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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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可愛いオッサン

「やっぱりジャークがドラゴンだと思う。すごく思わせぶりなこと言っていたもの」


魔族の居所を探すため山に向かっている時、私は皆に訴えた。


昨日の夜にジャークと話した時のことを全て伝えるけれど、サードは特に何を言うことなく前を見て歩いている。


ちょっと、あからさまな無視?


イラッとしているとサードは口を開いた。


「『彼らは誇り高い』『ドラゴンからみて下等な人間』そんな口ぶりからはドラゴンに対する憧れが見える。それならジャークはドラゴンに憧れを持ってるただの人間だろ」


ええ…そんなぁ。


せっかくジャークがドラゴンじゃないかって思える証拠を持ってきたと思ったのにぃ、とガッカリしているとサードはかすかに振り向いて、


「だが最後にジャークは『本当に人間と共に行動しているんならよっぽどプライドの低いドラゴン』だって言ったんだろ?

普通に聞いたらただの皮肉だが、人に育てられて暗闇を恐れ視力も弱く最終的に人から遠ざけられたロレッタ町のドラゴンが本当にあのジャークだとしたら、最後のその言葉は真っ当に育ったドラゴンへの憧れと、真っ当に育たなかった自分への大いな自虐ともとれる」


「つまり?」


「ジャークが怪しいのは変わりねえ。一人でも確実に潰せたら良かったんだがな…」


アレンの言葉にサードがさっくり返した。するとガウリスはしかし…と参加する。


「それでもジャークさんはドラゴンではないような気がします」


「何でそう思う?」


サードが聞くとガウリスは、


「ドラゴン…私は龍ですけれども、この身になってからあまり眠らなくてもよくなりまして」


その言葉に私たちはそれぞれ顔を崩してガウリスを見た。


「え、だって毎日寝てんじゃん」


「そうよ、エルボ国でも普通に夜は一緒に寝ていたじゃない」


アレンと私が寄り詰めるとガウリスは何といえばいいのか…と困ったように、


「寝るには寝ているんですが眠りがとても浅いといいますか、そこまで寝なくてもいいという感じでして…。一ヶ月に一度深く眠ったらそのあとしばらくは普通に起きていられるような気もします」


と言いながら私を見た。


「エルボ国でアリアさんの歌声で眠ったという後から、自発的に眠くなったことがありません。きっとその時よほど深く眠ったのだと思います」


…それって今から一ヶ月以上も前の話…。


私を見ながらガウリスはサードに目を移しつつ、


「それでもジャークさんは疲れがたまっているので眠ると去って行ったのでしょう?その言葉をそのまま受け取るとすればドラゴンではない気がします。それにブルーレンジャーのパーティの中で一番疲れやすいのはやはりジャークさんですし。ドラゴンだとバレないようにあえてそのようなふりをしているとも考えられますが…」


「…ふーん」


サードはそう言うと前を向いて歩き続ける。


「…いいなあ、ガウリスは」


サードがポツリと羨ましがるような言葉を言うから驚いてサードをみる。


だってサードは手持ちのカードを最大限に使うけれど、無いものねだりっていうか、自分に無いものを羨ましがるようなことは普段絶対に言わないもの。


サードは心底羨ましいという顔でガウリスを見る。


「夜にそんな寝なくてもいいなら夜遊びし放題じゃねえか」


そのまま大げさにため息をついて、


「それなのにお前は博打も打たねえ、酒もろくに飲まねえ、女には手ぇださねえ…何のために夜眠らなくてもいい体になってんだか分かったもんじゃねえな」


「いや…そのためにこのような体になったわけでは」


ガウリスが真っ当な言葉で軽く突っ込むけれど、サードはそれでも羨ましそうな顔でガウリスを見続けて、隣に並んでグーでガウリスの体を殴った。


「俺がそんな体だったらよっぽど有効活用してやるのに」


「しなくていいから」


これ以上あなたの夜遊びが激しくなっても困んのよ。


* * *


そんなこんなで魔族の居場所を探し続けて数日。


「それじゃあ今日は魔族の居場所が分からなかったと」


ミレイダの言葉に私は「そうなのよ」と頷いた。


とりあえず山の辺りを中心に歩き回って、イビルモデルの作物が腐る被害が出たとなれば地図をチェックしてもう少しこっちじゃないか、あっちじゃないかって歩き回っているけれど…結構被害の出る場所がまちまちなのよね。


イビルモデルの被害が偏っていれば魔族が居る場所も絞り込めるはずって思っているんだけれど…。


「とりあえず明日は今まで行ってない場所に行ってみようって話してるの、あっちの方」


サードたちが言っていた方角を指さす。


そうやって歩いているうちに日が暮れてしまって、通りすがりに畑から帰る人が泊る所が決まってないなら家にどうぞと声をかけてくれて、その言葉に甘えて一晩泊めてもらうことになった。


どうやら私たちがここら辺の魔族の討伐中って話は広まっているみたいで、この数日そうやって家にどうぞって声をかけてもらって泊めてもらっているのよね。本当にありがたいわ、だってこの辺の各宿は山のある場所からものすごく遠いんだもの。


私の言葉に、左様ですか、とミレイダは頷いている。


どうやらブルーレンジャーは今のところバラバラに散って害獣型モンスター依頼の仕事をしているみたい。


ミレイダとアサフは隣の村の辺りで害獣型モンスターを倒していたらしくて、それでこの村に私たちがいるって話を聞いたミレイダが訪れてきたみたいね。


「エリーさんは桶なんてもってどちらに?」


「あっちの家にお風呂があるから借りてくるといいわって言われたから向かってる所よ、話もつけてもらってるの」


桶の中に入っているタオルにシャンプー類をほら、と見せながら、


「そっちはどう?作物とか」


とブルーレンジャー側のことを聞く。ミレイダは、ふぅ、とため息をついて首を軽く横に振った。


「よくありません。昨日より腐った作物が多く発見されましたし、麦畑の中に…なんとかイビルというモンスターが駆けまわったのか魔法陣のような形のものがありまして」


麦畑の中に…魔方陣?


「それって本当に魔法陣なの?」


聞くとミレイダは、さあ、と首を傾げた。


「素人目からみて大きい魔法陣に見えたのです。しかしそのようなものはエリーさんが詳しいかと思いまして…」


あ。だから私なら分かるはずと思ってわざわざアサフに言いつけられでもしたミレイダがここに来たのね?

困ったわ、魔法陣のことは全く分からないもの。ロッテとかセリフィンさんにセンプさんなら見ただけでどういうものかパッと言えるでしょうけど…。


私はものすごく困った顔でミレイダの顔を見上げる。


「ごめんなさい、私、魔法陣には詳しくないのよ」


「おやそうなのですか。てっきり勇者御一行の魔導士だからどの魔法にも精通しているものだと…」


ミレイダも少し驚いたように眉を上げて、勇者一行の魔導士だから魔法のことは何でも詳しいはずといつもされている誤解に私は苦笑する。


「私よりだったらジャークの方が詳しいんじゃないかしら。明日にでもジャークを呼びに行った方がいいと思う」


なるほどと頷きながらミレイダは「お手間を取らせまして」と立ち去ろうとするのを、私は呼び止めた。


「ところでジャークってミレイダから見てどんな人なの?」


「ジャーク?」


ミレイダが立ち止まって私に向き合うと、マジマジと私を見る。


「惚れましたか?」

「は、何で」


聞き返すとミレイダは分かってないなぁと言いたげに首を振る。


「同じ年頃の異性のことが知りたいとなると、そういうことなのでは?」


「そういうのじゃなくて…」


「そんな隠さなくてもいいじゃないですかぁ」


王族の付き人としての顔は薄れたミレイダは、どこか下世話な顔つきでニヤニヤと笑っている。…元々こっちの顔が本当のミレイダなのかしら。


ミレイダは片手を腰に手を当て片手であごをさすると、


「ジャークは女はまず口説くから女好きに見えるがそこまで熱心に女好きじゃない。口説く素振りを見せるのは最初だけ、あとは紳士的だ。ただプライドが高くてたまに人を見下して馬鹿にするところがあるのが玉に傷ってもんかな。

あと極端に夜の便所が駄目だな、子供のころ夜中に便所に行ったらゴースト型モンスターがボワッと居たらしくて、それがトラウマで夜に一人で便所に行けない。結婚したら夜中に便所についてきてって起こされるかもな。そこが可愛いって思えるんなら耐えられると俺は思うけどね」


…だから好意でジャークのことを聞きたいわけではないんだけど…。


でもミレイダの言うことが本当ならジャークが夜を怖がる理由は子供の頃トイレに現れたゴースト型モンスターのせいなのね。だったら一気にジャークは人間なんじゃないかしらって思えるわ。


…それにしても。普段ミレイダはアサフの付き人という感じでそれなりに控えてかしこまった話し方をしているけれど、今はかなりざっくばらんな話し方だわ。この状態なら他の人の色んな話も聞けるかも。


「じゃあナタリカは?」


ジャークの次に怪しいナタリカのことを聞くとミレイダは、


「ナタリカにも気があるんで?」


と聞いてくる。


「それ、本気で言ってる?」


キッと睨みあげながら聞き返すとミレイダはニマニマッと笑って、


「いやぁ、可愛い女の子の睨み顔って最高だね。おじさんそういう目に弱いのよ」


と言いながら少しニマニマ笑いを少し引っ込めて、


「ナタリカは長く生きてるから大らかだ。エルフだから見た目も可愛いがあの通り坊ちゃんのふざけたノリにも完璧について行けるし、それが楽しいと思ってる。

どうやら耳が尖ってないせいでほんの少し村での居心地が悪かったらしいんだな、仲間は何も気にしていなかったようだが、ナタリカだけは周りと違うって気になったんだろうなぁ。

旅をしてる間も耳はこうだけどエルフだって自己紹介するたびに、耳が尖ってないのに本当にエルフなのかって人間にひたすら聞かれてウンザリしてたらしいぜ。耳のことをろくに聞いてこなかったのは坊ちゃんと勇者御一行だけだってこの前嬉しそうに言ってたな」


「…」


それならナタリカは耳がとんがっていないだけで本当にエルフなの。

それよりあんなに明るく耳のことを言っていたから特に気にしていないのかと思っていたけど、結構気にしていたのね…。あんまり深く突っ込まなくて良かった…。


「じゃあワブラックは?」


エローラ仕立店に何度も行っているワブラックのことも聞こうとすると、もうその辺にいるおじさんみたいな顔つきでミレイダが、


「おいおい、ワブラックまで!?エリーちゃん。あんたってば随分と気が多いんだなぁ」


いきなりのエリーちゃん呼びに一瞬面食らったけど、すぐさまキッと睨み上げてビシビシとミレイダを軽く叩いた。


「おっ、おっと冗談だ冗談」


ミレイダは叩かれてもどこか嬉しそうに笑いながら軽く私の攻撃を避けて、


「ワブラックはあの通り、熱血のアホだよ。だがその分心は真っすぐで分かりやすい性格だ、アホだから。そのせいか妖精とも仲良くなってしばらく旅をしてたらしいな。妖精と会えるってことは心が綺麗な証拠だ。まあ言い換えりゃアホってことだけどよ。

だが一緒にいりゃ随分盛り上がれて楽しいもんだぜ。誰とでもうまく付き合っていける奴だろうよ」


と言いながらミレイダは言葉を続ける。


「アサフの坊ちゃんは王子だっていうのにあの通りの馬鹿だろ?普通一般の王族とは比べ物にならねえくらいの気さくさだからこの国の奴らからは大いに好かれてる。

皆も王族だって分かってるくせに冒険者になってあんな訳わかんねえことして『ブルーレンジャー!』だの叫んでるもんだから周りも馬鹿な王子だって思いながら慕ってる。まー、王子だってぇのに畑で土いじってる時点でどっか頭おかしいんじゃねえのって思うけどな俺は」


言葉では散々馬鹿にしているけれど、そんなことをいうミレイダの顔はニヤニヤしていて楽しそうだわ。

そんな表情を見ているとつい私もおかしくて、少しからかう調子で、


「何だかんだ言ってもアサフのことは嫌いじゃないのね」


と言うとミレイダはスッと背筋を正して王家の付き人ばりの顔つきに戻り、


「嫌いですよ、あんな馬鹿。こんないい年齢の私にあんな変なセリフを吐きながらポーズを決めろだなんてことぬかして。本当いい迷惑です」


と眉間にしわをよせ吐き捨てる。でもすぐに口端が上がって楽しそうにふふふふ、と笑いだした。

その様子がおかしくて、つられるように私も笑う。


するとミレイダは付き人の顔を崩してニマニマ笑いながら私に向き直ると、


「…で、エリーさんは私のことで何か聞きたいことはないのですか?」


後ろ手を組んでミレイダは軽くかかとを上げ下げしながら問いかけてくる。


むしろアサフのことは聞いていないのに自ら喋り出したわね。でもその何か期待している顔つきとウキウキしているような行動がおかしくて、必死に笑いを堪えた。


結構ミレイダぐらいの年齢のおじさんたちって、私は苦手なのよね。


全員が全員じゃないけど私たちの事情なんてお構いないしに一方的に話す人が多いし、私たちの年齢が若いからって偉そうに説教まがいのようなことを言う人も多いし。

私に対してはたまにジットリした目つきで笑いながら近寄ってくるおじさんもいる。何よりそれが一番イヤ。


…不思議ね、ミレイダはそんな嫌な目つきをするおじさんと同じようなことを言って同じような顔つきをしているはずなのに、嫌じゃない。むしろお父様よりずっと年上の人なのにどこか可愛いとすら思えてしまうもの。


そう思っている間もミレイダは「まだかな、まだ聞かないのかな」という雰囲気でウキウキと体を動かしている。


仕方ないなぁ、と微笑みながら、


「ねえミレイダ、あなたは…」


と聞こうとすると遠くから絶叫のような声が聞こえてきて、私とミレイダは同時にそっちに顔を動かした。


声の響き的にこの村の近くじゃない。風に乗って絶叫らしき声が聞こえるから結構遠い。それに叫んでいる以外は何を言っているのかは全く聞き取れない。


「この風向きだと…隣村の方ですね」


ミレイダはそう言うなりダッシュで走り始めたけど、立ち止まって私に振り返った。


「お風呂に入るのはまずあちらの方を片付けてもらってからでよろしいですか」


「もちろんよ、皆も連れていくわ。先に行ってて!」


私はすぐさまサードたちが居る家に走り戻った。

民族学的なもので男性器を表すものがありますね。


色んなタイプのおじさんに説明をしたり詳しく聞いたりという経験があるのですが、あからさまに下ネタとしか扱わないおじさんは終始ニヤニヤと嫌な目で色々言うのに対し、知識欲旺盛なおじさんは凄く目を輝かせながら下ネタを下ネタと気づかせない言葉回しで自分の知っている限りのことを教えたいと一生懸命語る。


知識(語彙力?)が多い人って相手を不快にさせない言葉回しに専門的なものを素人に分かりやすくかみ砕いて伝える術をよく知っているなぁって。あと説明している時すごく楽しそう。


下ネタばかり振ってきたおっさんには「民俗学的には普通のこと」の一点張りで通した。それでも何か言うようなら私の民俗学の知識の火を吹かせてドン引きさせようと思ってたけど四回くらいで黙った。

男性器と女性器のシンボルがただの下ネタと思うなよ、子孫繁栄のシンボルだぞ。縄文以前から世界的にある原始的かつ土着の信仰だぞ。現代の価値観で数十年程度しか生きてない奴が軽く下ネタの枠にくくるんじゃねえや。

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