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三章 クララの孤独

クララが両親と死に別れたとき、まだ十二歳だった。


生まれながらにして半獣人デパエワールの兆候をもった娘に、両親は普通の子供と同じ、いやそれ以上の深い愛情をもって接してくれた。


狩人だった父は決してクララを人前に出そうとはしなかったが、それはクララの身を案じてのことだったのだろう。


クララは友だちこそいなかったが、家畜の鶏や羊、狩猟犬たちと楽しく過ごし、また木登りや川遊びなど女の子らしからぬ遊びをしては母を冷や冷やさせたものだった。


あの頃をクララはいまでも昨日のことのように思い出すことができる。




だが、火事がすべてを奪ってしまった。


ちょうどいまくらいの、風が冷たく、空気が乾いた時期だった。


クララがいつものように狩猟犬たちと仲良く駆けまわり、父と一緒に木ぎれで騎士になりきって遊んでいたとき、金色の草原を覆う淡青な空に煙が立ち上った。


家のある方角だった。


父と一緒に走った。


家は炎に包まれた凶暴な生き物になっていた。


必死に母の名を呼ぶ父。


返事はない。


「お前はここにいろ。いいな?」


父はクララを置いて炎のなかへと突進していった。


一人で心細くて、炎が恐ろしくて泣き叫んだ。




消防がやってきたのはすべてが真っ黒な炭に変わってからだった。



クララは保護され、


連行され、


投獄され、


見世物小屋を転々とし、


いまに至っている。



父も母も、あれから姿を見ることはない。




クララは暖炉の白い灰とラファエルの青い顔を眺めた。


また、世界が私のもとから一人奪い去ろうとしている。


ラファエルは私を人として扱ってくれた。


それだけでは助ける理由は不足だろうか。


ジョーから身を呈して助けてくれた。


それだけでは一緒にいる理由は不足だろうか。


ラファエルの優しさを失えば、次に手に入るかわからない。


なぜ、自分は暖炉に火をつけてラファエルを暖めてあげられないのだろうか。



手が震えた。


火のおこし方は憶えている。


だが、火を見てまた気を失ったら。


恐怖。


後悔。


怒り。


一緒くたになって吐き気と共に溢れ出てくる。


炎は喪失の象徴。


父さん。


胸の中で呟く。


母さん。


刹那の慟哭。


なくしたものを得るには、なくした場所に立ち戻るしかないのだろうか。


クララは自問自答を繰り返した。


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