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三章 命の灯火

■三


クララが気を失っているラファエルを抱えて、静寂で包まれたセーヌ川下流の森に身を隠し、ひとまず休めそうな狩人小屋を見つけたときには、すでに陽は昇り始めていた。


鍵を壊して建物に入ると部屋は古びた毛布や暖炉もあり、体を休めるには十分な設備が整っていた。


埃の少なさを考えると定期的に人が出入りしている可能性が高い。


あまり長くはいられないかもしれない、とクララは手早く背中に抱えていたラファエルを簡易な寝台に下ろして濡れてすっかり冷たくなった衣服を脱がし、ありったけの毛布を巻き付けた。


部屋の隅には動物たちに仕掛ける罠や縛るためのロープが乱雑に積み重ねられている。


クララはこれからどうしたものかとため息をついた。


理不尽な自分の人生のなかでも激動の一日だった。


ツイてない、と言いかけてやめる。


追われる身とは言え、監禁される生活から解放されていままで快適に暮らしていた訳ではない。


むしろツイてないのはこの寝台に眠るラファエルのほうだろう。


服を脱がして気がついたのだが肩に一発銃弾を受けている。


幸い弾は骨で止まり、クララはその鋭い爪で掻きだしたのだがきちんとした手当もさせてやりたかった。


ここでは戸棚にあった粗末なアルコールで消毒するのと、狩りの捕獲網を呈する針で縫うのがやっとだ。


ラファエルは傷のためか、寒さにやられたのか高熱を出してうなされていた。


クララは暖炉のほうを見てほぞをかんだ。


あの暖炉に火をつければ部屋はさぞかし暖かくなるだろう。


いまは灰にまみれているだけの炉内。


少し森を歩けば薪になるような枯れ枝はすぐに見つけてくることが出来る。


クララはじっと息を潜めて考えた。


火は恐ろしかった。


いままで面倒を看てくれたことに対して感謝はあるが、それは彼の仕事だったからだ。


どうしてラファエルにここまでする必要があるのだろうか。


過去に真の優しさを示してくれたのは、家族の他になかったはずだと、クララは自分に言い聞かせた。


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