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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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あれは守り神?あ、何だゴブリンか…

「仮にこれが石碑だとしら何かしらこの辺りのことを書き記していると思います、どうにかこの文字が分かれば守り神を探しやすくなるかもしれません」


石碑を見ながらガウリスはそう言うけど、どう見てもかろうじて文字と分かる程度で読み取れそうにない。指でなぞったらもう少し分かるかもと触ってみても凹みもほとんどなくて平坦で、結局よく分からない。


「紙を当てて上から鉛筆でシャガシャガすればある程度の形はわかんじゃね?」


アレンはそう言いながら早速紙を押しつけ鉛筆でシャガシャガしようとしゃがむと、


「何をやっておられるのですか!」


と驚きに似た声が聞こえて、私たちも驚いて振り向くとアダプが血相を変えて走って来ている。


「その石碑は何百年もここにある物で神聖な物とされております!そのようなことおやめください!」


「あ、ああごめんごめん」


アレンはアダプの剣幕に驚いたように慌てて紙と鉛筆を石碑から離して立ち上がった。


思えばサードは裏の表情をしていたけれど、見られた?


サードの顔を見るととっくに表の表情に切り替わっている。


アダプは急に怒鳴りつけたことに対して急にバツが悪くなったような表情になると、後ろを向いて誰かにこっちですと手で招く仕草をする。


そして私たちにを視線を戻す。


「この村まで勇者御一行様に会いに来た方がいらっしゃったのでお連れしました」


え、こんな山の上の村まで?誰?それよりよくここに私たちが居るって分かったわね。


アダプの後ろに立っている人を見ると、黒い甲冑に頭を覆う黒い冑、そしてその手には槍…。


「グランじゃん!」


アレンが腕を広げて親し気に近寄っていくけど、グランは槍の先をアレンに向けて近寄らせないように阻む。


「報酬の話だ」


魔界のスウィーンダ州の大臣、ナバにリンカを魔界に戻すように言われた依頼の報酬ね。


グランの言葉を聞くとサードはアダプに目を向ける。


「申し訳ありません、ご足労おかけしましたが、別件での話ですので席を外していただけますか。石碑のことは知らなかったとはいえ大変不調法いたしました、もう先ほどのようなことはいたしませんので」


申し訳なさそうにサードが謝ると、アダプは少し別件の依頼だという話が気になるようだったけど、それでも頭を下げてその場を後にした。


グランは去っていくアダプを見送ると、私たちに目を移した。


「ずいぶんと寂れた村に来たな?」

「近かったからな」


アダプも声が聞こえないくらい遠くに行ったからサードはもう裏の顔だ。


「ふうん?」


グランどこか楽しそうに言いながら、もう一度去っていくアダプの後ろ姿を見て私たちに視線を戻す。


「ここの村からの依頼があったからここまで来たのか?その内容はどんなものなんだ?」


あら珍しい、グランが私たちのことに興味をもって質問するなんて。


「この辺りのゴブリン討伐です。他にも頼まれましたが、それはあまり広言されたくないようなので…」


ガウリスが守り神のことは内緒にして簡単に依頼内容を説明すると、グランは肩を揺らして笑っている。


「そうか、まあ頑張れ」


ええー、珍しい。人間嫌いで、魔族を討ち果たしている私たちのことはもっと嫌いなグランが頑張れって応援するなんて。


するとグランはサードに視線を移した。


「で、お前が提示した報酬だが」


グランは悠々と腰に手を当てながら少し顎を上げた。


「無しだ」

「…は?」


サードが即座に反応してグランを睨む。


「ナバ様が提示した報酬を払う条件は、リンカを魔界へと連れ帰ることが条件だった。しかしそのリンカは魔界に帰るどころかおぞましい神の元へと行く結果となった。

これにはナバ様は非常にお怒りになられ、勇者どもを許さんと恨みを募らせていらっしゃるところだ」


(さげす)む笑いをにじませ、私たちに言い含めるようにグランはゆっくりと伝えてくる。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


私は慌てて口を挟んだ。


「報酬は別として私たちに恨みを向けるのは筋違いよ!だってあれはリンカが自分で決めたことじゃない!」


するとサードが話している私を押しのけ、


「恨まれるのはどうだっていい!だが報酬がねえのはおかしいだろ!」


と怒鳴った。


ああ…こいつは人にいくら恨まれようが報酬の方が大事なのね…。


生暖かい目でサードを見ていると、グランは鼻で笑いながらサードに顔を向けている。


「最初にナバ様はキッチリと説明したはずだ。リンカが戻ってきたら俺を通じて報酬を支払わせると。そのリンカが魔界に戻ってないのだから払う義理もないだろう」


そしてグランは私に顔を向けて、


「お前らはあの神どもと知り合いだったのだろう?知り合いでなかったらあの神どももお前に声もかけずリンカは神の元にも行かず魔界に戻っていた。違うか?」


それを聞いて思わず顔をしかめる。


「そりゃそうかもしれないけど…そんなの言いがかりじゃない」


「俺からしてみたらリンカが去ってしまったことなど今更どうだっていいがな。だがナバ様にお前らの討伐を頼まれたとしたら、俺はお前らを殺しに来るぞ、勇者ども」


グランは挑発的に槍を私たちに向けてくる。


「そんな…あんなに一緒に冒険した仲なのに…」


アレンがショックを受けた顔でグランを見ていると、グランは唸り声をたてて、


「命令を受けていたから行動していたに過ぎん!仲良くなったかのように言うな気持ち悪い!」


と怒鳴る。


「…いいぜ、いくら魔界の奴らが来たってよ…」


報酬が受け取れない怒りがふつふつと湧いているようサードが、目を見開いた状態でグランを睨んでいる。


「いくらでも来てみろ…ぶっ潰してやる…エリーが」


「そこまで言うんだったら俺がって言いなさいよ」


そんな所で私を使おうとしないでよね、とツンとサードから視線を逸らす。

するとグランは鼻で笑った。


「確かにその女の魔力が強いのは認める。だが突発的な攻撃に焦りやすい。ゾンビに挟まれた程度であんなに動きが鈍くなるなら俺でも簡単に殺せる」


「…」

否定できないのが悔しい…!


私は敵に挟まれたとか、どっちからも攻撃を受けてるとか、そういう時は慌ててパニックになっちゃってフリーズしちゃうのよね。

アレンはとにかく逃げ回っているけど。


サードにガウリスも瞬間的にパッと判断して動いているのを見ると、あんな危険が迫った状況でどうやって優先順位を決めているのかしらといつも思ってる。


するとグランは含み笑いをして、少しくつろいだ姿勢で槍を地面に立てた。


「ま、俺が殺せるのは生きていたらの話だがな」


その言葉にサードが一番に反応する。


「どういうことだ?」


グランは少し黙り込むと、空を見上げてアダプが去っていった村の方向を見る。


「…人間の危機察知能力が低いのは本当のことなのだな」


「だから何だてめえ、言いてえことがあるならとっとと言え」


サードがイライラ聞き返すと、グランはサードに顔を向けた。


「お前は魔族に近いと思ったが、やはり人間なんだな。この程度すら察知できないのならナバ様や俺が手を下すまでもなく勝手に動けなくなって死ぬだろ」


「…だから何のことだ」


だ、の部分を言い終わる前にグランの周りの空間が歪んで、姿は一瞬で消えた。

伝えることは伝えたからって魔界に帰ったのかもしれない。


「…なんのことだったのかしら、最後の動けなくなって勝手に死ぬとか…不吉だわ…」


独り言みたいに言っていると、ふと視線を感じて顔を動かす。すると石碑の上にいるネッコと目が合った。


ネッコのオレンジ色の目が黙って私たちを見ていている。その顔つきは妙に人間じみていて、少しニヤニヤしながら私たちをジッと観察しているように見えた。


サードはグランの居た場所を睨むように見ていたけど、私たちにその鋭い視線を向けてくる。


「いいか、今からこの村から去る。守り神なんて知ったことか」


* * *


グランが姿を見せてから四日経った。村の守り神を探す手がかりは全く見つからない。


そもそもサードはその四日前にこの村から去ろうとしたのよね。けど私たちはまだ居る。


サードはグランが立ち去った後すぐさま川辺からアダドの元に引き戻って、


「勇者御一行ともてはやされようと残念ながら我々もただの人間、少しでも力になろうと思いましたが、やはり人間が神を見つけるなど人知も及ばず…」


と依頼の取りやめをほのめかした。


アダドはあれこれと「こんな短期間で諦めないでください」とサードに泣きついて引き止めたけど、サードも人が神を見つけることはできないとあれこれと言い含めて、サードの口の上手さには勝てずアダドは見捨てられて悔しそうな顔をしながらも丸め込まれて引き下がった。


私たちはこんな中途半端な状態で立ち去るなんて、と不服だったけど、サードの固い決意を崩せないで立ち去ることになったのよね。

でも立ち去ろうとしたら村に入ろうとしているゴブリンの集団とばったり行き合った。


すぐさま私たち全員でゴブリンの集団を倒したけど、


「こんなにゴブリンが村に押し寄せてくることなんて今までありませんでした、お願いです、守り神のことは一旦置いておくにしても、恐ろしいのでもう少しこの村にいてゴブリンを討伐してください」


ってアダドにすがりつかれて、村人たちにもお願いします、お願いしますって頭を下げられて…。


それでもサードは立ち去ろうとしたけど、私たちはこんなに頭を下げて助けを願っている村人たちを見捨てられない、せめてこの周辺にいるゴブリンを大体倒してからでもいいじゃないってサードを必死に説得した。


村人たちに頭を下げられて仲間の私たちに説得されると、勇者の仮面をかぶっているサードも断りづらくなったのか、かなーり渋々と村に残ることにようやく頷いた。


そうやって私たちは村周辺を巡ってはゴブリンを倒して、ついでに守り神を見つけようとしている。

でも色んなことに対してやる気がなくなったサードは、


「仮に神が消えたのであればこの村は神に見放されたということです。いずれゴブリンか川の水が押し寄せ多大な被害を(こうむ)る可能性が高いと思われます。口惜しい気持ちは理解できますが村人たちの命を尊重するのならば、この村を捨てることも考えた方がよろしいのでは」


と村を捨てるようアダドに提案していた。でもここは先祖代々の土地だからと激しく拒否されるだけで終わっていた。


そうやっている間にもゴブリンが巣くっている場所をいくつか叩いて、大体は壊滅状態に追いやってると思う。

それでもゴブリンの姿はあちこちに現れて、山の中を歩いてみるとゴブリンが巣くっている所をいくつも見つけたりもする。


最初に言っていたゴブリンニ十数体って言葉は何だったのかしらと思えるほどこの山にはゴブリンが多い。


「一匹見つけたら十匹いるあれみたいだよな、ゴキブリ」


アレンがそう笑っていたけど、サードに睨まれてスン…と黙り込んでいたっけ。


そうやって日の昇っている時間帯はゴブリンの討伐、それ以外は村の守り神の捜索をしているけど、やっぱり村の守り神は見つからない。


「そもそも守り神が居なくなったということは、神に対して失礼にあたることをしたのでは?何か思い当たる節はありませんか?」


ガウリスはアダドに聞いていたけど、アダドはまさかと顔をしかめて、


「そんな失礼なことはしていません。この村の皆は恵みを分けてくれる自然に毎日感謝をしています。だから村の決め事で自然を汚すこともせず食べ物や生き物を無駄に乱獲することもしていません。私たちは自然に生かせて頂いているのみですから」


村の皆に聞いてもアダドと似たようなことを言うだけで、この村の人たちは自然を大事にしている、つまり川の神様を不機嫌にさせるようなことは全くしていないみたいと判断した。


だから守り神がよく現れていた川を重点的に歩き回って探してみるけど、話に聞いている女の子の姿の守り神は目の端にチラと映るどころかさっぱり見当たらない。

それも動く人型が見えたと思ったら大体がゴブリン。


サードはサードでいつまでこの村に居ればいいんだよと最近ずっとイライラしていて、


「この村以外の山を全部焼き払えばゴブリンも全滅するだろ、エリー、やれよ、できるだろ」


とふざけたことを言うようになってきた。それについては馬鹿じゃないのと無視しているけど…。


「エリーさん!」


村の外れの木の下で、ネッコを膝に乗せ前足を掴んで上下にプラプラ揺らしているセージに声をかけられて足を止める。


「守り神見つかった?」


私は首を横に振って、されるがままに前足を揺らされているネッコを見ながらセージの隣に座る。今は皆とバラバラに行動して各自気になることを調べている最中だから私一人。


「そもそも守り神って私たちみたいな他所から来た人にもちゃんと見えるものなの?もしかしたらこの村の人にしか姿が見えないんじゃないかって話も出ているの」


もしかしたらよそ者には見えない可能性もあるんじゃないかってサードが言っていたから、そのままセージに聞いてみると、セージは首をかしげる。


「さあ?大人は守り神のことは色々聞いて知ってるみたいだけど、俺まだ子供だから聞いてない」


「大人になったら色々と聞くの?」


「うん、大人になったらこの村の伝統の儀式して、この村の成り立ちとか守り神のこととか村長から聞くんだって。俺まだ七歳だから守り神が川にいてこの村を守ってるくらいしかよくわかんない。

でも守り神が消えたからこんなにゴブリンが出てくるようになったって大人は話してるんだぜ、うちのネッコも酷い目に遭いそうになったし…」


セージはお前が無事でよかった、とネッコをギュッと抱きしめると、ネッコは抱きしめるセージの顔に鼻を寄せている。ネッコもセージも可愛いわ。


「じゃあ守り神が現れる条件とか、そういうの分かったりしないかしら。晴れた日に現れやすいとか、お昼に現れやすいとか、守り神を見やすい人の特徴とか…」


「分かんない」


うーん…ろくに姿を現さない、それもいるかいないかも分からない守り神を探すなんてかなり無茶よねぇ。村人だって今もいるかどうかなんて分かってないんだもの。


すると遠くをサードが歩いているのが見えて、手をあげながらサードを呼んだ。

サードはすぐさま気づいて私たちの所に歩いてくる。


「何か分かりましたか?」


サードはゴブリンの討伐には渋々参加しているけど、守り神の捜索に対してはやる気がなくてその辺をブラブラ歩いているだけで何も調べていない。


「何も」


私が簡潔に答えると、だよな、とばかりにサードは視線を遠くしてため息をついた。セージはそんなサードに向かって隣に座りなよとばかりに隣をポンポン叩くから、サードもとりあえずそのままセージの隣に座った。


「そもそも何の能力もない我々に神を見つけてほしいというのがそもそもの間違いだと思うのですがね」


セージの目の前だからサードは表の表情で言葉を漏らす。


サードは昨日、こんなことを言っていた。


「そういやガウリスは精霊以上の神に近い存在になってて、エリーには神と精霊の血も混じってんだろ?二人が本気出せば守り神見つかるんじゃねえの?ゴブリンはいくら倒そうがウジャウジャ出てきやがるからとっととその守り神見つけろよ」


でもガウリスは困ったような表情を浮かべて、私は迷惑な顔を浮かべた。


「そう言われましても…精霊や神を見つけるなどという能力はありませんので」


「そもそもそんな能力があったら仕立屋のエローラたちだって船で会った時点で人間じゃないって最初から見抜いてたわよ」


それに対してサードはそうかと終わらせていたけど。


私はポケットからアロナから渡されたおやつを取り出した。


山の中を歩くとお腹が減るでしょうからって、ゴブリン討伐に行こうとするといつも渡されている。これが美味しいのよね、木の実をすり潰してこねて丸めて焼いたものなんだけど、この木の実もこの辺にしかないものなんだって。


この村で食べる料理はこの辺にしかないっていう食材を使った美味しいものばかりでつい食べ過ぎちゃうのよね。食べ過ぎてしまうせいか最近胃が重くて、アロナから渡されたこのおやつも今日は全部食べられなかった。


おやつを一つ口に入れると、セージがジッと私を見ているのに気づいて、おやつを一つ差し出す。


「セージも食べる?」

「食べる!」


顔を輝かせて元気に返事をする姿が微笑ましいわ。

セージは口を大きく開けておやつを食べようとすると、ネッコがいきなりセージの手からパンッと丸められたおやつを叩き落とす。


「ああっ!ネッコ何するんだ!」


セージは慌てて拾おうとしたけど、ネッコは素早くセージの膝の上から飛び降りて、両前足を使いながら器用におやつを弾き飛ばしつつシババババと遠ざかっていく。


「あああー!ネッコ!それはボールじゃない!ボールじゃない!俺のおやつ!」


セージは立ち上がってネッコを追いかけたけど、ザシャッとおやつは茂みの奥にもぐりこんでしまった。

ネッコはしばらく茂みをガサガサ漁っておやつを取ろうとしていたけど、ふいに「もう無理、取れない、諦めた」という表情を浮かべてゆっくり振り返る。


「……!バカー!ネッコのバカー!」


セージは涙を浮かべ、うわああ!と泣きながら走り去っていった。


「あ!まだおやつ残ってるわよ!」


私は立ち上がってセージに声をかけたけど、セージはわあああああ…と泣きわめきながら遠ざかっていく。

あらら…と思いながらとりあえず座り直すと、セージを泣かせてしまったネッコは全く悪びれない顔でサードのあぐらの上にのっしりと乗って居住まいを正している。


「いいなぁサード…。ネッコが膝の上に乗ってくれるなんて羨ましい」


「重い」


羨ましいと言ってる間にサードは裏の顔でネッコの首根っこをつまんで自分の膝の上からポイと投げた。

ネッコは不愉快そうな顔をしてしっぽを左右に細かく動かしている。


何で、という顔つきでサードを見ているわ。


「何睨んでやがる、邪魔なんだよシッシッ」


サードが手で追い払うとネッコは余計不服そうな顔になる。


「うー」


「うーじゃねえよ、やるかゴラ」


「何を猫相手に喧嘩売ってるの、やめなさいよ」


こんなに可愛い動物にこんな態度だなんて、普通に最低。


「この村のことだが」


サードがネッコから視線を外して私に目を向けてきたから、私もとりあえず話を聞く構えになる。


「この四日で大体この山にいるゴブリンも大体は倒しただろ。そろそろ行くぞ」


「行くぞって言ったって…それでも…」


「ゴブリンがまた村に来たらどうする?とでも言いてえのか?」


そう、と頷くとサードは嫌な顔をする。


「そもそも俺はあのアダドって野郎が気に喰わねえ。言ってることが滅茶苦茶なんだあの爺。ろくに見えもしねえいるかいねえかも分からねえ守り神を見つけろ?無理に決まってんだろ。ゴブリンが怖いからもうしばらく居ろ?だったらいつまで俺らはここに居りゃいいんだよ。あの爺の言うこと素直に聞いてたら、俺らはずっとこの村から出られねえぜ」


「そうなんだけどねぇ…」


「それにグランが言っていた言葉も気になる。あんまりこの村には長居しねえ方が…」


と言っている時にネッコがサードの膝の上に前足を乗せた。


「…」

「…」


一人と一匹が無言で見合っている。

サードはネッコの首根っこをつまむと、そのままクルリと半回転させて地面の上に前足をおろした。


ネッコは解せぬ、という表情でその場に座ってしっぽをヒュンヒュンと大きく動かしている。


なんでネッコはこんなにサードに懐くのかしら。もしかしておやつを与えたら懐いてもらえるかしら。


そう思ってそっとおやつを一つ差し出してみた。

でもネッコはわずかに背を向けて前足をザカザカ動かすと去っていく。


サードは笑った。


「あれ、クソした後に砂をかける行動だぜ。てめえの飯はクソだからいらねえってよ」


「…」

何それショック…。

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