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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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貞操の危機(三回目)

私のハグを待つアレンの背後にサードがゆらっと気配もなく立つ。


「てめえが余計なことさえ言わなかったら飯を食い終わって店を出た時点であのクソとおさらばできたんだけどな…」


呪いみたいな低い声でボソボソと耳元で囁いているとアレンは、


「だからごめんってぇー。気になったことポロッと聞いちゃったんだってばぁ」


サードはイライラとした顔でソファーに座ると、穴でもあけるつもりってぐらいの勢いで革のソファーを爪でボリンボリンと音を立てながら引っかいている。本当に猛獣みたいね。


「とっととあの野郎から情報引き出しておさらばしねえと俺らの金が食いつくされるぜ」


「じゃあサード脅せば?」


何の気なしに言うアレンの頭をいつの間にか近くまで詰め寄っていたサードが頭をガッと掴んで、そのままアレンの首をねじ折るつもりってばかりに視線を無理やり合わせた。


「脅したら脅したで勇者がこんなことしたって被害者面で行く先々で言いふらすだろうよ、ああいうタイプはそんなもんだ」


色んな意味で扱いにくいのね。


サードはイライラしながらまたソファーに座って、黙り込んだ。

どうすればハミルトンから手っ取り早く情報が引き出せるか考えているのかも。


昨日からテーブルの上に置いてたままの人の心の中がちょっぴり覗ける眼鏡をかけてサードを見てみた。


昨日見た時より呪いみたいな文字が竜巻みたいにグルグルと回転していて真っ黒に覆いつくされて、本人のサードが見えない。

それもその黒いものからモヤモヤとサードがハミルトンに表向きの顔で話しかけている様子、ハミルトンが色んな方法で殺されている様子がチラチラと現れては一瞬で消えていく。


…まさか、本気で殺すつもりじゃ…まさか…。


声をかけて止めようとすると、サードの周りの黒い文字がフッと全部消えて、頭周りの一本の黒い線だけになった。


急にクリアになった視界に眼鏡を取ってサードを見ると、サードの表情と仕草からもイライラとしたものは消えて落ち着いた顔になっている。


サードは一言呟いた。


「いっか」


「…何が?」


私が聞くと、サードは私を見てくる。


「ウチサザイ国に行けば他にあの魔族の情報を持ってる奴も居るだろ。その魔族とやらは特に隠すことなくあちこちで魔族だってバラしながらウチサザイ国の首都にいることは確からしいしな。

その魔族が黒魔術の村と関係してるのかは分からねえが、それなら別にあのハミルトンに無理して聞かなくたっていいわけだ。だとすればあいつにもう用はねえ」


サードはそう言いながら、ふっ、と馬鹿なことをしたとばかりにため息をついた。


「無駄金使っちまった」

「俺も特上ステーキ食べたかったなぁ」


アレンはまたサードが怒りそうなのん気なこと言って…。


「それでは、ハミルトンさんはどうするのですか?」


ガウリスが聞くとサードは、


「引き離す、公安局にぶち込む」


でもガウリスは首を軽く横にふりながら、


「いえそういうことではなく…。性格に難はありますがそれでもハミルトンさん自身も余命に脅える身の上です。ここで引き離せば結局ハミルトンさんはリトゥアールジェムを持って行くことができず死んでしまうではありませんか?」


「…」


サードは一種の感動を覚えているような顔でガウリスを見ると、


「お前、よくあんなゲスのことをそんな熱心に考えられるよな。俺はあんな小悪党が一人死のうが気にならねえぜ。むしろ死んだほうが世の中の善良な奴らが助かるってもんだ」


って言う。けれどガウリスは真面目な顔で、


「小悪党であれ共に同じ世界を生きている人です。それに大量の人々を苦しめていたファディアント王とて大きい出来事のあとに性格は改善されました。生まれついての悪人などいません、周りの環境で少しねじれているだけで何かきっかけさえあれば真っすぐになります」


サードはそれを聞いて馬鹿にするように鼻で笑う。


「幸せな脳みそしてんなぁ。それでねじくれた野郎が真人間になれるって本気で信じてんのか?何かあって真っすぐに戻れるんだったら元々そいつはその程度のことで正気に戻れる奴だったんだよ。世の中の大体の野郎はねじれたらねじれたままだ」


「そうでしょうか?サードさんも随分と真っすぐになったと思いますが」


「…あ"?」


「最近とくに肩の力が抜けましたし、エルボ国でも自身の得にもならないのにサブリナさんが暴力を振るわれそうになったら守り、そして王にしようと駆け回って尽力なさっていました。

あれは無償の愛ではありませんか。最初に会った時のサードさんならばあそこまでサブリナさんを守り、力を貸したでしょうか」


「…」


サードは面白くなさそうに黙り込んでいたけれど、ガウリスにスタスタと近づいて一発すねを蹴り飛ばした。


「イッタ」


「てめえも言うようになったもんだな、本人前にして性格がねじくれてるって言ったも同然だからなこの野郎」


「いえそのようなつもりは」


ガウリスが慌て手を振るけれど私はおかしくて思わず笑いながら、


「だってねじくれてるもん、ねー」


ってガウリスに言う。


だからそんなつもりで言ったつもりではってガウリスが首を横に振り続けてるのも余計おかしい。


「ま、てめえが見捨てたくねえってんならそれなりに目はかけてやらあ」


サードはそう言いながらもガウリスに指を突き付ける。


「ただし、共には行動しねえ。あの野郎が居たら魔法の眼鏡屋にたどり着くのが先か、金が無くなるが先かのスピード勝負になるからな」


ガウリスはホッとした顔でサードに「ありがとうございます」って頭を下げる。


「ったく、あんな小悪党に目かけたって良いことなんてねえと思うぜ…?」


サードはぶつくさと言いながらも部屋から出て行った。


* * *


「…んん…」


妙に冷えた空気が体に触れている感覚がして私は目を覚ました。


手で探ると上にかけていた布団がなくなっている。


あら?暑くてはいじゃったのかしら。


起き上がって布団をさがすと、口をガッと押さえこまれてそのまま枕に頭を押しつけられた。


驚いて目を見開いて、わずかな暗闇に見えるその手の主の顔を見ると…ハミルトン。


どうして、鍵もしめていたはず。…まさかサードと同じように鍵をピッキングしてこじ開けた?


「エリーちゃん、なあ、このまま最後まで静かにしてくれたら俺素直に魔族のこと言っちゃうけど…?」


耳元で囁かれてゾワァと鳥肌が立った。


ミレイダのエリーちゃん呼びは親しみがあった、でもハミルトンのは…気持ち悪い!


腕を動かしてハミルトンの頬にビンタをかます。


パンッといういい音が部屋の中に響いて、柔らかい頬の下の骨の感覚が手の平に伝わって、ハミルトンから「ブッ」という声が漏れた。


ハミルトンは頬を押さえて痛そうに、


「いってぇ~、エリーちゃん結構力強いなあ」


って言いながら私の上にまたがったまま上のスーツを脱ぎ始めている。


「いいじゃん、どうせ男三人の中に女一人なんだからこんなことやってんだろ?」


その言葉にカッとなった。


「そんなわけないでしょ!?馬鹿なの!?男全員があんたと同じ考えだなんて思わないでよね!」


とにかくハミルトンの下から這い出ようとするとハミルトンは体重をかけて私を押しつぶしながらハハハ、と笑う。


「何言ってんの、男なんて女が考えてる以上にエロいことしか考えてねえよ」


「三人は違う!」


…あ…サードとアレンは違わないかも…。


「…私の仲間をあなたを基準にして考えないで!」


「今ちょっと悩んだ?」


ハミルトンはおかしそうに笑いをにじませながら顔を近づけて私の頬に唇を当ててこようとするから、私はバッと最大限に顔を横にずらして避ける。


『いいか、もし危険な奴と二人きりになって身の危険を感じたら何でもいいから話続けろ。そんで気を逸らして隙を見て逃げろ。お前が攻撃したら大体の奴は死ぬだろうから攻撃はよっぽど身の危険が迫ったらでいい』


前に言われたサードの言葉が脳裏に浮かんできた。


そうよ、とにかく私の強力な魔法で軽く脅せばきっとこの男は脅えて逃げていくはずよ。今日だってハミルトンは自分の身が危険になればすぐヒィヒィ言って弱腰になっていたもの。


ギッとハミルトンを睨みつけた。


「言っておくけど勇者一行を相手にするって、どういうことか分かってるんでしょうね」


「え?何?やる気出してくれた?」


最大限の脅し言葉を言ったつもりなのに…何か別の意味で受け取られてる…?


予想外の切り返しに一瞬思考回路が止まったけれど、慌てて続ける。


「ち、違うくて、私が本気出したらあなたなんて死ぬのよ」


「うっそマジ?そんな大人しい顔してまさかの殺す宣言?たっのしみ~」


ちょ、ちょっと、絶対これ脅しだって思われてない。むしろ浮かれ始めてる…どうして?何で!?私変なこと言ってる!?こんなに脅してるのに…!


「ちょっとロウソクつけてもいい?顔見えた方が俺興奮するんだ」


ハミルトンはそう言うと手早くマッチで火をつけてロウソクに火をつける。


ハミルトンのペースに流されている…!


あわわ、と私は慌てて、


「こ、殺すわよ!あなたを!魔法で!」


思った以上に脅し文句が効かないからとにかく必死に脅し言葉をいうけれど、その様子を見ているハミルトンは余計楽しんで…それも今の顔…サードが性転換した時、女のファジズを言葉でいたぶって興奮していた時に似たゾクゾクとした表情…!


その顔を見て気持ち悪い感情より、恐怖の感情がガンッと増える。


「虚勢はって怯えてる姿が可愛いなぁ~。なんだ、その様子だと本当に誰とも相手してないんだ?じゃあ俺が初めての人ってわけ?いいねいいね」


イラッとするのとゾワッとする感情が同時にエリーを襲ってきて、もう耐えられない、風の魔法を使って吹き飛ばしてしまおうと心に決める。


「もういい、あなたを天井に打ち付けるから!」


「いいねぇ俺そういう激しいの好き」


ハミルトンはそう言いながら私に顔を近づける…。

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