くと、ロッテはふふふ、と笑った。


「魔族は人間界の一週間は寝なくても平気なのよ。だから人間の倍は本を読めるわけ。人間より体は丈夫だしね。人間は寿命は短いしろくに起きてられないから、あたし魔族に生まれて正解だったわぁ。人間に生まれてたらきっともう不眠で死んでるもの」


その言葉に私も思わず笑った。

神様は一定の許容範囲を越えたらすっぱり人を切り捨てる清々しさがありますよね。

「触らぬ神に祟りなし」の言葉を考えた人はすごく真理をついてる。そう思う。

下手に触って怒らせて死ぬはめになるよりなら最初から触るなっていうね。

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