▼中ボス が あらわれた!
昼飯食うか…。そんなサードの言葉に思わずツッコミそうになったけれど、それでもお昼の時間にはなっている。
二階をあちこち歩き回って気疲れしたのもあるし、空腹の状態で突き進むのも良くないわねと納得して私たちはお昼ご飯に突入した。
「中ボスも魔族なのよね。魔法とか使うのかしら」
たき火で温めたスープをカップに入れて二人に配りながら聞いてみると、アレンは頷く。
「使うんじゃないかなぁ。今まで会ってきた魔族も人間の魔道士よりすげぇ魔法使ってたし。な」
アレンに声をかけられたサードは、
「あいつらが使うのは魔法ってよりその魔族が生まれながらに持つ能力って気もするぜ。まあ俺らの言葉に合わせてそれを魔法って言うなら中ボスもラスボスも魔法は使えるだろ」
そっか。人間界だと全部魔法のカテゴリ内だけど魔族にとっては生まれながらにあるも同然なものなのかも。
私もスープを息で冷ましつつ口に入れた。空きはじめの胃に温かいスープが流れ込んでホッと一息つく。
それにしてもこうやって同じ所にずっと留まっているのにモンスターは一切現れやしないわ。二階の情報が全く無いのは二階にモンスターがいないからなのかしら。
でもそれなら誰かしら中ボスの部屋にすぐたどり着いて戦って中ボスの情報もあるはずだけど。…もしかしてショートカットして進んだ先にトラップがあって、全員がトラップに引っかかって全滅したとか?
今まで避けてきた通路に死体が転がっていたのかもと思うとかすかに鳥肌が立ったけど、それが本当か分からないし、あったとしてもトラップに引っかかりに行くようなものだからどうにもできない。
ともかく外から聞こえる滝の音と小鳥のチチチチ、というさえずりを聞きながらパンをちぎって口に入れて、スープを飲む。
…死体があるのかもと思わなければなんて平和なのかしら。場所がダンジョンじゃなければピクニックみたい。
そう思っていると、外からの平和的な音に別の音が混じり始めた。
その音を聞きつけて私が顔を上げるとアレンは周辺の物を無造作に片付け始めていて、サードも聖剣を引き抜いて立ち上がっている。
私も慌てて杖を持って立ち上がった。
今もなお聞こえてくる音は騎士型モンスターの歩く足音…それも一糸乱れぬ足音が大量に聞こえてくる。
「ずいぶんと多くねえ…?」
アレンはスープを簡易の水筒にすべて流し込んで、皆の食べかけのパンも一旦全部バッグに入れてから立ち上がって火を消し、私とサードの後ろに下がる。
どこから聞こえてくるのかと頭を巡らしていると、ギギギギと木の軋む音が響き渡る。この石で出来上がっている城で木材が使われている所と言えば…。
目を中ボスのいる部屋へむけると、その部屋から足並みをそろえて騎士型のモンスターがザッザッと現れ、廊下いっぱいに整列して並んだ。
「な、何これ…」
思わず呆然と呟いてしまう。
廊下にずらっと隙間なく並んだ騎士型のモンスターは二列構成で少しのずれもなく立ち並んだ。
一列目は体全体を隠す盾を前に配置してしゃがみ、その隙間から長い槍をこちら側に向けている。
二列目に立っている騎士型のモンスターは同じタイミングで弓を構え、同じタイミングで矢をつがえ、同じタイミングで弦を引いた。
「エリーーー!」
サードが叫んだ瞬間に風を切って矢が飛んでくる。
風で矢を飛ばそうと力を込めて発動するけど、慌ててしまったせいで思わず自分を中心に風を起こして、飛んでくる矢もろとも傍にいたアレンとサードすらも巻き込んでふっ飛ばしてしまった。
二人とも騎士に集中していたのに身内側からそんな暴発的な攻撃が来ると思ってなかったみたいで…当たり前だけど…風に飛ばされ鈍い音とともに壁に思いっきりぶつかる。
「ご、ごめ…!」
「謝んなくていい!攻撃しろ!」
後頭部を思いっきり壁に打ち付けたサードが睨みつけながらも激を飛ばしてくる。
改めて敵に攻撃しようとすると、二列構成の騎士の背後に新たな騎士たちが一糸乱れぬ動きで並んでいる。
でも手に持っているのは剣でも盾でも弓でも槍でもなく、細長い杖。
…魔法を使う、騎士?
するとその杖の先が鈍く光りだし、その光と同じ閃光が私に向かって一斉に放たれる。
私の魔法は自然を利用して発動するもの、でもこの城の中で利用できるものは空気…いわゆる風。
でもどう考えたって風で光は防げない。
思考が止まって目に映る光の閃光がゆっくりとしたスピードになった。
光が向かってくる。その前では弓矢を持った騎士がまた矢を構えて腕を引いている…。
すると体がぐんっと後ろに引かれて、全ての動きが通常のスピードに戻った。
私が立っていたところに光の閃光が当たり床がはじけ飛んで、弓が鋭い音を放ちながら向かってくる。
風を起こして矢を吹き飛ばしてから後ろを見るとアレンがいた。どうやらフリーズしてしまった私をアレンが後ろに引っ張って助けてくれたみたい。
「大丈夫か」
「…うん、ありがとう、助かった」
目線を騎士たちに戻しながら簡潔にお礼を言うと、また新たに騎士の格好をしたものが現れた。
でも他の騎士と比べると明らかに体の大きさが一回り大きくて、他の騎士たちとは比べ物にならないくらい綺麗に施された輝く鎧をまとい、仕立ての良いマントを翻している。
「俺様の居る部屋の傍でのんきに昼食を食う奴らはお前らが初めてだ!そのふてぶてしい態度、褒めてやろう!」
急な轟音に何の音とキョロキョロしたけど、すぐその一回り大きいモンスターから発せられてる言葉だと分かった。
っていうか、騎士型のモンスターって喋れたの?
ポカンとしていると大きい声のモンスターは指をこちらに向けてふんぞり返りながら、
「いつ来るのかと待ってたが中々来ないから俺様が直々に来てやったぞ!有難く思え!」
え、それって…もしかしてあれって騎士型のモンスターじゃなくて…。
「俺様は魔族でありこの二階を守る者、ランディ・ジーンクリーベント・ファーティンスタ卿!さあ、いざ勝負だ!」
そんな…まさか魔族が自ら部屋を飛び出して向かってくるなんて…!今まで魔族は自分の居場所から動くなんてことなかったのに。
呆然と魔族のランディ・ジーン…なんとか卿を見ていると、再び魔法騎士の光の閃光が飛んでくる。
ハッとして風を起こすけど、やっぱり光は消えもせず曲がることもなく真っすぐ突き進んでくる。と、サードが前に躍り出て、その光をバスンと真っ二つに切り裂いた。
切り裂かれた光は威力が無くなったのかフゥッと空中に消えていく。
「切れた!?」
アレンが驚いた声を上げ、私も目を丸くする。
今までモンスターや魔族を斬っているのは見たことがあったけど、魔法すら切るだなんて…そんなのありなの。
「『その聖剣、神羅万象の物切らるる事可能なり』…って伝えられてんだろ?つまりこの世に存在するもん全部叩っ切れる、魔法も例外じゃねえってな。一度試してみたかったんだが中々手ごろな魔法使う奴が居なかったんだ」
サードは剣先をランディ卿へと向けた。
ランディ卿も少し驚いたのか一瞬黙り込んだけど、すぐにその大きい声で笑いだした。
「なるほど、うちのモンスターが手ごろだと!こりゃ喧嘩を売られたな!」
そう言うが早いか三列並ぶ騎士たちを軽々と飛び越えて、ランディ卿はドォンッと床に着地するとサードへ斬りかかって来た。
ガィンッと剣のぶつかり合う音がしたけど、体重や体格の差でサードが軽々と吹き飛ばされる。
でもサードは受け身を取りながら体勢を立て直し再び向かって行く。その瞬間、私を横目で見た。
瞬間的なアイコンタクトだったけど、サードの言いたいことは分かる。
きっとあのランディ卿をサードが引きつけているうちに後ろの騎士型モンスターたちを倒せと言いたいんだわ。
力を込めて風を起こそうとすると、後ろからグイッと服が引っ張られてそのまま床へと尻もちをついた。
敵!?
振り向いたけど私を引っ張ったのはアレン。
何をするの、と文句を言おうとした瞬間にさっきまで私の頭があったところを剣がブウン、と風を切って通り過ぎていった。
「…!」
「ちっ、惜しいな」
ランディ卿が特に悔しく無さそうに呟いて剣を自分の肩へと乗せた。
気のせいかその剣はググネグネと動いたかのように見えて凝視したけど、普通より大きい剣の他は何も変わりが無い。
サードも今の一撃を避けたみたいだけど、警戒しているようにランディ卿を見ている。そうしているうちにランディ卿の後ろからまた弓矢と魔法が飛んできた。
私は尻もちをついたままの姿勢で魔法を使って矢を飛ばしたけど、光は私に向かってくる。慌てて手と足の力で体を浮き上がらせてバタバタと後ろに下がった。
足元で閃光がさく裂して床材の破片が飛び散って来る、でもそんな事気にしている場合じゃない。奥の三列構成の騎士型のモンスターをどうにかしないと、巨体の魔族に集中できない。
再び魔法を騎士型のモンスターに向かって発動しようとすると、アレンが私の腕の下に手を突っ込んできてそのまま素早く後ろに引っ張られる。
すると再びランディ卿の剣の切っ先が私の頭がさっきまでいた所をブォンと音を立ててよぎっていく。
「邪魔してるわけじゃないから、何か飛んできたから…」
アレンが一応といった体で一言いう。
でも私だってさっきから助けてもらってるのは知っているから頷いた。
だけどおかしいわ。
ランディ卿の剣は確かに大きいけど、その範囲は大きく見ても半径三、四メートル弱…でも私もアレンももっと後ろに居るんだから、ここまで剣が届くなんてありえない。
「サード!そのランディ卿の剣おかしいから気を付けて!」
「どうおかしい!」
弓矢と閃光を切り、ランディ卿の猛攻を避けながらサードが聞き返してくる。
「なんかグネグネして伸びてる気がする!もしかしたら魔法がかかってるか、変わった剣なのかも…」
「分かった」
サードは簡単に言うと、刃を下向きに持ち直して一気にランディ卿の懐に間合いを詰めた。
たまにサードは剣を逆さ持ちにして戦う時がある。
その持ち方をしたときは大抵一発で相手の首をかき切っているし、相手は大剣の持ち主。懐に入られたら大きい剣でも魔法のかかった剣でも太刀打ちできないはず…!
サードの剣が首に達しようというとき、ギィンッと剣が交わる音がした。
見るとランディ卿の大剣が大きくしなって、まるでその首を守るかのようにぐるりと囲っている。
サードはそれを見ると一旦離れて、ランディ卿はガッハッハッと笑った。
「その女の言う通り、これは魔剣よ!この剣に血を吸わせた者が動かなくなるまで主人を守り、主人を傷つけようとする敵を攻める魔剣!しかし流石に聖剣を防ぐと体力が一気に持っていかれるな!疲れる!」
そういえば…なんでも斬れる聖剣なのにさっきから剣がぶつかり合っていても一切斬れてない。いつもだったら相手の剣も紙みたいにサクッと切ってしまうのに。まさかそんな聖剣でも切れないものがあるだなんて…!?
それに疲れると言っても全然疲れているように見えない。つまりまだまだ余裕ってこと…。
ランディ卿はシュルンと元に戻った剣を振りかぶって、サードに思いっきりその剣を振り下ろした。
「しかし俺様は強いぞ!」
サードはとっさに聖剣を上にあげて頭を守ったけど、ランディ卿の力の衝撃をサードもいなしきれないみたいで、その場に膝をついてしまった!
ランディ卿は笑いながら再び大剣を振り上げている、このままではサードが…サードが危ない!
魔法をと杖を振りかぶるけど、ランディ卿は大剣を上にあげたままの姿勢で少し止まって、剣を肩に担いでから腰に手を当てる。
「さて、ここまで戦って俺様の実力は大いに分かった事だろう」
そう言いながら、ランディ卿は私たちを順々に見渡してきた。
「どうする?」
その言葉の意味が分からず、攻撃の姿勢をとったまま私はランディ卿を見つめて、首を動かさないまま目だけでアレンとサードをみた。その隙にもサードは素早く立ち上がって身軽にランディ卿から距離を取る。
「ど、どうするって…何が」
恐る恐る聞き返してみると、ランディ卿は大声で笑った。
「見逃してやってもいいということだ。俺様たち魔族と違って人間は死にやすいからな!一度の短い人生だ、ここで死にたくもあるまい!
俺様はそこまで人間が憎いわけではないし、火の粉は払えとあいつに言われているが殺せという命令は一度も受けていない!つまりあいつ…ああ、お前らが言うところのラスボスもそこまで熱心に人間を殺そうとはしてないのだ!分かるか!」
サードの顔を思わず見ると、サードは何を言っているんだこいつ、騙そうとでもしてんの、かという雰囲気でランディ卿を警戒した顔で見据えている。
「ん〜?何か罠かと疑ってるな?だが俺様は本気だ!お前ら人間は死にやすいからここで見逃してやってもいいと心から言ってやっている!」
まるで遊びの合間みたいな気楽な感じでランディ卿は頭をフンフン軽く横に揺らしながら続けた。
「だがここで俺様に会ったことは全て忘れてもらうぞ!俺様が記憶を消した後、お前たちは二階に来たことすら忘れてここから去ることになるからな!」
それを聞いたサードは警戒の表情をふっと和らげて、ニヤと笑って聞いた。
「記憶を消す?まさか力づくで頭を叩いて記憶を消すなんて馬鹿げたことはしないだろ、どうやってやるんだよ?」
何を敵と普通に会話してるのよと思いながらも成り行きを見守っていると、ランディ卿も笑いながら続ける。
「当たり前だ!我々は魔族、だから忘却魔法で記憶を消して…おっと、ここから先は魔族の秘密だ!だが人間は全て忘れて俺様の都合のいいように記憶が勝手にすり替えられていくぞ!」
…。ランディ卿は秘密だと言いながら構わず最後まで言っちゃってるけど…。気づいてないのかしら…。
「ほーう、そんな魔法があるのか…へえ…」
サードが何か納得したような顔でニヤニヤと言うと、ランディ卿も、
「そうだ!あるんだ!」
と隠すこともなくサードの言葉に頷いてから、手の平をこちらに向けてきた。
「では記憶を消してやろう!誰が最初だ?お前か?女か?後ろの役立たずの男か?」
するとサードが鼻で笑った。
「誰が見逃してもらうって言ったよ?ここまで来ておめおめと帰れるか」
ランディ卿は一瞬動きを止め、不思議そうに首を傾げる。
「貴様死にたいのか?生きのびたくないのか?」
「俺は死なねえ。そんでお前を倒して先に進む」
ランディ卿はサードの言葉に頭を更にかしげて考え込んでしまった。
「お前その程度の強さで俺様に勝てると本気で思っているのか?」
「んだゴラ、俺が弱えってのか」
「おお、俺様より確実に弱い、軟弱」
その言葉にサードはブチッとキレた顔になると、どっちが人間の敵なのか分からない邪悪な顔つきで口端を大きく上げる。
「なるほど、俺ら人間は随分と魔族からコケにされてるもんだ。だが人間ってだけで弱えと思ったら大間違いだぜ」
「だが俺様より弱いのは事実だぞ?」
自分の肩に大剣をトントンしながらランディ卿は言う。でも敵ながらそれは同意見。
中ボスでもランディ卿は今まで会ってきた魔族の中で一番強いかもしれない。
だって今まで倒してきたラスボスたちはサードの聖剣と私の魔法のダブルコンボでほぼ一瞬で片付いてた。
それなのに私が魔法を使おうとすると剣が飛んできて邪魔される、サードの聖剣は防がれる…。それであんな余裕の態度でずっといるんだから、ランディ卿は本気でもないし、大人が子供と遊んでいるレベルで手を抜いているのかもしれない。
中ボスでこれくらいならラスボスは一体どれだけ強いっていうのよ?
思わずにじり下がりながらチラとサードを見ると、サードはほくそ笑みながら真っ直ぐにランディ卿に聖剣を向けた。
「じゃあ見せてやるよ、てめえがコケにしてる俺らの力ってのをよ」
こんなの相手にどこから湧いて来るの、その自信。
するとランディ卿はとても愉快そうな雰囲気でサードを見てあごをさすっている。
「ほほう、それは楽しみだな。それなら俺様が驚くくらいのことはしてみせてくれ」
「するさ」
と言いながらサードは横目で私を見て、親指でさしてきた。
「こいつが」
「っっはぁあ!?」
いきなり話を振られて、腹からの驚きと怒りの入り混じった声が出た。
その声が思ったよりドスが効いていて、しかも廊下に響き渡っていくから慌てて口を押さえた。それでもすぐに手を放し、
「馬鹿言わないでよ、そんな無茶なこと人に押し付けないで!」
慌てた手つきをしながら言うと、サードは心底人を馬鹿にする表情をしてくる。
「馬鹿?バカはお前だろ。お前、建物の中だと風を起こして攻撃するしかないって考えで固まってねぇか?」
「…?」
サードが何を言いたいのか分からず黙って見返す。
「ここに入った時からずっと聞こえるものがあるだろ?」
聞こえる?
一瞬考え込んで静かになると、耳に聞こえてくるものがある。
その音を聞いて、サードが言いたいことはこれかと理解して頷いた。
ようやく分かったかと馬鹿にする表情をしながらサードも頷き、聖剣をランディ卿に向ける。
「援護するから思いっきりやれ、アレンはエリーに魔剣が当たらねぇようにひたすら逃げ回れ!」
「了解!」
言うや否やサードは前に飛び出して、アレンは私を担ぎ遠くに逃げ出して、私はそんな状態で音の出ているものに意識を集中し魔法を発動する。
魔法騎士からの攻撃はサードが切りつけ防ぎ、伸びてくる魔剣からはアレンが逃げ回る。
「なんだぁ?先ほどと変わらんじゃないか」
ガッカリしたような声がランディ卿の口から漏れると、外からドドン、ドドンと激しい音が響き渡ってきて、その音に合わせるように床がわずかに揺れ始めた。
ランディ卿は首を動かしているけどこの音の正体にはまだ気づいていない。
ううん、気づかれる前一気にやらないと!
「サード!そっちはもういいからこっち来て!」
私が声をかけるよりも早く、サードは瞬間移動したのかと思うほどのスピードで私とアレンの傍にザザッと現れた。
「何だ?何の音…」
外からの音に負けないほどの独り言をランディ卿が言っていると、ふっと城に影がさす。
窓の外には滝坪に落下するほどの勢いの水がどうどうと鳴り響きながら上から迫って来ている。
そう、私は崖から流れ落ちる滝を逆流させてそのまま持ち上げ、ランディ卿に向かって全力で向かわせている。でも私たち周辺にその水の被害が来ないよう水を弾き飛ばすイメージで…!
これにも何か対抗してくるかと視線を向けると、ランディ卿は呆然とした顔で迫る滝の水を見て、
「…なんと」
と間の抜けたような声で呟いた瞬間。
城の壁を破壊するほどの水の勢いに飲み込まれ、騎士たちもろともランディ卿は城の奥へと流されていった。
子供のころはよく花札で遊んでました。先日久しぶりに家族で花札をやりました。
父はほぼガラ札ばかりで、父の負けだイエーイと思っていたらガラ札が一定数集まると他の人たちの二十札を一枚ずつ貰えるのだと各自の二十札が奪われ逆転されました。
子供のころそんなルール習っていませんでした。そう、父は相手が子供だからと見逃していたのです。
その時は他にもウノとババ抜きで遊んで私がほぼ勝利をおさめしましたが、七並べは最弱すぎてガッカリしました。子供のころは強かったのに。




