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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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ああー!サムラ!ああー!

「じゃあやります!」


やる気十分のサムラは深呼吸すると「よし!」って言いながら力を込める。


ガウリスの隣でハラハラしながら見ているとスー…と水面に流れが起きて、それが段々と渦を巻いている。


サムラは…うん、魔法を使っても体は大丈夫そう。どうやら制御魔法もきちんとできてるみたいね、コッコドリをへし折った時みたいな魔法の暴発みたいなことも起きないし。


心配しなくて大丈夫だったみたいと気を抜いて天気のいい秋の澄んだ青い空を見上げていると、急にグンッと船が動き出した。


驚いて視線を水面に戻すと私たちの船どころか遠くを通っていた数隻の船もぐんぐんと渦に巻き込まれて渦の中心に向かって大きく回っていて、叫び声と慌てている声が聞こえる。


「サムラ!?」


バッと視線を向けるとサムラも体感で何か異変を起こしていると分かったのか混乱した顔で、


「ちちちち違うんです、少し水を動かせればと思ってるのに…!ああー!違うんです、こんなに動かしたいんじゃないんです!あああー!」


サムラはあわあわと大きく手を動かすけれど、それに連動するように渦の動きは大きく速くなっていく。


…わあ…まるで制御魔法を覚えていない時の私みたい。すぐこんな風に暴走して周りに被害を出していたのよね、懐かしい…。


でもこのままじゃあ船が湖に吸い込まれるか転覆しちゃうかも、止めよう。


ボッとサードにかけてある無効化の魔法を広げて、渦と、渦に巻き込まれてわぁわぁ言っている全ての船を包み込む。

サムラの魔法はフッと消え失せて、巻いていた渦も消えて静かな凪いだ湖面に戻っていく。


「サムラ、魔法使うの止めてね。今サムラの魔法を使えない状態にしているだけだから」


サムラは血の引いた顔つきで私を振り向くと半べその顔をしていて、


「助かりました…!」


ってその場にへたり込んだ。自分がやったことで腰が抜けたみたい。


遠くの船からは怒っているような声が聞こえるけれど、遠いから何か言っているくらいしかよく聞き取れない。

それでもとりあえず「ごめんなさい、魔法の練習をしていたの!」と謝っておいた。私の声も聞こえているのかは微妙だけど。


「今のはすごかったですね」


驚きと軽い興奮の入り交じったガウリスの言葉に頷いて、


「ね。昔の私みたいだわ」


って腰の抜けたサムラを立たせるとガウリスが、


「そういえばエリーさんも力を分け与えていただいたのでしたね」


って聞いくるからうん、と頷いた。


「でも私には精霊の血も流れてるみたいだし、元々水があれば水も操れるから何か変わったかもよく分らないんだけどね。パワーアップでもしたかしら」


私の言葉にガウリスは何か考え込んで、顔を上げる。


「エリーさんはゼロからは魔法は作れませんよね?火とか…」


「…そうよ」


その話はあまりしないで欲しいって感じの返答をすると、


「先ほどサムラさんはどこでも好きな時に使えると言ってましたし、もしかして水の精霊から力を分け与えられた今ならゼロの状態から水を作り出すことができるのではないですか?」


「えっ!」


その言葉に私はものすごく反応した。


一般的な魔導士たちは呪文を唱えて、火種も水滴も何もない状況で手や体の周りから炎を放出したり水を放っている。


憧れていたのよ、あの姿。


風は空気を震わせたら発生するからどうにかなるけれど、私はゼロの状態から火や水が作れないんだもの。


特にサードは火を起こす時に「こういう時ゼロから火ぃ出せる奴がいたら楽なのにな」とかいちいち言うから…。

悪かったわね火をつけることができなくて、ってイラッとしつつ少しずつコンプレックスも積み重なったものだわ。


それでも結局他の魔導士より私の方が強いもん、と()ねながら自尊心をずっと守ってきた今、他の魔導士たちみたいにゼロから水が出せるかもしれない…!?


「じゃあ手から水を出して体の周りから放つとかできるかもしれないってことね」


「ではないかと思うのですが」


あやふやな言葉ながらもガウリスは頷く。

そんなあやふやな意見でもガウリスにできると思うって言われると確実にできる気がする。不思議。


「じゃあ私もやってみよ!」


船も何もない方向を見て、手を真正面に向ける。

やり方はきっといつもと同じ。制御魔法を使いながらよいしょ、と動かす。


水…!水でろ…!


魔法を発動すると、手の平の真ん前にシュルシュルと水が発生した。その水は丸くなってプルプルしながら空中に浮いている。


できた!こんなにあっさり!

魔法を本格的に使い始めてから拗ねたりコンプレックスを抱いていたことが、今!こんなにも!簡単に!あっけなく…!


「うひゃあああああああ!」


興奮のあまり叫んでジャンプした。すると、


「どうしたエリー!?」


って私の叫びを聞きつけてアレンとサードがドアを開けて船尾に駆けつけてきたから、興奮状態のまま振り返って空中に浮かんでいるプルプル震えている二つの水の玉をズイッと差し出す。


「あのねっ私ゼロから!ゼロから魔法出せたの!水ができたの!湖の水じゃないの!これ私が作ったの!」


喜びのあまりその場でぴょんぴょん飛び跳ねると、水の玉がポポポポと一気に増えて私と同じようにポンポン空中を跳ね回っている。


「エリー…!」


アレンは驚きと喜びの表情で目を見開くと、ガバッと私に抱き着く。


「すげぇじゃんエリー!やったな!」


私はアレンに高く持ち上げられてそのままグルグルと回転し始めて、私も嬉しさのあまりそのままギューッとしがみつく。アレンは「もご」と言いながら私をおろして、良かった良かったと自分のことみたいに嬉しそうにして背中を連続でポンポンポンと叩いてくれる。


そんなアレンの後ろでサードは黙ってこっちを見ていた。


アレンはこんなに喜んでくれているのにサードときたらまるで「そんなことで無駄にはしゃいでんじゃねえよ、何事かと思ったじゃねえか」って責める目つきに見て取れた。


イラッとした。


「サードはよくゼロから魔法作れる奴がいたら楽だよなとか言ってたじゃないの、もっと喜びなさいよ」


何よりサードがなんの気なしに発言する言葉で私がどれだけコンプレックスを感じていたことか。

それなのに喜びもしないでまぁ腹の立つ顔…。


イライラしながら言うとサードは軽く鼻で息を吐きながら、


「飲み水を探す手間は省ける、か…。あとは火ぃつけれたら野宿も楽なんだがなあ」


と言うと船の中に戻っていく。カーっと頭に血が昇った。


この…結局喜びもしないしおめでとうの言葉もないうえに今度は火つけられたら楽なのにですって?


私はすごく嬉しかったのに、アレンも喜んでくれたのに腹立つ…!…そうだわ、無効化の魔法をこっそり解いて船酔いにして陸地につくまでずっと潰してやる…!


悪い顔で無効化の魔法を解こうとするとグルリとサードが振り向いてきた。


私の悪だくみがバレた!?


ビクッと肩を震わせて、私何もしようとしてないとシュッと目を逸らす。


「思えばランディキングから力分けられてたらもっとすげえことできたかもしれねえ。惜しいことをした、次に会う機会があったら力を分けえ貰え、いいな」


サードはそう言うと扉を閉めた。


「…無理に決まってるでしょ」


扉の向こうのサードに向かって呆れた声を放つ。


ランディキングはこの地上ができた時からずっといる古い存在なのよ?ほとんど神様と同じ存在なのよ?ホルクートもランディキングと会ったって話に驚くくらいの凄い存在なのよ?


この地上にある全ての自然を作ったランディキングから力を分けられるってことはこの世全ての自然の力を受け継ぐということでしょ?そんなランディキングからどうやって力を分けてもらえって?


…でも結構ランディキングってざっくばらんっていうか、あっさりした性格だったわよね。

案外と「力ちょうだい」って言ったら「別にいいぜ、どうせ死んだら皆俺の元に帰る。なら与えてやる」ってあっさり分けてくれるかも。


色々考えているとアレンは空中に浮いてる水の玉を指でツンツンとつついている。


「わぁ…プルプル…」


アレンの真似をして私もつついてみた。この感触…スライムを指でつついた時と同じだわ。まあスライムは強くつつくと体に指が貫通して、そのままにしていたらじわじわ指が溶けていくけど。


「アレンはこれ気持ち悪くないの?」

「え、別に。何で?」


「だってアレンはスライムはプルプルしてて気持ち悪いっていつも言っているじゃない。これスライムと同じ感触だし…」


「だってスライムって顔もないのにプルプル近寄ってくるじゃん、それが無理なんだよ俺」


…だったらプルプルの感触がダメなんじゃなくてプルプルしてるのが自ら動いて近寄ってくるのが気持ち悪いのね。ふーん。私は気にならないけど。


そう思いながら水の玉をヒュンヒュンその場で動かしていく。


「うおお、すげぇエリー。もう使いこなしてる」

「流石ですね」


アレンとガウリスは本当に素直に褒めてくれる。どこぞの根性曲がってる奴とは違うわ。

それでもサムラは私が何をしているのかよく分かってないみたいでキョトンとしているわね。


私は水の玉をサムラの手のそばまで寄せてピタリと手の甲に触れさせた。


「ひゃっ!」


サムラはびっくりして飛び跳ねると手を引っ込めて辺りをキョロキョロしている。

その驚く姿におかしくなりながら、


「驚かせてごめんなさい、今手に当たったのは精霊魔法で水を丸くしたものよ。さっきくらい水を動かせるならサムラもすぐできると思う、それと同じもの作ってみて。今目の高さにあるそれよ」


「えと…これですか?」


サムラはサムラはプルプルしている水の玉を両手でもにもにと触って「おお…」と感動しているような声を上げている。


「精霊魔法でこういう風に水を丸めて空中に浮かせるんですね?分かりましたやってみます」


サムラは水の玉から手を離すと真剣な表情で「ふぬっ」と力を込める。

するとサムラの両手の内にモモモ…と水の玉が現れた。


うん、やっぱりサムラの魔法の力は強い。それに魔法を使う勘もとてもいいわ。


そう思いながら見守っていると、水の玉は空気が入って膨らんでいく風船みたいにプクーっと一気に膨らんでいく。


「あっ」


また魔法が暴走している…!どうして?サムラは制御魔法ちゃんと覚えているはずなのに何で暴走するの?私は制御魔法を覚えたら暴走することなんてなくなったのに…!


「サムラもういい、魔法を止め…」


私がそう言っているうちに巨大な水の玉はあっという間にアレン、ガウリス、私、サムラ、船をモワンと包み込んで広がった。


サムラはさっき大きい渦を作っている時と同じ混乱の顔でボコボコと空気を吐き出し手を動かして「ああー!困ります!ああー!」って水中のくぐもった声で叫んでいるけれど、そうするとサムラの手の動きに合わせて水はどんどん膨れ上がっていく。


ちょっと、また他の船に被害が行っちゃう!


慌てて私は自然を操る魔法と無効化の魔法を同時に発動すると、巨大な水の塊はパァンッと破裂して湖の上にバシャバシャと飛び散った。


皆ずぶ濡れの状態で顔を見合わせている。

そんなずぶ濡れの私たちは何だかおかしくなってきて、ふふふ、と皆で笑い合った。…サムラだけは「ごめんなさい!ごめんなさい!」って必死に謝り倒しているけれど、それが今は余計におかしい。

アレン

「エリーを持ち上げてぐるぐる回してしがみつかれた時、胸が顔に当たった❤」


サード

「やっぱりか!」

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