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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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ねえねえ、今どんな気持ち?どんな気持ち?ハッハッ(後半サード目線)

「ミラーニョ!?」


ミラーニョの名前が出て全員が身を乗り出すと、かすかにカーミは驚いた顔でのけ反った。


「そうだよミラーニョ。え?ミラーニョって知ってるんだろ?」


「それは知ってるけど…。でもミラーニョって黒魔術を使う人間の男の人じゃないの?魔族だったの?」


聞くとカーミは少し首を傾げ、


「ジルさんとドレーさんの話聞く限りだと同じ年数生きてるっぽいから魔族だと思うぜ。つっても俺は一回も会ったことないけど。俺が生まれるずっと前から国外に出て黒魔術を広められそうな国を探して回ってるとは聞いてるけど」


ラーダリア湖の騒ぎを起こしたミラーニョがまさか魔族だったなんて。


だったらウチサザイ国からは黒魔術士のような怪しい人たち、ハミルトンみたいな危ない人たち、それどころか魔族本人も自ら国の外に出てあちこちで害を振りまいてるってことじゃない。

だとしたらどれくらいの国、そして人が酷い目に遭っているのか…。


ウンザリ嫌な気分になっているとサードがカーミに聞く。


「…お前エルボ国に行ったんだろ?どういう理由があって?」


「呼ばれたからだよ。国の内部に入って調べろって言われたから」


「何でわざわざそんな遠く離れた国に?」


「さあ?とにかく俺らは命令通り動く仕事だからね。言われたから向かっただけ」


「その命令してきた奴はエルボ国にいたのか?それともウチサザイ国?」


「エルボ国にいたよ、入れ違いになったけど」


「…まさかとは思うが、それはエルボ国の道化師か?」


えっ、と驚いて顔をサードに向けてから返答を聞くためにカーミをバッと見る。


そう言われればそうよ、道化師は戦争が始まる四年前に消えて、カーミは四年前にエルボ国に入ったんだもの。

お互い入れ違いになったというしそうだったら筋が通るわ。


「エルボ国の道化師?そんなの居たの?」


「知らねえか?」


「俺が城に入った時には居なかったなぁ。…。あれそういえば言ったっけ、俺に命令してきたのミラーニョさんだって」


その言葉に「えっ」と皆で顔を見合わせる。

ここまで聞いてて何となく皆が考えていると思う。


エルボ国に入ってサブリナ様の心の支えになっていた道化師ってもしかして…ウチサザイ国の魔族、ミラーニョだったんじゃないかって…。


だってそう考えれば考える程道化師とミラーニョが繋がっていくじゃない。


道化師は戦争が始まる直前に国から消えた。サブリナ様は道化師の名前もそれ以前の経歴も何も分からなかったみたいだけれど、その内政に詳しい口ぶりにどこかの国で大臣以上の働きをしていた人じゃないかって疑っていた。


ミラーニョは世界各国を渡り歩き、黒魔術を広められそうな国を探していた。ファディアント王時代のエルボ国は荒れに荒れていたからミラーニョが目をつけた可能性はものすごく高い。


それも国から逃げ出した道化師にファディアントが探すように命令しても道化師はついに見つからなかった。

黒魔術の頂点に立つ魔族のミラーニョだとしたら、国を挙げて探そうとしても簡単に国外に逃げることはできたはず。


「本当に、ミラーニョ…なのか道化師なのか分からないけど、会ってないの?」


「まあそれっぽい後ろ姿チラッと見ただけだね。戦争起きる前にエルボ国の城下町の指定された日の指定されたカフェの一画で指定された飲み物飲んでる時に足元に手紙落とされて、しばらくしてから紙を拾ってちらっと見たぐらい」


「どんな見た目だった」


「小太りで頭の薄いオッサンだったよ」


「そうよそれよ!道化師はサブリナ様相手にもよく髪の毛の薄さで笑いを取っていたって聞いたわ。顔は脂ぎっててお腹の出てる中年太りの体型だって、ね、サード」


その話はサードも聞いているから同意を求めて聞くと、


「証拠がねえから断定はできねえが、怪しい。同一人物としか思えねえ」


と頷いてくれる。


でもミラーニョが魔族だってだけでも驚きだったのに、まさかそんな魔族がエルボ国の城内にまで入っていただなんて…。まぁサードは断定できないとは言ってるけど。


「それならウチサザイ国はジルとドレー、ミラーニョの三人で黒魔術を蔓延(まんえん)させてんのか?」


サードはミラーニョの話題をやめて他のことを聞く。


「いやジルさん中心だな。ドレーさんはただジルさんに付きまとって偉そうにしてるだけだったし、ミラーニョさんはウチサザイ国に長い間居なかったし」


「ならジルを殺せば黒魔術を信仰してる奴らの力を奪い取ることができるんだな?黒魔術は特定の魔族を崇めて使えるようになる魔術だ、そういうことだろ」


「…どゆこと?」


カーミは言ってる意味が分からないと聞き返すと、サードは軽く眉をひそませた。


「マダイのダンジョンで話したことだろ、聞いてねえのか?」


「マダイ?」


「あのソードリア国で作物を腐らせてた魔族だ」


「あーはいはいはい、ミレイダさんと一緒に攻略したあのダンジョンね!あそこはヤバそうな蛇が庭にウジャウジャいて待ち構えてたから入ってねえんだ」


ええ…あの庭、そんなに蛇がいたの…?


今更ながらドン引きしているうちにサードはマダイの塔でロッテと話した時の話を説明した。


ケッリルの息子の黒魔術を解けないかと聞いたら、その魔法をかけた魔族を崇めて得た魔術でかけられたなら他の魔族は関係ないからどうにもできない、解けるのはその魔族本人だと言っていたこと。

つまり黒魔術士に力を与えているはジル。そのジルを殺せば黒魔術を使う人たちの力が解消されて、黒魔術士による術も解けるはず…。


カーミは「はー…」って分かったような分かって無さそうな顔で頷いた。


「まー…確かに俺も子供のころジルさん所に行って忠誠誓う儀式をやって黒魔術使えるようになったんだよな。じゃああれか、忠誠誓ってるジルさんが死んだら俺も黒魔術使えなくなるってことか。へー、考えたことなかったなそんなこと」


「ちなみに国内のほとんどの奴らは黒魔術を使えんのか?」


サードの質問にカーミは首を横に振る。


「全員じゃねえな。俺らみたいな陰で暗躍する奴ら、バファ村の連中は確実に全員使える。それと貴族の一部の奴らも使える奴がいるぜ」


「…」


サードは色々と考え込むように黙り込むと、あごに手を当てながらわずかに上の方向を見た。

そのまま視線だけをカーミに向けて、


「ウチサザイ国は何をか企んでる?」


「勇者様もこの前ホテルの部屋の中で言ってたじゃん。俺だったら世界にろくに広まってない黒魔術を使って他の国を弱体化させて手に入れようとするって」


カーミの言葉にサードの目じりがきつくなった。


「てめえどこで聞いてた」


カーミは「へへへ」と笑いながらどこで聞いていたかは一切答えず、


「そういうことなんじゃねえの?でも俺はただ言われた通り動いてただけだから、国の目的までは分かんねえ」


サードは何か言いたそうにしていたけれど、今聞きたい話を優先したみたいで続けた。


「じゃあ別の質問だ。ハミルトンがリトゥアールジェムを探してたのも知ってるな?何で魔族が神に願いことをする時に使う者なんて必要としている?」


カーミは少し首を傾げて、


「さあ?知らね。俺そういう話全然聞いたことない。俺らに言わねえってことはかなりのトップシークレットかな」


使えねえって顔で一瞥(いちべつ)してからサードはまた話を変える。


「お前は黒魔術が使えるらしいが、どれくらい使える?」


「とりあえず人を殺すのが楽なのとー、逃げるのに向いてるのとー、それと情報収集に向いてるやつと拷問で使えそうなのと自分が死ぬ用のと…。えーと、二十個くらいかな」


「ウチサザイ国は黒魔術はどうやって覚えてんだ?本でもあるのか?」


「俺は先生から習ったけど。それに黒魔術の本ならエリーさんの大きいバッグに入ってるだろ?」


「…お前、本当に今までどこに居て話聞いてたんだ?」


サードの質問に「へへへ」とカーミは笑うだけで何も言わない。


サードは嫌な表情をしながらも私の大きいバッグから黒魔術の本を出してカーミに表紙を見せて、


「こんなの見たことあるか?解読はできるか?」


って言いながら本を開く。カーミは身を乗り出して本を見て、アハッと笑ってすぐに引っ込んだ。


「読めね」


サードは本を閉じると、しまっとけとばかりに黒魔術の本を私に押しつけてきた。


「ならお前はウチサザイ国に戻って内情をもっとよく調べろ。ジルのこと、ミラーニョのこと、リトゥアールジェムを使って何をするつもりか、何が目的なのか、それと国内の様子にタテハ山脈の現状もだ」


「オッケー」


次々と言われたことに不平を垂れるわけでもなくカーミは簡単に頷く。でもすぐに身を乗り出した。


「ところで色々聞かれて色々やれって言われたけどさ、未だにサードさんだけ楽に死ねると思うなよ程度で俺のこと仲間にするって完全に言ってくれてねえよな?

もしかしてこのまま俺のこと利用するだけ利用して欲しい情報手に入れたら仲間にするだなんて俺は言ってねえとか後から難癖つけて切り捨てようとしてない?」


「…察しのいい奴め」


チッとサードが舌打ちする。


「ちょっとサード」


まさかサードがそんなこと考えてるとは思わなくて突っ込むと、サードはアレンに指を向けてチョイチョイ動かす。


「だったら今回はお試しで動いてもらう、アレン、金寄こせ」


「ん、うん」


アレンはお金の入った袋をサードに渡す。


サードはその中から金貨を五枚取り出すとカーミの前にチャリンチャリンと放り投げた。


「使え、それくらいあれば余裕で行って戻って来れるぐらいの旅費にはなるだろ」


ええー…、金に小うるさいサードが気前よくお金を渡すだなんて…しかも金貨五枚…。


目の前で起きた出来事に目を丸くしているとカーミは面白く無さそうに眉をしかめた。そのまま金貨をサードの方に押し戻す。


「要らね」


ええー…、まさか金貨を拒否する人がいるだなんて…。


それでもサードはニヤ、と笑って、


「分かってんだろ?」


とカーミに金貨を戻す。


カーミ恨めし気な顔でサードを見て、わずかにため息をつくと金貨をポッケに入れた。


「そんじゃま、行ってきまーす」


憮然(ぶぜん)とした表情でカーミは部屋の外へと出て行って、アレンは、


「カーミ気をつけてなー」


と手を振って見送る。

そんな一部始終をみてキョトンとしている私の表情を見たサードはニヤニヤしながら、


「ただの考えなしの悪人だったら金貨五枚をただで手に入れたらそのままトンズラして戻って来ねえだろ。それならそれであんな野郎と離れられるからそれでいい。それでも俺の言いつけ守るってならあの金貨は雇用賃だ。真の仲間としては認めねえ、てめえとは金で繋がってる程度の関係だって暗に伝えたんだ」


その言葉に私は少しもどかしい気持ちで非難がましくサードに聞いた。


「カーミはあんなに正直にサードの質問に全部答えてくれたのよ?それでもまだサードは信用しないの?」


「裏切らねえで俺が言ったことをしっかりやるんだったら仲間ってことにしてやらあ。まずエリーも戻ってきた、ウチサザイ国のあれこれも詳しい奴も一時仲間になった、それなら明日出発するぞ、いいな」


サードはそう言うとさっさと立ち上がって外に出て行った。


…そんな…カーミはあんなに私たちの仲間になりたいって望んでいたのにあんまりだわ。


* * *


エリーの部屋から外に出てドアを閉める。


「ばあ」


カーミが死角から急に現れ、わずかに驚いて奴のあごを裏拳で下から殴る…。スカ、とカーミのあごから脳天にかけて俺の手が透り抜けた。


「あっぶね、黒魔術覚えてなかったら一発で俺沈んでんじゃん今の」


…体を通り抜けるこれも黒魔術か?それより…、


「てめえまだ居やがったのか」


「足音を小さくして遠ざかったようにしてみせただけだよ。勇者様から仲間にするって言葉聞か

ねえと安心できねえなって思って少し聞き耳立ててたんだ」


カーミはムフ、と満足げに笑って、


「でもたった今、ちゃんとやったら仲間にするって言葉も聞けたし。今度こそ俺行くよ」


…心底腹は立つが、ケッリルの言っていたとおりこいつの腕はいいんだろう、この俺がこんな間近にいる奴に気づかないなんてことそうそうねえ…。


立ち去りかけたカーミは俺の面白くねえ顔を見るとどこかニヤニヤしながら戻ってきて、


「あのさあ」


と声をかけてくる。


「んだ、ゴラ」


喧嘩腰で返すとカーミは芝居かかってるように手を動かした。


「『青い目の女は手ごわい、友達にさえなってくれない、思いは募るばかり。報われないと知ってるからだ』」


カーミは芝居かかった口調を言い終えるとニッと笑う。


「これ前に観た戯曲のセリフ。勇者様とエリーさん見てるなーんか出てくんだよね」


「…何の話だ」


「べっつにー?ただエリーさんがハミルトンさんに襲われそうになって、勇者様が助けた後のあれこれ見てたらその言葉が出てくるってだけの話ぃ~。まあ簡単に仲間にしてくれないのに腹立ったから仕返しってのもあるけどぉ~」


カーミはふっと俺に顔を寄せて、今までにないくらいの嫌な笑みを浮かべる。


「ねえ、勇者様が絶対誰にも知られたくない情報を俺に握られてるってどんな気持ち?ねえどんな気持ち?」


カーミはハッハッと笑うと人懐っこい笑顔を浮かべて「んじゃ!いってきまーす!」俺から逃げるように走り去った。

「青い目の女は手ごわい、友達にさえなってくれない、思いは募るばかり、報われないと知ってるからだ」


「『羊の丘』のジョン・ウェインのセリフだ」って、映画、ニュー・シネマ・パラダイスに出てきたアルフレードおじさんが言ってました。


すごく有名でタイトルだけは知ってるけどみたことないってくらいの昔の映画はね、みると大体感動するよ。名作は時代が流れても名作なんだってものすごく思う。

ちなみに数年前、初めて猿の惑星をみようとDVD借りようとしたの。そうしたらパッケージ裏の内容紹介にネタバレが書いてあって「あ"あ"あ"あ"あ"あ"」ってなったの。全員が全員映画館とかビデオテープで見て内容知ってるだろとか思ってんじゃねえよチクショー。楽しかったけどよチクショー。

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