第7話 馬車
門の外でカランさんたちに案内された先には、馬車が2つ止まっていた。
片方が俺たち依頼人用、片方がカランさんたちの休憩用、カランさんたちは交代で馭者の隣に座り、見張りをしてくれるとのこと。
もうすでにもう1人の依頼人は馬車の中にいるといわれ、馬車に乗り込むと、そこにはフードを深々と被った人が馬車の壁にもたれかかりながら座っていた。
こちらに気が付き、軽く頭を下げてきたが、一言も発することはなかった。
頭を下げ返し、反対側に座ったが、何とも気まずい。
馬車で移動中はずっと無言なのかな・・・・
フードを被っているため顔は見えず、体格はカランさんのようにいいわけではないが、男なのか女なのかさえわからない。
まあ、そんなに話すのが好きなわけでもないし、いいか。
移動いている途中、見張りでサイが交代してきた。
また、タマゴのことつっこまれたらどうしよう。などと考えていると、サイが口を開いた。
「さっきはすまなかったな。俺は強くなるために旅をしていて、強い奴と戦いたい。だから、強者のオーラをみるとついな。」
「全然、気にしてないですよ。でも、残念ながら俺は強者なんかじゃないですよ。剣すら握ったことないですし」
「そうか。自分で気が付いてないだけで、なにかしらの力を秘めているのかもな。オーラがズレて見えるなんて初めてだったし」
そのオーラは、きっと俺じゃなくて、この龍神のタマゴだけどね・・
なんて本当ことも言えず、適当にはぐらかしていると、フードの人が近寄ってきた
「あなたはなんで戦うの?」
中性的な声だ。女の声のようにも男の声にも聞こえる。
最初は、返答せず、黙っていたサイだったが、少しすると答えはじめた。
「俺は強くなるために戦う。兄さんたちに追いつくために。」
そう短く答えた。
「そう。強者がいるということはそこには敗者がいて、多くの人の命が亡き者になっていく。お互いに自分こそが正しいと言い合いながら命を奪い合う。それは、人に限らず、生きているもの皆そう、命を奪い合いながら生きている」
この言葉に返答を求める様子はなく、フードの人物は言い終えるとまた、元いた場所に戻っていった。サイも少し何かを考えていた様子だったが、少しすると視線を前に戻し、見張りの仕事へと戻っていった。