隣ん家のおじさん(本性)
少年たちに襲われそうになった小さい森から少し歩ていくと町に続く道へと出て、次第に住宅が多くなってきた。
でもこの辺りを歩くのは初めてだから、アレンの家に帰るとなるとあの賑やかな市場へ戻らないと。でもその市場もどっちにあるのか…。
それより急に居なくなってガウリスはどうしてるかしら、もしかしたら私を探しているかもと進んでいくと、
「どうしたの?天界から落ちて困ってるの?」
と通り過ぎる男の人に声をかけられて、ビクッと肩をすくめてその男の人から距離を取る。
普通に声をかけてきているだけかもしれないけど、もしかしたらまたさっきみたいに気絶させてさらうつもりかもしれない。いくらある程度のことは自力で脱出できるからって、何度もあんな目に遭うなんてごめんだもの。
「エリー?」
聞いたことのある声に振り向く。視線の先に見えた姿に思わず顔がほころんで、慌てて駆け寄った。
「ドミーノ!」
声をかけてきたのはアレンの二番目のお兄さんの、クールな厳しい顔をしたドミーノだった。ここで知ってる顔を見つけてホッとする。
先に声をかけて来た男の人は、そんな私の姿を見ると残念そうにチェッと舌を鳴らして立ち去って行く。
どうやらさらおうとしていたんじゃなくて、単に口説こうとしていただけみたいね…。
ふぅ、と息をつく私に、
「そんなに急いでどうかしたのか?」
と不思議そうに声をかけてくる。
「実は…」
私は今あった出来事をドミーノに全て話した。
ドミーノは真剣な表情で私の話を聞いて、段々と眉間にしわを寄せると心配そうな目で顔を覗き込んでくる。
「…大丈夫か?辛くないか?」
「とりあえずは、大丈夫…」
恐怖の度合いだったらゼルスにさらわれて襲われかけた時の方が逃げられない絶望感でいっぱいだったし。
「まず…何事も無くて良かった。怖かっただろ、エリー」
ドミーノは私を抱え込むとよしよしと頭をなでる。
その抱え込んで頭をなでる仕草に言い方は全部アレンと同じで、性格はこんなに違っていもやっぱり兄弟なんだと笑いが込み上げてくる。でもアレン以外の男の人に同じことをされると妙に照れるわね。
ドミーノは私の肩に手を回しながら歩き出した。
「ちょうど俺も家に帰るところだ。帰ろう」
「本当は公安局に行こうかとも思ったんだけれど皆に相談してからって思って…」
ドミーノは首を横に振った。
「ラニアが関わってるなら公安局の連中は聞いて聞かぬふりしかしない。行くだけ無駄だ」
それって公安局の意味がないじゃないの。…それより…。
私は自然に肩に回されている手を見て、ドミーノの顔を見上げる。
「あの…」
この手は一体、という顔をドミーノに向けるとドミーノの目がチラと私を見下ろしてくる。
「あまり君は男に声をかけられるのが好きではないとアレンから聞いた。こうしていれば恋人同士と思われて他の男から声はかけられないし、気絶させられてさらわれる率も低くなる。そんなことがあった後で嫌かもしれんが、家に帰るまで俺のことは保険と思え」
ああ、気を使ってくれているの。
「ありがとう、気を使わせてごめんなさいね」
お礼を言うとドミーノは、ふん、と鼻を鳴らす。
「俺は君ほど美しい女性の肩を抱けるのならいつでも喜んで保険になるがな」
いきなりのドミーノの口から飛び出た口説き文句に驚いて、え、と顔を見上げる。
「ん?」
でもドミーノはどうかしたか、とばかりに表情も変えていない。そんなクールな顔のまま淡々と歩き続ける。
もしかして口説いてる気は全然ないの…?でも今の言い方、絶対口説いてたわよね…。
ちょっと気恥ずかしくなって視線を逸らして前を向く。
すると私の今の態度を見て何か思ったのか、ドミーノは横から視線を合わせてきた。
「…本当は辛いんじゃないか?肩に触られたくないか?大丈夫か?」
「あ、うん、大丈夫、大丈夫…」
そう返すけどドミーノはとても心配そうな顔で、肩に置かれている手の力がグッと強くなった。
なんだろう…すごく…恥ずかしい…。
そういえば昨日、アレンはドミーノは無自覚に女の子を落とし続けているって言ってたわね…。それにアレンのお兄さんは女性関係で苦労しているって話も前に聞いたし。こういう所なのよね、きっと…。
ドギマギしながらそのままアレンの家へと帰って行くと時間はお昼を回っていて、ガウリスと、ついでにサードも家の中にいた。
ガウリスはドアから現われた私の姿を見ると心の底からホッとした声で、
「ああ、よかった…急に居なくなったのでどうしたのかと。あちこち探したのですが見当たらなかったので一度戻ってきた所です」
と近づいてきた。するとドミーノはガウリスを冷ややかに睨みあげて、
「お前も男なら隣にいる女性に気を使え!エリーはさらわれて危ない目にあっていたんだぞ!」
とドミーノが怒鳴ると、ガウリスは驚いた顔をしてドミーノを見おろす。
ドミーノは私から聞いたことのあらましを伝えると、ガウリスは絶望的な顔になって、私の手を取って額に近づける。
「申し訳ありません、私が目を逸らしたばかりに、申し訳ありません…!」
何度も謝るガウリスに私はそんなに謝らないで、と首を横に振った。
「あれはガウリスは悪くないわ。あんな状況、私だってガウリスと同じ行動になるもの。それにどうにか逃げられたし…」
「エリー」
サードに声をかけられたから今度はサードに視線を向けると、
「その襲ってきた子供たちはどうしたのです?」
と聞いてくる。
何で今そんなこと?
そう思ったけど、とりあえず風で吹き飛ばしてそのまま帰ってきたとだけ伝えた。サードは視線を逸らして色々と考え込んでいる顔をしていたけれど私に視線を戻して、
「それならその子供たちはまだ森に居ると、そういうことですか」
と重ねて聞いてくる。
だから何で今そんなこと?…まさか仕返しに行くとか言わないわよね…。
「なんで?」
もしサードが仕返しに行くとなったら何をするのか分からないからそう聞き返すと、サードは何を考えているのか…計算ずくのことを考えているのか、真剣に真面目なことを考えているのか区別のつかない表情のまま、
「犯罪組織の仕事の失敗は下っ端で外部の者といえど最悪の場合、口封じのための抹殺です。その子供たちはあっけなく顔を見られラニアの名も晒し、人質にも簡単に逃げられました。そうなればその子供らが近い未来どうなるか分かりますね?」
殺されるってこと?口封じのために?
…そりゃあ、あんなことをされて私だって殺してやろうかって考えが何度も頭をよぎったけど、それは腹立ちまぎれに思っただけで、実際に殺されるかもって話をされると後味が悪い。
「しかしラニアさんはそのようなことをするようなお方なのですか?」
サードがドミーノに聞くと、ドミーノは眉間にしわを寄せて腕を組む。
「やりかねないとだけは言っておこう。この家の他の奴らはラニアに好意的だが、俺は好かん。ラニアがいるからこの国が潤っているのは事実、だが腐っているのも事実。
国だってラニアに介入されて迷惑に思っているが、財源のことを考えたら無下に扱えない。だからラニアの悪事はほとんど無視されている。だがあいつのせいで悪事に加担する若い奴は年々増えているんだ、俺からしてみたらラニアファミリーはこの国の病巣だ」
イライラしなががらドミーノは悪態をついて、サードはなるほど…とあごをさする。
「エリーを襲おうとした者であれ殺されると分かったのなら勇者として見過ごせませんね。今のうちにその子供らを遠くに逃がした方が良いかもしれません。失礼」
サードは素早く言うと玄関から出て行った。
けどサードはそんなお金にならないことに動く奴じゃない。さっき計算ずくのような真面目に物事を考えているような顔をしていたけど、やっぱり何か計算ずくのことを考えて子供たちの救出に行ったのかしら。
まぁ、サードが何を考えてるのかなんて本当に分からないけど。
「でもまさかラニアさんが…どうしてそんなことを…」
ガウリスはまだショックを受けているのか、気落ちした顔で呟いている。
お金を子供らに渡してさらわせたという話を聞いた時、どうしてラニアが私を、と思ったけど、何となくさらわれた理由はうっすらと思い当たる。
ラニアは昨日サードに邪魔な海賊をどうにかしてくれないかと言ったけど、サードはハロワを通してから頼むように断った。だからハロワを通して依頼を出したってラニアが言いにくるかもと思ったけどラニアはその後訪れなくて、
「ハロワを経由できねえような仕事だったんだろ。だったらよっぽど悪事に近いもんってこった。勇者としてやるもんじゃねえ」
とサードは夜に言っていた。
だからラニアは私をさらって自分の思い通りにサードをうまく動かそうとしていたんだと思う…。
「ただいまー。今日のお昼はカルボナーラだよ!エリー、ソースづくり手伝って…」
アレンのようなホクホク顔でミリアが玄関から入って来て、中の重苦しい雰囲気に気づいたのか言葉を止めてゆっくり近寄って来た。
「…なにか、あった?」
「実は…」
ドミーノが説明すると、ミリアはドシャアッとその場に買って来た食べ物を床に落として、青ざめた顔で私をギュッと抱きしめた。
「エリー…!怖かったでしょう…!」
ダーツ家の皆ってとりあえず人を抱きしめるなぁと思いながら、
「だけど、魔法を使って逃げ出せたから…」
と返すとミリアはガッと目を剥く。
「逃げ出せたとかそんな問題じゃないの!エリーがそんな目にあったのが問題なの!」
ミリアは私の手をむんずと掴むと、外にズンズンと歩き出していく。
「え、え、どこに行くの?」
「ラニアん家!」
「どうして…」
「文句を言いに!」
文句って…ラニアの家って犯罪組織でしょ!?そんな所に文句って…!
ミリアの手を引っ張って止めようとしたけど、その力はあまりに強くて引きずられるように隣の家へと二人で向かっていく。
隣のラニアの家はアレンの家より格段に大きくて広い。四方に張り巡らされた厳重なその壁の上には鉄柵が並んでいて、鉄格子状の門の前には見張りなのか二人の男の人が立って談笑していたけど、近寄る私たちに気づいて顔を向けてくる。
「おおミリアさん!どうしたそんな…、怖い顔して…」
ミリアの顔を見た一人は最初親し気な表情を浮かべたけど、ズンズン近寄るミリアに多少引きつった顔つきになっている。
「どきなリーノ!」
「どけって言われても…俺門番だから…」
リーノと呼ばれた男の人はミリアに両手を向けて落ち着けとばかりに行く手を阻む。
「いいからどいてその門を開けな坊主!こちとらラニアに用があるんだ!」
ミリアは片手でリーノの胸倉をガッと掴むと、そのまま上に持ちあげて鉄格子状の門にガンガン叩きつけた。
そんなミリアを見て私は驚いた。だって、女の人なのに、片手でこんな風に男の人を軽々と持ち上げて…!?
「ぐえええ…!」
胸倉を掴まれて叩きつけられたリーノは足をバタバタさせているともう一人の男の人が慌てながら、
「ミリアさん、どうしたってんだよ落ち着け」
とミリアの腕を掴んで下ろさせようとする。でもミリアの腕はビクとも動かない。
「開けないなら勝手に入るよ!」
ミリアはリーノをその場に落としてもう一人の男の人を蹴とばすと、鉄製の門をガッと掴んで手前に引いた。
「オルァ!」
するとガインッという音と共に棒状の鉄格子は枯れた木の枝みたいに真っ二つに折れた。
「ええ!」
私は驚きの声を上げるけど、ミリアは次々にベキベキと鉄格子をへし折って、通るのに邪魔なところは足で蹴とばして破壊して、私の手を引いて庭に入って行く。
あまりの出来事に目を丸くして絶句する。男の人を軽々と片手で持ち上げて振り回したかと思ったら、鉄格子を真っ二つにへし折るわ足で蹴り飛ばして破壊するわ…。
…って、これってもしかして身体能力向上魔法じゃないの?
「ミリアさんを止めろー!」
倒れているリーノが叫ぶと庭にいた男の人たちたちがわぁわぁ言いながら駆け寄って来る。
「邪魔するな!このクソガキどもが!」
ミリアは声を張り上げ、一人ずつ千切っては投げ、千切っては投げ玄関の扉を開けて、
「ラニアーー!」
と大声で叫んだ。
すると男の人たちが玄関から入って右の通路からバタバタと駆け寄ってきて、キレている顔のミリアを見ると、
「ミ、ミリアさんどうしたんだい、そんな剣幕で…」
「アレンか?アレンなら今ミョエルと話してる最中…」
とおろおろとしている。
ミリアはその言葉を言った男にクッと顔を向けると、顔を向けられた男の人はビクッと体を動かし、
「よ、呼んできまっす!」
とダッシュで走って行った。
すると玄関正面の扉向こうからバタバタと駆け足で寄って来る音が聞こえ、二人の男を従えたラニアが出てきた。
「どうしたってんだよ、ミリア?」
ラニアも突然のことに驚いているのか、服をビシッとのしてミリアを見ている。
ミリアはラニアを睨みながら私を前に引っ張り出した。
「ラニア、あんた自分が金出した店周りの子供たち使ってこの可愛こちゃんをさらって、あとは死なない程度に好きにしろだなんて命令出したみたいだね?未遂で終わったけどこの子がどんな目に遭ったか分かってんだろ?」
ラニアは目の前にいる私を見ると、顔から表情が消えた。
その目は装甲船の船長、ヤッジャが、国はどのように私たちを使いたいのかと説明した時のようなほの暗い目…。
ラニアはゆっくりとミリアを見て、私を見ている。
すると右の通路の奥から、
「アレンを連れてきました!」
とさっき去って行った男の人がアレンを連れてきて、アレンは、
「あれ、母さんとエリーどうしたの?」
とのん気な声を出している。でもそんな声とは正反対に顔は明らかに疲れているのがすぐ分かった。多分ミョエルとの話し合いがこじれているのね。
するとミリアは苛立たしそうに足を振り上げてダンッと床板に叩きつけると、床板が割れてミリアの足が数十センチ床にめり込んだ。
「別にアレンを呼べだなんて言ってないよ、この役立たずが!」
その罵声にアレンを連れて来た男はヒィッと飛び上がり、アレンもミリアの剣幕にヒィッと飛び上がってその男にしがみついた。
「か、母さんどうしたの…」
アレンがビクビクしながらミリアに聞くと、
「ラニアが子供たちに金を払ってエリーをさらわせて後は好きにしてもいいって言ったんだとさ!」
その言葉にはアレンも驚いたのか目を見張った。するとその後ろからミョエルが悠々と歩いてきて、場の雰囲気を見て何か問題が起きたらしい分かったような顔つきになると、その鋭い目で周りの男たちをジロジロと見ている。
「…まさか俺が、勇者御一行の一人に手ぇ出すとでも?」
感情が表に出ていないラニアがゆっくりと口を開いた。
「俺がそんなことするわけねえだろ。する理由がねえ」
「けど現にエリーはさらわれて、その子供たちはラニアに頼まれたって言ったんだよ!」
ミリアがそう言いながらラニアの鼻に指を突き付けると、二人の男がラニアの前に立ちはだかってミリアから引き離す。
ラニアはふん、と鼻で笑った。
「ミリア、言葉だけじゃあ誰でも好きなこと言えるさ。なんせ俺の名前は随分有名だからな。困ってんだよ、ラニアに頼まれたって嘘ついて好き勝手なことをする馬鹿が増えててよ」
ミリアはそれを聞いて表情を強ばらせて口ごもった。
ラニアは懐から葉巻を取り出すと端をかじってプッと吹き出す。すると少し離れた所にいた人がブツブツと何か…呪文を唱える。するとその指先に火が灯って、ラニアは葉巻に口をつけて何度か吸い込んで火をつけた。
そして一度深く吸い込んで…鼻から煙を吐き出す。
「いやあ災難だったなぁ、エリー嬢ちゃん。危うくその可愛い体が傷ものになる所だったじゃねえの。安心しな、公安局なんざ頼りにならねえからそんな馬鹿は俺がどうにかしてやる。どんなガキ共だったか教えてくれ。名前は?見た目は?何人組だった?」
その感情が読み取れない表情で淡々と言葉を続けるラニアを見ていると、少しずつ鳥肌が立ってくる。
ラニアは自分が金を渡してやれと命令したはずなのに、堂々と自分は知らないと言ってのけている。それも…もしかしたらサードが言っていたとおり、子供たちを口封じのために殺そうとしているんじゃないの?
「あんた…」
ミリアがラニアを睨むと、ラニアは煙をくゆらせ口端をあげてミリアを見た。
「久しぶりにキレたミリアをみたな。だが怒る相手はお門違いってもんだぜ。なんせ俺はエリーをさらって得になることは一つもない。
勇者御一行を敵に回すってことは世の中の勇者御一行を支持する民衆を敵に回すってことだ。もしそうなったら貿易相手からもそっぽ向かれる危険性の方が高いからな。それでも俺が悪いって言いてえんなら、言葉だけじゃねえ証拠の一つでも持ってきてくれねえか?なあミリア?」
ううん…この感情の読めないニヤニヤ笑いを見る限りどんなに証拠を集めてももみ消せると思っているんだわ。そのうえで証拠を持ってこれるもんなら持ってこいって言っているのよ。
ミリアをチラと見ると、ミリアは納得いかない顔でラニアを睨んでいた。
「ミョエルが同じ目に遭ったらって、思わないのかい」
と聞いた。ラニアはおかしそうに笑う。
「俺の娘に下手に手を出したらどうなるか、この国の男ならよくわかってると思うぜ」
せせら笑うラニアの言葉にミリアは唇をかみしめて、でも諦めの顔を私に向ける。
悔しいし納得いかないけど、もうこれ以上ラニアに何を言っても無駄という顔だわ。
私はミリアの腕に手を添えて、
「いいのよ。私は何もなかったし、こうやって私の代わりに怒ってくれただけで嬉しいわ」
と声をかける。
「…!エリー…!」
ミリアは何もできなくてごめんとばかりに私を強く抱きしめていると、
「そういやミリア」
とラニアが声色を明るく変えて、ゴソ、と懐から何かを取り出した。
それはラニアの手より少し大きいくらいの妙な形の木の板で、文字や記号が細かく掘られてピンクと水色で色付けされている。ラニアはその板の下の部分を手で隠すように持ちながらミリアに見せつけた。
「これ、何か分かるよな?」
ミリアはキョトンとした顔でラニアの持つ板状の何かを見ていたけど、すぐさま顔が青ざめていく。
「それ…って…!」
ミリアは私から離れてその板を奪い返そうとするけど、ラニアの前にいる二人の男の人に取り押さえられた。
ラニアもミリアから距離を取るように少し下がって、アレンにもその板を見せる。
「お前もこれが何か分かるだろ?」
「え…何それうちのやつ?」
その板が何なのか分からないけど、ミリアとアレンの驚き具合を見れば二人にとって大事な物みたい。
二人の表情をみたラニアはニヤニヤと笑いながらその板を懐に戻すと、アレンに向かって身を乗り出した。
「返してほしかったらアレン、お前冒険者やめてミョエルと結婚しな」




