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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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ハ・ハ・ハ・

「すっごく楽…!」


次の日、早速マジックアイテムの大きいバッグに今まで持ち歩いていた荷物入れをそっくりそのまま入れた。

荷物入れはスルッとバッグの中に入って、そしてバッグの中に手を入れ取り出そうとすると荷物入れが指に引っかかってすぐ取り出せる。


それどころか前の荷物入れに入れたままの財布もすぐに取り出せた。

もう荷物入れの中を漁って財布がどこにあるのか探す作業も、収納場所を考えて物を詰め込む作業も、衣替え時期の衣服の整理もいらない。


それになんて言っても軽い!今まで肩に食い込んでいたあの重さは何だったの?なんてストレスフリーなの!?


るんるん歩く私を見たアレンは、


「どれ」


って私がかけているバッグをひょいと持って、


「うわぁ…本当だめっちゃ軽い…いいなぁこれ…」


…アレンが物欲しそうな目で私をチラッと見てくる。


でもこれ私のだもん、あげないもん。


キッと睨みつけたらアレンは渋々と諦めて「俺もそのうち買おうっかなぁ」って呟いている。でもサードが、


「一つあれば十分でしょう、二つも要りませんよ」


って釘をさした。


それでも皆の使わない荷物を一端預かっているから、アレンの荷物は水筒と財布一つだけなんだけどね。あとは武器の(じょう)

ガウリスもアレンも武器とかを抜かしたらちょっとその辺を散歩する程度の荷物になっちやったわね…。


でもサードはほとんど私のバッグに入れないで自分で持ったまま。


トイレに行ったサムラを見送りながらサードに、


「もう少し要らないの入れてもいいわよ?」


って声をかける。サードはサムラが一端いなくなったから堂々と、


「いざって時に自分の手元にないと使えないもんだってあるんだよ」


って口も悪く言った。


「何?エロ本?」


アホなことを聞くアレンの言葉にサードは私より呆れた顔で、


「んな荷物にしかならねえやつ持ち歩くわけねえだろ」


そりゃそうよ、って思っているとサードは続けて、


「俺は絵見るよりだったら実物見に行って直で触る」


…。この男…。


横目で睨みつけてイヤな顔をしているとアレンは、ふーん、と何か考えこんで、


「ごめんエリー、俺のバッグにエロ本入ってるからやっぱ自分で持つ」


って私バックの中に手を突っ込んで自分のバッグを取り出す。


…アレン…そんなもの持っていたの…?それも私に持たせようとしていたの…?


何となく悲しくなってアレンを見ていると、


「男の冒険者は一冊か二冊は持ち歩いてるよぉ、だって男の子だもん」


って照れた顔でいそいそとバッグを肩にかけているけど…まさかガウリス、あなたもそんな本を持っているの?


バッとガウリスを見る。


「…何でそこで私を見るのですか…」


そういう話題に自分を巻き込まないでほしいってガウリスは迷惑そうな顔をする。


あ、良かった。そうよねガウリスはそうよね。


ホッとしているとアレンがすすすとガウリスの隣に寄って、


「俺の後で貸そうか…?」


って私に聞こえないように気を使って小声で話かけている。でもアレンの小声は普通の会話レベルだから聞こえてんのよ。


「いいえ」


「そんな何に使ったか分かんねえもん誰が借りると思ってんだ馬鹿か」


ガウリスは首を横に振って、サードが悪態をついた所でサムラが手を拭きながら戻ってきたから、そんな話題を断ち切るように私は一番に歩きだして眼鏡のフレームを作る職人探しに出発する。


まずは昨日アレンに私、サムラが訪れたあの眼鏡屋さんに行って、この町で眼鏡のフレームを作っている職人は居ないか聞いてみた。


昨日私たちの対応をしてくれた、すごく申し訳なさそうな顔をする店員さんは、


「ああ。それは町はずれに住んでるグラッスィーさんですね。眼鏡のフレームだけじゃなくて小物とか家具も作って国外にも卸している木製職人で顔の広い人ですよ」


分かっていることを聞かれて良かったって顔をしながら店員さんは私たちが聞くままにグラッスィーが住んでいる場所を教えてくれて、それをたよりに私たちは町外れに向かっていく。


「思った以上に簡単に行きつくじゃない。このペースなら魔法の眼鏡屋さんにたどり着くのも早そうね」


「だなぁ。きっとサムラは体調でも文字読めないのでも探すのにちょっと苦労したんだな」


「皆さん本当に凄いです…!」


そんな会話をしているうちにグラッスィーの工房まで何事もなくたどり着く。


先頭を歩いてさっさと入口の戸を叩こうとしたサードだけれど、その手がピタリと止まった。


そのままサードは横に飛び退く。


それと同時に木製の扉がバキバキッて上下に真っ二つに割れて、人が木片を撒き散らしながら扉を突き破ってきた。


「っわああ!」

「キャアアア!」


アレンも私も絶叫してすんでの所で人を避けて、ガウリスはサムラを横に押し退けた。


扉を突き破って出てきた人はガウリスにぶつかって止まった。


あっぶな!っていうかサード一人だけ逃げたわね!?それより何事!?


ガウリスにぶつかった人を見ると白いひげの生えたガッシリとした体つきの老人だ。


ガウリスはその人を見て、


「あ、あなたは昨日の」


「あ、昨日の昼飯の時の兄ちゃん」


ガウリスにぶつかった老人…グラッスィーもガウリスを見て簡単に返す。


「それよりどうなさったのですか、何があったのです」


ガウリスがそう言いながらグラッスィー真っすぐに立たせて体についた木片を払っていると、壊れた扉の穴から誰かがよいしょ、とくぐり抜けるように出てきた。


グラッスィーが憎々しい目つきで扉から出てきた人…男の人を睨みつける。


穴から出てきた男の人…肩までのストレートの黒いロン毛に、縦じまのスーツを着た男の人はニヤニヤ笑いながら腕を組んで誰かいるって私たちをチラチラと見たけれど、すぐ無視をしてグラッスィーを見下ろし肩をすくめながら首を横に振った。


「ちょっとグラッスィーさーん、隠さないで教えてくださいよぉ」


軽薄そうな口調。…何だかあまり関わりたくない感じの人だわ。


警戒しているとグラッスィーは目をいからせて、


「そんなこと言われたって、知らんもんは知らん!」


ロン毛の男の人はニヤニヤ軽く腰をかがめて、グラッスィーと目線を合わせる。


「嘘つくんじゃねーよジジイ」


「知らんもんは知らん!つーかてめえ、クソガキ!いきなり営業前の店に上がり込んで中をめちゃめちゃにした挙句ドアも壊しやがって…!」


「そんなことはどうだっていいんだよ。教えてくれよ、知ってんだろ?魔法の眼鏡を作るせ・い・れ・い」


嫌な口調で言うロン毛の男の人にグラッスィーは気分を逆撫でされたのか、拳を作って殴りかかろうとする。でも即座にガウリスがグラッスィーを止めてその前に出て(いさ)めるようにロン毛の男の人に声をかけた。


「それは人に尋ねる態度ではないでしょう、もっと相手を敬いなさい」


大男のガウリスが目の前にきて強い言葉尻で声をかけてもロン毛の男の人の軽薄な笑いは崩れない。

むしろ余裕しゃくしゃくの態度でポケットに手を入れて、下から馬鹿にするように見上げた。


「おっと、それ以上俺になめた口効かない方が身のためだぜ」


ロン毛の男の人はガウリスの腕を軽くペンペンと叩いてから呪文を唱えると、身の回りにブワッと風が吹き荒れる。


魔導士!?


杖を構えると、風で髪の毛を巻き上げながらロン毛の男の人は指を私に向ける。


「お嬢ちゃん、俺に攻撃するつもりか?俺は強いぜ?なんたって…」


クク、と鼻で笑いながら、ロン毛の男の人はパチンと指を鳴らす。


「俺は魔族だからな」


「魔族…!?」


驚いてそのロン毛の軽薄そうな男の人を見た。


何でこんなところに魔族が?何でこんな朝から魔族がグラッスィーの工房に?何で魔族が魔法の眼鏡屋とか精霊を探しているの?っていうか何でこんな堂々と魔族だってバラしてるの?


…そうよ、今まで会ってきた魔族でいきなり自分は魔族だってバラしてきたのはラグナスぐらい。

多分それもバラして攻撃されてもどうせ自分は負けないでしょって自信があったからだと思う。


だとしたら目の前のこのロン毛の男の人…魔王側近のラグナスと同じくらい強いって考えたほうがいいってこと?

だったらボンヤリ立っている場合じゃないわ、一撃で倒す勢いで攻撃を…!


魔法を発動させようとすると、サードが手で軽く攻撃をやめろってジェスチャーをしてくる。

そのままサードは聖剣を引き抜いてスッとロン毛の男の魔族の前に立った。


ロン毛の魔族は風をビュウビュウ吹き鳴らしながら、


「俺の言葉聞いてた?俺魔族なわけ、あんた死ぬよ」


とニヤニヤしながら指をサードに向けている。


サードはニッコリ微笑んだ。


「そうですか。ところで私は勇者サードです。勇者であるので人に危害を加える魔族を殺す義務があります」


「…え?」


ロン毛の魔族から間の抜けた声が出て、その声に似合う間の抜けた顔になる。


サードは瞬きした一瞬でロン毛の魔族に向かって聖剣をヒュッと振り回した。ロン毛の魔族は「ギャアアア!」って大げさなぐらいのリアクションで倒れていって、ロン毛の一部の髪の毛が自身の起こした風に乗って散っていく。


「おや素早い魔族ですね、私の攻撃を避けるなんて」


サードはゆっくりそう言っているけれど…何となく言い方がからかっているような、いたぶっているような感じ。

今だって詰め寄るのはいつもの速さだったけれど、剣を振る早さはいつもよりかなり遅かったじゃない。


「さて次こそはその首を切り落としましょう」


「わ、わあああああ!ま、待って、待って!話を聞いて…!」


ロン毛の魔族は聖剣を持つサードに恐れをなしたのか手で地面をすりながら必死に後ろに下がって行くけれど、サードはじっくりと追い詰めるように近づいていく。


「俺も(じょう)でボッコボコにしようか?」


さっき攻撃しようとしてサードに止められた私だけれど、アレンが援護しようとしているから、


「私もやるわ!」


って杖を構える。


「いいえ皆さん攻撃してはいけません!その方は魔族ではありません!」


ガウリスが私たちに声をかけるのと同時にロン毛の魔族はガウリスに負けない大声で叫んだ。


「ごめんなさい、ごめんなさい!嘘です!俺魔族じゃありません!普通の人間です!やめて攻撃しないでぇえええ!」


「…え?」


自分の頭を守るかのように身を縮めてガタガタと震えているロン毛の魔族…え?人間?どういうこと?


意味が分からないまま私たちを止めたガウリスに視線を移すと、ガウリスは自分の腕を指さした。


「この方は先ほど私に触れましたが特に反応はありませんでした。だとしたらそういうことでしょう」


その一言で私もアレンも「ああ」って納得して得物を下におろす。


神に近い存在になっているガウリスに触った大抵の魔族は手を振り払ったり、嫌がってのけ反ったりするもの、リンカっていう特殊な存在を抜かしたら。

つまり自分からペタペタ触って何も反応がなかったなら魔族じゃないことは確か…。


「いいえ、こうみせかけて虚を突き攻撃するつもりかもしれません。油断しないよう」


サードがそう言いながら聖剣をわざとらしく上に振りあげると、ロン毛の男の人は頭を抱え更に縮こまって「ひぃぃ」って情けない声を出す。


…サード、あなた最初から全部分かった上で脅してるでしょ。


「サードさん」


たしなめるように声をかけながら、ガウリスはサードの振り上げた手をそっと降ろさせる。


グラッスィーの位置から顔が見えないサードは一瞬、なんだつまんねえ、という顔つきでガウリスを睨んだけれど、ロン毛の男の人の足を切ろうとするような勢いで地面に聖剣を突き刺してしゃがんだ。


「ひっ」

「あなたのお名前は?」


「は、は、はハミルトン・メッデー…」

「ハ・ハ・ハ・ハミルトン・メッデーさんですか?」


明らかに恐怖でどもっているだけなのに、わざわざそっくりそのまま言って聞き返すとか…。性悪ぅ。


「けど何で魔族のふりなんてしたの?普通魔族だって言ったら今みたいな目に遭うの当たり前だろ?」


アレンも訳が分からなそうに聞くとグラッスィーは怒りに満ちた顔で、


「じゃあなんだ、店に急に入ってきて俺は魔族だって言ったのもただの脅しだったのかこの野郎!」


怒り狂ってハミルトンを殴ろうとするグラッスィーをガウリスが押さえて止めている。


「なぜこのようなことをしたのか、まずは教えていただけますか?立てますか?」


ガウリスが手を差し伸べると、ハミルトンはジーンとした顔でガウリスの手を掴んで立ち上がる。


「優しい…」


うん、ガウリスは優しいわ。それで一番優しくないのは世の中から尊敬の目を集めている勇者のサード。


ガウリスに起こされたハミルトンは怒られた子供みたいにションボリと肩を落としながら話し始めた。


「俺はウチサザイって国出身なんだ…その時に町中に暮らしてる魔族だって男に会ってさ」


ウチサザイ国の魔族。


その言葉にサムラから話を聞いている私たち全員が改めてハミルトンを見る。


もしかしてハミルトンが言う魔族って、私たちが知りたい黒魔術士が集う村に関係している魔族なんじゃ?


「それは本当に魔族だったのですか?」

「あいつは魔族だ。間違いねえ」


サードの問いかけにすぐにハミルトンは頷くけれど、即座にサードは納得のいかない表情で重ねて質問していく。


「どうしてその者が魔族だと分かったのですか?自ら魔族だと明かしたのですか?あなたのように魔族だと詐称(さしょう)しているだけでは?」


そうよ、今町中に魔族がって言っていたけれど、自分は魔族ってバラしたうえで町で普通に過ごしているとか信じられない。


「それは…」


ハミルトンは話し始めた。

ハミルトン書いてる時、スラムダンクのミッチー(不良時代)の髪型が脳裏をフワフワとよぎってしょうがなかったです。

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