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裏表のある勇者と旅してます  作者: 玉川露二


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神と人間、魔族のオールスター

ああ、今まで色んな命の危険に晒されても紙一重でかわしてきたのに、噛み潰されて死ぬ残酷な死に方で死ぬなんて…。


「だからこれは夢だって言ってんだろ」


サードの声が聞こえる。これも最期によぎる記憶の中からの声なのかしら。


「私もう死ぬんだわ、サード」

「死ぬかよ」


またサードの声が聞こえる。

思えばいつまでたっても噛み潰される気配がない。


パッと目を開けるとサードの顔が見えた。


気づくと私は口の中にいなくて、サードの腕の内に抱えられている。


「…え?」


サードの顔を見上げていると、私は床におろされた。床の上に立って呆然とサードを見続ける。


「…どうして?」


見ると今は女の子の真後ろにいて、女の子も口の中から私が消えたのに気づいたのか驚いたように辺りを見渡しながらバッと振り返る。

女の子はサードの姿を見ると驚いたように目を見開いて、私と同じような「どうして?」という表情でシュルシュルと元の大きさになった。


混乱している私の顔を見てサードは軽く口端を上げながら私を見下ろす。


「メイセキムって知ってるか?」

「めいせきむ?」


初めて聞く言葉だわ。


「明晰夢。夢の中で自分が思った通りに行動して自分が思った通りの展開になる。ロッテの屋敷でそんな本を読んでな。毎晩寝る時にそのやり方を練習してたら今や普通にできるようになったぜ、こんな風にな」


サードがそう言ったら女の子の周りに鉄格子が現れて、あっという間に女の子は鉄格子の中に閉じ込められた。


女の子はショックを受けた顔でサードを見ていたけど、それでもスルッと鉄格子をすり抜けてくる。


するとサードは私の肩を抱き寄せて、え?と驚いてサードを見上げた瞬間、私たちは空中にふわりと浮かんでくるりと女の子に背を向けると、物凄いスピードで女の子から遠ざかっていく。


ううん、私たちは空中に浮いて止まっているのに周りの景色がぐんぐん動いて移動していると言った方が正しいのかもしれない。


「な、何これ魔法?サードが魔法を使って…!?」


興奮と驚きを交えてしてサードの顔を見ると、


「魔法じゃねえ、明晰夢だ。そもそも最初から意識もハッキリしてたからほとんど明晰夢と同じ状況だったんだ、あんまり普通にお前と話してて気づくのが遅れた。ところであのガキの目的は何だ?さっきみてえに人を食うのが目的か?攻撃方法は?弱点は何か探れなかったか?」


サードが喋っている間にも周りの景色はぐんぐんと動いて行く。

私は説明しようと口を開いたけど、それでもまず聞いた。


「それよりあの女の子はサードのことを知っているわ。サードは本当にあの女の子のこと知らないの?」


「知らねえ。孤児院にもあんなガキはいなかったはずだぜ」


「でもサードと一緒に…」


冒険するとか言ってたわよ、と続けようとしたけど、急に周りの動きがピタリと止まる。

前に視線を向けるとあの女の子が待ち構えていた。


「…攻撃方法と弱点を聞く前に追い付かれたか」


サードはそう呟くと床におりて、


「で、お前は結局何が目的なんだ?ただ遊びたいだけなのか?それともうちのエリーにしたように人を片っ端から食うつもりか?後者なら俺はてめえを殺すぜ」


前に差し出すサードの手の内には聖剣が握られている。


聖剣!?いつの間に…?

…ああ、明晰夢って自分の思った通りに出来るって言っていたから、無いはずのものを手に持つのも簡単にできるのかも。


女の子は恨みがましそうにサードを睨んで、肩に手を回されている私を睨んだ。

思えばいつまで肩に手を回してんのよこいつ、と私はサードの手の内から離れる。


「私を…私を旅に連れて行ってくれるって約束した…」


「してねえ」


サードの一言で女の子はショックと共に怒りの形相になって、目を潤ませて絶叫した。


「ウソつきぃいい!」


孤児院が大きく揺れて、地響きを立ててガラガラと壁も屋根も崩壊していく。


とっさに頭を腕で覆うけど、私たちの上に瓦礫は落ちて来ない。ただ、高く積み重なった瓦礫の向こう側からぞろぞろと私たちに向かって何かがやってくる。


見ると両腕でやっと抱えられそうな大きさのトカゲみたいな生き物…あれ、ちょっと待って、あれって…!


「ドラゴンじゃないの!」


確かあれはドラゴンの中で一番小さい種。獲物を見つけたら毒の液を飛ばして相手を動けなくしてから肉を噛み千切って食べるタイプだったはず。

見た目はちょっと可愛いのに食べ方がエグいって覚えてるから間違いないわ。それにその獲物の中には人間も含まれる…!


私は風を起こして吹き飛ばす。


食べ方がエグい以外の弱点はよく覚えてないからとにかく吹き飛ばして様子を見ようとするけど、あとからあとから途切れなく出て迫ってきて…!キリがない!


「ガウリース!」


サードが叫ぶと、ドンッと雷の束が落ちて周りのドラゴンを黒焦げにして弾き飛ばした。


驚いて視線を空中にずらすと、ターコイズブルーのあの細長い龍のガウリスが空中で蠢き、


「ギャアアアアアアア!」


と叫んでいる。


「えっ、えっ」


なんでガウリスがあの姿に?と思ってサードの服を引っ張ると、サードはニヤニヤと笑っている。


「なんでもありなんだよ、夢だからな」


ガウリスはゲキリンを触られた時みたいに暴風を起こして、雷を次々にドラゴンに落として、湧いてくる小さいドラゴンをあっという間に全て蹴散らしてしまった。


女の子は小さいドラゴンをあっという間に蹴散らしたガウリスを見上げて、どこか恐怖を抱いた顔で私たちを見る。


すると女の子の後ろから巨大なドラゴン…それも色んな種類のドラゴンが何もない空中から浮き出てきて、女の子の脇をすり抜け瓦礫を乗り越え私たちに迫ってくる。


それぞれのドラゴンはガッと口を開けると、その口の奥に炎がチラチラ揺らめいていたり、緑色の毒みたいな息を吐いていたり、ツララみたいな氷がビキビキとでき始めていたり…。


…なんて絶望しか感じない光景なの。


いくらなんでもガウリス一人じゃ蹴散らせるような数でもないし、私が本気を出しても蹴散らせるかも分からない。

だって会ったら死ねと思え、と言われているドラゴンがこんなに群れをなして相手だなんて分が悪すぎるじゃないの。それにさっきみたいに死にそうになっても目覚められないなら本当に今死んだらどうなるか分からない!


魔法を、と手をドラゴンに向けると、後ろからゾロゾロと人が出てきた。


今度は何!?と後ろから出てきた誰かを横目で確認して、誰なのか確認したら驚いて「ええ!?」と声が漏れる。


私の横をすり抜けて私とサードの前に立ちはだかったのは、黒い甲冑をつけたグラン、巨大な魔剣を持ったランディ卿、優し気な風貌のロドディアス、そして弓を持ったファリアとリンデルス…!


「ギャアアアアアアア!」


宙ではガウリスが巨大なドラゴンに巻きついて咆哮をあげて雷を落とし、ランディ卿もヒュンヒュンと伸びる魔剣を振り回し突進して近寄ってきていたドラゴンの首を一刀両断にした。


ロドディアスの周りには数え切れないほどの大量の剣が現れ、手を動かすと剣がグルグルと巨大化して回転して突き進んでいき、ドラゴンを薄いブロック状の肉にしていく。


グランの槍の先に風が起き、それを一直線に放つと毒っぽい息は私たちを避けて後ろに流れドラゴンを真っ二つに裂いて、ファリアとリンデルスが弓を引き宙に矢を放つと数え切れない光の閃光がドラゴンに流星のごとく放たれていく。


今まで出会って見てきた魔族と神の一斉攻撃だわ。


呆然と見ているとまた後ろから人が現れたから視線をずらす。


そこには私が立っていた。


「んっ!?」


私は隣にいる私を見ると、隣にいる私はニコッと微笑んで杖を上に向けた。

隣の私は何もない空中に竜巻を起こす。すると宙に集まった不穏な色の雲から雷が落ちて、周りから火事が起き始めた。

その火事になった炎を巻き込んだ竜巻は近寄るドラゴンを巻き取るかのように燃やしながら吸い込んでいって、更に巨大化しながら空一面を焼き尽くして炎の雨を轟々と降らせ続ける。


炎に包まれた中、数えきれない光の矢が飛び交って、暴風や雷が飛び散り続けて、剣も途切れなく飛び交い続けて…。

あんなにたくさんいたドラゴンがどんどんと消えていく。


「ついでに呼んでやるか」


サードがそう言うと、ズズン、とドラゴンと同じくらいの大きさのアレンがどこからともなく降りて来て、


「だから俺怖いの駄目だっつってんだろ!」


とドラゴンを殴り飛ばしては首をつかんで振り回してと大暴れしている。


「…あり得ない…」


夢だからって無茶苦茶だわ。


ポカンとするのを通り越して呆れているうちにドラゴンは霧散するように全て消えてしまい、周りが孤児院とどこかの家が合体したような空間になった。


目の前には女の子がいるけど、その顔はもう完全に脅える表情になっている。


私たちの周りには魔族から神、そして私たちのパーティー全員がそろっている。

…まあガウリスは龍姿。アレンは巨大すぎて私は二人いる状態だけど。…隣に自分がいるって妙な感覚だわ。


チラチラと隣にいる自分を見ていると、さっきの言葉をサードは繰り返す。


「それで、お前はただ遊びたいだけなのか?それともうちのエリーにしたように片っ端から食うつもりなのか?後者なら俺はお前を殺すぜ」


女の子は顔を青ざめさせたまま、頭を振りながら一歩後ろに下がった。


「サードは…サードはそんなこと言わない、サードが私に殺すなんて、言わない」


「言うさ、実際に旅をして殺すか殺されるかのやりとりしてんだ」


女の子は口をモゴモゴと動かして、バッと私を見た。


「あなたが!あなたがサードをおかしくしたんだわ!」


「っはぁ!?」


冗談じゃない、今までサードのこんな性格で苦労してイライラしてきたのに、まるで私のせいでこんな性格になったとなじられるなんてと思ったら、予想以上に私の腹からドスの効いた声が出た。


女の子はビクッと肩を揺らす。


でも私は今までの苦労を思い出したら怒りで口が止まらなくて、


「言っとくけどね!この男は最初からこれが普通の性格なの!私は最初からこんな性格のサードしかみてないの!

いつ会ったんだか分かんないけどあなたが見ていたのは表向き用で対人用の表情だったの!それを私がこんな性格にしたみたいなこと言わないでくれる!?」


とサードを指さす。


「…てめえ殴るぞ」


サードの言葉にハッと私は口をつぐんで、チラとサードを見る。サードは不愉快そうに私を睨んでいるから思わず視線を逸らした。


思えば女の子に噛み潰されそうになったのも大量のドラゴンを蹴散らしたのもサードなんだから、悪く言うのはちょっとまずかったわ…。


すると、クックッと笑いをかみ殺すような声が聞こえてきたから振り向くと、後ろにいるファリアとリンデルスがおかしそうに笑っている。


「そう怒るなエリー、その子には全く悪気もないのだから」


ファリアがそう言いながら私を見てきて、


「全く。このような形で我々を手駒にする人間は初めてだ」


リンデルスがそう言いながら私とサードを見ている。


サードが動かしているのかしらと思ったけど、その隣にいるグランたちと屋根っぽい所をすり抜けて宙に浮いているガウリスにアレンはちっとも動いていない。


あれ?と思ってサードを見ると、サードもどこか驚いた顔で笑っている二人を見ている。


するとリンデルスは微笑みながらサードを見た。


「何を驚いているサード。お前の元の世界でも言われているだろう?夢を見ている時、人は別の世界に入り込んでいるものと。夢の世界とは現実と違う世界で、我々のような神といえる存在とも関わり合える世界だということを」


ファリアはわずかに笑いを収めてサードに視線を移すと、


「我々の存在がいいように使われているようだから見に来た。あまり感心はしないな、今後このようなことはやめてもらおうか」


と厳しい口調で言って、リンデルスはクックッと笑う。


「妹を怒らせるなよ、怒らせてはいけないぞ。言いつけを破った者に対して厳しいからな妹は」


「…」

どういうこと?とサードを見ると、サードはリンデルスの言葉でもう納得した顔をしている。でも私がよく分って無さそうと思ったのか説明してきた。


「俺が元々いた世界だと、何の魔力もねえ俺らでも夢の中では神だろうが化け物だろうがそんな普段関わり合えねえ存在と対面できる特殊な一つの世界だって言われてたんだよ。

ロッテの屋敷で夢と睡眠の本を見て、俺が元々いた世界の夢と睡眠に対する考えは随分と民間信仰よりの遅れた考えだと思ったが」


と言いながらサードはリンデルスをチラと見た。


「夢の構造など未だどこの世界でも解明できている所はないのだから、遅れてるも進んでるもないだろう。どこの世界の夢に対する考えはどれもその地域に当てはまっていて正解だと思っているぞ私は」


「…そういやお前ら、何でも知ってるんだったな?なら夢ってのは…」


サードは何か質問しようとしたけど、リンデルスはハッハッと笑って手の平をサードに向けて言葉を止めた。


「今は夢の世界の談義をしている場合じゃないだろう?」


リンデルスはそう言いながら女の子に目を向けて、


「サードは一度も会ったことは無いが、この女の子とは関わり合っている。サードがどうにかしてあげなさい」


と言った。

今見直してたら「バッとわを見た」と打ち込んでいる所があって、エリーが東北出身者になってました。


女の子

「あなたが!あなたがサードをおかしくしたんだわ!」


エリー

「っはぁ!?言っどぐどもな!この男は最初がらこれが普通の性格ななだ!わは最初っがらこんたな性格のサードしかみでね!いつ会っだんだが分がんねども、んがが見でらったのは表向き用で対人用の表情だったなだ!それをわがこだな性格にしだみでに言わねでける!?」


女の子

「!!!???」


サード

「…おめしゃつけるぞ」


女の子

「!!!???」

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