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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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~を賭けて一つ勝負でも

サードの指示でアレンはラニア宛に今問題になってることで話があるから私たちを交えて話をしたい、だからヴェルッツェ国公認の本物の割符を持ってきてくれないかという内容の手紙を送った。


まあ隣同士だから書いたらラニアファミリーの門番の人に直接手紙を渡しに行ったんだけどね。


するとその日のうちにラニアから手紙が届いた。


内容は了解、ということと、そちらが勇者御一行全員で来るならこちらも何人かでいくということ、しばらく忙しいから何月何日、昼の1時に時間を作ってやる、場所はランジ町の東リール通りのバール店パラディソにて、という内容の手紙が届けられた。


「あくまでも向こうが色々と決めてくるのね」


日にちどころか時間も場所も一方的に指定されているのに呆れたけど、サードはニヤと笑って、


「いや、先にあれこれ分かってた方が俺はやりやすい」


と特に気にする素振りは無かった。


ラニアからの手紙が届けられてから3日後、私たちはラニアに指定されたバール店パラディソ…まあいわゆるコーヒーの喫茶店にたどり着いた。


どうやら私たちの方が早めにたどり着いたみたいで、レトロな雰囲気のお店の中に入ると店主のお爺さんがこちらにどうぞと私たちを促して、注文もしていないのにコーヒーが運ばれてくる。


「今日の1時半までは貸切にしておけとラニアに言われててね。コーヒーも全員すぐ飲めるように用意してろと言われていたんだ」


お爺さんはそう言いながら私たちを何とも言えない顔で見てきた。


「しかしラニアとやり合うつもりかい?あんたらが勇者だろうが、この国にいる限り分が悪いぞ」


「ご心配には及びません。ただの話合いですから」


サードはニッコリ微笑んで、お爺さんは更に渋い顔になる。


「ラニアもなぁ、昔はあんなんじゃなかったんだがなぁ…」


一人グチるように言いながらお爺さんはカウンターの奥に引っ込んで行った。


「お、早いな」


1時。ラニアたちは時間ぴったりにバール店に入ってきた。


向こうの数は六人。その中にはノリオや、割符をどこかに転移させた男の人の姿もある。

他の男の人たちはどんな人たちなのか分からないけど、全員が魔法を使える手ごわい人たちと思った方がいいのかもしれない。


「アレン、心は決まったか」


ラニアはニコニコと笑いながら私たちの座っている机のそばに寄ってきて、


「お前が俺ん所に来たらまずはミョエルと派手に結婚式でもあげようや。そんで少し落ち着いたら俺の仕事を少しずつ覚えてだな…」


「そのような話し合いをしにお声がけしたのではないのですよ」


サードが話を遮るとラニアはとりあえず黙る。


「あなたのやり方は勇者として見過ごせない部類のものです。アレンたちの人生が脅かされているのを間近で見ては放っておけません」


ラニアはニコニコしているけど、目が笑っていない。どこまでも冷たい目でサードを見ている。


でもふっとその冷たい目を引っ込めて、アレンに視線を移した。


「アレン、ミョエルはガキの頃からお前のことが好きだったんだぜ?お前が旅に出て一通も手紙が来なくてもお前をずっと待ってたんだぜ?その長年の気持ちに応えてやろうって気にはなんねえのか?近くで見てて俺はいじらしくて可哀想になるぐらいだったんだぜ?」


アレンは情に訴えられるように話を振られたけど、


「…だって…いじめられてた記憶しかないし…」


と目を逸らしながらモゴモゴという。ラニアはチッと舌打ちするような顔になって、


「で?勇者御一行はアレンを引き渡さないという考えってことでいいのかい?」


「ええ。あなたの考える通りにアレンは渡せませんね」


ラニアは面白くなさそうにサードの真向かいの椅子にドッカリ座る。

そのタイミングでラニアたちのコーヒーが出さたけどラニアはお爺さんに向かって、


「爺さん、話合いが終わるまで引っ込んでろ」


と追い払うように手を動かし、お爺さんは何も言わずドア向こうに消えてそのまま二階に上がっていく音がする。

でも後ろにいるラニアファミリーの人たちは誰も座らない。ただ私たちが急に暴れださないか警戒しているのか、ガラの悪い姿勢で睨んでいる。


するとラニアはコーヒーを手に取り匂いをかいで、一口喉に流しこんでから身を乗り出して顔を歪め笑った。


「そっちがアレンを渡さねえってならそれでもいいけどよ、そうなるとロッシモとランテがどうなるか分かってるよな?」


「そのことなのですが」


サードは自分の荷物入れに手を入れて、何かを取り出そうとする。それを見たノリオが素早く呪文を唱えて、手から炎を出してサードを睨みつける。


「何を出すつもりだ!」


サードはノリオを一瞥し、おかしそうに笑った。


「そんなに警戒しないでください、大したものではありませんよ」


サードはそう言いながら荷物入れからゆっくりと何かを取り出してテーブルの上に置いた。


それはアレンの家にあった何の変哲もないカードゲーム、ウノ…。


「…」


ラニアは顔を動かさずそのウノを見て、ゆっくりとサードに目を動かす。サードはそのラニアの視線を受けて、ゆっくりと口角を上げて微笑んだ。


「アレンと割符を賭けて、あなたと私の二人で勝負しましょう」


一瞬ファミリーたちに動揺が広がったけど、ラニアの表情は動かないで黙ってサードを見ている。


「アレンと割符を賭けて…?」


「ええ。あなたが勝てばアレンはあなたのものになる、私が勝てばその割符を返してもらう。分かりやすいでしょう?」


本気で言ってるのかよバカバカしい、とでも言いたげな顔でラニアは椅子に寄りかかったけど、サードが黙って見返しているから本気で言っていると分かったみたい。


真面目な顔になって身を乗り出した。


「アレンの人生と、アレンの家族の命をゲームで片付けようって気か?」


「本人の了承を取ったうえです」


ラニアが正気か?という表情をアレンに視線を向けると、アレンは頷いた。


「悪いけど今回のラニアのやり方は好きじゃない」


その一言にラニアはカッと一瞬でキレた顔になった。

そして憎々しい顔でアレンを睨み付けると、葉巻を取り出してノリオに火を付けさせ煙を吸い込んでいる。でもその目はどこまでもアレンを睨んでいた。


その顔を見て思った。


ラニアはアレンの能力を認めたうえでミョエルの婿に欲しいと言っていたのかもしれない。

でももしかして自分の命令を素直にハイハイ、と受け入れて動くから可愛がっていたんじゃないの?だから今、アレンが反抗したことに怒っている?


…だったら仮にアレンがラニアの元に行ってしまったとして、今みたいにラニアやり方には賛成できないってノーを突きつけたら…?

ダメ、やっぱりアレンはこのラニアの元に行かせられない。


ラニアは苛立だしそうにサードに視線を動かすと、


「しかしな、俺が勝ったらアレンが手に入る、お前らが勝ったらアレンに、割符…ランテとロッシモ付きでそっちのもんになるってことだろ?こっちの割り当てが少ねえじゃねえか?」


ラニアの言葉にサードも頷く。


「ええ、私もそう思いました。なのでこのような条件でどうでしょう?」


サードはそこで一旦区切ると、続ける。


「私が負けたらアレンだけではなく、私、エリー、ガウリス全員があなたの配下になるというものは?」


「勇者御一行が!?」


怒りは吹っ飛んだみたいで、ラニアは驚いた顔で思わず言うと、サードは微笑みを崩さずに続ける。


「自分で言うのもなんですが、我々の知名度は高いですからね。もしあなたの元で私たちが働くとなれば、あなたの貿易商の名前が今より世間に広まり、仕事の幅も広くなるでしょう」


一瞬で利益の計算でもしたのかラニアの目の輝きが変わった。まるで獲物を狙うようなギラギラした目付きで私たちを見据え、


「本当に俺の元で働くってんだな?」


と念押しのように身を乗り出してサードに聞いている。


「それはあくまでも私がこの勝負に負けた場合の話ですがね。しかし私たちは自分たちの人生をかけての大勝負をするのです。

私が勝った場合、ラニアさんにはアレンのお父様とお兄様に渡したような偽物ではなく、ヴェルッツェ国公認の本物の割符をこちらに渡していただきたい。その誓約を取りたいので、この用紙にサインをお願いできますか?」


サードは色々と文章の書かれた紙をラニアに渡して、ラニアは用紙の隅から隅までじっくり眺めるように読んだ上でサインした。


自分たちの人生を賭ける…それについては私たちも了承済み。


まあウノで私たちの人生を賭けてゲームで勝負を決めるって聞いた時には、私の人生を預けると軽く言ったのをすごく後悔したけど。


でもカジノでもサードは勝ち続けていたし、初めてやるチェスでもロッテと何度も対戦していたリッツにサードは勝っていた。

このウノだってブラスコに一度説明されただけで勝ち続けていたんだから、そんなサードなら今回だって負けるはずがない…。


って無理やり自分を納得させたけど、それでも不安な気持ちは消えない。


だってこれはカジノで見たような遊びじゃない。

今から賭けるのはオモチャみたいなコインじゃなくて、私たちの人生がかかった一勝負なんだから。


「3回勝負にしますか?それとも5回勝負?」


サードが声をかけると、ラニアはサードの真後ろにある時計に目を向けた。


「2時からよその国のお得意さんが来るもんでね。1時半にはここを出る」


「それなら3回勝負で」


サードはカードの山をめくる。出たのは数字の3。

ラニアもカードの山から1枚カードを掴んでひっくり返すと、ドローフォーのカード。


親を決めるのは数字の大きさだけど、数字以外のものは0と同じ意味合いになる。


ラニアはチッと舌打ちして、


「勇者様が親だ」


と言う。


サードはカードを1つにまとめて良くシャッフルする、ラニア自分、ラニア自分とカードを配ってお互いに扇状に広げて自分の手札を見る。


「さあ、始めましょうか」


サードは微笑みながら、山からカードをめくった。


* * *


「っし!あがり!」


ラニアは自慢気に自分の残り1枚の手札をパンッとテーブルの上に叩きつける。


「おや負けてしまいましたか」


サードは気のない声で言うと自分の持ち札をペラリとテーブルの上に広げた。


妙に落ち着いているサードを尻目に私はサードが負けたことに胃の底が冷えた。

今までサードがゲームで負けたのを見たことが無い。なのに今、こんなにあっさり負けてしまうなんて。


チラとサードのサードの手元に残ったカードを盗み見る。数字の6と2とスキップのカードでマイナス28の減点…。


「俺が勝ったから、今度は俺が親だ」


ラニアは機嫌も良さそうにカードをシャッフルしてサード自分、サード自分とカードを配っていく。


心配と不安で落ち着かないままコーヒーを飲んでいると、脳裏にサードがウノでアレンと割符を賭けて勝負すると宣言した時の記憶が蘇ってくる。


「けどさ、ウノって頭使わないゲームだから、勝つとしても本当に運だぜ」


あの時アレンの言葉に私もそうよそうよと口を合わせた。


「いくら悪運が強いからって人生を運頼みで賭けるなんて…」


するとサードは私の言葉を遮って、


「頭使わねえゲームなんてねえよ。俺が運だけでブラスコに全戦全勝してたとでも思ってんのか?」


…そう言うくらいなんだから、きっと今も頭を使って考えているに違いないけど…でも負けたし…。


「おやぁ?勇者様、もしかして黄色持ってねぇな?」


サードが山からカードを引いているのを見たラニアが声をかける。サードはニッコリ微笑んで、


「ご想像にお任せいたします」


とだけ言うとラニアはニヤニヤと笑い、


「ほれ、黄色が引けるようにしてやらあ」


と、ドローツーのカードを4枚、バンと出した。


サードは合計8枚引かないといけない。

ラニアは今ので手持ちの札が残り4枚まで減っている。


サードは8枚カードを引くと、ラニアはすぐさま黄色のカードを出してニヤニヤとサードを見た。


「俺は残り3枚、勇者様はあと…13枚か。ふふふ、俺はさっき勝ってるから、これも勝ったら俺の完全勝利だな」


ラニアは顎をさすりながらサードをなめるように眺めている。


サード…!


どうするのよ、と横目でサードを見ていると、サードは私とは正反対に余裕の微笑みを浮かべ、


「では黄色も引けましたし、せっかくなので黄色でも出しますか」


とラニアの挑発は一切スルーして黄色のカードを出した。


スキップ。


スキップは次の人を飛ばしてその次の人の番になる。でも今は二人だからラニアを飛ばしてサードの番。


サードは色違いのリバースのカードを3枚出す。


リバースカードは左回りだったものが逆転して右回りになる。でも今は二人だからラニアに順番は回らずまたサードの番。


サードはドローツーのカードを3枚出す。


ラニアは6枚引かないといけなくなったけど、そのカードを引いたら次の人の順番になるからまたサードの番。


サードはワイルドのカードを出す。これは赤青緑黄の好きな色にできるもの。


「緑」


サードが色を決めると、ラニアは眉を寄せて渋い顔つきになった。


「おや、6枚引いたのにまだ緑が手に入らなかったのですか?」


ラニアは軽く驚いたように眼球だけを動かしてサードを見るけど、サードは変わらない微笑みを浮かべている。


「最初から緑の数字は小さいものだけを出していましたので、緑が少ないと思ったのです。違いましたか?」


サードの言葉に一瞬、どういうこと?と思ったけどすぐにピンときた。


そうか、最後に残っている数字分がマイナスになるのだから、大きい数字ほど先に出して減点のリスクは減らしたい。

けど最初から小さい数字を出し続けるということは、手元にその色のカードが少ないということなんだわ。


じゃあサードはブラスコに説明されて遊んでいるうちにそういう所に気づいて、相手の手元に何のカードがあるかずっと考えながらゲームをやって勝ち続けていたの?


だとしたらウノって運で勝つようなゲームじゃなくて、相手が何を持っているか、何を出したかを確認しながらその手口に裏を読んで、自分の出す手札も操って相手を騙して…そんな心理戦がものをいうゲームなんだわ。


そんなもの、相手が嫌がる方法を見つけるのが上手なサードにしてみたら得意分野じゃないの。


そう考えると大丈夫かもしれないと思えてきて、私は大きく深呼吸してから落ち着いた気持ちで二人のゲームを見る。


「…ふん」


緑が無いと指摘されたラニアは面白く無さそうに鼻を鳴らしながら山からカードを引く。それでも緑は出なかったのか、黙ってサードを睨んだ。


サードの番。


サードは緑の同じ数字を3枚出す。


サードの手札は残り2枚。でもラニアは緑がないから山から1枚引くと、ようやく緑が出たのかそのまま出す。


すぐさまサードも緑を出した。


「ウノ」


でもやっぱりラニアは緑がないからイライラした表情でカードを引いて、緑のカードも同じ数字も出なかったみたいでサードを睨みつける。


サードは微笑みながら手持ちの最後の1枚を優雅に置いた。


「あがり。ドローフォーなので4枚引いてください」


「えげつねぇ…」


ラニアファミリーの男たちは互いに、うわぁ…と顔をしかめ小声を漏らした。


サードは手持ち13枚からあがって、ラニアは3枚だったのに15枚まで増えて終わった。


「…まさかとは思うが勇者様よ」


ラニアは残りのカードの点数を計算しながらイライラと口を開いた。


「ドローフォーとワイルドカードっつー色を変える手札を持ってたのに、黄色が無いふりしてたわけじゃねえよな?だとしたら反則だぜ?」


「まさか、私は正直にゲームをしておりますよ。しかし仮にそれにそうだとして本当かどうかなんて今更分かる訳ありませんよね?」


サードはラニアを真っすぐに見返す。


「疑わしいと感じたならその時におっしゃっていただかないと。これはそういうルールでしょう?」


そう微笑むサードの目には本性の方の目つきがほんのり混じる。明らかにわざと本性をさらけ出しているような嫌な表情だわ。


その目を見たラニアも表情の読み取れない目になって、目の前の男は信用できないという渋い顔になって背もたれにギッともたれかかった。


ラニアは新しい葉巻を取り出して噛み千切り、葉巻を後ろに向ける。するとノリオが火をつけ、ラニアは葉巻をくわえながら煙をくゆらせた。


「私が親ですね」


サードはシャッフルし始めると、その途中でラニアが素早く立ち上がってサードの手を掴んだ。


「おい、今イカサマやってんだろ?」


皆が驚いてサードとラニアに目を向ける。サードは手を掴まれたまま首を傾げた。


「何のことでしょう?」


「しらばっくれやがって。てめえ、シャッフルする時カードの裏が見れる角度にしてカードを確認してやがるだろ。一回目の時も妙なことしやがると思ったが俺が勝ったから見逃した。二度目はねえぞ」


「…」


サードはおかしそうに微笑んでカードの束をラニアに渡す。


「恐らくそれは私のクセだと思うのですが、御心配ならあなたもシャッフルをどうぞ」


(しゃく)に障るという顔つきでラニアはサードを見て、しつこいくらいシャッフルしてからサードに戻す。


サードはラニア自分、ラニア自分とカードを配って扇状に広げた。


「お互いに一勝一敗、これで勝負が決まります」


ラニアは心底目の前の男が気に入らないという目つきでサードを睨んでいるけど、サードはさっきほんのり本性をさらけ出したことなんてなかったかのように、とことん爽やかにラニアに笑顔を向ける。


「楽しみましょうか」


私たちの…自分の人生もかかっている最終勝負だというのに爽やかに笑うサードの顔を見て、思わずゾワッと鳥肌が立った。


私と同じようなことを思ったのかもしれない。サードの目の前に座ってるラニアも怒りの目から得体の知れない恐怖を覚えたような目をしている。


「…勇者様ってのは、もっと品行方正なもんと思ってたがな」


ラニアが呟きながらカードを出し、サードもカードを出した。


「私は勇者という肩書に恥じぬ行いをしているつもりですよ」


よく言うわ。


私たちだけでなく、ラニアもそう言いたそうな顔つきをしている。


サードとラニアはお互いに黙々とゲームを続けている。

サードは微笑みを浮かべ、ラニアは疑いの目つきをサードに投げかけながら。


ラニアの手持ちの札は残り3枚、サードの手持ちの札は4枚。


カード枚数が少なくなってきて、見守る私たちやファミリーたちの緊張感も高まっている気がする。


サードはチラと捨て場を見てから自分の手札を見て、


「赤か5ですか…ありませんね」


と呟きながらドローフォーのカードを出した。


「青」

「ダウト!」


サードが色を宣言すると同時にラニアがサードを指さし叫んだ。


ラニアは口端を上げてサードを見る。


「てめえ、さっきから赤は大きい数字しか出してねえじゃねえか。ってことは、まだ赤は持ってるんじゃねえの?」


ダウト…お前の行為を疑っているという意味。


例えば今みたいに赤の5が捨て場にあって、それと同じカードを持っていたとする。


それでも持っていないふりをしてドローフォーで色を変えるのは反則。これはさっきラニアが言っていた通り。


でもそんな反則をやったとしても相手が何も疑いもしなかったらそのままゲームは続行される。


けどおかしいと相手が思えば、ダウト、と宣言されて自分は必ず相手に手持ちの札を見せなくてはならない。

嘘をついて相手に4枚のカードを引かせようとしたのか、それとも本当に赤も5も持っていないのかを確認させるためだ。


「ほれ、見せてみろ勇者様よ」


「…」


ラニアは勝ち誇ったように身を乗り出し、サードは無表情に近い微笑みで黙ってラニアを見ていた。

ウノはドローフォーで終わるのは反則というのがありますが、これは日本に多いローカルルールで本当はドローフォーで終わってもokらしいです。

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