三章 確信
「急いで手紙を探せ。
早くここを出るぞ」
「わかった」
ラファエルは自分の寝台があった場所を探す。
幸運にもマノンやエレーナたちの檻はそのまま残っていたのですぐに見当をつけることができた。
アンたちの遺体は誰かが埋葬したのだろうか見当たらない。
寝台は真っ黒な炭に変わっていた。
一縷の望みを託して地面を掘り起こす。
「あった」
手紙は一部煤けているものの無事だった。
ブリキのゴーフルの缶に入っていたのと、すぐに寝台の下敷きになっていたために焼失を免れたようだった。
煤を拭って胸元に抱きしめる。
ラファエルは歓喜に身を包まれるのを感じた。
大切なものは手放したくはない。
こうしてエマとも再び逢うことができた。
マノンとエレーナ、マリアンヌとも諦めなければきっと再会できると確信が持てる。
「良かったな!」
クララも自分のことのように喜んだ。
「さあ、これからどこへ逃げるかだ」
「支配人の家に」
ラファエルの言葉にクララは耳を疑う。
「本気か?」
「連れ去られたマリアンヌさんが心配だよ。
他に情報もないし、まずは彼女の無事を知りたい」
「驚いた。
どうあっても全員見つけ出す覚悟なんだな」
街はいつもの様子に戻っているようだった。
陽が落ちてくると人通りも閑散としてくる。
マリアンヌの所在を確認するために、人の流れに紛れて円形劇場からほど近い支配人の家を目指した。
街のなかで変装したクララとエマは不審がられたが、声を掛けられることはなかった。
小汚い身なりから貧民窟の貧しい子供とみられているのかもしれない。
あちこちの通りの角にハンターの半獣人の情報を求めるポスターが、オペラなどと一緒に貼り出されていた。
ポスターには事務所の住所と、ハンターの特徴的なウェスタンハットのイラストが描かれている。
クララは苛立ちにまかせてポスターの一枚を乱雑に破り捨てた。
エマがそんなことをしても無駄だとばかりに首を振る。
クララは牙を剥いてエマに威嚇した。
「気が立ってるんだ、好きにさせろ」
「目立つ行動は控えた方が賢明よ」
「なにおぅ」
「二人とも落ちついてよ」
ラファエルが懸命になだめる。
いままであまり接点がなかったのでわからなかったが、この二人は相当に相性が悪いみたいだった。




