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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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お目覚めいかが?

…眩しい、何?眩しい…。


ふっと目覚めた。

すると目の前にアレンの顔があって、急に目の前に顔があって寝起きだというのに思わずビクッと肩が揺れる。


「エリー!」


アレンはパアッと顔を輝かせると、振り返った。


「エリー目が覚めた!サードは?」


すると向こうから、


「んだようるっせえ…」


とサードが起き上がって欠伸を一つしている。


もぞもぞと起き上がって周りを見渡した。どうやら談話室みたい。

談話室のソファーに横になっていて、サードもテーブルを挟んだ向こう側に寝かせられていたようね。


もうとっくに日は登っていて、ちょうど横になっていた私の顔に光が当たるように差し込んでいる。

外の光が顔に当たっていたからあの虹色の空に金色の雲、光り輝く大きい手っていう神々しいものを見たのかしら…。


でも最後のあの場面を思い返すだけでとっても清々しい気持ち。

きっと天国ってきっとあんな気持ちが清々しくなれるところなんだわ…。


その余韻に浸っているとアレンは私の手を取って下から見上げてくる。


「エリー覚えてる?昨日エリーが叫びながらそのまま倒れて眠ってて、サードも眠っててさ。いくら声かけても揺さぶっても反応ねぇからどうしようって思ってたんだよ」


ああ、やっぱり昏倒したんだわ、と思いながらアレンの目をふと見ると、アレンの目は充血して赤くなっている。

もしかして一晩中眠らないでずっと付き添っていたのかしら。だとしたらかなり心配をかけてしまったみたい。


そしてテーブルを挟んで反対側のソファーに居るサードと目が合って、私はサードと向かい合わせになる。


「ベラはどこに行ったの?」


「オシャカサマ…みてえな上の奴がすくってくれただろ、状況的に。サイノカワラ行きかとも思ったけどな。あっちの宗教観にはしっかり当てはまらねえみてえだなこっちは」


「何の話ですか?」


状況の飲み込めていないガウリスがそう聞いてくる。


私は思いっきり伸びをしてから、昨日の夜、私が花柄のネグリジェを着た女の子の足を見かけた所からアレンとガウリスに話した。


アレンは「お化け…」とオドオドしながら聞いていたけど夢の中の話になるとちょっと興味を持ったような顔になって、お化けの正体は教会裏に住んでいたサードに恋する病気がちの女の子だと分かるとしんみりした顔で話を聞いていた。


「良かったなぁ、そのベラっていう子。サードと会えて…」


しんみりした顔でうんうんアレンは頷いて、


「なんていい話なんでしょう…。良いことをしましたね、サードさん」


とガウリスもジーンとした顔をしている。


「最後の最後にあんなでけえ手が出てくるとは思いもしなかったがな…」


サードはポツリと呟く。


最後のあの手もサードが明晰夢とやらで用意したものと思ってたから、そうだったんだとサードを見た。


「けど、あれがファリアとリンデルスの言っていたサードのところのやり方なの?」


私の言葉にサードは少し頭を横に振る。


「正式な弔いの仕方じゃねえ。ただ、故人の思い出話をして供養する方法もあるんだ。亡くなった奴の思い出を語る、あんなこと、こんなことがしたかっただろうと無念な気持ちで亡くなった奴の気持ちに寄り添って話をし合う。それだけでも十分供養になる。お前も普通にそれに混じってたから知ってるもんだと思ったが」


…知るわけないじゃない、そんな供養の仕方…。だからサードはベラに優しく寄り添うように語り掛けていたのね、どおりで珍しく優しいと思った。


「まあ思い出話程度でもあいつも十分満足したみてえだったからな。あとはキョウを唱えて送って終わりだ」


こいつ…相手は自分を好いている女の子だったのにその言いざま…。


「しかしサードさんの所の呪文はそのベラという女の子に通じたのですね?サードさんの生まれた所とここの言葉は違うらしいですが」


ガウリスが声をかけるとサードは、まあな、と頷く。


「夢の中だったからなのか知らねえが、通じたな」


「あとでよろしいので、その呪文を教えていただけませんか?」


ガウリスの言葉にサードは一気に面倒くさそうな顔つきになる。


「長いから面倒だ」

「そこをなんとか」


「嫌だ」

「お願いします、見聞を広げたいのです」


「訳すのが面倒だ」

「手伝います」


その後も教えて、面倒くさいのやり取りをしていたけど、サードは、


「しつけえんだよ!宗教家はほんっとうに!しつけえ奴ばっかりだなクソが!」


とキレて部屋を飛び出した。でもそのすぐ先にシスターがいて瞬間的にバツの悪そうな顔になってそっぽむく。


シスターはサードと私が無事に起きたことに喜んで、体のどこにも異常がないと知ると、あのね、とサードに声をかける。


「サードにどうしても会いたいっていう方がいらしたのですよ。でもまさか倒れて目覚めないとは言えないから、まだゆっくりしていると伝えて一旦お帰り願ったのですが…。

この教会のすぐ裏に住んでいてほとんど毎日ここのお手伝いをしてお世話をしてくれている方だから、もう少し落ち着いたら会いに行ってくれないかしら」


教会のすぐ裏の家、という言葉に皆が反応した。


「誰?女の子?」


アレンが聞くと、シスターは少し悲しげな顔をして首を軽く横に振る。


「いいえ、ダンジェロという男性です。ベラというお姉さんもいたのですけれど病気がちで全然外に出られない子で…ベラが十二歳の時にここで彼女の葬儀を執り行いました。サードは参加はしていませんけど覚えている?」


こうして裏向かいの家にベラがいて十二で亡くなったという事実を聞くと、夢で見た出来事は本当のことだったんだ、と感慨深い気持ちになる。


サードを思わず見ると、サードも何となく同じことを考えていたのか私に視線を向けていた。


* * *


遅い朝食を終えて向かいの家に勇者御一行の四人で行くと、一番に出迎えてくれたのは私たちと同じくらいの年齢くらいの、眼鏡をかけたスッキリとした身なりの男性だった。

この人がダンジェロという、ベラの弟なのかしら。


「すみません、勇者御一行様にわざわざお越しいただくようなことになってしまって」


男性は私たちと握手をして、ソファーに座るよう促した。全員が座ると男性も座って話し始める。


「私はダンジェロと申します。それであのいきなりですけど…勇者様はそこの教会孤児院に居たのですよね?」


ダンジェロの言葉にサードは頷いて、


「ええ、十三になるまでやっかいになっていました」


と表向きの表情で返す。


ダンジェロという男性は少しサードをじっと見て、少し申し訳なさそうに頭をかいた。


「あの、実はちょっとお話をしたかっただけで、別にこうやって勇者様たちに来ていただいたくほどの用事もないんです、本当はこちらから出向かうつもりだったんですけど…」


と言いながらダンジェロは一枚の絵姿をテーブルの上に乗せる。そこにはあの花柄のネグリジェを着たベラが描かれていて、


「あっ」


と小さく声が出てしまった。


「私の姉のベラです」


手短に言うとダンジェロは続けた。


「私が九歳、姉のベラは十二歳の時に病気で亡くなりました。…生まれつきの難病にかかっていて、ろくに部屋からも出られない生活を送っていました。それなのに向かいは教会孤児院でしょう?

ベラは自分はろくに外で遊べもしないのに外から楽しそうな声が聞こえてくるので酷く癇癪(かんしゃく)を起しやすい性格でした。私も八つ当たりで何度引っぱたかれたか分からないくらいです。こんなすぐ怒鳴り散らして暴力を振るってくる姉なんて要らないと何度思ったことか」


ははは、と笑いながらダンジェロは続ける。


「それでもある時から段々とベラは癇癪を起さなくなりました。どうしてかと僕も疑問に思って、ベラの部屋を覗いてみたら窓辺で頬杖をついて黙って外を見ているんです。

何を見てるんだと思って僕も外に出たら、子供の頃の勇者様が屋根の上で本を読んでいるのをベラが見てるのに気づきました。…その事に気づいてました?」


サードは首を横に振る。

ダンジェロは、ふふふ、と笑いながら指を組んだ。


「そうでしょうね。それなら教会孤児院にいる時、見知らぬ子と手紙をやりとりしていた記憶はありませんか?」


サードは何度か頷いて、


「名前も住所も分からない子と何度か手紙のやりとりをした記憶はあります」


と答えると、ダンジェロは昔を懐かしむ目になってサードを見た。


「嬉しいです、覚えててくれていたなんて。ベラも喜びます…あ、実はその手紙を送ったというのがうちのベラだったんです。

あなたの名前を僕に調べさせて、手紙を書いたから孤児院の郵便受けに入れてこいと言われて、勇者様からの返事が郵便受けに入ってないかと何度も教会孤児院の郵便受けを見に行かされました。

子供心に人の家の郵便受けを漁るのは嫌でしょうがなかったんですけど、友達も一人もいなかったベラがあまりに待ち遠しそうにしているから私もベラを喜ばせたくて」


さっきはこんな姉要らないと思ったと言っていたのに、それでも子供心にベラのことを想っていたんだ。ダンジェロの言葉にこれが姉弟愛…と思わずジーンとする。


ダンジェロは少し口をつぐんでから、ゆっくりと続けた。


「…その手紙をやりとりしていた時期がベラの体が一番悪い時だったんです。医者にももう長くはないだろうと言われていたから、最後の我がままくらい聞いてあげないと後で後悔するかもと子供ながらに思ったんです。

ベラも体は辛いだろうにその何通かの手紙のやり取りだけで毎日笑顔で、それはもう幸せそうで…」


ダンジェロはそこから目が赤らんでうっすら涙が溜まっているけど、それでも真っすぐサードの顔を見た。


「冒険者になりたいと手紙に書いていたでしょう?死ぬ間際にもベラは両親に『冒険者になりたいんだけどいい?』とずっと言っていて、両親も何度もいいよと繰り返していました。そうして笑顔で亡くなりました。

それも勇者様のおかげです、あの手紙のやりとりが無かったらベラはあんなに幸せそうな顔で最期を迎えられたか分かりません」


そんなダンジェロの様子を見ていると思わず私も泣きそうになってしまって、それでも頑張って涙を堪えていると、サードはニッコリと爽やかな微笑みを浮かべてダンジェロを見返した。


「何を仰るんですか?私は手紙を書いただけです。ベラさんが笑えるようになったのは自分から行動を起こしたから、そしてその気持ちを汲み取って動いてくれるあなたがいて、ベラさんの最期の願いを包み込んだ両親があったからです。その笑顔を引き出したのはベラさん本人と、あなた方ですよ」


まるでガウリスが言うかのような言葉がサードから出てきて、ガウリスもその通りだとばかりにウンウンと頷いている。


そう言われるとダンジェロはこらえきれなくなったのか涙が流れて、すぐさま眼鏡を取って目を拭った。


「…昨日、久しぶりにベラが夢の中に出てきたんです。まるで…神様のような慈悲深い顔で、紫色の雲に乗ってピンク色の…こう、手の平サイズの花を持って笑っていました。きっと天国で幸せに暮らしていると言いたかったんだと思うんです。

夢の中とはいえ本当に嬉しくて、そしてサードさん…勇者様が今いらっしゃると聞いたのでついお礼を申したくなって…。本当に、ありがとうございました」


ダンジェロはそう言いながら涙をぬぐい続けている。眼鏡を取ったダンジェロの目は、昨日見た大人になったベラの目とそっくりだった。


実はベラの幽霊がこの家と孤児院の中をずっとさ迷って、ようやく昨日サードの手引きで天国に行ったんだけど、別に話すようなことじゃない。

ダンジェロの夢の中に現れたベラが夢で見たような顔で微笑んでいたのなら、あの大きい手にすくわれて無事に上に行けたということだろうから。


そう思うとなんとなく嬉しいしどこかホッとした気持ちになる。


ダンジェロは泣いたことを少し恥ずかしそうにしつつ、ふふ、と笑った。


「だけどベラは男の見る目があったんですね。なんせ好きになった相手が今や世界中にその名をとどろかせている勇者様なんですから」


「…」


いい話で終わらせたい。でもそれには賛同できない。

夢の中に神様設定の人が出てくる夢も何度か見たことありますが、起きた時めっちゃ気分よくスッキリします。気持ちの問題でしょうけど。


前は夢の中で神様設定の女性と神社の敷地内でハウルの動く城の空中歩きをしました。私がソフィー側。

神社の屋根から足が離れて私はヤバいよ落ちるよと必死の形相でしたが、神様設定の女性はにこにこ楽しそうな笑顔で私の手を取ってくれていて、私は必死の形相で隣の人に合わせて足を動かしていました。必死すぎて情緒はない。


皆さんも運が良ければそれっぽい人が夢の中でハウルの動く城歩きしてくれると思うので、近くの神社か寺に行ってみればいいですよ。

戦国武将が神として祀られてる所に行ったら戦国武将がハウルの動く城歩きやってくれるのかと思うとウケますね。武将の肖像画で想像するととてもウケます。

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